webDICE 連載『特集:MotionGallery連動』 webDICE さんの新着日記 http://www.webdice.jp/dice/series/48 Mon, 16 Dec 2024 20:38:21 +0100 FeedCreator 1.7.2-ppt (info@mypapit.net) アフリカ音楽ファン注目!マダガスカルが舞台の映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』支援募集 http://www.webdice.jp/dice/detail/5465/ Sun, 27 Aug 2017 12:56:42 +0100

2015年のドキュメンタリー映画『ギターマダガスカル』でアフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶ島マダガスカルのミュージック・シーンを追った亀井岳監督が、ふたたびマダガスカルを舞台に描く初の劇映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』の制作支援プロジェクトが、300万円を目標に9月28日まで実施中。webDICEでは亀井岳監督からのメッセージを掲載する。




今回のプロジェクトでは3千円から30万円まで6つの金額設定を設け、完成した作品のエンドロールへの名前の記載のほか、現地の音楽を収録したCD、現地ミュージシャンの楽器進呈など、アフリカ音楽ファンにはたまらない様々な特典が用意されている。詳しくはmotiongalleryの特集ページまで。






日常の中に活きる音楽の力を伝える

文:亀井岳(『ヴァタ ~箱あるいは体~』監督)





8月1日より、マダガスカル南東部の小さな町マナンテンナから撮影を開始した映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』は、なんとか撮影日程を完了し帰国の準備に入りました。



この地を舞台に私が描いたのは、出稼ぎ先の村で亡くなった少女の骨を受け取りに、4人の男が旅をする物語。劇中、南部の人々の生活や地域に根付く音楽を通してあらわになる、彼ら独自の死生観を重要な主題としています。




映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』亀井岳監督




マダガスカルでは、“死”は通過点で人生は永遠に続くと考え、人は死後、祖先という存在になります。人々は割礼や葬式などの際、祖霊を招き入れるために音楽を演奏しますが、歌と踊りは彼らにとって生活の中の彩りであると同時に、祖先と喜びを共有するツールでもあります。これは日本の彼岸や祭りをはじめ、世界中の祭事とも共通する、音楽原初のカタチだと思います。木をくり抜いて作った“カブシ”と呼ばれる小さなギター。誰かが村の片隅にあるマンゴーの木の下でこれを弾きだせば、子供たちが集まり、女性も一緒に踊りだす。毎日の過酷な労働を片時でも忘れ、誰もが分け隔てなく喜びを共有する場。その音楽は、“割礼の時に歌う歌”や“葬式の時に歌う歌”など、伝統的なリズムやメロディが原型で、祖霊との繋がりを持ち日常の中に活きる音楽の力を感じます。



映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』




前作『ギターマダガスカル』が、ドキュメンタリー手法の作品だったのに対し、本作はオリジナル脚本の劇映画。制作現場も大幅に増員しました。撮影監督の小野里、音楽監督の高橋、製作の櫻井、そして私の4人が日本人。そこに主要キャスト、技術スタッフ、コーディネーター、小道具や4人のドライバーなど、多くのマダガスカル人達と構成する総勢30名ほどのにぎやかなチーム。



映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』



日本とマダガスカルの共同製作は私が強くこだわったところです。実は本作、調べた限りではマダガスカル史上2本目の長編劇映画。現地スタッフは実際の映画製作を通し、技術などを蓄積する得がたい機会です。多くのマダガスカル人とチームを組み、彼らの考え方や世界観も、今まで以上に深く体感しました。




映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』





例えば、マダガスカルには“カバーリ”という演説をする文化があり、彼らはとにかく話し好き、しかも長く話すことを良しとします。撮影中も何か問題があると、全員が話しだす。有用無用問わず、とにかく皆が自分の意見を言い、一方では話しを聞くという習慣で、結局解決しないまま延々対話が続くことも少なくありません。



また、土地に対する意識が高く、撮影をするには持ち主に直接許可を取る必要があります。ここに先ほどの習慣が加わり“映画とは何なのか”の説明から始まって、かなりのエネルギーを要します。そんな事も、映画が祝福されるためには必要なプロセスだと考えていましたが、撮影を開始した我々には、底力を試される予期せぬ障壁がいくつも立ちはだかりました。




映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』

映画『ヴァタ ~箱あるいは体~』


……乾期の8月、9月なのに延々雨、スケジュールが組めない。その雨で増水、道が遮断されロケ地に向かえない。地方の演者は標準のマダガスカル語が通じない。気がつくと演者がいなくなっている。墓を荒らして骨を盗む“骨泥棒”と間違われる。もちろん電気なし、電波なし、などなど……。しかし、それらも含め、すべてがマダガスカルであり、映画製作への活力となりました。



この国は1日1ドル程度で生活する人が多い国ですが、実際ここに来て人々と触れ合うと、必要最小限のもので生き、人との繋がりを大切にする姿から、私たちが学ぶべきことが多くあると感じます。バイタリティー溢れる彼らと共に撮影したこの映画を、力のあるものとして世に放つべく、まさに今挑戦しているクラウドファンディングは、まだまだ目標金額まで届いておりません。この記事をご覧になっている皆さまには、どうか『ヴァタ ~箱あるいは体~』の制作支援プロジェクトに参加していただけますよう、心よりお願いいたします。










亀井 岳(『ヴァタ ~箱あるいは体~』監督・脚本/FLYING IMAGE)プ ロフィール






金沢美術工芸大学大学院修了。 2001年、造形から映像制作へと転身。旅と音楽をテーマに、ドキュメンタリーとドラマを融合させるスタイルで、2009年初監督作はモンゴルの喉歌をテーマにした『チャンドマニ 〜モンゴルホーミーの源流へ〜』。人々の営みと音楽を主題にしたロードムービー『ギターマダガスカル』を2015年劇場公開し、2016年現地首都アンタナナリヴにて上映。 2017年あらたなプロジェクトを携え再びマダガスカルへ。










■『ギターマダガスカル』亀井岳監督、日本・マダガスカル共同製作の長編劇映画『バタ 〜箱あるいは体〜』制作支援 プロジェクトページ










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ボロボロになっても生きろ!俳人・住宅顕信を描く映画『ずぶぬれて犬ころ』支援募集中 http://www.webdice.jp/dice/detail/5404/ Fri, 19 May 2017 13:59:03 +0100

『船、山にのぼる』『モバイルハウスのつくりかた』といったドキュメンタリー作品を手がけてきた本田孝義監督による、25歳の若さで夭折した岡山出身の俳人・住宅顕信を描く映画『ずぶぬれて犬ころ』支援プロジェクトが、250万円を目標に7月28日まで実施中。webDICEでは本田孝義監督からのメッセージを掲載する。




今回のプロジェクトでは3千円から10万円まで6つの金額設定を設け、完成した作品のエンドロールへの名前の記載や、住宅顕信ゆかりの地やロケ地案内などの特典が用意されている。詳しくはmotiongalleryの特集ページまで。












『ずぶぬれて犬ころ』製作に向けて

本田孝義(監督)




映画『ずぶぬれて犬ころ』本田孝義



私が、自分が育った街についてのドキュメンタリー映画『ニュータウン物語』を岡山県で撮影していた2002年頃、その時すでに亡くなっていた住宅(すみたく)顕信という俳人が全国的なブームになっている、という話を聞いた。住宅顕信は岡山県出身の俳人だから、特に岡山県で話題になっていたのだと思う。ブームの出発点は、精神科医の香山リカさんが住宅顕信のことを書いた、「いつかまた会える-顕信:人生を駆け抜けた詩人」という1冊の本からだった。私はこのブームの時に、香山さんの著作、住宅顕信の句集、アンソロジー集の3冊を読んで、初めて住宅顕信のことを知った。住宅顕信は、1987年に25歳の若さで白血病で亡くなっている。彼の俳句は、5・7・5にとらわれない、自由律俳句と言われているものだった。





映画『ずぶぬれて犬ころ』

映画『ずぶぬれて犬ころ』




それから時が流れ、仕事の行き詰まりなど、精神的に落ち込んでいた2014年初頭、なぜだか私の中に、住宅顕信の句「ずぶぬれて犬ころ」が蘇ってきたのだった。ボロボロになっても生きろ、と顕信に励まされたような気がした。そこから再び、住宅顕信のことに興味を持ち、調べ始めた。先の3冊だけではなく、彼の生涯を克明に調べて書かれた「生きいそぎの俳人 住宅顕信 25歳の終止符」(横田賢一著)にとても刺激を受けた。この年の秋、岡山映画祭に参加し、岡山の空気を感じながら、住宅顕信のことを映画で描きたいと強く思うようになっていった。



映画『ずぶぬれて犬ころ』

映画『ずぶぬれて犬ころ』



なぜ、顕信に惹かれるのか。「気の抜けたサイダーが僕の人生」「若さとはこんな淋しい春なのか」など、少し自虐的ながらも、そこに生を感じる俳句に魅了されたことが一番だと思うが、同時に、短い生涯の中で、命を燃やすように病室で句作りに没頭する姿を想像して胸を突かれる思いがしたからかもしれない。






私はこれまでドキュメンタリー映画を製作してきたが、すでに亡くなっている住宅顕信をドキュメンタリーで描くには、関係者へのインタビューから人生を浮かび上がらせるなどの方法しかなく、私にはあまり面白い映画になるとも思えなかった。それならば、劇映画として描くほうがふさわしいと思うようになっていった。普通に考えれば、劇映画の製作はドキュメンタリーとは全く違うので無謀なことだが、私自身、学生時代は劇映画を撮っていたし、卒業後、テレビドラマの仕事をしていたことがあるし、2013年には「ヒカリエイガ」というオムニバス映画のプロデューサーをやったので、全く知らない世界でもない。だから、劇映画にすることに迷いはなかった。



2015年になり、住宅顕信のことを劇映画にしたいと岡山の知人や知り合いのプロデューサーらに相談してみたが、なかなか話は進まない。助言もあって、脚本を先行させることになり、「ヒカリエイガ」で一緒に仕事をしたことがあった、山口文子(あやこ)さんに脚本執筆を依頼した。山口さんが短歌の歌人でもあることも大きな理由だった。






映画『ずぶぬれて犬ころ』

映画『ずぶぬれて犬ころ』




一時、「ずぶぬれて犬ころ」は、岡山の某民放でドラマにするという話もあったのだが頓挫。私の力量不足もあって、製作費集めはなかなか思うように進展しなかった。そんな中でも、製作費の支援を申し出てくれる個人、企業も幾つかあった。ありがたい話だが、これだけでは製作費に足らないので、思い切って初めてクラウドファンディングにも挑戦してみることにした。



全体の製作費800万円の内、250万円をクラウドファンディングで集めようと思っている。この250万円は、主にスタッフ、キャストの人件費に当てたいと思っている。4月1日にスタートして、ありがたいことにすでに110人の方から144万円の応援をいただいている。ファンディングを始めてわかったのは、コレクターの方々への責任の重さだった。ファンディングスタート時点では、『ずぶぬれて犬ころ』は脚本しかなかった。コレクターの方々の期待に応えるためにも、キャスティングやスタッフ集めを具体的に進める励みになった。6月3日、4日には岡山で役者オーディションを行う。諸事情でまだ明かせないのだが、著名な俳優の方の出演も決まった。音楽は池永正二さん(あらかじめ決められた恋人たちへ)に作っていただくことも決まった。9月の撮影に向けて、その他のスタッフ編成も話を進めているところだ。



しかしながら、同時に不安も感じている。個人的な知り合いにファンディングのお願いをし、多くの方が応援してくれたのでスタートは順調だったのだが、ここしばらく動きが鈍くなっている。終了する7月末までにはまだ時間があるので、キャスト・スタッフが決まれば製作発表記者会見を行い、まだまだ盛り上げて行きたいと思っています。










■夭折の俳人・住宅顕信を描く、映画「ずぶぬれて犬ころ」

製作支援プロジェクト

MotionGalleryプロジェクトページ









▼精神科医の香山リカさんからの応援メッセージ。顕信のみずみずしい句に魅了された香山さんは、「今の若い人にも知ってもらいたい」と『いつかまた会える―顕信:人生を駆け抜けた詩人』を2002年に上梓。講演会など、顕信の魅力を伝える活動を続けている。



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共同通信の「電通に買われた記事」をスクープした調査報道メディア「ワセダクロニクル」 http://www.webdice.jp/dice/detail/5378/ Wed, 22 Mar 2017 15:55:21 +0100

早稲田大学ジャーナリズム研究所の調査報道メディア「ワセダクロニクル」が、共同通信が全国の新聞に配信した記事が電通グループによって「買われて」いたという事実を2017年2月に報道した。現在、クラウドファンディング・サイトmotiongalleryにて、続報取材のための支援プロジェクトが行われている。



2017年5月31日まで行われているこのプロジェクトは、創刊特集にかかった取材費の補填、そして今後続く調査報道の資金に充てられる。350万円を目標にしたこのプロジェクトは、4月25日現在、492万円の支援を獲得している。



現在アップリンク渋谷ほかにて公開中のドキュメンタリー映画『すべての政府は嘘をつく』でも、調査報道を続ける海外のフリー・ジャーナリストたちにスポットを当てている。webDICEでは編集長の渡辺周さんからのメッセージを掲載。日本で独自の調査報道を行う「ワセダクロニクル」の活動と、日本のジャーナリズムの問題について綴ってもらった。





■「ワセダクロニクル」が告発した「買われた記事」




「ワセダクロニクル」は、ジャーナリストやエンジニアらが参加する「早稲田大学ジャーナリズム研究所」を拠点とした非営利の調査報道メディアで、2015年4月1日に設立。各大学の教員、ジャーナリストを目指す学生がリサーチャーとして参加している。「記者の問題意識やデータの分析に基づいた丹念な調査と取材によって、政治権力などにより隠された重要な事実を暴くこと」を目指している。




「ワセダクロニクル」は、2016年3月ごろから約10ヶ月間かけて、薬に関する記事をめぐり金が動いてる実態を、入手した内部資料や関係者の証言で裏付けていった。金を払っていたのは、製薬会社の仕事を請け負った電通のグループ会社、電通PR。金をもらっていたのは、全国の地方紙に記事を配信する共同通信のグループ会社、KK共同。



「ワセダクロニクル」の取材に対し、電通PRの当時の担当者は「記事配信の成功報酬だった」として電通PRが金を支払ったことを認めた。記事を書いた社団共同の編集委員も「営業案件であるとの認識はあった」と、記事に金がからんでいるとの認識があったことを認めた。




2017年2月1日に公開した「買われた記事」シリーズ第1回「電通グループからの『成功報酬』」で、抗凝固薬「イグザレルト」を販売するバイエル薬品をクライアントに「抗凝固薬広報支援」を目的に金が支払われ、配信された記事は「イグザレルト」へ巧妙に誘導されていたことを報じている。








庶民の視点から調査報道──「ワセダクロニクル」の役割

文:渡辺周(「ワセダクロニクル」編集長)





「ワセダクロニクル」渡辺周編集長

「ワセダクロニクル」渡辺周編集長




■メディア同士で争う気はないが……




「ワセダクロニクル」は2017年2月1日、「買われた記事」シリーズの初回を発信し、調査報道メディアとしてのスタートを切った。これまでに第1回「電通グループからの『成功報酬』」第2回「『国の看板』でビジネス」第3回「命にかかわる記事は載りやすい」第4回「共同通信からの『おわび』」第5回「20年前には始まっていた」第6回「電通の「見直し」と消えた組織」を掲載している。「買われた記事シリーズ」はまだ序盤といったところで、これからも回を重ねていく。







▼「買われた記事」ダイジェスト







読者が通常の新聞記事だと思って読んだものが、実は金銭が支払われた宣伝だった。しかも、宣伝の対象は読者の命と健康にかかわる医薬品だったーー。「買われた記事」を要約すればこうなる。



「買われた記事」が読者に届くまでの流れはこうだ。



製薬会社─電通─電通PR(電通の100%子会社)─株式会社共同通信(社団共同通信の100%子会社)─社団共同通信─地方紙─読者



この中で、報道機関の社団共同通信が「ワセダクロニクル」に対して「抗議」をしてきた。子会社の株式会社共同通信は、電通PRから報酬をもらったことを認めているものの、「株式会社共同通信は他のPR会社と同じで、社団共同通信に案件を紹介しただけ」と主張しているのだ。つまり報酬は案件の紹介料であって、株式会社共同は記事の内容に関わっていない、社団の共同とは仕事の棲み分けができているという見解だ。



しかし電通側の内部資料には、株式会社共同通信への支払いについて「記事の配信料」や「媒体費」と記されている。「PR委託費」とは書かれていない。社団と株式会社の関係については、共同通信自身が社史の中で「表裏一体の関係」と記述している。



しかも、私たちは株式会社共同通信の担当者が自ら取材、執筆をした記事が社団共同通信から配信された事例を把握している。共同通信の記事出力モニターには株式会社共同通信の担当者の署名があり、本人への直接取材でも記事を書いたことを認めていた。



そのことを社団共同通信に質問したところ、当初は「株式会社共同通信の担当者は記事を執筆していない」と否定した。驚いて私たちが掴んでいる証拠を提示した上で再質問したところ、一転して事実を認め「おわび」してきた。





「ワセダクロニクル」




「ワセダクロニクル」の目的は、既存メディアを叩くことではない。政治家から「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」などと馬鹿にされ、ジャーナリズムの力が弱まっている日本で、メディア同士が敵対している場合ではない。



今回「買われた記事」を始めるにあたっても、共同通信には自ら膿を出して自浄作用を発揮してほしいと期待していた。だがその考えは甘かったかもしれないと思い直している。



共同通信の現場の記者からは内々に「社の対応は恥ずかしい」「自ら検証すべきだ」という声が私に寄せられている。共同通信には優秀で信念のある記者がたくさんいるということは、私自身知っているので、社の幹部がいい加減な対応でお茶を濁しても現場から改革してほしいと切に願う。



しかし、今のところ共同通信が自浄作用を発揮する動きは表立って見えない。



共同通信が配信した「買われた記事」を掲載し読者に届けた地方紙の動きも鈍い。「共同通信が『買われた記事』ではないと否定している」という理由で、掲載責任を問う「ワセダクロニクル」にまともに回答してこない。読者ではなく、共同通信を向いている。地方紙の紙面づくりが共同通信の記事に負うところが大きいので、そのような対応になるのかもしれない。地方紙の幹部たちからは、「共同通信には抗えない」という声が聞こえてくる。




しかし、ならば読者を誰が守るのか。製薬会社、電通、共同通信という大組織が相手だからこそ、読者を抱える新聞社が防波堤になる必要があるのではないか。しかも今回の場合は医療記事であり、読者には藁にもすがる思いで情報を求めている患者がいる。私は背信行為だと思う。



「ワセダクロニクル」







■一人旅を支える「同志」





「買われた記事」を後追いする既存メディアが現れないことは予想通りだった。毎日新聞NHKは初回を受けて、報道したものの、共同通信の抗議を私たちに取材しないまま掲載した。第4回で「共同通信からの『おわび』」を掲載した後も取材はない。




古巣の朝日新聞をはじめ、記者仲間からは続々とメールが寄せられている。多くは「新聞やテレビも追いかけるべき」という内容だ。だが「ならば自分で取材して記事を書く」ということにはならない。個々の記者は問題意識を持っているものの、担当外ではどうしようもないし、組織の看板では記事を出すことはできないということだ。



ここに日本のジャーナリズムが抱える問題の根深さを感じる。ジャーナリストであることよりも、組織の一員であることが求められ、がんじがらめになっている。この関係を逆転しなければ、何万人記者がいようと社会を改善することはできない。自分の会社の幹部に抵抗できない記者が、取材対象とまともに対峙できるとは思えない。



しばらくは「一人旅」が続きそうだ。だが「ワセダクロニクル」には、寄付者をはじめ読者の支持さえあればいい。そう思って「買われた記事」シリーズを発信していく。



「ワセダクロニクル」のサイトは料金を払わなくても見られる。寄付者にとっては不公平な面もあるかもしれないが、社会に必要な「公共財」を共につくりあげていく「同志」として支えていただければ幸甚だ。



私たちは折に触れて、クラウドファンディングのコレクターに寄せていただいたコメントを読んで日々の活動の糧にしている。その中から三つ紹介して、拙稿を締めくくりたい。




「応援しています。がんばってください!10歳で敗戦を迎えた世代として、戦後のジャーナリズムの70年間の劣化の歩みは耐え難い。間もなく消えゆく者として、後に続く世代に頑張ってほしいので、貧者の一灯をおくります」



「ありがとうございます。 報道の独立は僕らの命綱です。 立ち上がってくれて本当に感謝です」



「本当のことを知るためのひとつの手段として応援します。できる限りのことを、庶民の視点から調査報道してください。選ばれた少数の人たちのためではなく、サイレント・マジョリティーのために。そして、背筋を伸ばして呼吸ができる未来のために」













