2008-03-14

The Locust / Wrench / にせんねんもんだい / Safari @渋谷o-nest このエントリーを含むはてなブックマーク 

 一週間ほど前にWEB DICE編集長の浅井さんからメールをいただき、ゲスト・ブロガーとして日記を書いてみませんかというご提案をしていただいた。

 現在私は表ブログ、mixi、それから匿名でやってる趣味のブログと3つの日記を平行してやっている(ごくたまにTwitterでも書く)。そのうえ4つめとなるとネタがあるかどうか。ここでは日々聞いたレコードを淡々と記す日記というのを書こうと思ったが、ゲスト・ブロガーとして書くとなると、いくらなんでもそれじゃ成り立たないだろう。そしてそれ以前に、私ごときが天下のWEB DICEのゲスト・ブロガーでいいのか? あんまサブカルに詳しくないし。

 とかいろいろ考えたが、せっかくのお誘いなので、ひとまずやってみることにした。特に更新頻度のしばりもないようだし、適当に、余裕のあるときに。浅井さんからお誘いをいただいてしばらくは仕事やら確定申告やらで時間がなかったのが、ようやく余裕ができたのでボチボチ始めようかと思う。

 内容だが、9年前に自分のウエブ・サイトを初めて持ったときみたいな初心に戻り、日々のライヴ鑑賞やら仕事関係の雑記やら印象に残ったレコードやら映画やらの感想などを中心とした、つまりはごくオーソドックスな日記にしようかと思ってる。そういえば最近更新がおっくうになって、そういうまっとうな日記、書いてなかったし。毎日更新とはいかないかもしれないが、あまり間があいて忘れ去られない程度に書いていくつもり。以後よろしくお願いいたします。

 さて、ようやく仕事が一段落した昨日は渋谷のo-nestへ、サンディエゴ出身の変態ハードコア、ロカストの来日公演を見てきた。前座が三つも出るライヴだが、どうせならアタマからがっつりと、と思い7時少し前に到着したら、ほとんど客がいない。そんなに人気ないのかと思い、ガランとした会場で呆然と待っていたら、7時40分過ぎぐらいにようやく最初のバンド、にせんねんもんだいが出てきた。あとから聞いたら、開演は7時半とアナウンスされていたらしい。ライヴハウス初心者の中坊みたいな間抜けな失敗。ちなみに客は7時半ぐらいからわらわらと集まりはじめ、最終的には満員だった。

 にせんねんもんだいは過去に何度も見ているが、最初見たときはジス・ヒートがソニック・ユースのコピーやってるみたいな感じ。それからしばらくして見たら、ディスコ・パンクみたいなダンス・ビートになっていて、今度出る新譜「ディスティネーション・トーキョー」では、ノイ!みたいなクラウト・ロック色が強くなってた。こういう書き方をするとオリジナリティのないバンドみたいだが、ごくふつうの女子3人がビシビシと引き締まったオルタティヴ・サウンドをたたき出す様子はじつにかっこいい。そしてこの日の演奏は、今まで私が見たなかでも最高の出来。新譜の収録曲中心のセットだったが、ガレイジ風のチープな録音が難だったレコードより、はるかにヴィヴィッドでパワフルでエネルギッシュ。ミニマルなギター・フレーズと速いピッチの四つ打ちのソリッドでタイトなダンス・ビートが延々とリフレインして、加速度的に白熱していく演奏に大興奮。すごくいいバンドになったなあ。横で見ていたライターの石井恵梨子は、ミニマル過ぎて全然展開のない演奏がなじめないみたいだったが、私はこの調子で1時間ぐらい続いてくれないかとマジで思った。それだけに、CDはもう少し録音物として神経を配って作ったほうがいいんじゃないかと考える。

 続くはレンチ。新作『nitro』以降はハイ・テンポのリズムと分厚くハイパー・テンションな音の壁で圧倒するような音楽性で毎回すさまじいライヴを聞かせているが、この日もその感じ。フルタイムのライヴだと、あまりの音圧のすさまじさに少しメリハリが欲しくなるときもあるのだが、この日ぐらいの演奏時間(30分強)なら問題なし。いつみても熱い、全力投球のパフォーマンスは素晴らしい。最後の曲では浅野忠信がゲスト・ヴォーカルで出てきたが、俳優としてのかっこよさと、ヴォーカリストとしてステージに立ったときのかっこよさ、カリスマ性はまるで別ということが、レンチのヴォーカリスト、シゲと比べて、よくわかった。浅野さん、映画などで見るボソボソ喋りとは打って変わっての大絶叫。すごく楽しそうだった。

 3番目に出てきたのが、その浅野忠信と、ブライアン・バートン・ルイスがツイン・ヴォーカルをつとめるバンド、サファリ。音はずばり、80年代ハードコアだ。よく言えばシンプル、悪く言えば単純な演奏に「お前らはエクスプロイテッドか!」と突っ込みたくなることしばし。時々浅野が「オレは絶対あきらめないって歌だぜ」とか「オレは誰にもコントロールされねえ。オレのことはオレがコントロールするって歌だぜ!」とか解説を入れるわけだが、この妙な説教臭さが、なんだか神楽坂エクスプロージョンあたりに出てるジャパコア・バンドみたい、とか思ったりして。歌詞を覚えてないからとノートを見ながら絶叫するというパフォーマンス(じゃないのか。マジか)にも爆笑。いや、こう書いてるとバカにしてるみたいだが、けっこう楽しかったのだ。まあ一番楽しそうだったのは、メンバー本人だと思うけどね。いろんなライヴ会場で浅野の姿はよく見るけど、きっとすごくいい奴なんだろうと思った。

 そしてトリに登場したロカスト。とにかくヤバイ。レコードで聴いていた印象よりはるかにうまい。変則的なリフと不快な電子音と気色の悪いヴォーカルが束になって超高速の変拍子で展開していく演奏はとんでもない技術の応酬。だがそうした演奏の見事さが、少しもカタルシスに向かわず、むしろ陰々滅々とした変態性に収斂していくのが痛快/不快。聴く者を選ぶバンドだが、一見の価値はある。

 終わったらすでに11時過ぎ。なんとなく飲みたい気分もあったが、おとなしく帰宅。ロカストのレコードを聞き直してみたが、やっぱりライヴのほうが良かった。

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小野島 大

ゲストブロガー

小野島 大

“主に音楽関係の文筆仕事をやってます。 ”