3月のフランス映画祭での鑑賞を逃して以来、心待ちにしていたこの作品。
WebDiceさんにご招待いただき、一般公開よりひと月早く鑑賞することができました。
描かれているのは、生活者の厳しい現実そのもの。
生活は楽ではないし、人種差別だってある。
きらびやかなのは、遠くにそびえるエッフェル塔と、ムーランルージュの想い出くらい。
観光名所も随所に登場するものの、生活者の目線で映し出されているから、「旅行で是非行ってみたい場所」には見えてこない。
起こる出来事も特別なものではないから、感動して号泣も、お腹を抱えて大笑いもなし。
でも何故か、すっと心に残るのです。
この作品は、鑑賞する人がパリが好きかどうかで、大きく評価が分かれるのではないでしょうか。
パリが嫌いなら、かなり退屈な2時間になる筈。
でもパリが好きなら、大好きな映画になるに違いありません。
私はもちろん、後者です。
憧れてやまない人の、ちょっと可愛らしい部分を見つけて親しみを覚えた時の様な、
そんな感覚を『Paris』に見つけた気がしました。
憧れのパリ、でもこれもパリ。
それにしても、ジュリエット・ビノシュの美しいこと!
彼女は皺さえも素敵に見える。と思うのは私だけ?
あんな風に年を重ねられたら…と思わずにはいられない。
万が一、パリ嫌いなのに間違って劇場に足を運んでしまった方がいるとしたら(笑)
彼女とメラニー・ロランの美しさを堪能することに集中することをおすすめします!
最後に。
セドリック・クラピッシュ監督の過去の作品は、本国ではDVD-BOXが出るほどなのに、
日本では熱烈なファンがいるにも関わらず、廃盤になったものが多いのがとても残念です。
(「猫が行方不明」などは、びっくりするほどのプレミア価格で中古が売られているのを見かけます。)
『Paris』のヒットで、『猫が行方不明』『百貨店大百科』等の良作が復活することを切に望みます。