ピクサーのアニメはいつも欠かさず鑑賞している。いつも可愛らしいが奇抜なキャラ達の動きとユーモア溢れる台詞に笑わされ楽しい気分で劇場を後にすることが多い。今回は一人の老人が主人公である。『カールじいさんの空飛ぶ家』を観ることができた。
主人公カールは世界で一番大切な妻に先立たれ寂しい日々を送る老人。住まいのエリアは再開発が進み、カールの家も立ち退きを迫られている。カールがこの場所を離れない訳が冒頭のシーンから続く。冒険好きな少年の頃に出会った少女エリーとの日々、そして二人が結婚し仲睦まじく生活する日々、このフラッシュバック的な短い、しかもセピア基調の映像はとてもインパクトがある。不覚にもこの段階で涙・涙。私は自分の妻との生活がオーバーラップしたせいかと思うが、このシーンで涙した人は相当数いるはず、と信じたい。
物語は一挙に展開し、カールが老人ホーム送りになる朝、家がたくさんの風船と共に空に舞い上がる。ボーイスカウトのラッセルと共に。カールがエリーと夢見た幻の滝を目指して二人の思い出が詰まった小さな家は南に向かって冒険の旅に出る。やがて家は滝に近づきジャングルに到着するのだが、ここからはピクサーらしいキャラ達が笑わせてくれる。幻の鳥ケビィン、
人間の声で話す犬などさすがと思わせる面白さがある。そしてさらに子供の頃憧れた冒険家チャールズ・マンツの登場により物語はやや活劇の様相になるのだが、ジャングルを飛行する映像の美しさはもはやアニメの域を超えた神秘さがある。美しいという言葉では物足りないだろう。太陽光の反射や空気感まで手抜きの一切ない完璧な映像である。
マンツの手下である犬たちのアクションやユーモア溢れる会話・仕草も必見である。音楽も途中、インディ・ジョーンズかと思う曲調の曲があり個人的にはこれも笑える。
そして数々の苦難?バトル?を乗り越え冒険の最終目的地である幻の滝に到着するのだが、ここでもカールの優しさが溢れるシーンがいくつかある。ケビィンと名づけた幻の鳥を見送るシーン、ラッセルの気持ちをはじめて理解するシーンなどなど。旅を通じて成長するカール、老いているが何かに突き進む力強さにとても勇気づけられる。
人間は誰でもいつかは死ぬ。大切な人もいつかは死ぬ。そう考えるとこの作品はとても身近なところで共感できる。カールがエリーから預かった冒険アルバムに記されたエリーの最後の言葉、ここでは記さないが、毎日生きることこそが人生最大の冒険であるという監督のメッセージにつながっていく。この作品は誰か大切な人と観るといいかも知れない。生きている意味や目的がいっぱい詰まった傑作である。私ももう一度観に行こうと思う。
- TOP
- momotimuの日記
- 詳細