徹底的な暴力と虐待の末に、いったい人は何を見るのか?
この映画はそうした問いを投げかけてくれている。
前半は、過去にいわれのない虐待を受けたリュシーの復讐である。
リュシーは子供の頃に拉致監禁され、いわれのない虐待を受けていた。
その復讐のため、虐待をおこなった一家に猟銃片手に乗りこんでいく。
リュシーの唯一の友達アンナは犯行現場に駆けつけ、後始末をすることに。
しかし、アンナは疑問を抱く。本当にこの一家がリュシーに虐待をおこなったのか?
リュシーの妄想ではないのか?
リュシーの妄想を裏打ちするように、リュシーは「女に襲われた」と主張するが、アンナにはその女が見えない。
はたして、リュシーは正常なのか?リュシーを襲う女の正体は?
アンナは疑心暗鬼となって、揺れ動く。
これが前半部の見どころだろう。
後半部は、アンナが囚われてしまい、虐待につぐ虐待を受ける。
その虐待はシステマティックにマニュアル化されており、組織的かつ機械的である。
アンナをとらえた連中の目的とは?この虐待の意味は?
これが後半部の大きな謎となる。
観客は、これら次から次へと展開していくものをただ夢中になって観ることだろう。
過激な暴力シーンがクローズアップされがちの本作だが、
むしろこの作品のすぐれたところは、観客を飽きさせない展開力にこそある。
オチもふくめて、展開力のすばらしさにノックアウトさせられる。すぐれた映画である。
ただし、暴力シーンは痛々しい。観客に痛みを共有させる表現であるため、心臓が弱い人にはおすすめはできない。
しかし、そうした暴力シーンの果てに、見えてくる世界がある。
とりあえず、「おもしろい映画」であることは間違いがない作品である。