渡辺周(わたなべ・まこと) プロフィール




1974年神奈川県生まれ。大阪府立生野高校、早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本テレビに入社。2000年から朝日新聞記者。特別報道部などで調査報道を担当する。高野山真言宗の資金運用や製薬会社の医師への資金提供の実態などを報じたほか、原発事故後の長期連載「プロメテウスの罠」取材チームの主要メンバーとして、高レベル核廃棄物のテーマにした「地底をねらえ」などを執筆した。大学を拠点にした調査報道プロジェクトの立ち上げに伴い朝日新聞社を2016年3月に退社、同プロジェクトの発信媒体「ワセダクロニクル」の取材・報道の総責任者(編集長)に就く。趣味はマラソン。普段は100kg超の体重があるが、フルマラソンでは92kgまで落とし、4時間20分台で完走する。











■早稲田大学拠点の調査報道メディア『ワセダクロニクル』

創刊特集「買われた記事~電通が共同通信に成功報酬」を続報したい

MotionGalleryプロジェクトページ



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廃棄食材からおいしい料理を作る!映画『0円キッチン』監督来日クラウドファンド実施中 http://www.webdice.jp/dice/detail/5308/ Mon, 28 Nov 2016 12:08:38 +0100
映画『0円キッチン』より





「廃棄食材を救出し、おいしい料理に変身させよう!」フードロスを減らすユニークな取り組みを追ったエンタメ・ドキュメンタリー『0円キッチン』が2017年1月21日(土)よりアップリンク渋谷にて公開。クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにてダーヴィド・グロス監督の来日支援プロジェクトを実施している。webDICEでは、オーストリアのダーヴィド・グロス監督のインタビューを掲載する。



世界で生産される食料の3分の1は食べられることなく廃棄されている。その重さは世界で毎年13億トン。「捨てられてしまう食材を救い出し、おいしい料理に変身させよう!」と考えたグロス監督は、植物油で走れるように自ら改造した車に、ゴミ箱でつくった特製キッチンを取り付け、ヨーロッパ5カ国の旅へ出発する。各地で食材の無駄をなくすべく、ユニークでおいしく楽しい取り組みをしている人々に出会っていく様子を映像に収めている。



今回のプロジェクトでは、フードロスを減らすアクティビスト(自称:食材救出人)でもあるダーヴィド監督の来日を実現するための費用と、映画『0円キッチン』をより多くの人に届けるための配給費用の一部を集める。ダーヴィド監督を日本に招聘することにより、監督に、映画製作の背景や想い、活動のエネルギーを直接語ってもらうことで、映画で映し出されている“ヨーロッパの出来事”を、日本の人たちとつながった世界、もっと身近なものとして捉えてもらいたいということ。そして日本で同じようにフードロスに関わる活動をしている人たちと監督との交流の機会をつくることで、ヨーロッパでの取り組みのヒントを、より有機的に日本へ伝えたいということ。さらに、監督来日によって、映画『0円キッチン』への注目度を高め、映画のなかで映し出されている食料廃棄の問題について、より多くの人に知ってもらい、考えてもらいたいという思いのもとクラウドファンディングが行われる。



集まった資金は、監督の日本への渡航費、日本での滞在費、滞在中の通訳費用、来日時のイベント会場費用、監督来日に伴うイベントの宣伝費用と、映画のチラシの増刷・配布費用などに使用される。




今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2017年1月6日までの期間で、150万円を目標に資金を募る。監督出演のイベントや先行試写会、自主上映を考えている人に最適な参加者100名までの上映権など、多彩な特典が用意されている。 詳しくはプロジェクトページまで。







誰もがフードロスに対するアクティビスト(活動家)になりうる!

ダーヴィド・グロス監督インタビュー




──なぜ『0円キッチン』の取り組みを始めたのですか?フードロスに関心をもつようになったきっかけは何かありますか?




2012年に自分の故郷であるオーストリア・ザルツブルグのファーマーズマーケットで、ある年配の女性を見つけました。彼女は、マーケットのゴミ箱の中に食べ物がないか探していました。ショックでした。貧しい人たちが、他の誰かが捨てたものを食べることを受け止めたくありませんでした。それから少し調べていたら、貧しいからではなく、消費主義への批判として、ゴミ箱にダイブする(入り込む)人たちがいることを知ったんです。「ダンプスターダイバー(大型ゴミ箱ダイバー)」や「ウェィストダイバー(ゴミ箱ダイバー)」と自称している人たちです。この活動をしている人たちにコンタクトをとり、自分でゴミ箱へのダイブをザルツブルグの近所でやり始めました。




映画『0円キッチン』

(映画『0円キッチン』ダーヴィド・グロス監督




僕はスーパーのゴミ箱からたくさんの新鮮な食べ物を「救出」し、友達と分け合ったり、はじめての0円キッチンイベントを開催しました。それから僕たちはゴミ箱へのダイブと料理を撮影し始めたのです。低予算でウェブ上にシリーズをアップしたところ、有名になり、アートの祭典に招かれ、ついにテレビ局が僕たちのヨーロッパ周遊ロードムービーに協賛をしてくれました。そして出来上がったのが『0円キッチン』です。




──一番印象に残っている、場所・人・アクションはありますか?




「チョップ・ベジタブル・ディスコ」(野菜叩きカット・ディスコ)と呼ばれているベルリンの取り組みが一番印象的でした。アイディア自体はシンプルです。若者が農地から規格外の野菜やフルーツを集め、人気のある場所に集まって、良い音楽を聞きながら、その野菜やフルーツをカットするのです。食べ物を救いながらパーティーができるんです!この取り組みは世界中で行なわれて成功していて、今ではヨーロッパ、アジア、南アメリカ、そしてアフリカにも「チョップ・ベジタブル・ディスコ」は存在しています。この実績が伝える重要なポイントは、より持続可能な経済を実現していくための戦いは、とっても楽しいものにもできうるのだということです。



映画『0円キッチン』

(映画『0円キッチン』より




ヨーロッパを旅しながら、

他の人たちが「ゴミ」と呼ぶ食料だけで

料理をすることができる




──映画を製作する上で、苦労したことはありますか?





この数年でフードロスはヨーロッパで大きな問題になりました。私たちの『0円キッチン』と類似した映画への関心も高まっています。また、食べ物はすべての人が関わっているものなので、人の感情を動かしやすいものです。だから私たちの映画への出資者やサポーターを見つけることは、それほど難しくありませんでした。それに私たちはただの「映画の製作者」として見られたくないのです。




映画の製作以外にも、私たちのプロジェクトでは様々な活動を行なっています。たとえば、パブリックな場所で料理イベントを開いたり、啓蒙のためのキャンペーンや、学校での講義も行なっています。ある友人は、オーストリアで捨てられる食材を使ったケータリングビジネスを始めてもいます。悲しい部分があるとすれば、あまりにも多くの食料(世界で生産される食料の3分の1)が廃棄されているということです。だからヨーロッパを旅しながら、他の人たちが「ゴミ」と呼ぶ食料だけで料理をすることができるのです。





映画『0円キッチン』

(映画『0円キッチン』より



──「0円キッチン」を公開してみて、出身国であるオーストリアや他国でどんな反響がありましたか?





オーストリアでも世界の他の国々でも、良い反響をたくさんもらっています。これまでヨーロッパの複数国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、クロアチア、チェコなど)の映画祭で上映されていますが、まだロシアや北アメリカ、ニュージーランド、韓国などでは上映されていません。このことは、フードロスがグローバルな問題であり、『0円キッチン』のストーリーに自分との繋がりを感じてもらえることを示しています。料理の仕方そのものに強い関心をもつ人もいれば、社会的な面やビジネス的解決方法の面から関心をもつ人もいます。ジャーナリストやシェフ、環境活動家、学校の先生、農家の人、科学者、どんな立場にいる人であれ、誰もがフードロスに対するアクティビスト(活動家)になりうるのです。



──「0円キッチン』の取り組みが、具体的に誰かの生活習慣を変えたような例はありますか?




様々なレベルで変化があります。私たちは欧州議会で『0円キッチン』のイベントを行い、政治家たちに自分たちの食事の余り物から新たに作った料理を提供しました。このイベントが、議員の人たちに政治的決定への影響を与えることを願っています。また『0円キッチン』の取り組みを始めてから、フランスがスーパーで売れ残った食べ物を捨てることを禁じる法を制定したり(捨てずに社会福祉団体等へ寄付する必要があります)、他の国々がフランスの例に習いつつあります。変化をすぐに生み出すもっとも簡単な方法は、『0円キッチン』のイベントに参加してもらったり、学校で料理教室を開くことだと思います。一度でも廃棄食材料理を食べたら、きっとその人の意識は変わるはずです!




映画『0円キッチン』

(映画『0円キッチン』より



──この映画を製作したことによって、自分自身の意識の変化はありましたか?作り終えた今は食に関してどんな問題に注目していますか?





『0円キッチン』はこれまでに取り組んできた映像プロジェクトのなかで一番、いろんな点から私の人生を変えた作品です。そして僕だけではありません。製作メンバーたちも僕に「0円キッチンレシピ」をシェアしてくれたり、映画を観た人が、食べ物を捨てる前にもう一度考え直すようになったとメッセージをくれることもあります。だから自分の周りにたくさんの変化をもたらしている作品といえます。実は今の恋人と出会ったのも、ウィーンでのゴミダイブに行った時です。スーパーのゴミ箱で始まるラブストーリーなんて、本当にワクワクするロマンスじゃないですか?



映画『0円キッチン』

(映画『0円キッチン』より



政治的な話に戻ると、料理は政治的な行為で環境に大きな影響を与えるものだと僕は強く信じています。そして、貧困と食料廃棄とをあわせて解決方法を考える必要があると思っています。食品業界の人たちは賞味期限が切れたものを「ゴミ」と呼びますが、本当のゴミは、食料廃棄を生み出している現在の経済システムです。これこそを僕たちは変えなければなりません。



映画『0円キッチン』

(映画『0円キッチン』より




──日本の観客への一番のメッセージは何ですか?




とてもシンプルなメッセージです。料理を作って、愛して、捨てないこと!有名な「これはゴミではない(This isn't garbage)」という言葉は、僕の人生哲学になっています。この思想は禅の影響をとても受けていて、約800年前に道元という僧侶が書いた素晴らしい書物に記されている言葉です。「典座教訓」という彼の料理の手引き書は、フードロスを減らし、食べ物に敬意をもってどう扱うべきかを考えさせられた初めてのエッセーです。この精神が、消費主義国である日本社会において今も大きな影響力をもつことを願っています。自然や自然の恵みが僕たち自身の一部あるということを、再発見できることが大切だと思います。














ダーヴィド・グロス(David Gross) プロフィール




1978年オーストリア、ザルツブルグ生まれ。ウィーン大学でコミュニケーション科学と演劇学を、ドナウ大学クレムスでジャーナリズムを学び2003年に卒業。以後、ジャーナリスト・ドキュメンタリー映画監督として活動。













映画『0円キッチン』





■世界で1/3の食料が廃棄されている現状を変えたい! 映画『0円キッチン』監督を日本に!MotionGalleryプロジェクトページ








映画『0円キッチン』

2017年1月21日(土)

アップリンク渋谷にてロードショー





監督:ダーヴィド・グロス、ゲオルク・ミッシュ

脚本:ダーヴィド・グロス

撮影監督:ダニエル・サメール

編集:マレク・クラロフスキー

音楽:ジム・ハワード

制作:ミスチフ・フィルムズ

制作協力:SWR/ARTE、ORF

プロデューサー:ラルフ・ヴィザー

2015年/オーストリア/81分

配給:ユナイテッドピープル




公式サイト



劇場公式サイト






▼映画『0円キッチン』予告編



[youtube:745ys3ZmRgQ]
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大阪の映画館シネ・ヌーヴォの改修を応援、クラウドファンディング実施中 http://www.webdice.jp/dice/detail/5266/ Tue, 11 Oct 2016 15:42:30 +0100
シネ・ヌーヴォの館内にて、支配人の山崎紀子さん



大阪府大阪市の映画館シネ・ヌーヴォが来年2017年1月で20周年を迎えるにあたり、館内改装工事を行う。要望の多い男性トイレの洋式化、看板や維新派が作ったオブジェの改修などを行う予定で、現在、クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにて支援プロジェクトを実施している。webDICEでは、支配人・山崎紀子さんからのメッセージを掲載する。




今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2016年12月26日までの期間で、500万円を目標に資金を募る。集まった資金は、場内のリニューアル工事、トイレの改装工事、看板取り替え、玄関のオブジェ補強工事に使用される。支援は3,000円から可能で、1日劇場貸切券のついた30万円のコースまで、各コース様々な特典が用意されている。 詳しくはプロジェクトページまで。




▼シネ・ヌーヴォ誕生から20周年! 20周年を前に、これからの20年に向けて館内改装工事を行ないます。


[youtube:QJPZ6mfAO30]


シネ・ヌーヴォ誕生から20周年!

20周年を前に、これからの20年に向けて館内改装工事を行ないます。

文:山崎紀子さん(シネ・ヌーヴォ支配人)




大阪市内のまだ下町情緒が残る九条の町にシネ・ヌーヴォがオープンして、はや20年。「映画新聞」紙上で「映画館をつくろう!」と呼びかけたのは、1996年11月号でした。シネ・ヌーヴォはその3ヶ月後の翌年1月にオープンしました。驚くべきことにたった3ヶ月で映画館をオープンさせるだけの熱い支援と、それを実現する行動力があったのです。どれほど多くの人が自分の観たい映画を観ることのできる映画館を渇望していたのでしょうか。まさに、望まれて望まれて、祝福されてシネ・ヌーヴォは誕生したのです。1997年1月18日のことでした。




シネ・ヌーヴォ

シネ・ヌーヴォの外観



シネ・ヌーヴォの前身は遡ること1970年代、「シネマ・ダール」という自主上映グループです。大阪、京都を活動の拠点とし、『結晶の構造』『ポケットの中の握り拳』『バリエラ』などを全国の自主上映の皆さんと共同で自主輸入・自主配給、そして上映を続けていました。そんな中、運命の映画と出会います。1983年、小川紳介監督『ニッポン国古屋敷村』です。この上映運動(カタい!)の最中、マイナーな映画をまず知ってもらうことの必要性を感じ、自ら媒体を立ち上げよう!との思いから1984年、月刊「映画新聞」が創刊されました。




シネ・ヌーヴォ

玄関のオブジェ




それまでは紹介されていなかったドキュメンタリー映画やアート映画などを取り上げるとともに、いちはやく国内外の映画祭のリポートなど、全国の映画ファンへ届けていました。しかし、90年代に入りミニシアターの時代になると、映画新聞で取り上げた作品が劇場で上映されるようになってきました。すると、ミニシアターの少ない大阪では観たいけど観られない、そういう状態になってきました。今思うと、映画ファンの希求の思いが、映画館を生んだのは必然のような気もします。シネ・ヌーヴォはその思いに応える映画館でなくてはならないし、責任だと私は思います。




シネ・ヌーヴォ

映写室の編集台



私は2001年11月にシネ・ヌーヴォにアルバイトとして入りました。働き始めて15年になります。入って少し経ったころ、シネ・ヌーヴォ開館5周年特集が華やかに開催されました。その頃私は油彩画を描いては、仲間と発表するということが生活の中心だったのですが、この5周年の特集で侯孝賢の『憂鬱な楽園』を観てしまいました。物語なんて全然わからなかったのに、スクリーンから吹く熱風にいろんなものを吹き飛ばされました。そして映画が残ったのでしょうか。2008年に前任者の退職により、支配人に就任しました。7年勤めていたにもかかわらず、すべてが手探り状態で、いろんな方に教えてもらいながら、迷惑もかけながら、進んできました。そんな15年でした。



映画新聞も15年。シネマ・ダールを立ち上げ、1999年11月の休刊まで15年間にわたり発行し続けた映画新聞の発行人兼編集長であり、シネ・ヌーヴォ代表の景山理さん。積んできた経験も知識も、闘ってきた数も何もかもかなわない。映画新聞を読むと、それがとてもよくわかります。しかし、そんなことで萎縮している場合ではない!時代は動いている!これからの20年は私たち世代の20年なのです。かなわなくとも、20年の歴史を引き継ぎ、未来へ向かうのだと、そのための改装工事がいよいよ始まります。



シネ・ヌーヴォ

修復が行われる館内の床面


今回の改装工事は全館改装とかスクリーン数が増えるとかそんな大規模なものではありません。「床面、トイレ、看板、オブジェ」というピンポイントの改装です。



場内の床面は毎年年末にスタッフを中心に友人やお客さんにも手伝ってもらって、ペンキで色をつくり、はけとローラーで塗り足し作業をしていましたが、場所によっては劣化が激しく、追いついていない状態でした。匂いなどもとれにくくなっており、防臭効果のある塗料で清潔な床にしたいと思っています。




女性用トイレの洋式化は2004年に完了していたのですが、男性トイレは和式のままでした。高齢化が進み、お客さんには大変ご不便をかけたと思います。男性トイレの洋式化はスタッフ一同、切に望んでいたことのひとつです。




シネ・ヌーヴォ

シネ・ヌーヴォの館内



シネ・ヌーヴォの看板は上映する映画のショーケースのようなものです。住宅街の中にあるシネ・ヌーヴォは地域の人にとっては日常の隣りにある映画館。毎日通るこの道の、ふと目に入る映画のポスターは、日々の生活の中でちょっと異彩を放つものであればいいなと願っています。その看板も20年間の雨風で痛みが激しく、新しい看板に取り替える予定です。





そして、シネ・ヌーヴォの目印でもある、劇団維新派製作の巨大な薔薇のオブジェは20年間、お客様を迎え、私たちスタッフを見守ってくれました。壁にとりつけられた頑丈なものですが、補修作業を行い、さらに強く安全なものに、そして永遠にシネ・ヌーヴォのシンボルとして大輪の花を咲かせ続けて欲しいのです。






改装工事を行うことは、シネ・ヌーヴォを今まで以上に利用しやすい映画館にし、また新しいお客様を迎えられるように、少人数のスタッフが働きやすい場でもあるように、これからの20年に向けて様々な思いが込められています。





新作を上映しつつも、旧作の特集上映を柱としたここ数年、シネ・ヌーヴォでしか上映されない作品も多くなりました。16mm、35mmの映写機が現役で稼働する映画館が少なくなるなか、シネ・ヌーヴォは毎日、カタカタと映写機の音が響いています。まだ映画の扉を開いていない若い人たちが、どこかで新しい映画と出会い感動した何年か後に辿り着く、そこで半世紀以上前の映画に出会う、個性が爆発した新進監督の映画に出会う、そんな場所を守り続けたいのです。



そして、応援してくださる皆さまとこれからの20年、30年、40年をともに歩み、新たな映画を発見する喜びを分かち合えたら、こんなに素晴らしいことはないな、と思います。どうぞよろしくお願い致します。























山崎紀子(シネ・ヌーヴォ支配人)




1977年、大阪生まれ。 大阪美術専門学校にて3年間、油彩画を学ぶ。在学中に今はなき梅田花月の夜だけ映画館「シネマワイズ」にてアルバイト。2001年、シネ・ヌーヴォに入社。2008年、支配人に就任。以降、数々の特集上映企画に携わる。釜ヶ崎を舞台にした16mm劇映画『月夜釜合戦』(佐藤零郎監督)の宣伝担当。













■『シネ・ヌーヴォ誕生から20周年! 20周年を前に、これからの20年に向けて館内改装工事を行ないます。』MotionGalleryプロジェクトページ







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元アイドルの日本人ラスタ・ウーマンを追ったドキュメンタリー制作プロジェクト、支援募集中 http://www.webdice.jp/dice/detail/5211/ Mon, 25 Jul 2016 11:12:17 +0100
映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』中村保夫監督(左)、iYUMi(右)


日本とジャマイカを股に掛け、ラスタとしてパワフルに生きる日本人女性のドキュメンタリー映画『シスター・ジャップ—ラスタを生きる女』が現在制作中。これにあたり現在、クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにて支援プロジェクトを実施している。webDICEでは監督を務める中村保夫さんからのメッセージを掲載する。




急遽の撮影となった昨年11月は、スタッフの確保が出来ず、監督の中村保夫が自らカメラを手にジャマイカに3週間滞在した。その際の映像を観て、この企画に賛同した映像作家、高橋慎一(『Cu-Bop監督』)、有馬顕(馬車馬企画代表)も制作スタッフとして参加が決定した。



今年はエチオピア皇帝ハイレ・セラシエがジャマイカを訪れて50年という節目であり、7/23にボブ・マーリー所縁の地での重要なナイヤビンギ(ラスタの宗教的な儀式の集会)があるため、追加撮影に赴くことになった。追加撮影、映画の制作、上映、そして、困窮するジャマイカのラスタ・コミュニティへの支援のため、プロジェクトを立ち上げた。



1989年に「モモコクラブ」でデビューを果たしたアイドルがラスタに憧れ芸能界を捨ててジャマイカへ渡り、2度の結婚、4人の出産、最愛の旦那の突然の死……女手ひとつで4人の子を育て、日本とジャマイカを股にかけるパワフルなラスタ・ウーマンiYUMi(アユミ」を描く作品だ。2017年春~夏、渋谷アップリンクにて公開が予定されている。



