(ストーリー)
◆1970年初頭のフランス。行方不明となっていた少女リュシーが、傷だらけの衰弱しきった姿で路上を彷徨っているところを発見される。何者かの手で食肉処理工場の廃墟に監禁され、長期間に渡って拷問と虐待を受けた彼女は激しいショック状態にあり、自力で脱出したこと以外は一切、事件の詳細を語ろうとしない。リュシーの体に性虐待の痕跡はなく、犯人の正体も動機も不明。一体、誰が? なぜこんなに惨い仕打ちを…? ◆養護施設に収容されたリュシーは、同じ年頃の少女アンナの献身的な介護で、少しずつトラウマを癒し、平穏な日常を取り戻してゆく。だが、リュシーは気づいていた。夜の闇に身を潜め、自分を執拗につけ狙う、おぞましい異形の者が確かに存在することを。 ◆15年後のある朝、森に囲まれたごく普通の家庭の玄関で呼び鈴が響く。そこには猟銃を構えたリュシーが立っていた。忘れもしない虐待者たちの面影。復讐の銃弾を浴び、日曜の遅い朝食を楽しんでいた家族は一瞬で血の海に沈んだ。 ◆成すべきことを終えたリュシーから電話を受け、屋敷に向かったアンナは、邸内の惨状に思わず目を背ける。血まみれの死体を処理しながら、アンナは呆然自失となったリュシーの精神状態に疑念を抱く。これは正気の行動なのだろうか?もし、全ては彼女の妄想だとしたら…? アンナの胸に次第に広がる不安。そのとき、リュシーは背後に異様な気配を感じ取った。幼い頃、闇の底から聞こえた、あの耳障りで不気味な叫び声……。美しい屋敷のなかで、今再び想像を絶する地獄への扉が開かれようとしていた。
(チラシより)
渋谷の隠れ家的存在、アップリンク・ファクトリーにて、フレンチ・ホラーの注目作品「マーターズ」の試写会に参加してきた。
「今まで味わったことのない恐怖を味わえる作品」とのことでもあり、ホラー好きとしてはたまらず、最前列に席を取り、ど真ん中で画面全体を見渡し、映画に魅入っていった。
しかし、そこに待っていたのは、想像を絶する世界であった。
単なるホラー作品ではなく、サスペンス、バイオレンス、スリラー、リベンジドラマと、あらゆるジャンルの要素を持つ作品。
そのストーリー展開は、8mmビデオの映像から始まったかと思えば、突然テンポが急変したりして、まったく先読みができず、あまりに痛いシーンに目を覆いたくなるけれども、画面から目を離すことができない……興味と恐怖、人間にとって究極の選択を次々に迫られる内容であった。
初頭の部分で行われる、リュシーによるショットガンでの一家大虐殺シーンなんて、この映画の中では、軽い前菜でしかない。
そこから、観客の身体を引き裂くような痛いシーンが続き、どんな展開が待ち受けているのだろう、と思うと、異形のモノが姿を現したりして、恐怖心を煽る。
そして、残虐に耐えない妄想と、耐え難い痛みを生み出す現実。
更には、突然アッと驚かされる展開に、ますます先が読めなくなっていく。
そして、主人公と共に大いなる謎の迷宮の中に足を踏み入れていき……突如主人公に襲い掛かってくるのは、予期不可能な悲劇と凄惨な現実。
これでもか、というほど、人間の残酷さと異常さを見せ付け、全ての謎が少しずつ解かれていくのだが、そのシーンは耳を覆いたくなり、目を塞ぎたくなるような、まさに今までにない世界観。
人間の心に潜む異常性、宗教の危うさ、様々なカテゴリーに少しずつ触れている恐ろしくおぞましいストーリーへと展開していく。
ラストに待ち受けるのは、想像を絶する主人公の姿。
見た者にしか分からない、この映画の恐怖、そして深く考えさせられる人間性と宗教。
「マーターズ」……「殉教者」「犠牲者」「証人」を意味する題名。
その意味は、最後まで見て初めて理解できるのだが、見終わって、背筋に嫌な汗をかき、寒気を感じ、何も口から発することができなくなった。。。
今まで見た中で、間違いなく最高にショッキングな作品。
この作品を見ようと思える人は……勇気があるといえるのか?それとも、異常性を発していると言った方が合っているのか?
大変なショックを受け、それと共に主人公のどこまでも献身的で純粋な心に、少し救いを感じる。。。いや、でもやはりショッキングで、スリリングで、スタッフやキャストの妥協なき拘りを感じる作品だったな。