「70年代ロックのドキュメンタリー? 大人の人が、昔の音楽を聞いて、時代を懐かしみながら観る映画じゃないの?」、なんて思ったら大間違いです。
新鮮です!!
年代を問わず今、私達が欲しているモノがあります。
70年代のライブ映像と、当時を振り返って語られるインタビュー映像は、やたらとカッコイイです。
「カッコイイ」というのは、アーチスト達の姿や演奏だけではなく、情熱というか志というか…いえいえ、志なんてしたたかな思いは、なかったのかもしれません。
とにかくそれぞれが、強烈な個性を、外に向けて放っています。
観ているうちに、ライブが白熱していくかのように、だんだん気持ちが高揚してきます。
音楽という感覚的な感動を、ランキングや売上、動員数など全てを数字で示すのが、当り前になっている今の時代に、「ロックが売れるとか、金を稼ごうなんて思ってもみなかった。誰よりも上手く弾きたかっただけ」という言葉は、忘れかけていた当たり前の事を思い出させてくれます。
また意外にも「俺達はメッセージなんて特になかったから英語にした」なんて、今だから聞ける正直すぎる言葉も。しかし「メッセージがない」と言いつつ、「アンダーグラウンドとコマーシャリズムのバランス」とか、カッコ良さには徹底的にこだわっています。
そんなアーチスト達だけでなく、プロデューサーとして活動していた人達の、強い思いと行動力もスゴイです。多くの人から良く思われたいとか、世間の現状や厳しさとか、世界の中の日本とか…そういうものを吹き飛ばして売り込んでいく強さがここにもあるんですね。
こういう人がいなかったら、きっと今の日本の音楽シーンはなかったのではないでしょうか。
日常の小さな傷を舐めあうような歌をビートだけで「ロック」と呼び、「メッセージ」という言葉が食傷気味に氾濫している今のメジャーシーンに、どこか違和感を覚えずにいられなかったのですが、この映画を観ていたら、自分の中でモヤモヤとしていた物がスッキリと晴れたような気がします。
当時は、ロックは英語で歌うか日本語で歌うか…という論争もあったようですが、ライブ映像を見る限り、アーチスト達は自分達のやりたいようにやっていて、それがまたそれぞれの個性を作り上げていて、気持ちよく突き抜けていました。