今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2016年9月30日までの期間で、100万円を目標に資金を募る。集まった資金は、7月末に行われた追加撮影、編集、スタジオ代、宣材の印刷・デザイン、ナイヤビンギセンターへの食料支援などに使用される。詳しくは支援プロジェクトページまで。









中村保夫監督からのメッセージ

「時代によって形を変えていくラスタの思想、

ライフスタイルを映像に収めたい」




僕の本業は書籍の編集だが、なぜか、映像作品を撮らざるを得ない状況に追い込まれ、これまでに3つの作品に様々なカタチで携わり、監督や編集はもとより、今回は撮影まで自分でするようになってしまった。大概が急な話でスタッフを探す時間がないということもあるが、もっとも大きい理由はなんといっても金銭的な問題。売れもしないアンダーグラウンドな企画にスポンサーなどつくわけがないし、ついたとしてもカネを出すからには口も出す、なんてことになったら最悪だ。国家権力から助成金もらって表現するっていうのもカッコ悪いし、実現したかったら資金も労力もすべて手前で用意するしか方法はなかったというワケ。



映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』より

映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』iYUMiと彼女の家族



そういった点では、今はクラウドファンドという手がある。当初の目的を逸脱して商業的に上手に利用する企業なんかは別として、純粋に表現をしたい人と純粋に支援する人が結びついて、後世に残る作品が産まれたとしたらそれは素晴らしいことだと思う。







東京キララ社をご存知の方はお分かりの通り、うちの著者陣は有名無名を問わず他の追随を許さない《大人物》ばかり。そんな人たちから時々、書籍だけでなく映像の企画を持ちかけられる。しかも、その瞬間は有無を言わさず良いも悪いも突然訪れる。そういったモンスター級の大物でなければ行くことさえできない場所、撮影できないシーンだったり、とても魅力的な内容に興味は湧くけど、そういった話は大抵が準備の時間がなく、なにか大きなリスクが伴うものだ。おカネの問題ならまだしも、命に関わる場合もあるし、行ってみなければ撮れるかどうか分からないことさえある。





さあ、それでもやるかどうするか、それを瞬時に決断しなくてはならないため小回りの利かない大きな会社では対応不可能で、結局は僕がやることになる。そうやって毎回、企画書らしきものの一枚もなく、すべてが始まっていく。





「チカーノになった日本人」ことKEI、「エメラルド・カウボーイ」こと早田英志、「日本一のジゴロ」こと伏見直樹。そういったモンスターと肩を並べる人物がiYUMiだと僕は前から思っていた。アメリカの刑務所に10年以上服役してチカーノギャングのファミリーになったり、コロンビアのエメラルド鉱山に単身乗り込み、ゲリラと銃撃戦をしながら世界のエメラルド王になったり、歌舞伎町でナンバー1ホストになって億単位のカネを貢がせマスコミを賑わせたわけでもない。だけど、iYUMiはそういった人たちに引けを取らない風格を醸し出している。共通する点は、どこかに所属したり依存したりしないで自分一人の力で生きていけること、相手によって態度を変えないこと、見ず知らずの他人のことも考えられること。一言で言うと器が大きいこと。






映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』より

映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』より



今の世の中、自分自身で精一杯の人が多いでしょう。自分しか見えてないというか、他人のことを見る余裕も筋合いもないといった感じの人ばかり。それはその人の器が自分一人で一杯になってしまうからで、その器の大きさによっては、自分だけではなく家族、親族、会社……最終的には人類や宇宙のことまで考えられるワケです。



KEIは問題を抱えた少年少女の更生ためにボランティア活動しているし、伏見直樹は日本全国へ旅に出かけた際、47都道府県の繁華街に活気があるかを心配して夜な夜なパトロールし続けた。まるで自分の育ってきた世界に対しての恩返しを実行しているかのようだが、iYUMiにとってそれはラスタであり、ジャマイカなのだ。iYUMiはラスタをもっと多くの人に知ってもらいたいと言う。



「バビロンシステム(資本主義社会で権力者が独占的に搾取する仕組み)の汚れた世の中で、 正義と平等 を基本とした一番古くて新しい生き延びる術がラスタなんだと思うんです。ラスタにはI&Iという思想があって、IとYOU、つまり僕と私といった隔たりはないという考え方です。それは人と人だけじゃなく、自然との共存もそうです。ラスタは宗教じゃないから、時代に合わせて進化していけます。時代時代に応じて、平等で正しい生き方を実践する。ラスタはこれからもずっと続いていきます。そういった存在がいることを皆さんに知ってほしいんです。それが世の中がなにか変わるきっかけになったら嬉しいんです」



ジャマイカの映像を撮りませんかと僕に勧めてきたのも、アイタルフードの教室を開いているのも、iYUMiにとっては同じ目的で、音楽やファッションから入ってくる日本人に、本当にラスタの生活、考え方、意識を知ってもらいたいからなのだ。



映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』より

映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』より



今回、ラスタの人たちにとってジャー(神)の化身とされているエチオピア最後の皇帝ハイレ・セラシエ1世がジャマイカを訪れてからちょうど50年の節目を迎える。当時のことを知り、またラスタ思想を世界中に広めたボブ・マーリーの生前を知るラスタマンは少なくなってきた。ラスタに定義はなく、また明文化もされていない。時代によって形を変えていくラスタの思想、ライフスタイルをこの機会に映像に収めることは、これからも続いていく未来のラスタマンのためにも重要なことだと僕たちは考えている。



映画『シスター・ジャップ』より

映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』より


いくらバビロンシステムを否定するラスタでも、最低限のお金はどうしても必要だ。お金自体が悪いわけじゃない。ナイフだって使い方によっては凶器にもなるし、美味しい料理を作ってみんなを幸せにすることもできるとiYUMiは言う。



前回の撮影の際に、ナイヤビンギ(ラスタの宗教的な儀式の集会)の司祭を務めた長老と、この映画の収益の一部を、ナイヤビンギセンターを継続させるための支援に充てる約束をした。だけど、そういった短期的なことだけじゃなく、iYUMiは貧困から抜け出せない環境で生まれた子供たちへの支援を見据えている。学校に通えない子供たちへの教材の寄付はもちろん、民芸品などの職業訓練をサポートする計画を立てている。その商品を日本でとフェアなトレードをし、ラスタに正当な収入が入るシステムを作るまでが、iYUMiの本当の目標だ。



映画『シスター・ジャップ』より

映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』より



レゲエという音楽を通じて世界中にラスタのメッセージを伝えようとし続けたボブ・マーリーに影響を受けて、遠く離れた地球の裏側にある日本の芸能界からジャマイカに飛び込んだ彼女が、実際に起こしている行動を記録するのが、彼女30年来の知り合いとしての僕の使命なのかと思っている。そのために昔から知り合いだったのかと思うと、すごく合点がいく。



今回、ラスタを紹介するにあたり、様々な立場のラスタに接触してきた。著名なミュージシャンでお金も地位もある人もいれば、人里離れたナイヤビンギセンターで俗世とは無縁に敬虔なラスタファリアンとして過ごす人もいる。そして、キングストンという都会のゲットーで生まれ、代々ギャングとして生きるしか術のない人たちもいるのです。



ラスタの「ONE LOVE」や「I & I」という思想からすると、暴力は許されることではないが、現実として生まれながらにしてギャングとして生きるしかない人がいるのであれば、それもラスタの一面であるし、ドキュメンタリーとして無視することはできないと考えている。




映画『シスター・ジャップ』




今回の支援プロジェクトで使用した、iYUMiが銃を構えた写真を撮影したのは、ゲットーのギャングたちから敵やスパイと思われないように、「お前も銃をかまえろよ」と言われたからだ。そのシーン自体を使うかどうかはこれからの編集次第だが、特殊な環境で生きる彼女のバイタリティを表す画として良いと判断して使用している。












中村保夫 プロフィール



1967年、神田神保町の製本屋に生まれる。千代田区立錦華小学校、早稲田実業中等部、高等部を卒業。九州のデベロッパー、東京の出版社で12年間のサラリーマン生活を全うし、21世紀の幕開けとともに出版社・東京キララ社を立ち上げる。『KEI チカーノになった日本人』(KEI)『死なない限り問題はない』(早田英志)『RANGOON RADIO』(宇川直宏)『ブラックアンドブルー』(根本敬)など他社では実現し得ないディープな企画を続々と出版。本職は編集者だが、必要に迫れば映像も作り、呼ばれればレコードを回す。現在は永田一直が主催する和ラダイスガラージのレギュラーDJとして、国内だけでなく海外(シンガポール)のフロアを席巻。これまでに手掛けた映像作品にはDVD『CHICANO GANGSTA』(監督)、映画『i&i~after Bob Marley 21,000miles』(プロデューサー)、DVDブック『ジゴロvs.パワースポット』(監督・編集)がある。














■『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』MotionGalleryプロジェクトページ






▼日本とジャマイカを股にかけるラスタ・ウーマンを追った映画『シスター・ジャップ―ラスタを生きる女』制作プロジェクト!!


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25席の映画館をガルパン音響監督が監修!田端に9月オープン「チュプキ」のこだわり http://www.webdice.jp/dice/detail/5218/ Mon, 08 Aug 2016 11:18:49 +0100
9/1オープンとなる「シネマ・チュプキ・タバタ」の内観



バリアフリーの映画鑑賞を推進する団体シティ・ライツが月に4日間だけ上映を認められて運営していた「アートスペース・チュプキ(ART Space Chupki)」が、上中里から東田端に移転し、常設の映画館「シネマ・チュプキ・タバタ(CINEMA Chupki TABATA)」として9月1日にオープン。現在、クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにてオープンへ向けた支援プロジェクトを実施している。webDICEでは、支配人の佐藤浩章さんによるメッセージ、シティ・ライツの代表・平塚千穂子さんからのメッセージに続き、佐藤さんによる映画館の設備についての解説を掲載する。




チュプキ

シネマ・チュプキ・タバタの外観




「アートスペース・チュプキ」は視覚に障がいのある方でも、FMラジオで“音声ガイド”や“字幕朗読”を使って楽しめるバリアフリー上映を2014年11月から2016年2月まで月に4日間だけ営業。「シネマ・チュプキ・タバタ」は座席数17席(車いすスペース含む)、補助席を入れると25席を完備し、聴覚に障害のある方のための日本語字幕付きの上映や、定期的に手話活弁をつけた上映なども行い、すべての人に使いやすく心地よい常設の映画館を目指す。




今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2016年8月31日までの期間で、600万円を目標に資金を募る。集まった資金は、オープンのための内装工事や設備の設営に使用される。詳しくは支援プロジェクトページまで。






「シネマ・チュプキ・タバタ」

支配人・佐藤浩章さんによる解説

「“目に映るものが全てはない”という事を信じたい」




シティライツは、視覚障碍者の方と一緒に活動を続けてきたので、音に対してどこまでも探求してこだわりたいと思っておりました。それは“目に映るものが全てはない”という事を信じたい気持ちからだったかもしれません。




チュプキ

佐藤浩章さん




■アートスペースチュプキで使っていた波動スピーカー



上映活動をさせて頂いていた「アート・スペース・チュプキ」は、コンクリートで囲まれた吹き抜け空間でした。コンクリートは音をよく響かせるので、通常のスピーカーで鳴らすと音が回り、落ち着かない音場となってしまい随分と悩みました。そこで物や壁に反響させることによって、広範囲に音を届けることが出来る波動スピーカーを、愛用しておりました。




波動スピーカー

アートスペース時代に使用していた波動スピーカー、M's system MS1001




ですが、波動スピーカーは2chステレオ再生のものでしたので、映画本来の5.1chの音場を作るには、サブウーファーを間にかまして、AVアンプで7.1chまで広げたものを、波動スピーカーの2chから出すといったものでした。そうした苦肉の策で、設計して組み込まれている音場を心地よく鳴らす事が「アート・スペース・チュプキ」では出来ました。



■「シネマ・チュプキ・タバタ」は長方形の空間




音の設計上一番いい形というのは、扇形に拡げていくホール空間のような設計です。
「シネマ・チュプキ・タバタ」の空間は、物理学の観点から音を導き出す防音工事の設計施工の会社『環境スペース』さんに御願いしておりました。狭いスペースで多くの客席を取ろうとするには、横はどうしても直線上となり、長方形の形になってしまいます。



チュプキ



波動スピーカーは、真横についたサラウンドが全域を包むというものですので、「シネマ・チュプキ・タバタ」の長方形の空間ですとどうしても前から出てる印象になります。もともとクラシックや自然音、BGMなどの柔らかい音を出すものが得意なスピーカーでしたので、映画の持つ中音域から低音に関しては出力が弱く、どんな映画でも対応できるような音響設計にしたいと改めて考えました。募金を開始してすぐに、背水の陣で工事着工を進めていましたので、自分が求める音を表現する事は、エゴなのではないかと考えました。ですが、それはすぐに誤りだと思いました。何故ならきちんと夢に描いていたものを表現する事が自分に出来る誠意だと感じたからです。



チュプキ



チュプキシステム図

システム図


チュプキ

チュプキの設計図



■悩んだ末に出会えた第一線で活躍するプロの人達




そんな時に出会えたのが『ガールズ&パンツァー』の音響監督でもあり、世界的にも有名な岩浪美和さんでした。岩浪さんは、私たちの事をフラットに見てくださり、ポータブルオーディオ普及の第一人者、野村ケンジさんを紹介してくださいました。




チュプキ

岩浪美和さんと野村ケンジさん



野村さんはいろいろな音響メーカーと繋がりがある方でしたので、様々な形で音響設備の交渉してくださいました。まず聞いて納得してもらってから……と『D&M』さんの視聴室に連れていって頂き、前は3つ、真横に2つ、後ろから2つ、天井から4つの11.1chの音場を体験しました。



実際に鳴らした瞬間にゾワッと鳥肌が立ち、細胞が疼きました、あまりにも包まれるので怖いという感覚すらありました。風の音がリアルすぎて、風が当たっていないという事がむしろ違和感で、目を瞑っていると他の五感が鋭く尖っていきます。



■音響監督・岩浪美和さんのコメント




チュプキ

音響監督・岩浪美和さん



ひょんなことからお手伝いさせて頂く事になった映画館創り。まずはシティライツの平塚さんと佐藤支配人にヒアリングする所から始めました。欲しいのは「癒やしの音」。そのご要望に沿うよう音響システムを考えていきました。



決して過度な主張はせず優しくお客様を包みこむような音。最終的には11.1chのドルビーアトモス&DTS-X対応の再生環境を実現し、さらに従来のモノラルから7.1chの音声をリアルタイムでアップミックスし11.1chで再生、まるで森の中にいるように360°全ての方向から音に包まれる音場を実現、私達はこれを「フォレストサウンド」と名付けました。



さらに視覚障がいのある方や難聴の方、小さなお子様と一緒の方でも映画を楽しめるよう常設の音声サポートシステムを実装しました。日本一小さくて優しくて最先端な映画館です。ぜひいらしてください。



音響監督 岩浪美和



チュプキ


■募金を始めてから3ヵ月が経って見えたもの




今回映画館を作る過程の中で、様々な人と出会い、無知な私たちの背中を押してくれました。私たちにとってこの3ヵ月間というのは、非常に濃い毎日で、1ヵ月が1年のような長さに感じました。映画という総合芸術を扱うことの難しさと同時に、夢を追うこと、映画という魔法に魅せられた方と人生を交差して紡がれたストーリーは、かけがえのない時間であり、とても幸福な日々です。



シェアしてくださる事、何か出来ないかとお声を掛けて頂く事、頑張れって応援してもらえる事、その全てが私にとって支援です。日本は他国と比べると様々な概念に関して、まだまだ遅れを取っているように思えます。ですが、私はそれをとても明るく感じているのです。それはまだ無い未来を創る事が出来るといった希望そのものです。



チュプキ



その希望を創るのは、現代を生きる私たちが、どう在りたいかに懸っていると思います。「大きな視野で沢山の引き出しを作りなさい、そしてそれを驕らずに分け与える人でありなさい。」と教えられて育ってきました。



チュプキ




ユニバーサルといった言葉は、全世界・全人類といった意味を持っています。皆様のおかげで9月1日にチュプキをオープンさせる目途が立ちました。本当に心から感謝しております。ですが、障害の有無や国籍などを超越して、心で通ずる事の出来る、新しい世界への挑戦は今後も尽きません。オープンしてからが本当のスタートとなっていき、社会が求めるものに敏感に察知して表現していきたいと思っております。私は日本が好きです、そして日本人の豊かな感受性の可能性を信じております。




チュプキ

内装工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」


チュプキ

内装工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」




■ユニバーサル映画館は全ての人を満足させる挑戦



今まで使っていたFMラジオでは、ノイズが気になるため、現在チュプキでは“音声ガイド”と“本編音声”を選択して聴こえるように、座席全てにイヤホンジャックを有線で取り付ける挑戦をしております。まだまだアクセビリティのハードルを下げていく努力を続ける為に、クラウンドファンディングも続けてます。皆様の暖かいご支援・ご協力を賜わりますよう御願い申し上げます。





チュプキ

内装工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」


チュプキ

内装工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」


チュプキ

内装工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」



チュプキ

シティ・ライツの代表・平塚千穂子さん(右)、支配人の佐藤浩章さん(左)













チュプキ






「シネマ・チュプキ・タバタ」MotionGalleryプロジェクトページ:

https://motion-gallery.net/projects/cinema_chupki_tabata








「シネマ・チュプキ・タバタ」

東京都北区東田端2-8-4 マウントサイドTABATA 1F

公式サイト:http://chupki.petit.cc/











【チュプキ・プレオープンイベント】

2016年8月27日 13:00~18:00

会場:北とぴあ つつじホール

東京都 北区東京都北区王子1-11-1

https://www.facebook.com/events/1107837395948881/






▼夢の映画館!ユニバーサルシアターを創ります。




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「いつかは映画館を持ちたい!」という夢を叶える「シネマ・チュプキ・タバタ」オーナーの平塚さんが語る「人生の願望」 http://www.webdice.jp/dice/detail/5193/ Fri, 08 Jul 2016 15:13:22 +0100
工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」館内にて、シティ・ライツの代表・平塚千穂子さん


バリアフリーの映画鑑賞を推進する団体シティ・ライツが月に4日間だけ上映を認められて運営していた「アートスペース・チュプキ(ART Space Chupki)」が、上中里から東田端に移転し、晴れて常設の映画館「シネマ・チュプキ・タバタ(CINEMA Chupki TABATA)」として9月1日にオープンする。これにあたり現在、クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにて支援プロジェクトを実施している。webDICEでは、支配人の佐藤浩章さんによるメッセージに続き、シティ・ライツの代表・平塚千穂子さんからのメッセージを掲載する。



「アートスペース・チュプキ」は視覚に障がいのある方でも、FMラジオで“音声ガイド”や“字幕朗読”を使って楽しめるバリアフリー上映を2014年11月から2016年2月まで月に4日間だけ営業してきた。座席数17席(車いすスペース含む)、補助席を入れると25席の「シネマ・チュプキ・タバタ」では、聴覚に障害のある方のための日本語字幕付きの上映や、定期的に手話活弁をつけた上映なども行い、すべての人に使いやすく心地よい常設の映画館を目指す。




今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2016年8月31日までの期間で、600万円を目標に資金を募る。集まった資金は、オープンのための内装工事や設備の設営に使用される。詳しくは支援プロジェクトページまで。



チュプキ2

工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」、田端駅から7分ほどの小さな商店街の一角に新築のビル、1階を映画館に、2階を音声ガイドのスタジオとして賃貸




チュプキ

平塚さんが1期に参加した「未来の映画館を作るワークショップ」2期参加者と、工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」にて




シティ・ライツ代表・平塚千穂子さんからのメッセージ

「映画館という特別な空間はいつでも生活の傍らにあって、駆け込める居場所」




■映画館が救ってくれた



「いつか映画館を持ちたい」という夢は、1999年 早稲田松竹でアルバイトをはじめた頃から思っていた夢でした。振り返れば、すべて自分の責任ですが、骨を埋める覚悟で働いていた職場でのトラブルと突然の解雇、その後、電撃結婚と離婚を1年に満たない間に経験し、道を見失った時、どこにも居場所がなくなってしまったわたしを、唯一むかえいれてくれたのが映画館でした。気持ちを切り替えて仕事を探す気力もなく、時間があればぐるぐると自責の念に捕われて、鬱々と考えごとをしてしまう。そんな時に、映画に入り込めることは、わたしにとってとても救いでした。スクリーンに映し出される様々な人間模様を眺めて、笑ったり、泣いたり、怒ったり、ゆるしたりしているうちに心が軽くなっていきました。「人に映画をみせる仕事をしたい」と思い始めたのは、この時からです。すると、ちょうど早稲田松竹でアルバイト募集の張り紙をみつけ、採用が決まりました。



チュプキ

工事中の「シネマ・チュプキ・タバタ」にて、平塚千穂子さん




映画館での仕事は楽しくて、ますます映画の世界に惹き込まれました。そして、映画を通じた新しい縁を作っていきたいとも思い、バイトでためたお金でパソコンを購入し、ネットの世界にも飛び出しました。そして出会ったのが、当時、自主映画監督をしていた池田剛さん(地球交響曲第八番・助監督等)が主宰していた「クレイジーランニング」という異業種交流会でした。映画『クール・ランニング』をもじったネーミングからも察しがつくと思いますが、この交流会では、アップル社のCM「Think Different.」のスティーブ・ジョブスの言葉を信望し、夢を持った仲間が集まり、それぞれが本気でクレイジーなことをしていこうとしていました。その流れから派生してできた一つの企画が、チャップリンの『街の灯』を目の見えない人たちに伝えるバリアフリー上映会だったのです。






■目が見えなくても、映画が観たい!



