気温は未だそれ程でもないものの、ずっと蒸し蒸しして不快な天候が続いていたが、昨晩からグッと涼しくなったような気がする。深夜から降り始めた雨は、さっきまで降り続いていたけれど、それ程湿度も気にならないし。
昨日は夕方から、下北沢南口の北沢タウンホールで行われた、『風のかたち』&『大きな家』完成上映会へ。毎年この時期に、いせフィルムのドキュメンタリー作品の完成お披露目会が行われていて、僕自身、今度で三回目の参加になる。予約すると、1000円(今回は一作1000円で、二作で2000円)で観られるし。
http://www2.gol.com/users/hippo-com/onair/onair.html
http://www2.odn.ne.jp/ise-film/
『風のかたちーー小児がんと仲間たちの10年ーー』(監督:伊勢真一、制作:いせFILM、2009年)
十年に渡って、聖路加病院等で小児がんと闘う子ども達の病棟での姿や、サマーキャンプの様子を追った、ドキュメンタリー作品。
作品冒頭のナレーションで、小児がんはもう、不治の病ではなく、十人の患者のうち七人から八人は治るということが強調され、サマーキャンプではしゃぐ子ども達の姿が映し出される。
しかし、十人から七人から八人は治るということは、裏返せば、現在でも二人から三人は亡くなるということだ。
それゆえに、小児がんにかかり、病棟で最低でも一年以上過ごさなければならなかった子ども達が、辛い化学療法を受けて、病魔を克服し、就職、結婚、出産など、普通の人達と全く同じように、いや、闘病生活を通じて、命の有限さや儚さを体感したからこそ、ずっと充実した形で、人生を過ごす様が、描かれる一方で、キャンプで、目を輝かせながら将来の夢を語っていた子どもが、その年の秋に再発した癌で亡くなるなど、やり切れないエピソードも、挿入されている。
今、自分自身が、当然のように、漠として過ごしている、日々の大切さ、生命の尊さを、改めて認識させてくれる佳作。
上映終了後、伊勢監督と、四十年もの間小児がん患者の治療にあたり、キャンプを共催する聖路加病院の細谷亮太医師のトークショー。作中で元気な姿を見せているのに、その後がんで亡くなった子ども達の話になると、二人共言葉に詰まり、懸命に涙を堪えていた光景を観て、心が痛んだ。
『大きな家ーータイマグラの森の子どもたちーー』(監督:澄川嘉彦、制作:イメージクラフト、杜の風、ハヤチネプロダクション、2009年)
『タイマグラばあちゃん』(2004年)で国内外から高い評価を受けた(なんて書いているけど、残念ながら僕は未見)、澄川監督の三人の子ども達が、タイマグラ(↓)の四季の自然と動物達と交わりながら、元気に成長していく姿を、七年に渡って追ったドキュメンタリー。
タイマグラは、アイヌ語で「森の奥へと続く道」と言う意味で、北上高地最高峰・早池峰(1972m)の東麓、標高500mの所に広がる戦後の開拓地。現在の地名表記は岩手県下閉伊郡川井村大字江繋字向神楽。「大麻座」とか「大麻倉」と表記されることもあるが、これは当て字だそう。
http://www.taimagura.com/taimagura_index.html
前作『タイマグラばあちゃん』
http://www.mmjp.or.jp/pole2/taimagurabachan.htm
『風の』とは違って、基本的には明るく楽しい雰囲気だが、赤ちゃんの頃に子ども達が保護して、手ずからミルクを飲まして育てた、野うさぎのものだと思われる、死体の一部が見つかったり、同じく子どもがかけた巣箱で子育てをしていた小鳥が、蛇に丸呑みにされてしまうなど、自然の過酷さも描かれる。
正直、結婚や育児に全く興味のなく、子ども=訳の分からない生き物という、イメージが頭のどこかにある僕は、三人の子どもたち自身よりも、彼女等/彼等(一番上の子は女の子)の眼からみた、タイマグラの木々と動物達の方に、主眼を置いて観ていた。
とは言え、上記のトークショーに登壇していた澄川監督が、作中で元気な姿を見せていた、三人の子どものうちの一人が、小児がんではないものの、病院での入院治療を行わないと、生命に関わる病気に罹ったと話していたのは、人並みに気になったが。
『風の』は八月からポレポレ東中野で、『大きな家』は秋に同じくポレポレで上映されるとのこと。お勧めします。
※後者は地元岩手では首都圏よりも頻繁に上映されているよう。
ただ、普段映画館で映画を見慣れていない、中高年の観客が多いからか、上映中にケータイの着信音や操作音を鳴らしたり、連れ同士で話をしたりと、マナーの悪さが目についた。残念。