レナード・コーエンが歌う深淵な「Who By Fire」がフィーチャーされた冒頭に驚く。この曲がリリースされた1974年は、ベトナム戦争末期のアメリカはもちろん、サーフィンの世界においても変革の時期だが、今作はメッカであったハワイはノースショアにやってきたオーストラリアそして南アフリカの青年たちが、地元のサーファーとの確執を経て、団体を設立しサーフィンをプロスポーツとしてローカライズしていこうと努力していく姿を描くドキュメンタリーだ。映画は同じ70年代のスケートボード・シーンを舞台にした『ドッグタウン・アンド・Zボーイズ』(2001年)と同じく、ユースカルチャーがメディアと折り合いをつけながら産業として巨大化していく点にもおよぶ。その渦中で、主人公が夢と同時にマーケティング力を携えている点が極めてアメリカ的。モハメド・アリの「私は若く、ハンサムで、早く、決して打たれることはない」という言葉を引用しながら、矜持を持ってリップサービスを展開していく姿には、かの国でプロスポーツ選手がサバイブしていくことの難しさをあらためて感じてしまった。「ドッグタウン~」がショーン・ペンがナレーターであったのに対し、こちらはエドワード・ノートンがナレーションを担当しているのも、サーファーたち捉える丹念な筆致とスタイルにはまっている。