YEBISU GARDEN CINEMAで開催された『聖なる呼吸：ヨガのルーツに出会う旅』トークイベントより
いかにしてヨガは今日のように世界中で愛されるに至ったのか──その答えに迫る映画『聖なる呼吸：ヨガのルーツに出会う旅』の公開を記念し、初日となる9月3日（土）、YEBISU GARDEN CINEMAにて、アイアンガーヨガ国際上級指導員の柳生直子さんのトークイベントが開催された。
本作は、ドイツ人映画監督ヤン・シュミット＝ガレが、ヨガの起源に興味を抱き南インドを訪れ、“近代ヨガの父”ティルマライ・クリシュナマチャリア（1888 - 1989年）の軌跡を追った記録である。旅の中でシュミット＝ガレ監督は、クリシュナマチャリアの直弟子で現代ヨガの最大流派の一つであるアシュタンガヨガの祖・Ｋ.パタビジョイスから太陽礼拝を学び、アイアンガーヨガの祖・Ｂ.Ｋ.Ｓ.アイアンガーからアーサナ（ポーズ）の指導を受ける。そして旅の最後に、クリシュナマチャリアの三男から“命をつなぐヨガ”を施される。
柳生直子さん
アイアンガーの直弟子であり、日本におけるアイアンガーヨガの第一人者の柳生さんは、本作を観た感想を次のように語った。「アイアンガー先生は、『クリシュナマチャリア師から何も教えてもらえなかった』とよく語っていたので、クリシュナマチャリアさんという方は、ヨガを知らないか、体が固いのではないかと思っていたのです。しかし、この映画を通して、クリシュナマチャリア師とアイアンガー先生の資質やヨガに対する考え方がとても似ていることに気づきました。二人とも『自分はグル（指導者）ではなく、生涯ヨギ（修行者）である』と語っていたからです」
次に、柳生さんがアイアンガーのもとで修行を積んでいた当時の貴重な写真もスクリーンに映し出され、それを見ながら「アイアンガー先生は60～70歳代の頃、ヨガを“伝えていくこと”に使命を感じられ、教えることに専念していました。私はその時期にアイアンガー先生にヨガを教わることができて、本当に感謝しています。また、アイアンガー先生の“眼光の鋭さ”は、95歳でお亡くなりになるまで、生涯変わりませんでした。それは、一心にヨガを見つめる眼だったのではないかと思います」と、時おり涙を浮かべながら、師との思い出を語った。
YEBISU GARDEN CINEMAで開催された『聖なる呼吸：ヨガのルーツに出会う旅』トークイベントより
なお、1980年当時のアイアンガーのレッスンの様子を写した写真では、柳生さんを含む女生徒たちのレッスン着はみなレオタード。柳生さんは、「みなさん驚くかもしれませんが、1980年当時はレオタードでヨガをやっていたんですよ」と会場の笑いを誘った。
また、柳生さんは、クリシュナマチャリアがヨガ指導者としてマイソール宮殿に仕えたことに触れ、「クリシュナマチャリア師の弟子であるアイアンガー先生は、宮殿での実演を、自分が見世物のように感じられあまり快く思っていなかったと仰っていました。しかし、芸術としてのヨガを普及させるためには、パトロンとしてサポートしてくれる人が必要です。そういった面で、クリシュナマチャリア師は、大きな目で世の中をみて行動していた人物なのではないかと思います」と分析した。
映画『聖なる呼吸：ヨガのルーツに出会う旅』より
そして、アシュタンガヨガとアイアンガーヨガの違いについて、「パタビジョイス先生は伝統的なヨガを深めて“51のポーズ”を受け継ぎ、アイアンガー先生は“51のポーズ”ができない人のためにプロップス（道具）を考案したりと、老若男女ができるようなヨガを考案しました。この二人がいたからこそ、伝統的なものを受け継ぎつつも、もっと多くの人々を網羅し、ヨガが世界中に広がっていったのだと思います」と語り、クリシュナマチャリア一門の偉大な功績を讃えた。
最後に、柳生さんは、「ヨガは万人に与えられた生きていくためのパートナー。だれもがヨガをやることで健やかな精神や肉体を調整できる素晴らしいものです。これからも楽しく、一生続けて欲しいと思います」と語り、ヨガを学ぶ人々を鼓舞するメッセージを送った。
映画『聖なる呼吸：ヨガのルーツに出会う旅』
YEBISU GARDEN CINEMAにて公開中、
9月10日（土）より渋谷アップリンクほか全国順次公開
監督：ヤン・シュミット＝ガレ
出演：T.クリシュナマチャリアの子供たち、B.K.S.アイアンガー、K.パタビジョイス
2011年／ドイツ、インド／105分／カラー、モノクロ／英語、カンナダ語、テルグ語、タミル語
原題：Breath of the Gods
字幕監修：ケン・ハラクマ
配給・宣伝：アップリンク
