ちょうど約1年前の今頃勃発した、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『世紀の光』Saeng Satawat (Syndromes and a Century)の検閲問題、新たな動きがあったようです。
タイの英字新聞「バンコクポスト」2008年3月12日の記事より。
http://www.bangkokpost.com/120308_News/12Mar2008_news19.php
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Director's appeal to censors fails by KONG RITHDEE
The censorship appeals committee has upheld the decision to cut four scenes from the art-house movie Saeng Satawat (Syndromes and a Century) _ and ordered the director to cut an additional scene as well. ''We upheld the verdict because the movie contains inappropriate images of doctors and monks,'' said Pol Maj-Gen Somdej Khaokam of the Central Investigation Bureau, who chaired the hearing yesterday.
The film's director, Apichatpong Weerasethakul, appealed after the Censorship Board ordered him to cut four scenes from Saeng Satawat last April.
These scenes featured a monk playing a guitar, doctors drinking whisky, doctors kissing and two monks playing with a radio-controlled toy.
On Tuesday the appeal committee ordered him to also cut a scene showing statues of Prince Mahidol of Songkhla and the late Princess Mother.
Mr Apichatpong, who defended his case before the committee, expressed his extreme disappointment.
''It was like I was on trial for being a communist,'' he said. But he said he would cut the film as instructed.
''I will release the mutilated version as a statement and as a historical record of Thailand,'' he said
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このセンサーシップ問題の背景を簡単に説明すると・・・、
2007年春、『世紀の光』は一般上映前に検閲委員会へ提出され、
委員会により4箇所カットしなければ、上映させないという判断が下りました。
※タイの検閲委員会は日本の映倫と違い、任意提出ではなく、タイで上映するものは必ず提出しなければなりません。ただし映画祭は例外。
それを監督は断固拒否。タイで上映しないので、フィルムを返却するように要請したところ、
検閲委員会はカットしなければ返さないとの返事、
それをきっかけに、タイの映画人から「センサーシップからレーティングへ」という
Free Thai Cinema Movement が始まり、
有識者を呼んでの、検閲に関するセミナーも行なわれるようになりました。
Free Thai Cinema Movementは、
検閲委員会によって、”一方的に”カットや上映禁止にする(センサーシップ)のでなく、
他国のR18みたいに、年齢などを基準に、観られる人とそうでない人を分ければいい(レーティング)のではと提案しました。
Free Thai Cinema petition:
http://www.petitiononline.com/nocut/petition.html
そして迎えた新憲法の採択。
そこで決まったのは、複雑なレーティングシステム。検閲は相変わらず残るというものでした。
新システムの詳細は、これまたKong氏の記事ですがこちらを→
http://www.variety.com/article/VR1117978101.html?categoryid=19&cs=1
そしてこの事件の動きを日本語で知りたい人は、こちらの掲示板が詳しいです→More Thai Film:http://groups.msn.com/chinoroam/morethaifilm.msnw
3月12日のバンコクポストの記事からわかること、
それは相変わらずの検閲。いや、むしろひどくなっていることです。
いままでは、
僧侶がギターを弾くシーン
僧侶がラジコンで遊ぶシーン
医者が院内でお酒を飲むシーン
医者が院内で恋人とキスをするシーン
の4箇所がカット対象でした。
そこに、さらに王族の像が映るシーンが対象になったとのこと。
アピチャッポン監督は失望を表明しているものの、
委員会の要請を受け入れ、上映をするそうです。
そうすることで、彼の声明となりタイの映画史に残るから。
監督の本意でないものの、ちょっと観たくなるこの作品。
タイではもうすぐ公開なのでしょうか。
Free Thai Cinema Movementのメンバーたちをよく知っているだけ、
こんな形になるとは、悲しいです・・・。