しかし、そもそも目の見えない人が、映画を観たいのだろうか?どうやって観られるだろう?と、壁にぶち当たりました。しかし、『街の灯』のエンディングの、あの感動をどうにかして伝えたいと、色々なリサーチを始め、実際に視覚障碍者の方々に会いにいくことにしました。



中でも衝撃的だったのは、トークパフォーマンスグループ「こうばこの会」との出会いでした。「こうばこの会」は、視覚障碍者自らが脚本を書き、演出も行い、舞台に立ってお芝居をするという劇団でした。その劇団の視覚障碍者の方々が「映画はあきらめていたけど、本当は観たい。」「状況説明の副音声がついていれば、映画だって想像して楽しめるのに…」そんな、意見をくれました。さらに、映画を観ることをあきらめきれず、行動をおこしていた視覚障碍者の女性にも出会いました。その方は、学生の頃から映画が大好きで、目が見えなくなってしまってからもなんとか映画を楽しめないか?と、映画館や配給会社にかけあったけれど門前払い。最後には、飛行機の中で観られる映画だけでもと思い、航空会社にも相談を持ちかけたがダメだった……と話してくれました。「目が見えないというだけで、映画との出会いが遮断されてしまう…」普段、当たり前に映画を楽しんでいた自分の事を思うと、とてもいたたまれない気持ちになりました。わたしは、なんとかならないのだろうか?と思い、国内事情と海外事情を調べはじめました。すると、アメリカでは100館以上の映画館に、視覚障碍者が場面解説(音声ガイド)を聴くためのヘッドフォン設備があり、公開と同時に最新映画を鑑賞しているという事実を知りました。それなのに、日本ではそのような映画館は全くなかったのです。そこで私は思いました。「無いなら自分たちで創るしかない!」と。そして、シティ・ライツ設立に踏み切ったのです。今から15年前のことでした。



音声ガイド研究会

音声ガイド研究会



■映画の音声ガイドとは



見せることに重きをおいて作られている映画を、目の見えない人に、言葉で説明するというのは、そう生半可なことではありませんでした。最初は、視覚障碍者に映画の場面情報を伝えるための、「音声ガイド」の研究から始めました。「音声ガイド」とは、セリフの合間や場面転換の隙間に、視覚的な情報を補うナレーションのことで、時や場所、人物の服装や動き、表情、情景描写などを言葉で伝えます。



といっても、イメージがつきにくいかもしれませんので、一つ例をあげます。「風と共に去りぬ」前編の有名なラストシーン。「音声ガイド」が入るとこうなります。



音声ガイド:地面に崩れ伏し、すすり泣いていたスカーレット、

両手をついてゆっくりと体を起こすと、決然と立ち上がる。

天を仰ぎ、右腕を高く突き上げる。



スカーレット: 神よ ごらんください。私は負けません!…



「目の見えない人が、映画を観たいと思うわけがない。楽しめるわけがない。」そう思っている人もいらっしゃるかもしれません。私もはじめはそうでした。でもこのような「音声ガイド」を、映画のセリフや音、音楽と連動しながら聴くことができたら、映像が見えなくても、想像しながら楽しむことができる。それってとても自由だと思いませんか?もちろん、音声ガイドで映像を100%、その通りに伝えることはできません。そもそも、目が見えている人だって、100% 見えているとは言えません。だから、見えないからといって、0%にすることはないと思います。



「人生は意味じゃない、願望だ」と、チャップリンは言いました。シティ・ライツという団体名は、チャップリンの映画『街の灯』の原題「City Lights」からとっています。「映画を観たい」という気持ち、「一緒に観たい」という気持ちが、音声ガイドを作る原動力であり、ユニバーサルな映画館をつくる原動力にもなっています。



音声ガイドボランティア1

音声ガイドボランティア



「大切なものは目に見えない」

視覚的機能だけで見えるか見えないかを問うよりも、その願いが見せる「想像」の力を信じたいと思うからです。



■映画のバリアフリー化




シティ・ライツでは、まず定期的に、音声ガイドの研究会を開いて、見えるものを言葉でわかりやすく伝え、映画の面白さを伝えるにはどうしたらよいかを、視覚障碍者と一緒に探ることからはじめました。そして、市民映画祭や上映会に、音声ガイド付きのバリアフリー上映を提案・協力したり、劇場公開中の映画を視覚障碍者と一緒に観に行く同行鑑賞会を企画したりするようになりました。当時はまだ映画会社が音声ガイドをつけて劇場公開する「バリアフリー映画」のたぐいは、全くと言っていいほどありませんでしたから、音声ガイド付きの映画鑑賞の機会は、自分達の手で自主的に作るしかなかったのです。







中でも、同行鑑賞会は、ボランティアが視覚障碍者の友人と、劇場公開中の最新映画を一緒に楽しむためにはどうしたらよいか?と、試行錯誤をくりかえし、やっとたどり着いた苦肉の策でした。最初は映画館の客席で、周りのお客様への迷惑を気遣いながら、晴眼者(目の見える人)が視覚障碍者の隣に座って耳元でコソコソガイドをする方法(『ニュー・シネマ・パラダイス』でも、目の見えなくなったアルフレードがトトにコソコソガイドしてもらいながら映画を観るシーンがありましたよね)からはじめました。しかし、すぐに人数が増えてしまったので、周りのお客様にご迷惑とならないように、MDにガイドの声を吹き込んで、イヤホンをタコ足配線して聴いてもらったり、ガイドの声が漏れないように防塵マスクやゴム製の筒を口にあてて話してもらったり、いろいろな試行錯誤をした末、歌舞伎のイヤホンガイドのようにラジオのイヤホンで音声ガイドを聴くスタイルを確立しました。




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シティ・ライツのメンバー


ガイドをする人を、映画館の映写室に入れてもらい、ガイドの話す声を、FMの微弱電波で客席に飛ばして、ラジオのイヤホンで聴いていただく方法です。これで、周りのお客様にご迷惑とならずに、自然と共存できるようになりました。しかし、音声ガイドは、あくまでも観客の1人にすぎない私たちボランティアが行うものでしたから、映像資料が手に入らない場合が多く、劇場公開中の最新映画の鑑賞会を行う場合は、ガイドをする人が、劇場へ何度も足を運び、頭に映像を叩き込む。そして、鑑賞会当日はライブ実況でガイドをするという方法です。ライブガイドは見た映像を瞬時に言葉に変換し、間やリズムをはかりながら、うまく表現しなければならないので、かなりのスキルが要求されました。ですから、誰でも簡単にできるというものではないので、全国各地に広く平等に音声ガイドを普及させ、映画鑑賞機会を広げようとしても限界があありました。




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音声ガイドで使用するラジオ


これらの問題を改善すべく、2006年3月に設立したのが、NPO法人シネマ・アクセス・パートナーズ(以下、CAP)です。CAPの課題は、映画の製作・配給サイドに、字幕や吹替版を作るのと同じように、公式の音声ガイドを製作していただき、作品と一緒に提供していただくことでした。そうすれば、試写会、劇場、DVD、テレビ、はたまた劇場以外のホール上映へと、あらゆる媒体で音声ガイド付きの映画を鑑賞することができるようになります。



そのためにも、映画の著作者をはじめとする映画業界の方々、そして一般の方々に、もっと音声ガイドを理解していただき、認知していただく必要がありました。また、作品に適した言葉で、誤りのない音声ガイドを提供するためにも、一定の経験とスキルを持った人材を育成する。そして、映画製作側のスタッフにも、監修チェックのご協力をいただくなど、今までのボランティア活動とは違った形の制作体制をつくることを目指しました。近年では、CAPの他にも、メディア・アクセス・サポート・センター、Palabra株式会社といったNPO法人や企業が、映像のバリアフリー化を進めており、日本映像翻訳アカデミーのような音声ガイド制作者(ディスクライバー)の養成講座を開講している学校もあるほど普及が進みました。最近では、是枝裕和監督の最近作『海よりもまだ深く』にも公式の音声ガイドが付き、劇場公開時からバリアフリー上映が行われています。



是枝監督トークショー

2012年開催の第5回City Lights映画祭にて行われた是枝裕和監督のトークショーより


 

しかし、まだ本数が少ないのが現状です。日本で劇場公開される映画は年間800本と言われていますが、そのうち、わずか年間10本~20本程度しかバリアフリー化されていないわけですから、これではまだまだ数が少な過ぎます。ですから、今はまだ、点字図書館が制作し貸出しているシネマ・デイジーという耳で聴く映画コンテンツや、ボランティアが自主的に行うライブ音声ガイドも、必要なのだと思います。CAPの設立後、シティ・ライツでもずっと同行鑑賞会や上映会等の活動を続けていますが、映画にハマってしまった視覚障碍者の方々からは「もっとたくさんの色々な映画が観たい。」という願いを感じます。映画を楽しむ視覚障碍者人口は、間違いなく増えていますし、「音声ガイド」が晴眼者にも、「全く邪魔だと感じない。むしろ映画の理解に役立って便利。」と評価されていることも音声ガイドの可能性を広げる1つの突破口になるかもしれません。





山田監督と笑顔

2010年開催の第3回 City Lights 映画祭にて、山田洋次監督




 

わたし自身の体験からも、映画館という音と光の波動に包まれる特別な空間は、いつでも生活の傍らにあって、人生につまずいた時、人間関係や生き方に悩んだ時、現実に疲れてしまった時や、誰かと一緒に夢を観たい時、いつでも駆け込める居場所であってほしい。それは、視覚障碍者に限らず、誰にとっても同じことだと思います。15年間、映画からもっとも遠くにいたと思われていた視覚障碍者の人達と、映画のバリアフリー環境をつくる活動を共に歩んできましたが、聴覚障碍者や車いす利用者、その他の映画館へ行くことに、なんらかの障碍を感じてしまう方々には、どのような環境であれば安心なのか?どんなツールがあればよいか?これから一人一人と出会って学んでいくことですが、どんな人にも当たり前に「映画館で映画を観る」という選択肢があるような、そんな日常に近づけていきたいと思っています。また、映画館が映画を観るだけにとどまらず、お客様が織りなす、出会い、気づき、学び、成長の可能性を広げた面白いコミュニティ空間としても、進化させていきたいと思っています。その夢を実現するのが、ユニバーサルシアター・CINEMA Chupki TABATAです。是非、ご支援よろしくお願いいたします。






PS:映画館のオープンが9月1日(木)に決まりました。



2016年8月27日(土)13時から18時まで、北とぴあ つつじホールにて、プレ・オープニングイベントを行います。上映作品は『かみさまとのやくそく』と、チャップリンの『街の灯』のユニバーサル上映。荻久保監督や矢野デイビットさんのトークショーもあります。8月20日までに、募金にご協力いただいた方には、もれなく招待状をお送りします。詳しくはこちらをご覧ください。













チュプキ






「シネマ・チュプキ・タバタ」MotionGalleryプロジェクトページ:

https://motion-gallery.net/projects/cinema_chupki_tabata








「シネマ・チュプキ・タバタ」

東京都北区東田端2-8-4 マウントサイドTABATA 1F

公式サイト:http://chupki.petit.cc/











【チュプキ・プレオープンイベント】

2016年8月27日 13:00~18:00

会場:北とぴあ つつじホール

東京都 北区東京都北区王子1-11-1

https://www.facebook.com/events/1107837395948881/







▼夢の映画館!ユニバーサルシアターを創ります。


[youtube:BDTqh5sEcgo]







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田端にユニバーサルデザインの映画館を作る!クラウドファンディング実施中 http://www.webdice.jp/dice/detail/5158/ Wed, 15 Jun 2016 10:32:27 +0100
「シネマ・チュプキ・タバタ」の完成予想図



バリアフリーの映画鑑賞を推進する団体、シティ・ライツが運営する映画館「アートスペース・チュプキ(ART Space Chupki)」が上中里から東田端に移転し、「シネマ・チュプキ・タバタ(CINEMA Chupki TABATA)」として9月にオープンする。これにあたり現在、クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにて支援プロジェクトを実施している。webDICEでは、シティ・ライツの代表・平塚千穂子さんとともにこのプロジェクトを立ち上げた、シティ・ライツ事務局員で「シネマ・チュプキ・タバタ」の支配人である佐藤浩章さんから、これまでの経緯や映画館のコンセプト、そしてクラウドファンディングについてメールでメッセージをもらった。



「アートスペース・チュプキ」は視覚に障がいのある方でも、FMラジオで“音声ガイド”や“字幕朗読”を使って楽しめるバリアフリー映画館として2014年11月から2016年2月まで営業してきた。9月オープン、座席数20席となる「シネマ・チュプキ・タバタ」では、聴覚に障害のある方のための日本語字幕付きの上映や、定期的に手話活弁をつけた上映なども行い、すべての人に使いやすく心地よい映画館を目指すという。




今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2016年8月31日までの期間で、600万円を目標に資金を募る。集まった資金は、オープンのための内装工事や設備の設営に使用される。




協力は1,000円から可能で、10,000円で映画鑑賞ペアチケット、5万円で年間パスポート、10万円で上映作品選定権、50万円で1日支配人になれる権利が用意されている。詳しくはプロジェクトページまで。






「シネマ・チュプキ・タバタ」支配人・佐藤浩章さん(26歳)からのメッセージ

「映画館の夢を諦めきれなかったのは“諦めることを終わらせたかったから”です」






私はTSUTAYAで4年間アルバイトをして、映画配給会社に従事したいと志しました。2012年の「第13回TOKYO FILMeX」の映画祭ボランティアを通じて、シティ・ライツに出会いました。それまでの私は就職の為の経歴作りや、インディペンデント映画の世界を広げる事に躍起になっておりました。そんな時に「目が見えない人も楽しめる。「シティライツ映画祭」のボランティアをしてくれませんか?」というお誘いを受けました。聞いた時に凄くワクワクしました。観られないものが観られたら嬉しいし、楽しいに決まってる。それを一緒に共有できる空間っていうのは素敵だなって、共有させてくださいって思ったんです。



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「シネマ・チュプキ・タバタ」支配人の佐藤浩章さん



映画祭でご一緒させていただいた視覚障害者のおじいさんは、ご病気で中途失明されたとおっしゃっていました。「第6回シティライツ映画祭」では1999年公開のアメリカ作品『遠い空の向こうに』が午後から上映されました。ご一緒させていただいた、おじいさんは映画が始まる前から寝てしまいました。「最初の出だしで寝てしまったら展開がわからなくて感動できないだろうな……」と思っておりました。けれどラストシーンで誰よりも泣いて嗚咽して号泣してたのは、そのおじいさんでした。視覚に障害を持った人、晴眼者の方のすすり泣く音が会場いっぱいに溢れていました。前の座席で映画を観ていた私は、振り返り、会場の人の顔を見たときに、言葉にならない光景に感動しました。




その後、「第7回シティライツ映画祭」の実行委員に参加し、益々その世界に深く関わる事になった時に気が付いた事があります。当たり前ではありますが、それは人生の経験というものは、人それぞれ全く違ったドラマと感性の中で生きているということ。

そして心というものは、人間に備わった素晴らしい特性であり、障害の有無に関わらず繋がり合えること。自分にとって最高の映画を観たいといった価値観が一変し、心で映画を観て人と繋がりたいと切に思うようになりました。2014年には、北区上中里の駅前にオープンした、シティ・ライツ自前の上映スペース「アートスペース・チュプキ」の支配人を任される事となりました。そこでは、既存にある映画館にはない事をやってみよう!と木製の椅子を集めたり、ハーブティーを出して映画を観た後に感想をシェアできるようにしました。





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2014年11月にJR上中里駅前にオープンした「アートスペース・チュプキ」の内観





シティ・ライツが13年かけて集めた団体の貯金を使い、映画館の興業をスタートさせたのも束の間。“興行場法”により、月4日の上映に制限されました。私は自分の無知で皆様が頑張ってきたものを、台無しにしてしまったという想いで何度も自分を責めました。




上映作品は、お客様から色んなお話が引きだせるようにと工夫したり、レンタルスペースをしてみたりと試行錯誤を経て得たものは、お金には変換できない特別な時間でした。お客様同士が想いを分かち合って、手を繋ぎ合い涙した瞬間や、ご自身の辛かった体験を吐露するような場面に何度も立ち会う事が出来ました。




振り返ってみると私自身“なんとなく繋がってる”ような感覚で生きてきました。

けれど映画が生み出したドラマには、繋がり合う喜びの音が聞こえるような、忘れられない瞬間が幾つもありました。素晴らしい場面に何度も出会えた上中里のチュプキもオーナーさんの事情により2016年3月に退去する事となりました。





「今度こそ、法的にも認められる映画館を創ろう!」と、移転先を探し始めました。興行場法の規定によると、まず映画館の営業ができる条件は、

・立地条件は、商業地域か準商業地域であること。

・敷地面積が100平米以上の建物であれば、用途変更のため検査済証が必要。(古いビルのほとんどが、検査済証をとっていません)

・消防法では、不特定多数の観客が集まる「映画館」の防火基準は最も厳しい。(2階以上であれば2カ所の避難階段がなければならない。1階の倉庫や店舗物件等でも、飲食店並の防火基準でなければならない)

・映画館の観覧スペース15平米につき1個のトイレを男女別に付設しなければならない。



100件以上を見て回りましたが、上記の条件にあう物件がなく、『映画館』は無理なのではないか?と、何度も挫けそうになりました……。それでも映画館の夢を、諦めきれなかったのは“諦めることを終わらせたかったから”です。きっと皆さんもやりたくても“出来ない”ことが沢山あって、それぞれの生活の中で我慢して、歯を食い縛って生きていると思います。けれど人生は、たった一回しかありません。だからこそ夢を見せたい。映画を観て多くの悲しみや喜びを共有したい。生きている美しさを実感したい。傷が癒えるように少しでも寄り添いたい。それが明日へのちょっとした、本当にちょっとした一歩に繋がっていくと信じているからです。






映画館は諦めかけて、事務所物件を探してるところで田端のビルに出会いました。2Fを事務所に使おうと下見に来たら1Fが店舗物件として空いていて驚きました!見た瞬間に映画館が見えました。






【Google マップ】「シネマ・チュプキ・タバタ」が入ることが決まった北区東田端のビル「マウントサイドTABATA」



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「シネマ・チュプキ・タバタ」の入る北区東田端のビル「マウントサイドTABATA」外観





間取りとまわりの環境をみて、視覚障害者や車椅子ユーザーも来られる!私たちの考えているユニバーサルシアターができる!と確信しました。狭いと自然とお客様と接することが出来ます。場を一緒に育てていく事もまた私たちの喜びのひとつだと思っております。




チュプキ設計図

「シネマ・チュプキ・タバタ」の設計図






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「シネマ・チュプキ・タバタ」工事前スケルトンの状態



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「シネマ・チュプキ・タバタ」内装工事の様子





人間はひとりで生けていけません。明日もしかしたら死んでしまうかもしれません。悲しいことはあるけれど今を生きる人の中に、ほんの少しの灯火を与えることができるなら、人生を賭けた挑戦をしようと決意しました。そして「シネマ・チュプキ・タバタ」設立にあたっての募金を呼びかけ、現在までに、1,000万以上のお金が集まりました、これはもう私の夢ではなくて、夢を応援してくださった全ての人の夢だと思っております。夢見た人に少しでも喜んでもらいたいという想いで、上映環境をより整えようとクラウドファンディングを立ち上げました。皆様のご支援・ご協力、心から御願い申し上げます。



佐藤浩章:1990年1月24日生まれ。流通経済大学社会学部中退 シティ・ライツ事務局員 「シネマ・チュプキ・タバタ」支配人















チュプキ





「シネマ・チュプキ・タバタ」MotionGalleryプロジェクトページ:

https://motion-gallery.net/projects/cinema_chupki_tabata



「シネマ・チュプキ・タバタ」

東京都北区東田端2-8-4 マウントサイドTABATA 1F [googlemaps:東京都北区東田端2-8-4]

