社歌と満島ひかりの作業服姿に、興味津々だった作品です。
上京5年目、彼氏も妥協、嫌な仕事も我慢し、ストレスをいっぱいにため込んで生きている主人公。「私なんて中の下ですから」「でもそれって仕方ないですよね」と極端に悲観的な女の子を、満島ひかりが地味に演じています。それはもう共感を超えて、同情すら感じられます。しかし、やはり彼女は普通のOLではありませんでした。目をむいて「頑張るしかないんですから」と叫ぶ姿に、満島ひかりならではの役だと感じました。変身へ至る過程は筋が通っていなくても、違和感なくエピソードを重ねている点で、脚本の巧妙さと演技力が光ります。
監督が若いせいか、笑いと寒さの入り混じった部分も確かにありました。頭の悪そうなセリフや奇をてらったシーンには人を不安にさせる不自然さが残ったし、傾きかけたシジミ工場が社歌や包装パックで持ち直す訳ないだろと、甘さも感じました。しかし、このデフォルメされたファンタジーでは、そんなことは大きな問題ではないんです。不自然な世界の中で、主人公だけがリアルなエッジを利かせて、私たちの心に響くセリフを放ちます。後半ものすごい勢いで押してくるので、なんとなく爽やかな好印象が残りました。不況対策や環境問題を語る映画ではありませんが、個人の生き方としてもう少し頑張ってもいいかもと励まされた気がします。