1月12日(月)~1月20日(火)
「現代日本のエロティックアート」パリからの凱旋記念展示
2008年4月から10月の半年間にわたって同タイトルで、パリ市「エロティックミュージアム」にて開催された、作品群が戻ってまいります。現地では好評に迎えられると同時に、たいへんな物議をも醸し出しました。この展覧会を記念をして、一作家一作品ずつの凱旋展示を行います。
参加作家(あいうえお順)
朝倉景龍、奥津直道、大倉野亜樹、金井清顕、河上ヨシタカ、きじめっか(TKL
KIZIMECCA)、鏡堂みやび、小宮山逢邦、こやまけんいち、酒井敦、作場知生、Shin3.、西牧徹、林良文、廣江友和、ペルレ(Perle)、室井亜砂二、森馨、山口椿、山地博子、レオ澤鬼
扉を開けると、ひっそりと眠りについていたむせかえるような香気が、そっと息を吹き返す。封印を解かれたその香気は、さらなる熟成を達成すべく人の皮膚を求め、冬の冷気で凍えていた訪れる者の頬を、這うように撫でてゆく。そこは、フェティッシュとエロスの花園、繊細な指先で丹精された多様な花々が咲き競い、見られること、摘まれることへの拒絶と切望のあわいで、それぞれの首を揺らしていた……
フランスから凱旋した「現代日本のエロティックアート」展、そこには総勢21名の作家の珠玉が集う。各作品の放つ香気が複雑に綾なす様を前に、誰もが密やかな遊戯を夢見ずにはいられないだろう。重い閂のかかった、自身のエロスという扉を開けて、濃密なる作品群を迎え入れたい……という遊戯を。この展覧会はその欲望をやさしく受け入れつつ、その濃密ゆえに、刺すような痕跡も見る者の内に残してゆく。
画廊中央に置かれた森馨による球体関節人形《着物少女人形》は、沈黙したままの白磁の肌と、その表面でせめぎ合う無垢と成熟とが、見る者に不思議な後ろめたさを感じさせる。見ることがすなわち罪であるような背徳の中で、まっすぐ見つめることへの誠実を、切々と、無言で、その肌は問うてくる。
銀粉のように舞う鉛筆の黒鉛を皮脂で留めた朝倉景龍の絵画《女性上半身4》、逸脱や侵蝕を果敢に受け入れる女性の強さが、目を引く特異な形状を持つ部位よりもむしろ、美しくすべらかに描かれた皮膚によって語られているように思えてならない。失われつつある皮膚への追悼とも呼べる作家の意思が、銀粉を塗り込める皮脂から仄匂う。
女子高校生を題材に、3DCGを駆使してディシプリンな世界を追求する河上ヨシタカの作品《無題》、その偏執狂的な筆致の尖端にはそこはかと無く空虚感が漂う。うぶ毛の一本まで描かれたリアルな皮膚には、現代の茫漠たる虚無がちいさなたましいのふるえを捕えている様が浮かび上がっている。
総勢21名のエロスの香気、この花園にて貴方はどの花を摘みますか?
文:Mistress Noohl