公式サイト:http://chupki.petit.cc/







▼夢の映画館!ユニバーサルシアターを創ります。


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バンドマンがカフェをはじめる理由、埼玉・宮原「bekkan」クラウドファンド実施中 http://www.webdice.jp/dice/detail/4993/ Thu, 14 Jan 2016 21:01:38 +0100

インディーズ・レーベル「kilk records(キルク・レコーズ)」と、「kilk records」が2013年から運営する埼玉県さいたま市北区宮原のライブハウス「ヒソミネ」、そしてさいたま市大宮のレコード・ショップ「more records」が共同で新たなカフェスペース「bekkan」を2016年3月にオープン。これにあたり現在、クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにて支援プロジェクトを実施している。webDICEでは「kilk records」「ヒソミネ」のオーナーであり、ポスト・ロック・バンドAureole(オーリオール)のメンバーとしても活動する森大地さんから、今回の新店舗オープンの経緯やショップのコンセプト、そしてクラウドファンディングについてメールでメッセージをもらった。



今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2016年2月22日までの期間で、100万円を目標に資金を募る。集まった資金は、オープンのための初期費用に使用される。詳細はプロジェクトページまで。



「kilk records」オーナー森大地さん

「音楽好きではない人も訪れるカフェを目指す」




──今回のプロジェクト立ち上げのきっかけを教えてください。



「kilk records」の運営を通じて、音楽にお金を払ってくれる音楽ファンが激減していることをしみじみと感じていました。それをさらにうちのレーベルのような音楽が好きな人に絞るとその数はさらに減ってきます。CDの売上だけで見ても5年前から現在まで平均売上枚数は明らかに下がってきています。それを実感していない音楽関係者はまずいないでしょうね。




森大地(Aureole / kilk records / ヒソミネ)

森大地さん(Aureole / kilk records / ヒソミネ)




現在売れている音楽というのは「支持している人の数が多い」ことで、日本ではそういう音楽が文化を牽引している状態です。kilkの大事な理念の一つに埋もれてしまっている素晴らしい音楽を世に広めていくというのがあるんですが、そのためには音楽に興味のない人にも伝えていくことが絶対に避けては通れない道だと考えました。



その打開策の一つが今回の一般の人が訪れるカフェを作るということです。その中で音楽の素晴らしさを伝えていきたいんです。



少し話が逸れるかもしれませんが、いわゆるアングラな位置にいる良い音楽ってアングラであることがカッコ良くてそれを一般の人に広めようとする姿勢ってどこか「ダサイ」みたいな風潮がありますよね。でも冷静に考えてみると、マニアックな音楽が一般の人々を熱狂させる光景って何て素敵なんだと思うんですよね。そしてそのメインストリームに躍り出たマニアックな音楽を、今度はまた違う新たなマニアックな音楽がシーンを塗り替える、そういう風にしていけば音楽文化はどんどん発展していくのかなと。もちろんこういう音楽が表に出るべきという答えはありませんが、今人々がJ-POPを耳にしているのと同じくらい自然な形でたくさんの種類の感動を味わえる環境が形成できれば最高ですよね。



もしかするとこの話って理想論を述べているだけに聞こえるかもしれませんが(笑)、けどそういう方向に実際に動くというのが大事なんです。ちなみに一つ強調しておきたいのは、一般の人を熱狂させるために音楽そのものを変えるというのは決してしないようにしています。それではこれまでのJ-POPシーンと同じことになってしまいます。音楽以外の伝え方の部分だけを変えるということです。



今回の「bekkan」の立ち上げもそうした「新たな伝え方を考える」ということから始まったプロジェクトだと言えます。




bekkan




──開業を埼玉県さいたま市の大宮宮原にした理由は?



宮原にはkilkが運営しているライブスペース「ヒソミネ」があります。「ヒソミネ」と「bekkan」の2つのお店を同じ駅に構えることで、できることが格段に増えてきます。



例えばヒソミネに来るお客さんや出演者の9割は埼玉以外の方なんですが、その方々にとってわざわざ宮原まで来るもう一つの理由としても「bekkan」は存在意義があると思いました。



さらに大宮にあった「more records」が今回のタイミングで「ヒソミネ」と「bekkan」の店舗内に入りますので、宮原という街で音楽三昧の1日を過ごしていただけることになるかと思います。




bekkan

「bekkan」が入居するビルの外観




あと宮原には熱い人やお店がいっぱいなんです。その方達と街自体を巻き込んだ大きな音楽イベントをやろうという話もしたりします。




──「bekkan」立ち上げにあたり、参考にしたお店はありますか?



お店ではないですが、ページアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグの提唱する「サード・プレイス(家庭や職場・学校での役割から開放され、自分らしさを取り戻せる第三の居場所)」の概念は重要視しています。音楽でもなんでもそうですが、今の時代はコミュニケーションをとっていく中で面白いことが生まれていくと思うんです。それはこれからどんな時代になっても決して変わらないことだろうなと思います。




──内装をdownyの中心人物、青木ロビンさんに依頼した理由は?



元々良くしていただいていまして、センスも人間も好きで全面的に信頼できるからですね。downyも青木さんが内装と運営を手掛ける沖縄の「jiji cafe」も最高です。




jiji cafe

青木ロビンさんが手掛ける沖縄の「jiji cafe」の内装





──音楽好きな人だけでなく、様々な人が訪れるカフェというコンセプトのために、どのようなアプローチを考えていますか?



例えば美容室で美容師さんと仲良くなると、趣味を共有したりしませんか?自分の体験したことでは美容師さんがうちのライブを見に来てくれたこともありました。CDも買ってくれました。逆に美容師さんが良いと言っていた映画を見たこともあります。友達の延長のようですが、それこそ口コミです。これまで僕が貸してあげたCDをきっかけにヘビーな音楽ファンになった学生時代の友人もいます。逆に僕にメタルの良さを力説してくれた従兄弟の兄ちゃん経由でメタル好きになった時もありました。それはお店で言うとレコード屋さんがそうですし、実際にライナスレコードなど僕の音楽人生を彩ってくれたレコード屋さんはたくさんあります。その役割を音楽好きではない人も対象にしたカフェが担ってもいいんじゃないかなと。ただしレコード屋さんと違って気をつけなければならないのは、それ目的で来てない人がほとんどだということです。求められてもいないのにオススメしたりするのではなく、何度か通っていただく中で徐々にそういう関係を築いていくのが理想ですね。



bekkan



そうなるためにはまずカフェとしての確かな信頼を得ることが必須です。食事、雰囲気、店員の対応など。でないとそもそもこの話は始まりません。飲食店経営はそう甘くはありませんし、その点は非常に重要なことだと考えています。



あとは店内でライブ演奏を行う場合、「音量設定」「演奏するアーティスト」の二点にとことんこだわるつもりです。そんな当然なことを何をいまさらというかんじかもしれませんが(笑)お客さんは会話を目的に来ている方も当然いますし、音楽を聞いていなくてもいいんです。食事を楽しむ中で自然と生演奏が始まって「あまりにリアルなBGM」というくらいでも構いません。その環境の中でお客さんの耳を惹きつけるのはアーティストの力量次第ですね。もちろんジャンルによっては向きませんし、僕のやっているAureoleもまず向かないと思います(笑)。それもあって「演奏するアーティスト」はこちらでじっくり選定させていただこうかと思っています。



他には店内でかける音楽をすぐに購入できるシステムもきちんと整えることですね。本日の店内プレイリストの紙を配布したりとか。



どれも非常に原始的なことばかりです(笑)。断言しますが決して革新的ではありません。ですがそれこそが日本のインディー・ミュージック・シーンに足りていなかった大事なことではないかと思うんですよね。






more records

more records


──最後に、リターン商品のなかでお薦めを教えてください。



「ヒソミネ × kilk recordsのコラボレーションTシャツ」「bekkanオリジナルのノベルティー工房ことりのミニカップ」「青木ロビン氏と沖縄の洋裁屋dreamiデザインによる特注制作のスタッフ用オリジナルサロン」「jiji cafeデザインの特注のお皿3枚セット」この4商品はかなりオススメです。どれもデザインがとんでもなく良いです。自分なら買います。しかもこれならけっこうな額を出してもいいと思いますよ(笑)。




bekkan

80,000円以上の協力で進呈される「jiji cafeデザインの特注のお皿3枚セット」


特殊なものとしては「バンド、アーティスト、企業向けコマーシャルプラン」「more records奈良輝臣とAureole森大地チョイスの中古CD詰め合わせと解説コメント集」「more records奈良輝臣とkilk森大地があなたの音楽ライフの成功のため2ヶ月間全力サポート」「Aureole森大地の高校生~20代の頃に作った未発表デモや最近の宅録デモを集めた音源集」あたりもオススメです。






bekkan map


「bekkan」MotionGalleryプロジェクト・ページ:

https://motion-gallery.net/projects/bekkan






▼インディーズミュージックに未来を!kilk×ヒソミネ×more recordsが作るコミュニティカフェ「bekkan」


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全米を揺るがした歴史的、同性婚裁判ドキュメンタリー映画クラウドファンディング実施 http://www.webdice.jp/dice/detail/4937/ Wed, 02 Dec 2015 15:50:07 +0100
映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より ©2014 Day in Court, LLC



アメリカの同性婚を巡る歴史的な裁判を描いたドキュメンタリー映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』が、2016年1月30日(土)より公開。現在クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにて劇場公開へ向けての支援プロジェクトを実施している。webDICEでは、映画配給会社ユナイテッド・ピープルのスタッフで、本プロジェクトの発起人であるアーヤ藍さんからのメッセージを掲載する。





今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、2016年1月8日までの期間で、100万円を目標に資金を募る。集まった資金は、日本語字幕製作費、予告編製作費、試写会開催費、チラシ・ポスター製作費、公式サイト開設費、各種宣伝素材製作費、買い付け金の一部として使用される。




協力は1,000円から可能で、公開時に使用可能な特別鑑賞券はもちろん、公式サイトやエンドロールへの名前掲載のほか、4万円の協力で市民上映開催権1日分進呈という自主上映を考えている人に最適のプランも用意されている。詳しくはプロジェクトページまで。





映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』とは




2008年11月、アメリカのカリフォルニア州で結婚を男女間に限定する州憲法修正案「提案8号」が通過し、一度は合法とされた同性婚が再び禁止されることになった。数週間後、この「提案8号」が人権侵害であるとして州を提訴したのが、今作の主人公であるポール・カタミとジェフ・ザリーロ、クリス・ペリー、そしてサンディ・スティアという2組の同性カップル。州での同性婚禁止に対する初めての法的挑戦に対し、LGBT運動の指導者の間でも時期尚早と疑問視されていたものの、ブッシュ対ゴアの大統領選では敵同士だった弁護士テッド・オルソンとデヴィッド・ボイスを味方につけ、裁判に挑むことになった。



映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より ©2014 Day in Court, LLC

映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より、左から、ポール・カタミ、ジェフ・ザリーロ、クリス・ペリー、サンディ・スティア ©2014 Day in Court, LLC




数年に及ぶ訴えや司法制度上の審理を経て、この訴訟は2013年3月、最高裁判所まで持ち込まれる。2013年6月26日、連邦最高裁が同性婚禁止派の上告は無効と却下、28日に連邦高裁が「提案8号」を無効と宣言し、カリフォルニア州で同性婚が再び認められた。監督とプロデューサーを務めるベン・コトナーとライアン・ホワイトは、5年間の彼らとその家族の闘いを追い、その歴史的瞬間までの600時間以上におよぶ記録映像をまとめ、ドキュメンタリーとして完成させた。




映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より ©2014 Day in Court, LLC

映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より ©2014 Day in Court, LLC




本作は2015年、第87回アカデミー賞・長編ドキュメンタリー部門のショートリストに選出。そのほか、2014年のサンダンス映画祭USドキュメンタリー部門の監督賞や、サウス・バイ・サウスウエスト2014の観客賞を受賞した。日本では、『アゲインスト8』のタイトルで2014年の「第23回東京国際レズビアン & ゲイ映画祭」で上映され、今回待望の劇場公開となる。




映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より ©2014 Day in Court, LLC

映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より ©2014 Day in Court, LLC












アーヤ藍さんからのメッセージ

「自分のセクシュアリティと向き合い、考えるきっかけに」




アーヤさん

IDAHO(同性愛嫌悪とトランス嫌悪に反対する国際デー)会場のアーヤ藍さん


あなたの周りに「佐藤」「田中」「鈴木」「高橋」といった苗字の人はいるでしょうか。セクシュアルマイノリティ(性的少数者)と呼ばれる人たちは、これらの苗字の人の総数と同じくらい、日本にいると言われています(*1)。でも、そのことを自らオープンにできていない人も多いため、気づかれていない、知られていないのが実情です。



先日、全国規模で行われた同性婚やLGBTへの意識調査の結果が発表されました。その調査結果では、友人や同僚が同性愛者だった場合、「抵抗がある」と答えた人が約半数にのぼったそうです(*2)。この「抵抗」感はどこから来ているのでしょうか。よく知らなかったり、分からなかったり、あるいはマスメディア等で流れてくる偏った情報の印象から湧いてきているものではないでしょうか。




本作『ジェンダー・マリージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』は、米国・カリフォルニア州で、同性婚の法的容認を求めて裁判を起こした2組の同性カップルを追ったドキュメンタリーです。実在する人物の、生の声と表情、悲しみも怒りも喜びも、すべてそのままに映し出されています。それらに一度触れてみたうえで、何に違和感や抵抗感を覚えるのか、「普通の愛」と何がそれほど違うと感じるのかを、今一度考えてみていただきたいのです。



「知らない」「関係ない」「自分の周りにはいない」。そうして拒絶され、存在を否定され、自分自身のありのままの姿を受け止めてもらえないことで、自ら命を絶っていくセクシュアルマイノリティの人は少なくありません。無自覚のうちに誰かを傷つけ、追いやってしまっているとしたら…。…まずは本作を機に、少しでも知っていただければ幸いです。



一方、映画に出てくる2組の同性カップルが、セクシュアルマイノリティの「すべて」なわけではありません。同じ異性愛者のなかでも、婚姻を特別望んでいないカップルもいます。異性カップルのなかに多様性があるように、同性カップルも多様です。



それだけではありません。よく「LGBT」と総称される、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(生まれながらの性と心の性が異なる人)だけでなく、ノンセクシュアル、アセクシュアル、Xジェンダー……などなど、無限と思えるくらいに幅広いセクシュアリティが存在しています。同じ人のなかで揺れ動くこともあります。明確な枠で区切れるようなものではなく、もっと境界が曖昧な「グラデーション」になっているのだと思います。



私自身は、身近な大事な先輩が「当事者」だったことを機に、その方が生きやすい社会になってほしいと願い、まずは勉強しよう!と関連イベント等に参加するようになりました。でも、知れば知るほど、助けられたのは私のほうでした。



私自身はその頃、ヘテロ(異性愛)な恋愛をしていましたが、そのなかでも、「カップルだったら~~で当然でしょ」「付き合っているなら~~が普通じゃない」といった言葉を投げかけられた時に、たとえ自分が違和感を覚えていても、「きっと自分の感覚が変なんだ」と、その感情を抑えて息苦しく感じました。それが、セクシュアルマイノリティの世界に出会ったことで、「当たり前」や「普通」などなく、自分のそのままの気持ちや姿を大事にしていいのだと教えてもらったのです。そう思えたことで、自分自身がとても楽になって生きやすくなりました。



自分のセクシュアリティと向き合うことは、自分のアイデンティティーや生き方を見つめ直すことであり、そして、大切に想う誰かを、どうしたら大切にできるかを深く考えることでもあるのではないかと思っています。



この映画が、そんな自分自身を見つめ直すようなキッカケにもなれば、幸いです。




(*1)『職場のLGBT読本』(柳沢正和、村木真紀、後藤純一)実務教育出版、2015年。


(*2) 同性婚「賛成」過半数も抵抗感 初の意識調査 NHKニュース

http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/news/html/20151128/k10010322671000.html

https://www.youtube.com/watch?v=hg4HBiwYWI0















映画『ジェンダー・マリアージュ』

2016年1月30日(土)、シネマート新宿・シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー






映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より ©2014 Day in Court, LLC

映画『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』より ©2014 Day in Court, LLC


監督:ベン・コトナー、ライアン・ホワイト

原題:The Case Against 8

2013年/アメリカ/112分



映画『ジェンダー・マリアージュ』MotionGalleryプロジェクト・ページ:

https://motion-gallery.net/projects/gendermarriage

映画『ジェンダー・マリアージュ』公式サイト:

http://unitedpeople.jp/against8/



▼映画『ジェンダー・マリアージュ』海外版予告編


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今度の舞台はバンコク!『サウダーヂ』映像制作集団“空族”の新作は楽園は何かと問いかける http://www.webdice.jp/dice/detail/4892/ Thu, 29 Oct 2015 14:38:18 +0100
映画『バンコクナイツ』撮影現場より



映像制作集団「空族」が、新作『バンコクナイツ』の撮影を10月20日よりタイで開始、MoionGalleryにて2016年秋公開へ向けたクラウドファンディングもスタートした。webDICEでは撮影中の富田克也監督からのコメントを交え、この制作支援プロジェクトを紹介する。



また、『バンコクナイツ』クランクインを記念した空族の特集上映が10月31日(土)より渋谷アップリンクにて1週間開催される。『雲の上』『国道20号線』『サウダーヂ』という「甲府三部作」のほかにも、相澤虎之助の監督作『花物語バビロン』『バビロン2-THE OZAWA-』と、全作品未ソフト化のため、彼らのこれまでの活動に触れることのできる貴重な機会となっている。





伊藤仁、川瀬陽太も出演

「最高のカットを撮り進めている」(富田克也監督)




『バンコクナイツ』の舞台は2015年(仏暦2558年)のタイ。バンコクの片隅で50年間営まれてきた日本人専門の夜の街“タニヤ通り”を訪れる日本人たちとここで生きる娼婦たちを、東南アジアに色濃く残るベトナム戦争の傷跡を背景に描く。日本人男性以外立ち入ることができず、カメラが入ることも許されなかったこの“タニヤ”でオールロケが行われている。




映画『バンコクナイツ』

映画『バンコクナイツ』撮影現場より、富田克也監督、脚本の相澤虎之助ほか撮影スタッフ



前作『サウダーヂ』でタイに楽園を見出した男を描いた空族だが、今回の物語はこの“タニヤ”を皮切りに「ほんとうの楽園とは何か」という問いを投げかけるという。



メインスタッフは前作『サウダーヂ』のメンバーに加え、撮影&音声担当としてヒップホップ・クルーstillichimiyaからスタジオ石とYoung-Gが参加。またキャストについては、『雲の上』『国道20号線』『サウダーヂ』にも出演している伊藤仁の出演が明らかになっており、『サウダーヂ』から引き続いて川瀬陽太も出演が決定している。




映画『バンコクナイツ』より

映画『バンコクナイツ』より、伊藤仁(右)、川瀬陽太(左)



富田克也監督は「タイでの撮影はやはり波乱万丈、混乱を極めておりますが、最強のスタッフ陣、そして現地でのキャスト、協力者と力を合わせて撮影は無事続行しており、最高のカットを撮り進めております」とロケ現場からメッセージを寄せてくれた。



映画『バンコクナイツ』10.21_2

映画『バンコクナイツ』撮影現場より、富田克也監督



今回のタイでのロケ終了後は、2016年1月から3月までポストプロダクションが行われ、2016年秋公開予定となっている。「撮影は、11月上旬に1度目のバンコク撮影を終え、ラオス国境の町、ノンカーイに撮影拠点を移します。その後、12月一杯まで撮影は続き、まだまだ予断の許さない状況が続くものと思われます。引き続き空族、そして『バンコクナイツ』へのご支援、応援のほど何卒宜しくお願い申し上げます」(富田監督)





映画『バンコクナイツ』10.21_5

映画『バンコクナイツ』撮影現場より、脚本の相澤虎之助




映画『バンコクナイツ』10.20_5

映画『バンコクナイツ』撮影現場より



タイ撮影現場での「出演権」特典も、

目標1,000万円の支援プロジェクト




今回のクラウドファンディング・プロジェクトは、映画の制作のみならず配給までを自ら行い、プリント上映にこだわるなど、これまでに独自のスタンスで「映画活動」を続けてきた空族にとって初のクラウドファンディング。撮影とクラウドファンディングを同期させる「デスロード方式」と銘打ち、2015年12月29日までの期間で、1,000万円を目標に、撮影・ポストプロダクション・劇場公開のための資金を募る。



協力は5,000円から可能で、全ての人に『バンコクナイツ』オリジナルステッカー(非売品)、全国共通鑑賞券、boidマガジンで連載中の『バンコクナイツ』の制作準備日誌「潜行一千里」の第1回から第29回までのバックナンバーがpdfで進呈される。



また、航空券・宿泊費込みの今作への出演権を100万円で11月5日まで限定募集。指定日時にロケ現場まで来ることのできる男性に限られるが、台詞のある役どころとのことなので、我こそはという方はぜひ応募してみてほしい。



