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6月

17

終了ラッヘンマンの肖像

ヘルムート・ラッヘンマンの解説と共に、現代音楽のスーパーカルテット、アルディッティ弦楽四重奏団らが演奏する。

  • 日程
    2017年06月17日

  • 時間
    15:20

  • 会場
    水戸芸術館 コンサートホールATM

ラッヘンマンの肖像 / 監修=ヘルムート・ラッヘンマン

内なる心眼が、煌めく風景を呼び起こす

同じことが繰り返されているようで、退屈にも感じられる日常の生活。
自分のあるべき場所は別にある筈だと、新しい世界を夢見る。
しかし、何処に行こうとも、そこから別の日常が始まる。
結局は、代わり映えしない日常から逃れられることはできないのだが、
そんな当たり前の日々が、どこまでも愛おしく、輝いて見える時がある。
たとえば、病を患い、命の儚さを痛感し、普段の生活が奪われてしまった時。
たとえば、幼い子の日々の成長に目を見張る時。
たとえば、「今」が「永遠」に繋がっているのだと直観できた時。
世界が輝いて見えるかどうかは、外界に原因があるのではなくて、
わたしたちの心の「内」の問題なのである。

 ヘルムート・ラッヘンマンの音楽は、このような視点の転換を、音楽創造を通して実践している作曲家である。ブーレーズ、ノーノ、シュトックハウゼンなどの第二次大戦後の前衛第一世代と呼ばれる作曲家たちは、戦争を起こした前の時代には後戻りしたくないという想いから、新しい音楽の創造を目指した。それは、「今日と比べて、よりよい明日を」という進歩史観に裏付けされている。そして、彼らは既存の「調性」音楽を実現する機能和声に代わって「セリー(音列)」に基づく新しい作曲技法の確立を目指した。しかし、その後、厳格なセリー主義(serialism)は、その構造を聴き取ることが困難であることなどから、多くの聴衆の支持を得ることができずに挫折した。
 「より進歩した音楽を創造する」という目標を奪われ、進むべき方向を失った戦後第二世代の作曲家たちの中にあって、新しい道を開示したのがラッヘンマンであった。ラッヘンマンが見出したのは「進化」にかわる「異化」という考え方である。ラッヘンマンの作品では、楽器の特殊奏法などにより、それまで聴いたことのないような音を響かせることが多い。この方法論を作曲家自身は「楽器によるミュジック・コンクレート(musique concrète)」と呼んでいるが、試されているのは、従来の楽器の音をどのようにして「異化」するかということである。既存の楽器が未知の音色を奏でることにより、作曲や演奏の伝統の中で培われたその楽器の歴史的な意味が取り除かれ、新しい文脈に置き換えられ、新しい音世界が創出される。そして、ラッヘンマンは、その移行のために必要なのは、私たちの内部にある研ぎ澄まされた魂であると語る。進歩・進化の脅迫から逃れ、煌めく音風景と出会うために、「内」なる心眼を持つことの大切さを、ラッヘンマンは教えてくれている。

▼スケジュール
2017年6月17日(土)
【プレ・トーク】15:20開始
「これまでの創作を振り返って」
出演:ヘルムート・ラッヘンマン(トーク)

【演奏会】16:00開演
ラッヘンマン:
弦楽四重奏のための音楽 〈グラン・トルソ〉
高音域のソプラノとピアノのための音楽〈ゴット・ロスト〉
ピアノのための〈マルシュ・ファタール〉(日本初演)
弦楽四重奏曲 第3番 〈グリド〉

▼出演:
角田祐子(ソプラノ)
菅原幸子(ピアノ)
アルディッティ弦楽四重奏団
 アーヴィン・アルディッティ(第1ヴァイオリン)
 アショット・サルキシャン(第2ヴァイオリン)
 ラルフ・エーラース(ヴィオラ)
 ルーカス・フェルス(チェロ)
ヘルムート・ラッヘンマン(トーク)

▼料金

【全席指定】一般4,000円、ユース(25歳以下)1,500円
●15:10開場 15:20プレ・トーク 16:00開演

▼チケットの取り扱い
水戸芸術館エントランスホール・チケットカウンター
水戸芸術館チケット予約センター 029-231-8000
MUSIC SHOPかわまた 029-226-0351
ヤマハミュージックリテイリング水戸店 029-244-6661
e+(イープラス)http://eplus.jp(PC・携帯)

HP:http://www11.arttowermito.or.jp/hall/hall02.html?id=1411

主催:公益財団法人水戸市芸術振興財団

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