2009-03-23

傑作ドキュメンタリーを続けざまに このエントリーを含むはてなブックマーク 

ブログ「だめ日記」から
http://d.hatena.ne.jp/xxborgesxx/
-------------------------------------------------------------
御茶ノ水の「neoneo座」で、「松川八洲雄劇場2009」(Aプログラム)を観た。ある研究施設の内部を丹念に紹介する『ある建築空間』(1964)、鳥獣戯画を、音楽とともにリズミカルに鑑賞していく『鳥獣戯画』(1966)、長崎造船所の一日を、労働者へのインタビューとともに追う『仕事=重サ×距離』(1971)の3本。特に『鳥獣戯画』はすごく良かった。もともとの素材が良い上に、女性何人もの声や笑い声で構成された音楽がおもしろく、ウサギやカエルが本当に笑い声を上げているみたいで楽しい。

ちなみに「neoneo座」は、靴を脱いで板の間に上がる式の、小ぢんまりとした映画上映空間。30ほどの客席は満席で、年齢層は高め。常連さん同士の出会いもそこここに見られ、とてもアットホームな場所でした。


それから、メゾンエルメスで『MAN ON WIRE(マン・オン・ワイヤー)』(2008)も観た。あのワールドトレードセンターの、2本のビルの間にワイヤーを渡し、地上400mで綱渡りをして見せた男のドキュメンタリー。これ…まじですごい。「本番」の映像のパワーがハンパない。ビル完成直後の、1973年の話だ。インタビューを受けている関係者が、当時を思い出して涙ぐんでしまうシーンもあったけど、あれをナマで目撃できたらさもありなん。

ただ、おもしろいことに全編通してまったく逼迫感というか、死の影が無い。ゲリラ綱渡りなので、チームで作業員に扮して忍び込み、警備員の目をかすめ、夜陰にまぎれてワイヤーを設営する。そもそもそこに行き着くまでに綿密に計画を練り、練習し、何度もWTCに足を運んで準備を積むんだけど、何だかぜんぶ学生の遊びのように見える。しかも「本番」も、本人は諸事情でかなり疲れきっているはずなのに、何十分も綱の上でパフォーマンスをし、笑みを浮かべながら何往復もする。終わってからのエピソードもおもしろい。観ている私は何ら極度の緊張や感動を感じることのない、でも圧倒されてしまうという不思議な不思議な映画だった。


キーワード:


コメント(0)


mari

ゲストブロガー

mari

“映画や音楽のまわりで働いています。 ●勝手にトークショー主催 http://d.hatena.ne.jp/katteni-talkshow/”