ラット・フィンク自体はどこかで見たことがあるせいかなんとなく知っている気になっていた。
でも、ラット・フィンクは誰によって作り出され、どのように我々に影響を与えてきたのかは知らなかった。
かわいそうに・・・緑色の体に蠅がたかって目玉が飛び出しているただの汚いねずみではなかったのだ。
そう、ちょっと汚いけど、とっても愛らしいパンクなネズミで、それを生み出した男はひたむきでオリジナリティ溢れる発明王だったのだ。
私は『ラット・フィンク~ボクのビッグ・ダディ~』を観て、ラット・フィンクとそのキャラクターを生み出した男”エド・ロス”の魅力を知り、果てはカスタムカルチャーが何たるかを理解できたと断言できそうだ。
好む好まざるに関わらず、アメリカンカルチャーの恩恵を受けている私は、それを通俗的で大量生産で一時的なものであるという認識だった。
しかし、ポップ・アートやロウブロウアート、改造車に惹かれてしまうのは否定できない事実。そこには、エド・ロスの”人生を愉しむ事とオリジナリティの追求”が根底にあるからだったのだ。学校では落ちこぼれ、でも自分の好きな事はとことん追求するエド・ロスは、日常生活の知恵から数々の発明品を生み出し、等身大のアメリカを作ってきた。落書きから始まったラット・フィンクはもちろん、改造車やプリントTシャツしかり、プラモデルの発明等こんなにも我々の日常生活に興奮を与えてくれるのは彼の”自分も愉しんで人も楽しませる”というシンプルな教訓があったからなのだと思う。
彼の劇中でのメッセージ「変わり者はかっこいい」は、そんな彼の金欲しさの創造者ではない、人間としての温かみが感じられた。結果、このようにエド・”ビック・ダディ”ロスという
ニックネームが付けらたのもうなずける。
『ラット・フィンク~ボクのビッグ・ダディ~』は、ラット・フィンクの生みの親、エド・ロスの
功績を面白く、わかりやすくまとめたとてもポップで50年代のアメリカンカルチャーをお勉強できる優れたドキュメンタリー映画だ。
しかし、勉強というよりもまずは、私のような”アメリカンカルチャー低俗だ”と思っている人に見てもらいたい。勇気を持ってもう一度低俗なカルチャーの洗礼を受けてみてはどうだろう。おそらく、そこにはハイアート、ロウアート云々よりも日常を楽しむ事の工夫とオリジナリティの醍醐味が見えてくるはずだ。