そのほか、『国道20号線』『サウダーヂ』の劇中で使用された富田克也の私物バイク(60万円)、今作の自主上映権(30万円)、空族と巡る2泊3日『バンコクナイツ』ロケ地“聖地巡礼”ツアー(50万円)など、協力金額に応じて観客と制作者を繋ぐ多彩な特典が用意されている




映画『バンコクナイツ』クラウドファンディング

60万円の協力で進呈される、富田克也私物『国道20号線』『サウダーヂ』劇中車「KAWASAKI Z750FX-Ⅱ」



映画『バンコクナイツ』MotionGalleryプロジェクト・ページ:

https://motion-gallery.net/projects/bangkoknites

映画『バンコクナイツ』公式サイト:

http://www.bangkok-nites.asia/













特集上映:富田克也、相澤虎之助 ─

空族『バンコクナイツ』クランクイン記念

会場:渋谷アップリンク

2015年10月31日(土)~2015年11月6日(金)




上映スケジュール(連日20:20~レイトショー上映)



10月31日(土)『国道20号線』

11月1日(日)『雲の上』

11月2日(月)『サウダーヂ』

11月3日(火)『国道20号線』

11月4日(水)『花物語バビロン』『バビロン2-THE OZAWA-』

11月5日(木)『サウダーヂ』

11月6日(金)『雲の上』



渋谷アップリンク上映情報:

http://www.uplink.co.jp/movie/2015/40403






【上映作品】





『雲の上』



映画『雲の上』より


監督・編集:富田克也

脚本:富田克也/高野貴子/井川拓

撮影:高野貴子

制作:空族

(2003年/カラー/140分/8mm)*オリジナルバージョン



とある地方の片田舎。そのまた小さな、”集落”という呼び名が未だ通用しそうなその土地に、錆の浮いた赤い屋根の寺があった。そしてその寺、紅雲院の赤い屋根に纏わる一つの伝説―。その昔、霧深い夜明けに蛇たちが滝に集まって大蛇となり天に向かって遡り、紅雲院の屋根で体を赤く染めて龍になる、という龍神伝説。紅雲院の跡取りであり、周辺の暴れ者達を束ねていた主人公チケンが傷害の罪で服役、出所してくるところからこの物語は始まる。再び彼の元に集まってくるかつての仲間たち。幼い日に交わされ、果たされず、破られてしまった約束。ヤクザから足を洗いたいという幼馴染を助け、かつて果たされなかった約束を果たすべく、チケンはまるで禊ぎをするかのように伝説に魅入られていく。







『国道20号線』


映画『国道20号線』より



監督・編集:富田克也

脚本:相澤虎之助/富田克也

撮影:高野貴子/相澤虎之助

制作:空族/国道20号線制作委員会

(2007年/77分/日本/16mm→DV)



かつて暴走族だった主人公ヒサシは、同棲するジュンコとパチンコ通いの毎日。シンナーもやめられないていたらくで借金だけが嵩んでゆく。そんなヒサシに族時代からの友人で闇金屋の小澤が話を持ちかける。

「なぁヒサシ、シンナーなんかやめて俺と一緒に飛ばねえか?」

地方都市を走る国道。両脇を埋めるカラオケBOX、パチンコ店、消費者金融のATM、ドンキ・・・。現代の日本、とりわけ地方のありきたりの風景。ヒサシは夜の国道の灯が届かないその先に闇を見つけてしまった。宇宙のようにからっぽで、涯てのない闇のなかで繰り返されるありふれた事件、そしてかつて見たシンナーの幻覚の残像がヒサシを手招きする。

「ほんで俺も行ってもいいの?ホント?ホントに?」





『サウダーヂ』



映画『サウダーヂ』より




監督:富田克也

脚本:相澤虎之助/富田克也

撮影:高野貴子

録音・音響効果:山﨑巌

編集:富田克也/高野貴子

出演:鷹野毅/伊藤 仁/田我流(stillichimiya)/ディーチャイ パウイーナ/尾﨑愛/工藤千枝/デニス オリヴェイラ デ ハマツ/イエダ デ アルメイダ ハマツ/野口 雄介/中島 朋人(鉄割アルバトロスケット)/亜矢乃/川瀬 陽太/stillichimiya ほか

制作:空族/『サウダーヂ』製作委員会


(2011年/167分/日本/35mm)



土方、移民、HIPHOP この街で一体何が起きている?!

不況と空洞化が叫ばれて久しい地方都市。“中心”街。シャッター通り、ゴーストタウン。それがアジアNO1の経済大国と呼ばれた日本の地方都市の現状である。しかし街から人がいなくなったわけではない。崩壊寸前の土木建築業、日系ブラジル人、タイ人をはじめとするアジア人、移民労働者たち。そこには過酷な状況のもとで懸命に生きている剥き出しの“生”の姿があった。






『花物語バビロン』





『花物語バビロン』より



監督・脚本:相澤虎之助

撮影:相澤虎之助/行友太郎

編集:相澤虎之助/池原由起子

音楽:前瀬宗佑/佐々木力也

出演:柳田祐記/安田豊久/行友太郎 ほか

(1997年/8mm/35min)



90年代セカンドサマーオブラブのうねりの中で、日本中からバックパッカーが世界に向けて旅立った。あるものはインドへ、あるものはチベットへ、若手お笑い芸人が世界を旅するテレビ番組が好評を博していた。

その中で1人の若者がタイ北部チェンマイへと旅立っていった。この時期旅立った多くの若者たちは「自分探し」と称した自分たちの旅行が、いったい何の上に成り立っているのかを考えはしなかった。

しかし、歴史はそれを許さない。

1人の若者は、バンコクの安宿である夢を見る。一面のケシの花畑の中で声が聞こえてくる。

「わたしたちを救ってください」

その声にひかれ、若者は20世紀の歴史の闇に葬り去られようとしている東南アジアの少数民族、モン族の村へと向かうのであった。







『バビロン2-THE OZAWA-』





映画『バビロン2-THE OZAWA-』より



監督.脚本:相澤虎之助

撮影監督:相澤虎之助/富田克也/河村健太郎

編集:相澤虎之助

出演:富田克也/伊藤仁/鷹野毅 ほか

(2012年/8mm→DV/46分)



新宿でキャッチをしていたオザワは風営法や都の規制、はたまた自分の不手際で海外へ身をかわすハメになってしまった。

先輩の小沢さんに厄介ばらいのついでにベトナム、カンボジアの女の子でも新規開拓してこいと言われたのだ。

単身乗り込んだベトナムで、オザワはひとりの日本人に出会う。革命家だと名乗る謎の男、古神(コガミ)に誘われオザワはインドシナをさまようことになる。

ほとぼりが冷めるまでテキトーにネタでも吸って女の子と遊んでいようと考えていたオザワであったが、やはり歴史はそれを許さなかった。

硝煙の彼方から声が聴こえる。

「食う米がある限り、わたしたちは戦う」

いつしか、ベトナムの戦場にまよいこんだオザワは、バビロンの銃を手にすることとなる。



※すべてプロジェクター上映










▼映画『バンコクナイツ』特報

[youtube:gcO_fgM_-e0]

▼10月29日更新の現地レポート【vol.4】空族解放宣伝隊「RADIO JUNGLE」

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革命から26年豊かになったチェコの映画祭で豊かな国の囲い屋たちの映画はどう映ったのか http://www.webdice.jp/dice/detail/4803/ Tue, 28 Jul 2015 14:13:06 +0100
映画『蜃気楼の舟』がワールド・プレミア上映されたカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭会場にて、竹馬靖具監督(右)


7月3日から11日までチェコ共和国の西部に位置するカルロヴィ・ヴァリ市でカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭が開催された。カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、チェコ西北部の都市カルロヴィ・ヴァリで開かれる国際映画祭。国際映画製作者連盟公認で、1946年に第1回を実施、東欧最大の映画祭として知られる。今年は日本から、フォーラム・オブ・インディペンデンツ・コンペティション部門に竹馬靖具監督の『蜃気楼の舟』が出品された。webDICEでは、映画祭に出席した竹馬監督によるレポートを掲載する。




『蜃気楼の舟』は、引きこもりの若者の心理を描いた2009年の『今、僕は』に続く竹馬監督の第2作。ホームレスの老人たちを東京から連れ去り、小屋に詰め込み世話をするかわりに生活保護費をピンハネすることを生業とする「囲い屋」の若者たちを描く物語。竹馬監督は、ホームレスも金に換えようとする日本の生の劣化に抗いたいと今作を完成。カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭でのワールド・プレミア上映が実現した。




『蜃気楼の舟』は、世界からインディペンデントの長編映画が集まるフォーラム・オブ・インディペンデンツ・コンペティション部門に選出。今年の今部門グランプリは、アメリカのショーン・ベイカー監督がトランスジェンダーの娼婦を巡る騒動を全編iPhone5Sにアナモレンズを装着し撮影したドラマ『タンジェリン』が受賞した。『タンジェリン』は現在開催中の第28回東京国際映画祭・ワールドフォーカス部門で上映される。『蜃気楼の舟』は受賞を逃した。




『蜃気楼の舟』は現在、クラウドファンディング・サイトMotionGalleryにて、1,000個以上のリターンが用意された、2016年1月渋谷アップリンクほかでの劇場公開のためのプロジェクトを11月30日(月)まで実施している。







硬さではなくしなやかさを磨いていきたい

―カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭に参加して

文:竹馬靖具



カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭の会場に到着した時には、東京の自宅を出てから丸一日が過ぎていた。

イスタンブール乗り換えで6時間近く待ち、プラハ空港からカルロヴィ・ヴァリまでは車で2時間弱かかった。



前作の『今、僕は』以来の海外渡航と映画祭になるので、あれからもう6、7年経過しているのだと飛行機の中でしみじみと感じながら、初めての観客にはこの映画がどう映るのかと、胸が高鳴っていた。




映画『蜃気楼の舟』海外版ポスター

映画『蜃気楼の舟』海外版ポスター



Karlovy Vary International Film Festival 2015

カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭オープニングの会場入口(公式サイトより)



Karlovy Vary International Film Festival 2015

ファンでごったがえすカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭会場入口(公式サイトより)





4年前、脚本を書くことに行き詰まっていた時に、たまたま恵比寿にある東京都写真美術館に行った。

その時の企画展が、チェコスロバキア出身のジョセフ・クーデルカによる「プラハの春」(1968年に起きた社会主義改革運動)をテーマにした『プラハ1968』という写真展だった。

革命という言葉からはかけ離れた世界に育った僕は、なんとはなしに観にいったその展示に動揺し、内面を深く抉られるような衝撃を受けた。

自身の生を機関銃に晒す若者達、デモ鎮圧で殺された人の顔。

今、自分が映画を作ることとはどういうことなのだろうと、改めて考え直すきっかけになったように思う。



そんなチェコの映画祭で『蜃気楼の舟』のワールド・プレミア(世界初上映)を迎えるのは、偶然にしては何か意味を帯びているようだなと、そんな感慨にも耽っていた。




カルロヴィ・ヴァリは、チェコ西部にあり、おそらく車でも数時間でドイツの国境にたどりつけるところにある。

世界的に有名な温泉地だそうだが、裸になってお湯につかるような風呂はひとつも見当たらなかった。

カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、今年で記念すべき50回目を迎える、東欧でも最大の映画祭だ。

ゲストには、リチャード・ギアやハーヴェイ・カイテル、ウド・キアなどの著名人がいた。



会場に到着して手続きをこなし、まずはホテルに向かう。

山間の窪地に敷き詰められるように、建物が建ち並んでいる。

外壁は薄いピンクやグリーン、ブルーなど、添加物がいっぱい入っていそうな海外のケーキのようであり、おもちゃみたいにも見える。

ショパンやゲーテ、ベートーヴェンが訪れた場所らしいが、歴史を感じるというよりは即席で作られたセットの中を歩いているような気もするのだった。




映画『蜃気楼の舟』



映画『蜃気楼の舟』



映画『蜃気楼の舟』




ワールド・プレミア上映での発見





翌日の7月7日、『蜃気楼の舟』のワールド・プレミアが行われた。

247人収容できるホールのチケットが、嬉しいことにソールドアウトし、キャンセル待ちの行列ができるほどであった。
賞を競うコンペティション・セクションに出品されていたので、注目度はあったのかもしれない。




映画『蜃気楼の舟』



映画『蜃気楼の舟』

カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭会場前の竹馬靖具監督




映画『蜃気楼の舟』

映画祭のポスターの前に立つ竹馬監督(右)と主演の小水たいが(左)



『蜃気楼の舟』チームは、プロデューサーの汐田海平と主役の小水たいが、助監督の池田健太、ヘアメイクの寺島和哉さん、アップリンクの浅井隆さんというメンバー。上映前の舞台挨拶があるため、会場入り口の脇で時間になるまで待機していた。


映画『蜃気楼の舟』

映画祭会場にて、『蜃気楼の舟』チーム 竹馬靖具監督、汐田海平(プロデューサー)、小水たいが(主演)、池田健太(助監督)、寺島和哉(ヘアメイク)、浅井隆(アップリンク/配給・ワールド・セールス)





満席になった席を見ると、半分以上が20代前半の若者や学生のようだった。

彼らは26年前にチェコで起きた民主化革命・ビロード革命の時には生まれていなかった、革命を知らない世代である。

この若者たちがこの映画をどのように感じるのか、興味深かった。

僕は、やっと映画を観客に観てもらえるという高揚感と、ほっとするような虚脱感がいりまじる、なんともいえない気分になっていた。





映画『蜃気楼の舟』より

映画『蜃気楼の舟』より




舞台挨拶を終えて、関係者席に着席すると電燈が消え、巨大なスクリーンにメル・キブソンが出演する映画祭のトレーラーが映し出される。

数分でその映像がおわり、『蜃気楼の舟』のファーストカットがスクリーンに出現した。



いくども観ているファーストカットではあるが、満席の会場で観客と一緒に観るそのカットは特別なものだった。

この映画が、僕にとってのクーデルカの写真のように、見る人にとって強く衝撃を受けるものになることを期待しながら、蜃気楼の舟の行き先を見届けた。




ラストシーンがおわり、黒みにエンドクレジットが流れ始める。

会場から拍手と歓声が沸く。

光栄に思う半面、どう受け取ってもらえたのか気になり始めた。

上映後のQ&Aでは、「タイトルについて」「作品をつくるきっかけや何にインスピレーションをうけたか」「主人公の内面は監督自身の投影か」など、かなり多くの突っ込んだ質問が挙がる。



「タイトルについて」質問してくれた青年は、僕の返答をふまえてこう感想をくれた。



「一見、よくある社会問題を扱う映画に見えるが、そうではなく今を生きる人間自身への問いでもあり宿命でもある映画だと感じました。その運命を非常に詩的に表現しているところがタイトルにも反映されていると改めて感じました」




その後も白熱する観客との対話の中で、僕も新たな発見をしていった。

そう実感した時に、もうこの映画は製作者から離れ、観客のものになっていったんだと、深い感動を覚えたのだった。



映画『蜃気楼の舟』

『蜃気楼の舟』カルロヴィ・ヴァリ映画祭での上映に登壇した竹馬監督




Q&Aが終わり会場から出ると、ひとりの青年が話しかけてきた。

チェコ語の通訳を介して青年から「とても刺激的な映画だった。僕は今とても興奮しています」と言われ、かろうじてお礼を言ったが、彼が、直接自分に感想をくれた初めての観客なのだということに戸惑ってしまった。

彼の目がその興奮を物語るほどの輝きを放っていたせいかもしれない。

僕は「このために映画を作ったんだ」ということをあらためて認識することができた。それは心強い励みになった。




映画『蜃気楼の舟』

『蜃気楼の舟』カルロヴィ・ヴァリ映画祭での竹馬監督登壇の様子




その後も、多くのお客さんから直接感想を聞くことができた。

社会主義時代や革命を体験した中年女性からは、「目眩がするほど甘美な映像が私を満たした」と言われ、呆然としてしまった。

「難解な部分はあるが、幻想的シーンの連なりに圧倒された。新たな日本映画の地平を見せてくれた」「今までとは異なる映画の見方をしないといけないところがあり、少し困惑してしまった」などの感想もあった。

この映画を早く日本のお客さんに観てもらいたいという高まる気持ちに駆られながら会場を後にした。



キム・ギドク監督の『STOP』





映画祭では、毎晩ディナー・パーティーに招待される。

他国間の映画製作者やセールスエージェントなどに交流してもらう目的もあるのだろう。
僕は初日にキム・ギドク監督と話す機会があった。

彼も福島原発を題材にした映画『STOP』をワールド・プレミアするために、ゲストとして呼ばれていたのだった。

デタラメな英語で会話をして、よくわからない微笑みを互いに浮かべ合うようなやりとりではあったが、暖かくバイタリティのある人であることはわかった。もちろん彼の作品は、ほとんど観ている。




映画『蜃気楼の舟』

キム・ギドク監督(左)と竹馬靖具監督(右)



翌日、僕は浅井さんと『STOP』を観にいった。

キム・ギドクの原発問題に対する意見と僕個人の意見は一致するが、誤解を与えかねない内容ではあった。

観客は、登場人物が原発の問題にあたふたしていく様子が可笑しいのか、大笑いで見ている。

それは監督の意図したことではないように思われたが、僕はこの複雑なテーマを爆笑させてしまう内容には疑問を感じずにはをいられなかった。



後日、彼に会ってその感想を伝えた。

彼は「この問題を世界が考えなくてはいけないものだ」と返答した。

僕は、その返答を聞いて、もっと言葉が通じ合って深くこの問題を話すことが出来たらと思わずにはいられなかった。

ただ、この複雑な問題をどのくらい真摯に捉えているかはわかった気がした。




映画祭出席を終えて




そうこうするうちに、『蜃気楼の舟』2回目の上映も、会場のCas Cinemaは満杯の観客で埋まり、取材やインタビューなどをこなし、あっという間に翌日の最終日を迎えた。

クロージングセレモニーには、ふだん着慣れない正装をして出席することになった。





映画『蜃気楼の舟』

クロージングセレモニー会場にて、竹馬靖具監督(左)と主演の小水たいが(右)




残念ながら賞は逃してしまったが、貴重な体験をすることができたこと、作品を選出してくれた映画祭に、感謝の気持ちでいっぱいだった。



セレモニーのあとは、『007』のロケーションや『グランド・ブダペスト・ホテル』のモチーフになったホテル・プップでクロージングパーティーが行われた。

なんだか、場違いな気もしたが、アルコールを飲んで余計な邪念を払い、片言の英語でウド・キアと話したりしたのだった。



映画『蜃気楼の舟』



映画『蜃気楼の舟』





ステーキを出すコーナーでは、正装をした男女が行列をなしていた。

庶民的な行列なら日本でもよく見かけるが、タキシードやドレスで着飾っている紳士淑女が肉の周りにたむろする姿は凄まじい猛々しさを感じた。それを観てローストビーフで我慢することにしたのだが、その肉がホルモンのように硬く噛みきれも飲み込むことも出来ず、若干の敗北感をここで感じるはめになった。




映画『蜃気楼の舟』




他の食事にもあまりなじめず、仕舞いには足利のポテト入りソースやきそばが食べたくなる始末だった。

この違和感は、きっと次作に活かされる教訓と捉え、硬さではなくしなやかさを磨いていこうと思いもしたのだった。

そうして映画祭は幕を閉じ、僕はチームの皆と別れ、カルロヴィ・ヴァリを後にし、プラハへ向った。











竹馬靖具 プロフィール



1983年、栃木県足利市生まれ。役者としての活動を経て、2009年、自身が監督・脚本・主演を務めた映画『今、僕は』を発表。2011年、真利子哲也監督の映画『NINIFUNI』に脚本で参加。2016年1月、監督第2作『蜃気楼の舟』がアップリンクの配給により公開。










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http://www.webdice.jp/dice/detail/4844/



どうする"住まいの貧困" 映画から考えるイベント(2015-10-22)

http://www.webdice.jp/topics/detail/4884/












映画『蜃気楼の舟』

2016年1月、渋谷アップリンク他、全国順次公開予定




映画『蜃気楼の舟』より



監督・脚本:竹馬 靖具

撮影:佐々木 靖之

照明:關根 靖享

助監督:池田 健太

編集:山崎 梓、竹馬 靖具

録音:上條 慎太郎

整音:鈴木 昭彦

効果:堀 修生

スタイリスト:碓井 章訓

ヘアメイク:寺島 和弥

プロデューサー:竹馬 靖具、汐田 海平

テーマ曲:「hwit」(坂本龍一『out of noise』より)

音楽:中西俊博

製作:chiyuwfilm

出演:小水 たいが、田中 泯、足立 智充、小野 絢子、竹厚 綾、川瀬 陽太、大久保 鷹、中西 俊博、北見 敏之、三谷 昇 他

配給:アップリンク

2015年/99分/1:1.85/カラー & モノクロ/5.1ch/DCP





MotionGallery特設ページ:

https://motion-gallery.net/projects/SHINKIRO_NO_FUNE/

映画『蜃気楼の舟』クラウドファンディング特設サイト:

http://uplink.co.jp/SHINKIRO_NO_FUNE/funding/

映画『蜃気楼の舟』公式サイト:

http://uplink.co.jp/SHINKIRO_NO_FUNE/




▼KVIFF 2015 (Festival Highlights for Closing Ceremony)


