さるべさんの日記
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2013
10月
04
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『もうひとりの息子』クロスレビュー: 『招かれざる客』との共通点が興味深い
湾岸戦争時のドサクサで、イスラエルの病院でイスラエル人とパレスチナ人の赤ん坊が取り違えられ、18歳になった時にその事実が明らかになったことで、2つの家族が関わり合い始める、という作品。 イスラエルでの民族間の対立の深さや実態は、日本で暮らす者にはうかがい知ることはできない。 身近なところの対立に照らし合わせてみると、例えばネット上での過激な主張や意見の対立は、対立する相手との接点が少...
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2011
7月
01
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『ふゆの獣』クロスレビュー:なによりも、スリル満点の面白い映画
面白かった。 実は、前半は少し不安を感じていた。 それは、演出スタイルにこだわり過ぎなことへの懸念。 俳優たちには大まかなプロットだけを指定して、台詞とか動きは俳優たちのアドリブに任せ、その芝居をドキュメンタリーのように撮影していく演出法は一見して異質。 加えて、不自然なくらいに電車の通過音などの雑音を会話にかぶせたりもしていた。 そうした演出は、もちろん必ずしも悪いと言...
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2011
3月
04
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『名前のない少年、脚のない少女』クロスレビュー:「ここではない世界」への憧れを、圧倒的に甘美な映像で描く
主人公はブラジルの村に住む十代の少年で、日常をつまらなく感じながら、インターネットを通じて投稿動画の中のミステリアスな若い女性に惹かれ、ボブ・ディランのコンサートに行くことを夢みているという形で登場する。 彼のそんな心情の背景や、動画に映っているのが誰か?といった、物語の具体的なことはあえて後回しにして、さらには映画の展開を時間を前後しながらの解りにくいものにしているので、映画はずっと登場人...
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2010
11月
16
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『ベオグラード1999』クロスレビュー:作者の人柄が表れるのもドキュメンタリーの魅力
解説によると、金子遊監督とその彼女が共に1999年に新右翼「一水会」の木村三浩氏に惹かれ、彼女は一水会に加わり、監督は木村氏の撮影を始めて旧ユーゴまで同行し、その後2006年に彼女が亡くなったのをきっかけに撮影を再開して完成させた、というのが大まかな経緯である。 完成まで約10年かかったのは、当初から明確な製作意図はなく、とりあえず記録することを始めたからと思われる。 そして、完成した作...
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2010
10月
19
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『堀川中立売』クロスレビュー:正義感のはき違え人間VS何もしない神様の壮大な物語
この映画では、経済格差、情報に振り回される人々、正義感のはき違えなどの、社会問題に関する人々やエピソードが登場する。 そんな理不尽なことを世の中に蔓延させているのは、他ならぬ人間自身。 でも、一人ひとりの人間は、世の中を悪くしようと思っている恐ろしい存在では決してなく、個人のささやかな想いが集合すると、世の中をおかしくするまでにエスカレートしてしまう。 ちょっとした願望が強欲に、清く...
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2010
9月
13
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『エル・トポ』クロスレビュー:実はあっけらかんとした雰囲気の、気楽に観られる映画
主人公のエル・トポは、映画の中盤で最強ガンマンの称号を得るべく、強豪たちに決闘を申し込むが、それぞれ修行僧のような彼らと向き合ううちに、自分が信じていた価値観が崩れていく。 「他人に勝つこと、自分の欲望を満たすことより、大切なことがあるのではないか?」 そして、『エル・トポ』という映画もまた、観る者の常識を崩して、思い直すことを迫るような映画だった。 普通、映画のストーリー展開...
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2010
4月
29
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『鉄男 THE BULLET MAN』、袋小路状態の大作映画を超えるのは自主制作?
本当に美味しいものを食べたときに「美味しい」としか言えないように、『鉄男 THE BULLET MAN』の凄さを語ろうとしても、陳腐なほめ言葉が並ぶだけになってしまいそう。 ヴィジュアルに関して、撮影や編集などはもちろん、小道具や衣装やセットなどの細部に至るまで、完全に塚本晋也監督がコントロールできているのは毎度のこと。 加えて音もすさまじく、この音あっての『鉄男~』で、音に妥協は許さ...
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2010
3月
25
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『川の底からこんにちは』、変わらぬ突拍子のなさ
これまで観た石井裕也監督作品は、その面白さが言葉で説明するのが難しいタイプのものだった。 登場人物の言動やストーリー展開が意表をつきまくったり理屈が通らなかったりで、納得しながら安心して観ていられない。 台詞の量が多い会話部分も、漫才でいうツッコミにあたる台詞がかなりの部分を占めているが、ツッコミはそれ自体には内容が無く、つまりはリズムをとるためだけの一見無駄な台詞が多い。 そん...
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