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日程2017年06月27日 ~ 2017年07月06日
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時間11:00
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会場EARTH+GALLERY
尽きぬ、ノスタルジア(nostalgia unlimited)
本展覧会は、第7回東京アンデパンダン展の人気投票「入札アンデパンダン」で投票数2位となった石井健(いしいけん)と、阿部起任(あべかすたか)による二人展である。石井健は横浜市に生まれ、1999年に日本大学芸術学部美術学科絵画コースを卒業した。阿部起任は大分市に生まれ、1998年に早稲田大学社会科学部社会科学科を卒業した後に、絵画を学び直し、2006年にセツ・モードセミナーを卒業した。
今回の二人展の展示作品に係る、石井と阿部のそれぞれのコンセプトシート(下記参照)を見ると、石井の作品には子供の頃に気に入っていた、超合金のロボットのおもちゃや、タツノコプロのアニメ作品、漫画やゲームを懐かしむ気持ち、阿部の作品には、東京から見た故郷大分と、大分から見た大都会東京の、それぞれの憧憬が反映していることが示されている。
ノスタルジア(英:nostalgia)またはノスタルジー(仏:nostalgie)とは、一般に異郷から故郷を懐かしむこと、過ぎ去った時代を懐かしむこと等と定義される。筆者は、現代日本の作家に見られる傾向のひとつは「ノスタルジア」であると考えているが、こうした個人的な郷愁や感情の昂ぶりを文学や歌舞音曲の作品へ昇華昇華させた例は、古今東西を問わず多く見られることから、これは現代日本のみならず、世界的な傾向なのかもしれない。
翻ってみれば、世界では目下、トランプ大統領のアメリカ、メイ首相のイギリスをはじめ、少なからぬ国・地域で「ポピュリズム的」とも言われる、国際協調より自国民の利益を優先する政策が広がりつつある。その背景には、「移民の受け入れや、TPP、欧州連合(EU)等の国際協約為替操作などによって自らの仕事が奪われている」という各国の中間・貧困層の認識があると指摘されている。「昔はよかった」と懐かしむ人がそれほどに多いということだろう。
芸術作品が、作家の分身んとして生まれ出る以上、作家のノスタルジアが作品に化体することは当然であり、それぞれの作品が醸すノスタルジアは、受け手である観客が理解した形で認識されるだろう。すなわち、貴方が朦朧とした線の集積として立ち上がる石井の絵画に超合金のロボットを見たとすれば、阿部の筆致から浮かび上がる故郷の景色にホンモノの生活の匂いを嗅いだとすれば、それは貴方も同様のノスタルジアを感じているという共感の証左かもしれない。
(注)ポピュリズム(英:populism)とは、一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用して、大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しようとする政治姿勢を指す。
深瀬鋭一郎(深瀬記念視覚芸術保存基金代表)
「TYO ⇔ OIT」
私は、大分県大分市で生を受け、育ちました。日本の南西部に位置するこの街は、時代の波に乗り工業都市として発展しました。高度成長期、この都市で育った私達は、未来は必ず幸福なものと教えられ、誰もが未来は現在よりも幸福で明るいものであると信じていました。しかし、1990年代の経済危機で、工場は閉鎖され、人々の多くは街を去って行きました。私もそんななかの一人です。大学進学を機に、「明るかったはずの未来があった」故郷から、「明るい未来があるであろう」東京へと移り住みました。「不景気」と呼ばれる時代の中でも、東京という街は、私の中では光り輝いた都市でした。しかし、その光り輝く東京も、私の中では違和感を感じざるを得ない街でした。どこかよそよそしく、ホンモノではない何かを感じずにはいられない街でした。反して、東京で生活を送る中では、寂れた故郷にいるときには華やかな東京にあこがれ、虚構の部分を感じずにはいられない東京ではホンモノの故郷を思う。そんなわたしが内包した二律背反を各々の街の現在の姿を描くことにより表現しました。風景の中に描きこまれた蓮の花、キョウチクトウ、人物は、そこで暮らした、もしくは今後暮らすであろう人々の象徴です。
− 阿部起任 −
「半径マイナス3センチの世界」
今回の展示コンセプトは「半径マイナス3センチの世界」である。モチーフに選んだものは、幼少期に遊んだオモチャや、思い入れのある、今でも自分の生活に影響を与えているモノたち。それは、わたしの場合は、海辺や路地裏の絵画的風景ではなく、超合金のロボットやタツノコ作品や漫画やゲームであった。こんセプトとして選んだ理由は、今、人と人とがツナガルためのアートや、世界的な問題を問いかけるアートという考え方が多い中、恥ずかしくも極々個人的な理由をモチーフにすることは、そのこと自体が表現となり、コンセプトになると考えたからである。しかしそれらは、濃く強く表現するものではない。そのようなバイタリティや生命力は表現者としての自分の質にはない。それは、霧雨のように降ってくるもので、隠すように、包むように、私の心の半径マイナス3センチくらいのところに置かれているものである。表現方法としては、モチーフやテーマをオイルパステルの霧雨のような線で画面に写し取っているものである。モチーフを霧雨で隠すことで、主張したい気持ちと誤魔化してしまいたい気持ちとをすり合わせ、その状態そのものを表現として画面に刻むことを目指した。今後の課題は、モチーフの広がりと、そのモチーフの印象や形状をいかに線と色で解体し再構成していくかである。抽象的になりすぎず、軽さを残しつつ、画面として絵画的に成立させることを目指している。
【会期中関連イベント】 TOKYO MILKY WAY Candle Night EVENT 6月30日(金) 19:00〜 レセプション&パフォーマンス レセプション:19:00〜22:00 パフォーマンス:20:00〜 出演:横断小僧
出展作家を囲みキャンドルパーティーを開催します。
第7回東京アンデパンダン展上演アンデパンダン人気投票1位の横断小僧による舞踏を上演。
入場無料、投銭あり。
トーキョーミルキーウェイ:http://tokyomilkyway.org