[youtube:TU7rdYDXAwo]]]>
DJジャイルス・ピーターソンのブラジル音楽探求の旅描く映画、劇場公開へ向けクラウドファンド実施中 http://www.webdice.jp/dice/detail/4847/ Mon, 07 Sep 2015 16:12:39 +0100
映画『ブラジル・バン・バン・バン』より、ジャイルス・ピーターソン



クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動企画、今回は、世界的DJジャイルス・ピーターソン初のドキュメンタリー映画『ブラジル・バン・バン・バン:ザ・ストーリー・オブ・ソンゼイラ』の10月9日(土)から渋谷アップリンクでの日本公開を応援するプロジェクトを紹介する。




今作は、世界で最も影響力があるラジオ/クラブDJとリスペクトされるジャイルス・ピーターソンが、10代の頃から愛して止まない「音楽の楽園」リオデジャネイロで作品制作に挑むなか、街へ繰り出し、歴史と文化への理解を深めていく、旅するようにリオの魅力を知ることができるドキュメンタリー映画だ。




今回のプロジェクトは、120万円を目標に、10月1日(木)まで実施。集まった資金は宣伝費、イベント制作費などに使用される。3,000円以上のリターンには全て映画の特別鑑賞券がつくほか、3,500円以上の支援については、そのうち3パーセントが青年犯罪の問題に対応するための国際的NGO団体「Fight For Peace」に寄付される。また劇場公開時も、興行純利益の50パーセントを「Fight For Peace」に寄付することになっている。




渋谷アップリンクでの公開の際には、ジャイルス・ピーターソンによる舞台挨拶のほか、日本におけるブラジル音楽シーンのキーパーソンや音楽家/DJが参加するイベントも行われる。



webDICEでは、プレゼンターであり、今作を配給するラジオ番組制作会社シャ・ラ・ラ・カンパニーの木村真理さんに、プロジェクトを立ち上げた経緯や今作への思いをメッセージとして寄せてもらった。また、ブラジル音楽ライターのケペル木村さん、そしてCIBO MATTOのハトリミホさんからの『ブラジル・バン・バン・バン』への推薦コメントも掲載する。



詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。





「『ブラジル・バン・バン・バン』には、

沢山の奇跡の瞬間が詰まっている」

文:木村真理さん(シャ・ラ・ラ・カンパニー)



木村さん2




2014年春、ロサンゼルスで感じた奇跡



ジャイルス・ピーターソンの日本でのラジオ番組「ワールドワイド」と、番組イベント「ワールドワイド・ショーケース」をプロデュースしてきた繋がりから、この度、映画の配給と宣伝をすることになりました。




昨年3月、ジャイルス・ピーターソンとロサンゼルスで会う機会がありました。彼は丁度、ブラジルを代表する音楽家、セウ・ジョルジとのレコーディングを行うためにロスを訪れていました。セウといえば、映画『シティ・オブ・ゴッド』や『ライフ・アクアティック』に出演し、ロンドン五輪の閉会式にも登場したスーパースターです。ですから、何をするにも、つかまえにくい存在、ということで有名で、来日公演が待ちこがれられているアーティストです。



レコーディング・スタジオから戻って来たジャイルスは、「最高のセッションだったよ。セウは、私が何を求めているのかを、すぐに分かってくれたんだ!」と、大きなスマイルで語ってくれたのが、忘れられません。ジャイルス・ピーターソンは、音楽の話をはじめると、目がキラキラするのですが、あの日、彼の目の輝きを見た時、『ブラジル・バン・バン・バン』には、沢山の奇跡の瞬間が詰まっているのだろうと思いました。

そして、その模様は、映画『ブラジル・バン・バン・バン』の中にたっぷりと収められていました!




映画『ブラジル・バン・バン・バン』より

映画『ブラジル・バン・バン・バン』より



旅と文化交流の要素溢れる、新感覚ドキュメンタリー





アルバム『ブラジル・バン・バン・バン』は、予想通り素晴らしい作品でした。2014年初夏、J-WAVE平日お昼のプログラム「グラティチュード」を中心に、ラジオで鳴り響き、松浦俊夫さんをはじめ、須永辰緒さん、沖野修也さんなど、トップDJの方々も、ラジオ、クラブのフロアーでプレイした、ブラジルワールドカップのもう一つのアンセムのようでした。



そのアルバム制作を映したドキュメンタリー映画が完成したという知らせをロンドンからうけた私は、特別にその作品を見せてもらいました。サンバの血が通った老若男女が刻むリズムとステップに、溢れる笑顔……私は、この映画からブラジルのマジックを感じました。そして、ジャイルス・ピーターソンが紹介するリオのガイドブックのページをめくるように、リオデジャネイロの街の雰囲気がどんどん伝わってくる、いわゆる[音楽ドキュメンタリー]とは違う、新しいスタイルの音楽ドキュメンタリーのスタイルにとても新鮮さを感じました。





映画『ブラジル・バン・バン・バン』より

映画『ブラジル・バン・バン・バン』より






今年、日本とブラジルは外交関係樹立120周年を迎えます。そんな記念すべき年に、沢山のブラジルを愛する方々がいるここ日本で、この作品を上映することは、きっと文化的に意味があると感じ、本プロジェクトを実行しました。ブラジルとアフリカの繋がりについても学べる、音楽が繋ぐ人々の歴史が感じられる内容となっています。






サポートから国際的NGO団体Fight for Peaceへ寄付:

クラウドファンディングで、制作の資金繰り以上の意味を求めた理由




私達は、クラウドファンディングで集まったサポートのうち、3,500円以上の支援のうち3パーセントと興行の純利益から50パーセントを、NGO団体「Fight for Peace」へ寄付いたします。



「Fight for Peace」は、ボクシングやカポエイラ、格闘技のオープンクラスを提供し、個々が持つ可能性を引き出しながら、若者の将来性と社会性を育てる事を目的としています。『ブラジル・バン・バン・バン』の映画監督チャーリー・インマンとベンジャミン・ホルマンが、こちらのNGOの映像を制作していることから、その活動を知りました。




▼Fight for Peace 2015

[youtube:1S1kRgKT3is]


格闘技で精神力を高める、という考え方は、日本にも通じると感じます。そのような理由から、クラウドファンディングを実施するのであれば、映画の日本版制作の資金繰りだけではなく、文化的意味を持つようなアクションにしたい! 私たちは、ジャイルス・ピーターソンと話し合い、利益の一部をリオデジャネイロのスラム街、ファヴェーラのマレ地区にある「Fight for Peace」に寄付をすることを決定。 映画でブラジル文化の継承を担う若者たちのサポートに繋がるようなアクションを実施しています。



「Fight for Peace」の統計によると、世界では毎日565人の若い命が失われています。1年間に約546,000名の若者が非業の死を遂げる中、その75パーセントは紛争地帯外で起きています。若者による暴力や犯罪は地球規模の問題だということも知るきっかけになりました。






映画『ブラジル・バン・バン・バン』より

映画『ブラジル・バン・バン・バン』より、ブラジル音楽界の女王=エルザ・ソアレス




リターンアイテム、こだわりました!



今回、様々な音楽家や音楽評論家のみなさまが、映画の推薦コメントを寄せてくださいました。ピーター・バラカンさんが「見終わったらアルバム『Sonzeira - Brasil Bam Bam Bam』が絶対に欲しくなります」とコメントを寄せてくださったように、映画を見終わったら必ずアルバム『ブラジル・バン・バン・バン』を聞いて、踊りたくなります! ですので今回、ジャイルス・ピーターソンのサインをいれたアルバムもリターン・アイテムの一つにしました。そして、ジャイルス・ピーターソンの永遠のテーマ「Searching for the Perfect Beat =パーフェクトな音を探しもとめて」!文字のプリントしたトートバッグも作りました。キャンバス地で、とてもしっかりしていますので、DJの皆様にも好評です! そのほか、映画のエンドロールに登場できたり、普段はなかなか出来ない経験をご用意しましたので、映画をもりあげることで、みなさんの2015年が、ブラジル音楽のようにご機嫌で、ちょっと特別な年になればと思います。みなさんのご参加と、ご協力をよろしくお願いいたします。



Searching for the Perfect Beat トートバッグ

Searching for the Perfect Beat トートバッグ


新しい事へのチャレンジ



映画を手がけるのは初めての経験ですが、作品と音楽の素晴らしさに胸を打たれ、ラジオプロデューサーの私と、アーティストマネージメントを専門にする吉田千恵美を筆頭に、社内でチームを組んで挑戦しています。



SNSを通して、地方での上映のお問い合わせやご要望をいただいています。今回、クラウドファンディングで無事資金が集まり、東京での上映が成功した際には、あらためて、リオデジャネイロがオリンピックイヤーを迎える来年にでも、たくさんのジャイルス・ピーターソンのファン、そして良質な音楽ファンの方々がいらっしゃる地方での上映実現も視野に入れたいと考えております。










『ブラジル音楽のひとつの「桃源郷」』

ケペル木村さん(中南米音楽/MPB)



ケペル木村さん


ダンス・ミュージックやクラブミュージックに興味のある人で、ジャイルス・ピーターソンの名前を全く知らないという人はいないだろう。DJとしてその名は世界中に馳せており、いまや音楽プロデューサーとしてもその活動の幅を大きく広げている。



ブラジル音楽に関してジャイルスは、我々日本のブラジル音楽ファンと同様にブラジル人ではないので、ブラジル音楽を「外から」の視線で眺め、その地が産み出す音楽の魅力に「取り憑かれ」、その結果として現地に「赴き」、様々なブラジル音楽を「過去という扉を開けて掘り起こし」、それらの中からジャイルス本人が素晴らしいと思ったものだけを「厳選して」世界中の音楽ファンに「知らしめて」くれた。



彼がそういう作業をしていなかったら、ブラジル音楽は、日本国内のことだけを考えても、ここまで普及することはなかったかもしれない。そしてジャイルスによって、あらためて過去の音楽が発掘されたエドゥ・ロボ、マルコス・ヴァーリ、アジムスなどのようなブラジルのアーティストたち(他にもたくさん!!!)も、ジャイルスにはいくら感謝しても感謝し切れないことだろう。



この映画はそんなジャイルスが自分自身のブラジル音楽体験を踏まえた上で、彼が好むプロデューサーやミュージシャンたちとの共同作業で「ジャイルス・ピーターソンが考える理想的なブラジル音楽」を編み出した時のドキュメンタリーである。地元の人間には意外に分からなくて、外部の人間でないと見えて来ない部分などを、ジャイルスなりに上手に盛り込んでおり、ブラジル音楽のひとつの「桃源郷」を達成している。



制作現場での様々な出会いは「奇跡」を生んでいくが、ましてや、そこがブラジルならば「偶然の出会い」はいつしか「必然」に変わって行く。その現象をきちんと記録した映像を見ていると、こちらにもその時のジャイルスの感動が実感として伝わってくる。ジャイルスが映画の中で自ら語っているように、彼がプロデュースした作品『Brasil Bam Bam Bam』はきっと「自分の想像を超えて良い作品」になったのだ。



通常、僕らがミュージシャンを見たり聴いたりするのは劇場やライヴハウスでの公式なパフォーマンスだが、スタジオ内で制作中の彼らの表情がいかに真剣なのかを知ることもとても大切なことで、そういう素顔の部分をこの映画の中で見られるのはとても嬉しい。



この映画の全編を通じて根底に流れているのは、リオデジャネイロという街特有の、ものすごくポジティヴなエネルギー感だ。ブラジル音楽に憧れた者たちは、リオに到着して初めて、自分が音楽を通してその前向きなエネルギーに「憧れている」ことを理解する。ジャイルスの眼と耳という、とても適切な「フィルター」を通した映像は、ブラジルをまだ知らない人間にブラジルの魅力を伝えるには充分過ぎるパワーがあると云えるだろう。出来ることならば、もっともっとこの続きを観てみたいものだ。




ケペル木村の音楽生活

http://kepelkimura.blog.so-net.ne.jp











『本当に貴重な映像、サウダージがいっぱい』

ハトリミホさん(CIBO MATTO)



ハトリミホさん




私は、ブラジルと、何かしら、縁があります。

この映画にも、友達が出ていて、とっても嬉しくなりました。

私は、ニューヨークに住んでいますが、ブラジル人の友達と音楽を作ることがあります。ラッキーなことに、色々、彼らからブラジルの音楽、事情、歴史を聞かせてもらってきました。私は、ブラジルの音楽から多大な影響を受けています。



実際のリオは、もちろん、色々な問題も抱えていますが、この映画は、ジャイルス・ピーターソンのポジティヴで明るいエネルギーが出ていて、テンポが良くて、好意が持てます!(現実的なことは、最後に出てくるエリザ・ソアレスの涙が、全て物語っていると、私は思いました)



アフリカから来たそれぞれの種族が、奴隷としてブラジルで集まって、それぞれ違ったリズムが混ざって生まれたサンバのリズム。とても重い歴史の中で生まれた、生命力のある叡智だと私は思っています。私は、そこに、洗練された力強さを感じます。

ブラジルに行き着いたアフリカ人達に、疎外のエネルギーがあったら、音楽って生まれてこなかったのではないかと思います。



個人的な話ですが、この映像の中でエリザ・ソアレスが最初に歌った曲「NANA」は、私も歌ったことがあるのですが、この映画に出てくるバージョンには、驚かされました。すごくアヴァンギャルドだからです。私はアヴァンギャルドの発祥地とも言えるようなニューヨークに住んでいますが、エリザ・ソアレスのほうが、何倍も、アヴァンギャルドですし、より自由でした。私は脱帽しました!



そして、彼女が最後に歌った曲「Aquarela Do Brasil(ブラジルの水彩画)」、これは、私も大好きな歌ですが、こんな風に歌うなんて、全く想像していなくて……。

彼女の瞳から涙が……。

なんて美しいのだろう……。



私も、感動して、涙が出てきてしまいました。



ブラジルの歴史、現状、空気を知って歌ったら、本当は涙が出るのが当たりまえなのかもしれません。彼女は、そういう純粋な心で歌っているのかと思うと、本当にありがたくて、貴重な映像だと私は思いました。サウダージがいっぱいです。



CIBO MATTO

https://www.facebook.com/OfficialCiboMatto



ハトリミホ

https://www.facebook.com/mihohatori












映画『ブラジル・バン・バン・バン』フライヤー




映画『ブラジル・バン・バン・バン:ザ・ストーリー・オブ・ソンゼイラ~ジャイルス・ピーターソンとパーフェクトビートを探しもとめて~』

2015年10月9日(金)~10月16日(金)

渋谷アップリンクにて公開





監督・製作:チャーリー・インマン、ベンジャミン・ホルマン

出演:エルザ・ソアレス、マルコス・ヴァーリ、ナナ・ヴァスコンセロス、ウィルソン・ダス・ネヴィス、セウ・ジョルジ、ガブリエル・モウラ、アルリンド・クルス、エヂ・モッタ、アレシャンドリ・カシン、エマヌエリ・アラウージョ、マルチナーリア、ロブ・ギャ
ラガー、ジャイルス・ピーターソン、ほか

原題:Brasil Bam Bam Bam: The Story of Sonzeira

2014年/イギリス、ブラジル、アメリカ/英語 & ポルトガル語/カラー/70分




MotionGallery特設ページ:

https://motion-gallery.net/projects/BBBMovieJP

映画『ブラジル・バン・バン・バン』公式サイト:

http://www.brasilbambambam.jp/

渋谷アップリンク上映情報:

http://www.uplink.co.jp/movie/2015/39489




▼映画『ブラジル・バン・バン・バン:ザ・ストーリー・オブ・ソンゼイラ~ジャイルス・ピーターソンとパーフェクトビートを探しもとめて~』プロジェクト紹介動画


[youtube:iQR9HzJMdE8]

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田中泯出演、映画『蜃気楼の舟』リターン総数1,000以上の〈体験型〉クラウドファンド始動 http://www.webdice.jp/dice/detail/4844/ Fri, 04 Sep 2015 17:19:44 +0100
映画『蜃気楼の舟』より




クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は、竹馬靖具監督の新作『蜃気楼の舟』の全国公開を応援するプロジェクトを紹介する。



今作は、現在、NHK連続テレビ小説「まれ」に出演中のダンサー田中泯さんが出演、7月に開催された東欧最大の映画祭であるカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭に正式出品された。国内初公開の『蜃気楼の舟』の本編映像を含む、特別動画も公開されている。



▼映画『蜃気楼の舟』MotionGallery特別動画

[youtube:3oMZhRDSZOE]

今回のプロジェクトは、250万円を目標に、9月7日(月)から11月30日(月)まで、「『蜃気楼の舟』を体験として届けること」をテーマに実施。『蜃気楼の舟』の特別鑑賞券につけ加わるかたちで、体験型イベントへの参加券や出演者・スタッフ・関係者が持ち寄った品々など累計1,000個以上のリターンが用意されている。



田中泯さんが自身の著書にサインを付けたものを計100点、小野絢子さんはサイン付きのトゥーシューズを持ち寄り、他にもアップリンク代表・浅井隆のフリーマーケット、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のオフィシャルグッズ、ヘアメイクスタッフによる出張カットサービス、高級アンティーク等、ユニークなリターンが揃っている。




集まった資金は、制作物の費用、印刷費、郵送費、HP制作、デザイン費用、試写会やイベントの運営費、予告編制作費、地方宣伝費、人件費、公開の際の音楽使用料金などに充てられる。




詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。





映画『蜃気楼の舟』より

映画『蜃気楼の舟』より



リターンの一例





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田中泯さんのサイン入り書籍

田中泯,松岡正剛(共著)「意身伝心: コトバとカラダのお作法」 田中泯サインつき(5501円)

田中泯「僕はずっと裸だった:前衛ダンサーの身体論」サイン付き(6002円)












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小野絢子さん着用 撮影で使用した「青い服の女衣装」(15005円)

小野絢子さんトゥーシューズ(サインつき)(25001円)











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『蜃気楼の舟』ロケ—ション・雨池(八ヶ岳)登山ツアー(8004円)


見渡す限りの大草原での鹿の解体ワークショップ(15003円)など、体験型イベント付きのリターン











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小野絢子さん出演、新国立バレエ団鑑賞イベント 優先予約券(3501円)

俳優道を聴く。北見敏之を囲んで話す会@新宿のバー(4501円)(3501円)
など、出演者関連イベント付きのリターン







ほか、1,000以上のリターンの詳細は特設サイトをご覧ください。

http://uplink.co.jp/SHINKIRO_NO_FUNE/funding/











映画『蜃気楼の舟』ストーリー




映画『蜃気楼の舟』より

映画『蜃気楼の舟』より




主人公の男は、母親を亡くし、父親に捨てられた過去を持つ。友人に誘われたことがきっかけで囲い屋で働き始め、能面のように無感情になった男は、ただ毎日を浪費していた。ある日、ホームレスのひとりに、自らの父を発見する。それまでホームレスたちをモノのように扱ってきたが、父との再会により、初めて揺れ始める男。男の揺れは、彼の日常ともう一つの別の世界とが交わるきっかけとなる。導かれるように父を連れて囲い屋を出た男は、自身の欠落を問うために車を走らせる。現実ともう一つの世界の間を揺れ動くドライブの中で父と訪れた廃墟には、母親の幻影がさまよっていた。そして、並行して描かれる、現実と幻想の狭間を航海する一艘の舟の意味するものとは……。













『蜃気楼の舟』竹馬靖具監督からのメッセージ

「あなたへ」




映画『蜃気楼の舟』竹馬靖具監督



映画『蜃気楼の舟』を監督した竹馬靖具です。この映画をどうしてもあなたに観てもらいたいという想いからメッセージを書きました。これを読んで、少しでも映画を観たいと思ってくださったらとても嬉しいです。



僕は、北関東の地方都市に生まれ育ちました。高校卒業後、ただ漠然と何かをしてやろうという気負いのままに、曖昧な夢を描いて東京へ出て来ましたが、実際に東京に来てアルバイト生活をしてみると、そんな想いはすぐに消えてなくなってしまいました。ただがむしゃらに働き、とにかく稼いで先に進もうとした結果、故郷にいたときのように友人や恋人もでき、ある程度ひと並みの生活は出来るようになりました。



しかし、生活は満たされても、周りに溢れる物や人は、際限なく欲望を刺激するばかりで、僕の渇きはどこまでも収まらなくなっていき、浅ましい感情が増幅していくのを感じました。そのうちに僕自身の実体も希薄になり、自分が物のようになっていく感覚が蓄積されていったのです。けれども、自分は元々そんな存在に過ぎなかったのではないか、と自身に問うと、否定することはできません。



