ジム・オルークの新譜のシチョウカイに参加させてもらった。
薄暗い会場にはシンプルに、白っぽいスピーカーが2本立っていた。そして客席。それ以外には一切無駄な要素がなかった。入った瞬間、こういう場所って、普通はポスターの1枚でも貼ったりするものなのかしらと思っていたので、一切余分な成分を排除して、客席と音の親密な関係を築こうとしている主催者の気持ちが伝わってきた。
会場が薄暗くなる。と同時に、やんわりとギターの音が聞こえてきた。ポロンポロンとした旋律が、ゆっくりと自分のほうに向かってくる。くっきりはっきり聞こえてくる音は、まるで視覚的に映像を見ているのと同じように細かい変化を感じ取ることができた。私が最初にイメージしたのは「小川」。ゆっくりと、そよそよと、きこえてくるやさしい音。(多分)トラックをいくつも使った重層的な音は、それだけで空間に深みを与えてくれているような気がした。
中盤。旋律がどんどん複雑になっていく。しかしタダタンに複雑になっていったわけではない(と感じた)。ひとつひとつの音がまるで意図を持って、空間を埋め尽くしてるかのように、そしてそれが肌に直接触れて来たかのように、視覚とも触覚とも聴覚ともつかない感覚に包まれる思いがした。音の粒が、まるでふかふかクッションのビーズみたいだ。
ピュアな音の粒に包まれる、至福の時間。
小川だと思っていた聴覚的空間は、しだいに広がりを見せ、小川の周りの環境をも描き出していたようだった。木?森?空?鳥??音空間に描き出されている(はずの)オブジェクト探しに私は夢中になった。そして参加者全員が、静かにそこにたたずみながら、音空間に、ジム・オルークのクリエーションに身をゆだねていたのがわかった。音楽の楽しみ方って無限大!
ジム・オルークはいつもきっと進歩している。ブランクをあけてみんなを待たせても、期待を一切裏切らずに、それどころか倍返しにして戻ってきてくれる。そんなミュージシャンだと思う。