2008-12-26

爆笑の渦に巻き込まれてしまう……「罪とか罰とか」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督が送る、爆笑ブラック・コメディ。
まさに笑いの連打にノックアウト寸前になってしまうこの映画を観てきた。

Story(プレスシートより)
アヤメ(成海璃子)はいまいちイケてないグラビア・アイドル。同じ日にスカウトされた同級生・耳川モモ(安藤サクラ)は売れに売れ、今日もグラビア雑誌「Nadeshiko」の表紙を飾っている。アヤメのページだけが逆さまに印刷されているダメっぷりだ。

マネージャーの風間(犬山イヌコ)からは、いつも励まされているのだが、モモへのコンプレックスのせいで、アヤメは時々自分をバカにするモモの幻影を見る。コンビニで「Nadeshiko」を衝動的に万引きしてしまうアヤメ。が、あっけなく捕まり、見越婆(みこしば)警察署の”一日警察署長”をすることになる。

午前中で終わる簡単な仕事のはずだった。しかし、「一日警察署長なのだから夜中の12時まで署長を務めろ」との奇妙な理屈で閉じ込められてしまう。署員達は皆アヤメに指示を仰ぐ。なぜか?戸惑うアヤメ。しかも、自分を担当してくれる刑事は元カレの春樹(永山絢斗)である。実は彼には恐ろしい秘密があった。彼は刑事でありながら殺人癖(愛するあまりつい殺してしまう)のある超イケメンなのである。けれどアヤメは心のどこかで春樹を忘れられないでいる。突然の再会にアヤメの心は揺れまくる。

実はこの日の朝、春樹は恋人(佐藤江梨子)をマンションのベランダから突き落として殺してしまっていたのである。しかもアヤメはその殺人現場の目撃者(段田安則)から春樹が犯人である証拠となるスケッチブックを受け取ってもいた。しかし春樹が犯人であるということをまさか自分の口からは言い出せない。

一方、春樹が恋人を突き落としたマンションの隣の部屋でコンビニ強盗の計画を練っていた男二人と女一人の怪しい三人組(大倉孝二、奥菜恵、山崎一)は、ついに犯行を決意。その時たまたまコンビニに居合わせたモモと風間マネージャーが連れ去られる。そのニュースを署長室のテレビで見るアヤメに指示を仰ぎに迫る署員。パニクるアヤメ。春樹の声が飛ぶ。「署長は署長なんですよ!」

果たしてアヤメは事件を解決することができるのか!?

ストーリーを読むだけでも奇天烈なワールドに引き込まれること間違いなし、と確信できていたこの作品。
しょっぱなから、いきなり映画の本線とは異なるではないか、という描写が、これまた絶妙なナレーション付で映し出される。
ナレーションに、役者の演技が絡まって、思わず笑わずにはいられないシーンの連続。
細かいギャグから、下品なギャグ、ブラックユーモアと、次々に連発されるコメディシーン。
あり得ない設定に、「実はこういう事態には、こんな裏があるんだ」と思わず信じさせられそうになる妙な説得力のある場面設定まであったりして、映画は隅から隅まで実に工夫が凝らされており、その細やかな芸当に場内は笑いの渦となる。
単なる美少女と思っていた成海璃子が、素晴らしいコメディエンヌとしての血を開花させている。
これも、KERAのなせる業か!?
あっちへいったり、こっちへいったりするストーリーに、ハチャメチャな展開、突然シーンが戻ってきたり、と繰り返されているうちに、どんどん映画の中へと引きずり込まれ、いつしか点と点とが、実に見事な線となり、面となっていく様を理解させられ、「あ~、なるほど!」と唸らされる。
笑いの要素は、既に書いたとおり、実に細かいマニアックな笑いから、普通に笑ってしまわずにいられないこと、まるでコントを見ているかのようなボケツッコミ、そして下に走るギャグに、「え!」と声を失ってしまうようなブラックジョーク、それが映画を見ている間中、雪崩のように鑑賞者を襲ってくるのだから、たまらない。
そこまで凝るか?というボケ内容には、映画を見ながらツッコミを入れずにはいられないし、そこまで個性的なキャラクターばかりを作り出すか?と感心するほどのキャストたちの個性。
次々と新しいキャラクターが登場し、それぞれ強烈な印象を残してその場で去って行ったり。
名前はないキャラクターばかりかと思いきや、エンドロールではちゃんと苗字くらいは付けられていたりするのも、最後まで笑いに拘る作品ならでは。
どうにもこうにも映画との関連が掴みづらく、何故そういう行動をしているのか分からないキャラクターも登場していたり、しかも高橋ひとみや麻生久美子という大物がそういう妙なキャラクターにキャスティングされていて、ビックリしてしまう。
この映画、只者じゃない。
一本観ただけで、見事にKERAワールドにハマってしまった。
今までの作品も観てみようかな?でもって、舞台も行ってみたいな。
本来なら笑いの要素にならないようなことまで、徹底してジョークにしたり、ユーモアを交えたり、皮肉?をまじえたりして、彼にしか作れない作品を見事に作り上げている、という感じがする。
でもって、役者達は、この映画を撮影することを、とても楽しんでたんだろうな、という雰囲気に溢れている。
じゃないと、こんなに妙に楽しげに、妙に役に入りきって演技できるわけがない!
製作者達が楽しんで作った作品が、観る者にとって楽しくないわけが、これまたない!
とにかく笑いの連発。
こんなに笑っていいのだろうか?と思ってしまえるほど、笑い転げてしまった2時間弱。
最後には、ちょっぴり人生や、何かで壁にぶち当たったときに「何とかなる」ってヒントや励ましみたいなものももらえて、大満足。
締めが、オチなんだか、何なんだか分からないシーンの連発で終わるあたりが、これまた気がかりで小憎らしい。

なんだかんだ言って、年末に笑えるってのは最高だな。
ステキな試写会を楽しませてもらえて、大満足。

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しもちゃん

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“3人の子供を持つパパです”