アメリカの変哲もない2人の若者が、自分たちの口に入る食べものはどこから来るのか、という素朴な疑問から田舎に赴き1エーカー分のトウモロコシを育てる、たったそれだけのあらすじ。しかし都会育ちの若者が土にまみれて苦労した、なんていうドキュメンタリーではない。偶然にもお互いのルーツであったアイオワの畑で、あっけないほど豊作を迎えたコーンの行き先とは?農業従事者がふと漏らす、自分の作ったコーンは自分で食べることはないという皮肉や、おもむろに町中のスーパーに入れば炭酸飲料をはじめとしたあらゆる食品に原料としてコーンが使用されている、といった解りやすいエピソードを交えながら彼らは追跡していく。その過程で明らかになるのは、70年代以降のアメリカの国家的な農業政策により生まれた極限までシステマチックになった農業と畜産の構造、そのなかで生きる農業従事者とそれを食べる我々との、のっぴきならない関係だ。そして、作付面積に対する収穫量が最も多いこの穀物こそが、夢が可能な国・アメリカを象徴する食べものであり、同時にコーンが世界の食と農業と経済のバランスを支配する〈王〉であることを、なんとものどかなムードのなか、鮮やかに浮かび上がらせる。
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