2008-03-16

タイ音楽とミャンマー(ビルマ) このエントリーを含むはてなブックマーク 

3月13日はビルマ人権の日だったそうです。

東京でも、在日ビルマ人300名以上がデモ行進をしたとのこと。
webDICEで、レポートしてます。

テレビのニュースではほとんど報道されてなかったので
(私がたまたま見逃しただけ?)知りませんでした。

ミャンマー(ビルマ)はご存知の通り、タイの隣国。
タイ国内では、違法移民を含め、多くのミャンマー人が暮らしています。
歴史的に、タイはアユタヤ王朝時代にミャンマーに支配されたこともあり、
タイ人のミャンマー感情はかなり否定的なものが多いと思います。

「ミャンマー」はタイのポピュラーカルチャーの世界でも、
よく扱われるサブジェクトで、
たとえば、タイ式シネマ☆パラダイス2008で上映される作品でも、
『キング・ナレスワン』がアユタヤ朝時代のタイ(シャム)とミャンマー(ホンサー)の歴史を
『ブリスフリー・ユアーズ』がミャンマー人不法移民を扱ってます。

タイ映画の中のミャンマー話はまた別の機会にとっておき
今回は、タイ音楽とミャンマーに関してです。

というのも、こんなニュースを思い出したから。

「エート・カラバオとSSA(Shan State Army)」

タイ音楽好きな方ならたぶんご存知であると思うカラバオ(Carabao)。
タイの国民的バンドです。
2005年の津波のときに、「アンダマンの涙」という歌を歌い、
日本でも紹介されました。

カラバオとは、フィリピン語で「水牛」の意。
フィリピン留学中の1976年に、エートとキアオがつくったグループで、
帰国後の1981年にタイでデビューしました。
このカラバオの名前は、一説には、
同じプレーン・プア・チウィットの先輩バンドであるカラヴァン(Caravan)の名曲『人と水牛』(Khon Kab Khwai)に由来するともいわれてます。

プレーン・プア・チウィットとは「生きるための歌(Song for life)」を意味する、
タイ音楽のいちジャンルです。
70年代のタイ民主化学生運動とともに発達し、
貧しい地方の人々の生活や社会問題をテーマにした歌が流行しました。
(歌だけでなく、映画や芸術でも同様の運動がありました。)

その中でカラヴァンは最も支持された伝説的なバンドです。

プレーン・プア・チウィットは60年代の世界的な学生運動や当時の
Pete Seeger, Bob Dylan, Joan Baezなどの音楽に影響されているといわれてます。

日本ならフォークソングですね。

いまでこそ解散してしまいましたが、
私が留学していた2006年は、1976年10月6日のタマサート大学生虐殺「血の水曜日事件」から30年というメモリアルの年であったため、そのイベントでカラヴァンがタマ大学でライブをしているのをみかけました。
いまでもそういったイベントで歌っているようです。

一方、カラバオがデビューしたのは、その「血の水曜日事件」以降だったため、
いわゆるカラヴァンのような社会主義的な歌はそれほど歌ってないものの、
それでも社会派のバンドとして、彼らは有名になりました。

ただ、彼らがこれほど人気を得たのは、カラヴァンのような社会的メッセージソングのみならず、ラブソングを歌ったり、音楽的にはフォークではなく、ロックの影響も強く受けているためであると、Lockardはいいます。
(参考:Lockard, Craig A.Dance of life Popular Music and Politics in Southeast Asia ,2001年.)

それでも、政治的メッセージ性の強い歌も歌い続けるカラバオはある意味、
バンコクの中産階級だけでなく、
タイの大部分を占める地方の貧しい民の気持ちをもつかんだといえるでしょう。

そんなカラバオのボーカリストであるエートが、ミャンマーのシャン州、
Shan National Dayの前日である2月6日に、SSA(Shan State Army)のもとに駆けつけたそうです。

Shan Herald Agency for Newsの記事で写真もみられます。
http://www.shanland.org/general/NinP/visual-points-famous-thai-singer-peps-up-ssa-trainees

日本では、そんな国民的バンドが政治に関与するするなんて、ありえませんよね。
(てか、日本はラブソングばかり?それとも私の耳に届くのがラブソングばかりなのかな??)

エート・カラバオは2002年にも、シャン族の独立を支持する『泣かないでいい』(Mai Tong Rong Hai)をリリースしてます。
そのときのインタビュー記事。
http://www.irrawaddy.org/interview_show.php?art_id=2709

3月13日はビルマ人権の日というのをきいて、
ふと、このエート・カラバオのニュースを思い出したのでした。

渋谷Uplinkではアイリーヌ・マーティー監督の『ビルマ、パゴダの影で』というドキュメンタリー作品が、昨日から上映されているそうです。

”パゴダの影でカメラが捉えたもう一つのビルマ スイスの観光用PR番組の撮影と偽りビルマ(ミャンマー)に潜入したアイリーヌと撮影クルーはジャングルの奥深く国境地帯へ少数民族の証言を求めて旅をする。”(オフィシャルホームページより)

国際的にも注目されている国、ミャンマー。

ただそれだけでなく、
たまたま、タイの大学院で、親しくさせてもらった先生がミャンマー人だったり、
ミャンマー語も少しだけだけど習ってたし、
タイ・ミャンマー関係はタイ映画では結構多いテーマなので、
かなり気になる国のひとつです。

アートやポピュラーカルチャーが政治的に担う役割というのは、決して小さくない。

ドキュメンタリーは東京に出るときに、観にいこうと思います。

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tkster

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“ども。 東南アジアのクリエイティブに興味あります。”