今日も朝(やや)ちゃんと起き、ウォーキングで行きつけの下高井戸シネマへ。風は冷たく手袋が必要な程だけど、日差しは春。陽当たりのよい場所にある近所の中学校の桜は、もう満開に近い状態でした。
観たのは、映画『ご縁玉ーーパリから大分へーー』(監督:江口方康(まさやす)、2008年、フランス)。がんがリンパ腺に転移した、末期がん患者の山田泉さん(山ちゃん)の住む大分県に、転移の告知を受けた後、限りある命を活かすためにと行ったパリで知り合ったベトナム系フランス人チェリスト エリックーマリア・クチュリエ=日本名ケン(本作の制作統括を担った上野智男さんによる命名。山ちゃん達もこの名前で彼を呼ぶ)が、2007年末から08年のお正月が終る頃まで滞在し、山ちゃんがこれまで関わってきたホスピスや養護施設等を彼女と一緒に回り、様々な「ご縁」を再認し、あるいは新たに結んでいく様子を撮ったドキュメンタリー。
http://www.pan-dora.co.jp/goendama/
山ちゃんと連れ立って、彼女が「いのちの授業」で訪れた養護施設や、彼女自身が直前まで入院していたホスピスを、ケンは訪れ、子ども達や末期がん患者さん達と交流し、演奏を聴かせる。体力の衰えからもう生演奏を聴きに出かけることが出来ない患者さん達は彼の演奏と心遣いに感動して涙する。また、様々な事情から親元を離れて集団生活を送らざる得ない子ども達の中にも、ケンがチェロを弾きながら拙い日本語で一生懸命歌う、『天空の城ラピュタ』(86年。主人公のパズーもシータも両親を亡くして、天涯孤独の身の上である)の主題歌「君をのせて」を聴き、泣きじゃくる男の子も。
現在では一流の演奏家として世界中で演奏活動を行っているケン自身、元々ベトナム戦争による戦争孤児であった。とは言え彼の場合は幸いにも、フランス人夫婦の養子となってフランスで育てられ、音楽家としての研鑽を積むことが出来たが。
ちなみに、エンディングテーマもチェロのインストルメンタルの「君をのせて」。改めて、この曲と『天空の城ラピュタ』の魅力を再認した。
また養母を乳がんで亡くした際には何も出来なかったことを悔やむケンは、チェロによる山ちゃんのヒーリングを試みもする。
後半部で山ちゃん一家とケンは、未だ(ベトナム)戦争が激しかった七二年に、南北ベトナムの共存を訴える日本人グループの代表の一人として、ベトナムを訪れたことのある、 無着成恭さん(元明星学園教頭で僧侶。著書『山びこ学校』や子ども電話相談室の回答者としても有名)を、彼が住職をしている、泉福寺に訪ねる。
無着さんの話を聞いてエリックは、(うる覚えだけど)全ては繋がっており、エスニシティや国籍など重要ではなく、自分探しなど無意味なのかもしれないと思い、そして悩む。
山ちゃんはその年の11月21日に享年49歳で亡くなったそうです。
彼女の死後も遺志を継いで現在も続けられている山ちゃんのブログ「どげっしようかえ?ーー豊後の山ちゃんワイワイ日記ーー」
正直、それ程期待していなかったのだけれど、映画としての完成度も高い佳作でした。二人の主人公のうちの一人が音楽家だということもあり、音楽の使い方も秀逸。
観終わった後、春の心地よい日差しの中、明大前〜下北とウォーキングして、下北と笹塚で買い出し。
気持ちのよい、また、いろいろと考えさせられた一日でした。