心臓をわしずかみにされたようだった。自分の中の生きることへの空虚感、焦燥感や弱さを指摘されているように感じたからだ。テジュが夜中に寝巻き姿、裸足で町を全速力で走る姿に自分の置かれた立場や生きることの閉塞感が伝わり胸を突かれた。そんなテジュにサンヒョンが靴をはかせる場面が最も印象に残っている。やむにやまれぬ思いがあり、猟奇的な場面であればある程、悲しみが大きい。ソン・ガンホは、従来のイメージを覆し、体中の油がぬけたような姿で登場。作品にかける意気込みを感じさせる。どの俳優も目の演技が素晴らしい。特にソン・ガンホの苦悩の中悲しみを讃えた瞳に引き込まれてしまう。キム・オクビンの純粋無垢な瞳に救われる。終演後なぜかショパンの旋律が心に静かに流れていた。これで良かったと思わせるエンディングである。