1月1日(木)
■地上波のテレビを殆ど見なくなったので、年末のテレビも、ところどころ紅白とガキ使を見たくらいのまま年越し蕎麦を食して新年を迎える。先日キー局のバラエティの編集をやっている友人と喋った時にも思ったが、終焉をひしひしと感じる。2011年でテレビはより明確に分断されるだろう。見落としていた紅白の『崖の上のポニョ』を早速YOU TUBEで眺める。HD機能がいつの間にかついており、あまりの高画質に圧倒される。これでYOU TUBEが映像の世界を塗り替える機能を有したことは間違いあるまい。
■東京で年を越すのは久々。これまた久々に初詣に近所の神社に参る。6年ぶりではないか。無宗派を徹底すべく神社にも近寄らないようにしてきたのだが。他の初詣客と共に並んで賽銭やって御神籤を引くという至極普通の新年となる。それで良いのかとも思うが、まあ、普通っぽいことも偶には悪くない。
■起き通して東京駅発午前9時ののぞみで新大阪へ。ノートPCで『クライマーズ・ハイ』『赤軍―P.F.L.P世界戦争宣言』のDVDを断片的に眺めたり、昨年末より読み始めた『夢声戦争日記(一) 昭和十六年・昭和十七年(上)』に目を通したりする内に寝入る。目を覚ますと京都直前。新大阪11時30分過ぎ到着。そのまま新快速に乗り換えて実家へ。親類と呑み食いして過ごす。
■深夜、原稿用に濱口竜介『PASSION』(☆☆☆★★)をサンプルDVDで観る。フィルメックスで前半20分ほどを見落としていたので、ようやく全貌に触れる機会を得た。
映画学校別に何やら特徴をあげつらうのを嫌悪しつつ気付いてみれば結構自分ではやっている。そんな一を持って十を知るようなことを他人がやっていると許しがたく思い、自分がやる分には悪びれないのを世間では我がままと言う。それでも敢えて東京藝大の作品を数本観た印象で言ってしまえば、高水準な撮影、演出、商業映画にそのまま流用できる出演者(役所広司、利重剛など)を擁しつつ、出来上がった作品は観念的だったり、商業映画であることを拒み続けたり、そうでなければ教授である黒沢清、または北野武の影響濃厚な作品だったり(馬鹿みたいに乱暴に言ってしまえば感情希薄、ロングショット多用)と、その印象は、常に“勿体ない”であった。商業映画に出来るだけのものを持ちながら敢えてそれを避けているように思えた。そんなに商業映画(伊丹十三流に言えば商売映画)が悪いか。
そういう中でこの作品は、“勿体なくない”商業映画として成立していると思った。それでいて、一般の商業映画とは一線を画す色合いも濃く、双方のバランスの取れた作品がようやく登場したという思いを強くした。だから駄目だという意見もその分当然の如く出てくるだろうが。