朝、思い切り締切を間違って覚えていたせいで遅れに遅れた原稿を完成させて送る。深謝。
近所の古書店で『ユリイカ ヌーヴェルバーク30年』を500円で購入するが、前に買ったような気がしなくもないという思いに囚われ、記憶力の減退を嘆きつつ歩いて警察署まで。近づくことすら嫌いなので、署内に足を踏み入れるや終始不機嫌な表情にならざるを得ないが仕方ない。諸々相談、打ち合わせ。こちら一人だけの被害なら構わないが、家人隣人に害が及んでは忍びないので事前にやるだけのことはやっておく。後は唯、事の成り行きを見守るのみ。
新宿に出て仕事。夕方、渋谷へ。ヒューマントラストシネマ文化村通りで、ガス・ヴァン・サント『ミルク』(☆☆☆★★★)を観る。流石に客はほとんどおらず、最前列のド真ん中で観る。ここはスクリーンが小さいので最前列が見易いのだ。
ハーヴェイ・ミルクについてはゲイの市会議員で暗殺されたということしか知らない。評判のドキュメンタリー『ハーヴェイ・ミルク』も未見なので、ドキュメンタリーと同じとか、事実と食い違うとか何も知らないまま、ただガス・ヴァン・サントの新作だ、という思いのみで接したが素晴らしかった。
近年のデビュー間もない監督の如き初々しさに満ちた四部作を経て再び『グッド・ウィル・ハンティング』系に回帰するのかと思いきや、その折衷とも言うべき位置に立った本作は、ガス・ヴァン・サントの新たな一歩とも、あの四部作をメジャーでやったらこうなるとも言うべき作品になっている。
開巻、地下鉄の階段でミルクとスコット・スミスがすれ違い、ミルクが声をかけてフレームインする。この時のミルクの顔がもうゲイっぽさを出しまくっていて、はっとさせる。ゲイの人が一瞬で相手を見極めるということは実際、身近に居るゲイの子に聞いてもあるというし、映画において珍しい表現でもない。ただ、直ぐにひっつきましたというだけでは芸がなく、その一瞬の結びつきを如何に役者が演じ、それをどう捉えるかで映画の成否が決まる。それだけに、ショーン・ペン演じるミルクが声をかけてキスに至るまでの数分の呼吸が見事でスンナリ映画に入りこめてしまう。その後の二人がサンフランシスコに移住し、カストロ地区で店を構えてゲイコミュニティが勃興していく描写は、ガス・ヴァン・サントの作を追うごとに初々しくなっていく演出が堪能できる。当時の8mmフィルムを随所に挿入し、カメラでスチール撮影したコマが8mmの映像に繋がっていくなんて、ガス・ヴァン・サントやってるなあ、と微笑ましくなった。
映画自体は、後半はやや落ちる。
パンフレットを購入して帰宅。昨日購入した『レッド(3)』を読む。
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