2009-09-12

夜の闇 音の拡がり このエントリーを含むはてなブックマーク 

夜の遅い時間、眠りについてもいいかもしれない時間、
仕事帰りの気だるい身体を引きずり、うんざりする渋谷の雑踏に
耳を毒されないよう、巨大スピーカの待つ会場へと向かった。

正直、心配していた。
美しい音を奏でるジム・オルークの新譜とはいえ、約40分もの長い曲。
疲れた身体の眠さには勝てまい。

そんな心配をよそに音楽は流れ出し、そして、目を閉じた。

それはギターの、シンプルな音から始まる。
身体は深遠な闇の中、遠く宇宙に浮かび、音と密に対話する。

ものすごい強さで迫ってきては置いてけぼりに突き放し、そしてやさしく包みこむ。
そんな、繰り返し。

5次元あたりに連れて行ってくれそうな、麻薬的な美しい旋律。
ノイジーな生音。

ローマのコロッセオを馬が駆け巡っている映像が目に浮かぶ。
スペインの闘牛場では、立派な角の牛が勢いよく走り回る。
ダイナミックな動きが収斂してふと消えたかと思うと、
キラキラしたメリーゴーラウンドの大きな馬が、
白い巨大スクリーンの画面を突き破って出てきた。
輝く未来を垣間見せながら。

ものすごい勢いで鮮烈なイメージを残し、気が付くと40分間の誘惑的な時間は終わっていた。
それはまるで、交響曲。

巨大な塊のようなものが、ズドンと身体の奥底に残った。
雑踏に消えてしまわないよう、大切に胸に焼き付けた。

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soranoirohaao

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