日中は仕事。
夜、新作映画を全く観ていないことに愕然として、とりあえず新宿武蔵野館へ。西川美和『ディア・ドクター』(☆☆☆)を観る。凡作。『ゆれる』に感じた才気は失せ、単なる変わり映えしない人情話を下手な演出で撮っただけに見える。田舎への視点が都会から見たそれでしかなく、河瀬直美が何だかんだ言いつも圧倒的に強いのは土着だからこそだと改めて思う。鶴瓶の活かし方は幾つも方法がある筈だが、ここでは『家族に乾杯』で田舎に直ぐ馴染んでいく鶴瓶像がその延長上として流入し、“なりすまし”という二重性を鶴瓶の演技ではなく、鶴瓶の持つ二重性(好人物/腹黒い人物)に寄りかかった作劇にしたのが失敗ではないか。あるいは、鶴瓶のパーソナルの吸引力が西川美和の演出よりも圧倒的に強すぎた為(これは当然)、映画としての計算が狂ったのか。河原さぶや、笹野高史を入れ込んで村の人々のリアクションを殊更に大仰に捉えるのも不快で、もっと無感動、無表情に設定し、鶴瓶の個性も抑えつけることで初めて映画が発生したのではないかと思う。終盤の無駄な長さも苦痛。
それでも西川美和なのでパンフレットは購入。700円。
直ぐに新宿バルト9に移動して庵野秀明『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(☆☆☆★★★)を観る。三回目。流石に0時過ぎの回だけに空いている。三回も観るもんじゃないという気もしたが、終盤の『翼をください』のくだりをようやく落ち着いて観ることが出来た。過剰性や気恥ずかしい不要な描写も含めて確認できたし、時間潰しに観るには最適だった。
続いて2時20分から細田守『サマーウォーズ』(☆☆☆★★)を観る予定が映写機の故障により上映中止と告げられるが、前の回で既に映写機故障が判明しており、それを上映開始時間まで前で待ってる次の回の観客に教えないのは納得がいかず、またこんな時間に簡単に上映中止などと軽々しく言ってくれるが、本当に不可能なのか、シネコンなのに他の劇場に変更ができないのかも疑問だったのでその旨従業員に質すと、確認を取るや「今、お客様の仰った通り他の劇場で上映可能になりました」と言い出し、客に言われたから確認して上映可能になると言いだす後手っぷりに呆れる。しかし、ともあれ50分遅れで上映は開始され、その後の対応は招待券を出し、上映前に責任者が謝罪したりとしっかりしていたので良かったが、前半の対応が悪かった。
肝心の映画は流石、細田守という快作に仕上がっていて大いに堪能する。仮想現実を持ちだすと映画があちらの世界に行きっぱなしになってしまい現実との接点を結ぶのが困難になったり何でもアリになってしまって映画自体の抑制が効かなくなることもあるが、その点も巧みにまとめてあって感嘆した。食へのこだわりの視点で言えば宮崎駿=細田守、押井守=庵野秀明という関係性か。つまり映ってる食い物が美味そうなのは宮崎・細田で、不味そうなのは押井・庵野という。
祖母が関係各所に電話して指示するのが唐突で初見では違和感があったり、諸々気になる点もあったが、佳作だと思う。
パンフレットを700円で購入。
新作3本観て少し栄養補給した気分になる。映画は常に現在のものだから新作を観ないと疲れる。やはり新作と旧作を並行して観るのが理想だ。と、満足して帰宅。
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