スウェーデンってつくづく不思議な国だと思う。ミュージックシーンについてだけでもスウェディッシュ・ポップに代表されるカラフルでファッショナブルなイメージと同時に、実はブラックメタルやドゥームなどダークで悪魔的な音楽の先進国だったりもして。かの国が生んだワールドワイドなベストセラーの映画化(しかも作者は既に亡くなっている)ということで、153分という長さにこれでもかとばかりにミステリーのエレメントが詰め込まれているので満腹感は保証。そしてなんといっても主人公のリスペットが最高。少年のような体型とゴスなファッションに身を包み、後見人からの凄惨な虐待に耐えながら血塗られた謎に立ち向かっていく姿は、10年代にあるべきヒロイン像であることは間違いない。決してハッピーなストーリーではないけれど、観終わったあと胸のすく思いがするのは彼女の颯爽としたたちふるまいゆえであろう。タランティーノがもしリメイクを成功させたとしても、全体を覆う明るさと暗さが表裏一体となった異様なムードは決して再現不可能だと思う。