2009-02-27

写真を撮る理由 このエントリーを含むはてなブックマーク 

 井上陽水のCDジャケットの撮影などでも知られるベテラン写真家・操上和美さんによる長編映画の初監督作品です。大抵の場合、異業種からの映画監督の作品は、失敗するか程々の成功を収めるかの両極端な場合が多いのですが、今回の作品は僕個人の感想としては後者のように感じました。

 もちろん出演している俳優、永瀬正敏・宮沢りえの二人の存在感は素晴らしい。しかしモチーフは「男」と「女」であっても、主役は映像。30分近く台詞が無いままストーリーは進行するなど、映像の力によってぐいぐいと見る者を引っ張っていきます。そしてそこかしこに散らばる暗喩の数々。男と女の物語である以上、セックスをイメージさせる映像が多いのですが、いやらしさを感じさせないのは映像の力でしょう。また主人公の男が「死」から女によって「性」と「生」を手に入れていく様、そして恍惚とシャッターを切る様を演じた永瀬正敏の演技も素晴らしかったです。

 写真家の監督作品であり、主人公も写真家。それゆえに写真を撮る人(もちろんただ漫然と撮る人は除く)なら必ず考える「写真を撮る理由」についての考察、時間・光・そして女そのものさえも手に入れたいという写真家の欲望と、その写された写真は現実でありながらも現実の女ではないという限界、シャッターを切る瞬間は官能的でありながら手触りが無いという、「写真」に対する考察も含められているところは見所だと思います。

 このような場合破綻しがちなストーリーも、派手なハリウッド映画あるいはお金だけかけた邦画のような「結び」ではないものの、話として短編ミステリーのようにきちん纏まっており、納得できる作品でした。

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tunes

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tunes

“いろいろ好きだったりします。”