故郷を思い返せば多少なりとも思い出はあります。友人、恋人、家族などと過ごしたごく普通の生活。地方都市によくある国道沿いのマクドナルド、その他もろもろのチェーン店のオンパレード。直ぐに思い浮かぶのは、マクドナルドで家族全員で食べたビッグマック。 あの時はすごく美味しかった気がします……が、このファスト化された環境で過ごした無数の記憶は、当時から現在に至るまで、自分を支える芯になっていくことはありませんでした。



この事実は、今改めて考えてみると、どこまでも画一化された場所と感覚がまんべんなく浸透している現れのように思います。それは、どこにいても自身が抜け殻のような亡霊であって、生きているのか死んでいるのかわからないような存在であることの証明のような気がしました。そしてそんな感覚が、どこまでもそれらの場所を伝って、広い範囲の人に、浸透してきているようにも思えました。 ある日、テレビのニュースで「囲い屋」という悪徳業者の特集を見ました。どこにも行くことのできない若者と老人達が金の為に自身の感覚や良心をなくしていく。これは、東京に来て、生活のために自身の内面を加速的に劣化させていった自分と変わらないじゃないか、と思ったのです。



囲い屋の若者達が抱くこの感覚。人間を物や家畜のように扱ってしまい、なんの良心の呵責も起こさない。これは僕の感覚とも地続きだなとも感じました。そうして僕は、囲い屋で働く若者を主人公にして脚本を書き始めたのです。



主人公は自身の生が摩耗しきったことにも気づかない若者です。この若者が生を取り戻すことができるのか?その地平に何が見えるのかを描くことが大事だと思っていました。そして、劣化した人間の渇望を、異空間で彷徨う主人公に投影させていきました。それを囲い屋の生活と対比させていくことで、まだ残されているであろう生命の輝きの源泉とでも言える、ある感覚、強い想い、美しさ、原風景、原体験、もしくはそれらがすべて合わさった複雑なイメージ、像を捉えようと思ったのです。



僕には忘れられないとても大事な映画がいくつかあります。その映画を観ていると、ある感覚に捉われます。とても懐かしく、自分の奥深くに沁み渡っていく満ちたりた感覚です。それは失くしてしまった、または消えてしまった何かを、呼び覚ましてくれます。生まれ育った場所や周辺を辿っても、この感覚は決して訪れません。この再会は、刺激に刺激を重ねて、尊い記憶の始まりや印象を失くしてしまったかもしれない、という恐ろしい気づきが伴う瞬間でもあります。失われた感覚に触れる、その体験を、僕はあなたにこの映画を通して感じてもらえることを願っています。それは自分が劣化の一途を辿るなかで、唯一見つけることができた可能性です。自分を信じられた要素はこのような感覚でしかなく、人間だれしもが持っているはずの感受性に希望を見出せた瞬間でもあったのです。



その感覚を喚起させるのは、映画に流れる独自の時間によって現れる、イメージの力であると信じています。










映画『蜃気楼の舟』

2016年1月、渋谷アップリンク他、全国順次公開予定





映画『蜃気楼の舟』海外版ポスター

映画『蜃気楼の舟』海外版ポスター



監督・脚本:竹馬 靖具

撮影:佐々木 靖之

照明:關根 靖享

助監督:池田 健太

編集:山崎 梓、竹馬 靖具

録音:上條 慎太郎

整音:鈴木 昭彦

効果:堀 修生

スタイリスト:碓井 章訓

ヘアメイク:寺島 和弥

プロデューサー:竹馬 靖具、汐田 海平

テーマ曲:「hwit」(坂本龍一『out of noise』より)

音楽:中西俊博

製作:chiyuwfilm

出演:小水 たいが、田中 泯、足立 智充、小野 絢子、竹厚 綾、川瀬 陽太、大久保 鷹、中西 俊博、北見 敏之、三谷 昇 他

配給:アップリンク

2015年/99分/1:1.85/カラー & モノクロ/5.1ch/DCP





MotionGallery特設ページ:

https://motion-gallery.net/projects/SHINKIRO_NO_FUNE/

映画『蜃気楼の舟』クラウドファンディング特設サイト:

http://uplink.co.jp/SHINKIRO_NO_FUNE/funding/

映画『蜃気楼の舟』公式サイト:

http://uplink.co.jp/SHINKIRO_NO_FUNE/



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ニール・ヤングとも反モンサントで協力、映画『遺伝子組み換えルーレット』日本語版製作の支援募集 http://www.webdice.jp/dice/detail/4819/ Mon, 10 Aug 2015 14:35:12 +0100
映画『遺伝子組み換えルーレット』より



クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は、遺伝子組み換え作物の健康に与える影響をテーマにしたドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット』日本語版製作を支援するプロジェクトを紹介する。




NGO法人・アジア太平洋資料センター(PARC)がプレゼンターを務める今回のプロジェクトでは、今作の日本語版DVD発売のために、130万円を目標に2015年10月30日23:59までクラウドファンディングを行なう。既に版権交渉は終了しており、集まった資金は、翻訳、字幕つけの作業、商品化のために使用される。



このクラウドファンディングでは、3千円から15万円までの支援を受付中。すべての金額に「完成記念上映会ご招待」と「エンドロールにお名前記載」が進呈されるほか、1万円以上で「完成作品DVD 1枚プレゼント」、3万円ではさらに「本作品の上映会1回分のイベント上映可能な権利」と「雑誌『オルタ』1年間定期購読プレゼント」、5万円で「作品パッケージ、フライヤーにお名前記載」、そして15万円で「本作品の上映が3年間何回でも可能な権利」と、映画の自主上映イベントや、遺伝子組み換え食品の問題についてのシンポジウム開催を考えている方には最適の特典が用意されている。




webDICEでは、このプロジェクトを企画する、生産と消費の場をつなぐ交易を通じてオルタナティブな社会のしくみを作る活動を行うオルター・トレード・ジャパン(ATJ)の政策室室長・印鑰智哉(いんやくともや)さんからのメッセージを紹介する。




詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。




アメリカの遺伝子組み換え作物の健康被害の現状を描く

映画『遺伝子組み換えルーレット』


遺伝子組み換え作物の専門家として国際的にも著名なジェフリー・M・スミス監督によるドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』は20012年アメリカで製作され、遺伝子組み換えによる健康被害を科学的に立証する内容が大きな話題となった。今作は、①遺伝子組み換え作物の健康に与える影響に焦点を当てたものであること ②政府の規制機関で関わっていた研究者の証言、医療関係者など専門分野の多数の証言によって構成されたものであること ③子どもの健康被害に直面した親、医療関係者などの証言、遺伝子組み換え飼料による家畜の健康問題、そして非遺伝子組み換えに切り替えた場合の改善など、遺伝子組み換えの危険のみならず、その具体的解決策まで示唆する内容となっていること を特徴としている。



映画『遺伝子組み換えルーレット』より

映画『遺伝子組み換えルーレット』より、ジェフリー・M・スミス監督



本作品の発表以降、その内容を裏付ける研究レポートも多数発表。WHOの外部研究機関である国際がん研究機関(IARC)も今年2015年3月20日に、モンサントの農薬グリホサートの発ガン性を認めている(動物実験での発ガン性が確実であり、人への発ガン性に関してはデータ不足である2Aのカテゴリー認定)。



映画『遺伝子組み換えルーレット』より

映画『遺伝子組み換えルーレット』より


映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』公開時に掲載した白井和宏さん(市民セクター政策機構・専務理事)によるトーク・レポートで紹介したように、遺伝子組み換えに関する日本の食品表示制度には大きな抜け穴があり、対象となるのは、納豆、豆腐、味噌など30種類の食品に原料に使用された場合に限られる上、重量の5パーセント以下であれば表示しなくてもよいため、実際には様々な遺伝子組み換え原料が相当、含まれていても表示されない。そしてアメリカから輸入したトウモロコシや大豆、砂糖大根を使用しているため、遺伝子組み換えの可能性がかなり高いのですが、「遺伝子組み換え原料が含まれています」とは記載されない。



そのため日本の消費者も知らない間に遺伝子組み換え大豆やトウモロコシを直接間接に食べているのが現実であり、アメリカで起きているこうした健康への変化は日本でも起きる、あるいはすでに起きている可能性がある。



私たちの食生活に何が起こっているのか。その現実に気づき、一緒に考え、声をあげるための材料として観てもらいたいと、今作の日本語版製作は進められる。




今回の日本語版製作プロジェクトを行うにあたり、作品から、アメリカで人気ブランドの粉ミルクから検出された遺伝子組み換えの割合について説明するシーンが公開されている(字幕は仮の状態です)。




▼映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』からのワンシーン


[youtube:eLxKPB2GVos]

米国のほとんどの粉ミルクが牛成長ホルモン注入のものと、遺伝子組み換えコーン由来の原料で作られています。独立した研究所の試験で主要な4つの粉ミルクから、相当な量の遺伝子組み換え大豆成分が検出されました。シミラック・ソーイが42%、ガーバー・グッド・スタートが48%、エンファミル・プロソビーが49%、ウォールマート・ソーイが66%。米国政府は200万の新生児に無料の粉ミルクを提供します。しかし、提供するのは遺伝子組み換えの粉ミルクだけです。







印鑰智哉(オルタートレード・ジャパン:ATJ)さん

「日本の粉ミルクも遺伝子組み換え原料が検出される可能性がある」



印鑰智哉さん




監督のジェフリー・M・スミス氏は遺伝子組み換え問題を批判する米国のオピニオンリーダーとして長く活躍しており、非営利団体Institute for Responsible Technology(責任ある技術研究所)を主宰しています。



日本でも『偽りの種子-遺伝子組み換え食品をめぐるアメリカの嘘と謀略』が出版されており、日本でも講演されたことがあります。最近ではモンサントを批判するアルバム『ザ・モンサント・イヤーズ』をリリースしたニール・ヤングの反モンサント・コンサートツアーに遺伝子組み換え問題の講演者として同行するなど、米国で遺伝子組み換え反対を語る上でキーとなる活動をしています。




the monsanto years


ニール・ヤングとジェフリー・M・スミス監督によるツアーのフライヤー



このドキュメンタリー映画ではこれまで語られてこなかった医学者、健康問題の専門家、さまざまな疾患を持つ子の親、獣医、家畜の健康問題に詳しいジャーナリストが登場し、遺伝子組み換え食品によって、人びとや家畜にどんな健康の異変が起きているのか、どのように解決できるのかが語られています。



米国では胃腸の疾患、アレルギー、炎症性疾患、不妊、ガン、自閉症など多岐にわたる疾患に苦しむ人がこの約20年間にわたり急激に増加しました。特に子どもたちの健康に対する懸念は急激に上昇しています。



この20年間、何が変わったのでしょうか? 1996年に商業的大規模栽培が始まった遺伝子組み換え作物がこの変化を引き起こしている可能性について科学的な調査を元にしたさまざまなストーリーが語られています。



現役の医学者、医療関係者は職を奪われるのでなかなか声が出せない現実があります。しかし、それでも出てきたこれだけの証言は衝撃的なものです。



そして、食を変えることで何が起きたか? 子どもの健康を取り戻せた親たちの涙と笑顔、そして農民の決意をぜひ見ていただきたいと思います。



今作では、アメリカで人気ブランドの粉ミルクから検出された遺伝子組み換えの割合について説明するシーンがありますが、日本で発売されている粉ミルクについては、国内メーカーは基本的に非遺伝子組み換えの原料を使うというポリシーをかなり前ですが、確認しています(生協などからの話)。ただし、その原料は多くが米国産とかんがえられるので検査してみたら検出される可能性はあるかもしれません。調達が毎年難しくなっている(高くなっている)、はずなので、実際に製造会社に質問状を送るなど考えた方がいいかもしれません。
















映画『遺伝子組み換えルーレット』より


映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』




監督:ジェフリー・M・スミス

原題:Genetic Roulette – The Gamble of Our Lives

2012年/アメリカ/85分



MotionGallery日本語版製作プロジェクトページ:

https://motion-gallery.net/projects/parc201507



『遺伝子組み換えルーレット』公式サイト:

http://geneticroulette.net/







▼映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』海外版予告編


[youtube:Yq0HMBQfdI0]








『偽りの種子』


『偽りの種子―遺伝子組み換え食品をめぐるアメリカの嘘と謀略』

著:ジェフリー・M・スミス

翻訳:野村有美子、丸田素子



1,728円(税込)

家の光協会

Amazonでの購入は下記より

http://www.amazon.co.jp/dp/425954666X/webdice-22











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映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』

渋谷アップリンク他全国順次公開



監督:ジェレミー・セイファート

出演:セイファート監督のファミリー、ジル=エリック・セラリー二、ヴァンダナ・シヴァ

配給:アップリンク

2013年/英語、スペイン語、ノルウェー語、フランス語/85分/カラー/アメリカ、ハイチ、ノルウェー



公式サイト:http://www.uplink.co.jp/gmo/



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瀬戸内の手作り映画祭「宇野港芸術映画座」でイスラムを知る http://www.webdice.jp/dice/detail/4802/ Mon, 27 Jul 2015 22:25:16 +0100
「宇野港芸術映画座」2012年開催より


2009年から直島への玄関口、岡山県玉野市の宇野港で開催されている国際インディペンデント映画の野外上映イベント「宇野港芸術映画座」が8月7日より開催。5回目の開催となる今年は、開催前日8月6日23:59までクラウドファンディング・サイトMotionGalleryで、チケットやパスなど特典付の支援プロジェクトも行われている。





今回は、webDICEで連載「Filmmakers in N.Y」の執筆者であり、この映画祭の共同主宰者でもあるタハラレイコさんに、今年の見どころを紹介してもらった。



「宇野港芸術映画座」スタート以来のテーマは「生きる・創る・映画」



皆様、お久しぶりです。一身上の都合により、しばらく「Filmmakers in N.Y」の連載をお休みさせていただいておりました。というか、自分たちの作品制作と生活と娘の大学受験でちょっと忙しかったからなのですが。生まれも育ちもブルックリンっ子の娘も無事受験が終わり、この秋からニューヨークを離れます。また、連載開始できたらなあ、と考え始めております。



さて、今日は、夫で映画制作の相棒でもある上杉幸三マックスが2009年に故郷の岡山県玉野市宇野港で外国人用のゲストハウスを始めたことをきっかけにその翌年から二人で始めた手作り映画祭、宇野港芸術映画座(Uno Port Art Films、略称UPAF)の今年の見どころをご紹介したいと思います。今年で第五回になるUPAFですが、その間に、街が本当に変わりました。そのあたりも含めて、直島ついでじゃなく(ついででもいいけど)宇野に来たくなるように、街の新文化の紹介も兼ねて書いてみようかと思います。



UPAF設立以来の大きなテーマは「生きる・創る・映画」。基本コンセプトは、制作者の人生が間接的・直接的に投影されていて、ソウルフルで質のいい作品、そして世界の映画祭やアート・シーンで高く評価されていながら、日本には届きにくい作品をお届けする、というもの。特に、商業映画で見慣れた西洋社会以外からの作品、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ・中東などからの作品を積極的に選びます。また、忘れられているが非常に重要な名画も、毎年1作品は入れるようにしています。私達自身が映画制作者なので、制作者が、世界中の仲間の制作者のことを思いながら作るミニ映画祭でもあります。宣伝から上映、スカイプQ&Aまで日英バイリンガルなので、英語OKの外国人のお友達も、是非お誘いください!






トレーラーシアター

「宇野港芸術映画座」で使用しているトレーラーシアター





今の世界を見ることで日本の戦争や日本の現代世界の中の位置づけを考える




「生きる・創る・映画」の大テーマのもと、毎年ゆるくミニテーマを設けて、それにあった作品を幾つか含めるようにしてきました(第2回は「核とわたしたち」、第3回は「途上国フィクション」、第4回は「障がい者と映画」)。今年、第5回UPAFのミニテーマは、「イスラム」です。



最初は、終戦70周年にちなんで、戦争特集にしようかと思ったのですが、第二次世界大戦のみに絞って過去を見るより、今の世界を見ることで日本の戦争や日本の現代世界の中の位置づけを考えた方が、戦後70周年の意味がよりあるのでは、とマックスと話し合い、では、近年世界を賑わわしており、世界を知る一つのカギでありながら日本人にあまり馴染みがないテーマは、ということで「イスラム」を選びました。



もちろん「イスラム」を数本の映画でわかるなんてわけもないのですが、植民地、独立、戦争、資源、冷戦以来の経済モデル、そして世界を驚愕させるテロ、色々な意味でイスラムは避けて通れないテーマ。少しでも理解を深めることができたらとの願いで、フィクション・ドキュメンタリー・実験映画、多ジャンルで中身の濃いユニークな作品を、アルジェリア、キプロス共和国、アメリカ、インドのカシミール地方から集めました。他にも、当局に認可されず中国では上映できないものの世界中の映画祭で大絶賛の中国インディペンデント・ドラマ映画、福島に残ることを選択したお母さん達のドキュメンタリー、元ヤクザの刺青牧師が前科者の信者さん達を救う元気いっぱいドキュメンタリーなど、ソウルフルな作品を上映します。また、無料上映ながらうならせる作品が集まったのが、子供のプログラム。大人も十二分に楽しめます。





さて、毎年資金繰りには苦労しっぱなしなのですが、今年は一昨年NPO法人化したこともあって、張り切っていつもより沢山助成金に応募しました。しかし結果は芳しくなく、現在MotionGalleryでクラウドファンディング・キャンペーン中です。30日足らずの短いキャンペーンで、開催前日の8月6日までなので残りわずかです。遠方の方でもUPAFの息吹を味わっていただけるように、今年のラインアップから2人の制作者に協力してもらって、開催後に2週間限定で作品の視聴ができる特典も用意しました(『国境蒸発』と『鳥はどこを飛ぶ』後述参照)。UPAFの様子がわかるビデオも作ったので、皆様、是非のぞいて、ソーシャルメディアでのシェア・拡散、お願いいたします!なお、税金対策の寄付控除をご希望の方には、UPAFはメセナ協議会の助成認定プログラムに指定いただいていますので、対応できます。その場合は、info@unoportartfilms(レイコ&マックス)までご一報ください!



それと、クラウドファンディングを通じてご支援いただいた「学童保育サロン 環優舎さま」から、読者の皆様にシリーズパスを2枚プレゼントいただきました。先着2名さまでご贈呈します。上記までご連絡ください。念のため、宿泊は付いていないです(近所のマンガ喫茶に一晩1,300円で泊まれる情報を今日ゲットしました。シャワー500円)。




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「宇野港芸術映画座」シリーズパス



では、14本の珠玉の上映作品をご紹介します。




【長編作品】



『アルジェの戦い』



アルジェリアの独立までの闘争を描く



映画『アルジェの戦い』より

映画『アルジェの戦い』より



監督:ジッロ・ポンテコルヴォ

音楽:エンニオ・モリコーネ

脚本:ポンテコルヴォ&フランコ・ソリナス

アルジェリア=イタリア/1966年/121分

フィクション




世界中で名作中の名作と讃えられ、アメリカでは大手配給からブルーレイで発売されているのに、日本では絶版のこのスケールの大きな名画を、UPAFが新たに日本語字幕を付けてお届け。映画ファンの中には「ずっと観たかった」という方も多いのではないでしょうか。1962年、8年間の血みどろの武力闘争を経てフランスから独立を勝ち取ったアルジェリア。独立3年後の首都アルジェ、もと「原住民(ネイティブ)居住区」で、実際の住民や独立運動指導者を配役し、彼らが生き抜いた戦いを再現。フィクションながら、鳥肌もののリアル感。公開年ヴェネチア映画祭グランプリ、日本でもキネマ旬報第一位、フランスでは5年間上映禁止、そして2003年米ペンタゴンで特殊作戦部隊長のために特別上映。植民地、独立、イスラム、テロリズム…現代世界を知る上で重要な作品でありながら日本では何十年も忘れ去られているレアもの。今回、ワールドワイド権利者がUPAFの主旨に賛同してくださって実現する、超特別上映会。



政治的視点から見ると、武力による独立の成功例として世界中の虐げられた人々を鼓舞した作品、映画史的視点から見ると、ポンテコルヴォ、ソリナス、そしてモリコーネが組んで、ロッセリーニが提示した政治的要素の濃いイタリア・ネオレアリズモの手法をアルジェリアに持って来て作った、大変ユニークな作品。監督はヨーロッパ人ながら、70年代にラテンアメリカを中心に世界に広がった映画ジャンル『サード・シネマ』(西洋ブルジョアの価値観で創られた映画からの脱却を目指し、世界的な労働闘争・独立闘争・市民権運動のために映像アートを使おうとしたムーブメント。大切なジャンル/理論ながら、現在は忘れられている)からの絶対的支持を得た珍しい作品でもあります。でも、こんな難しいことを考えなくても、文句なく、すごい。真剣に、これは見逃せないと私達は思います。






『国境蒸発(仮題)』




世界情勢の縮図としてのキプロスを捉えたビデオ・エッセイ



映画『国境蒸発』

映画『国境蒸発』より


監督:イヴァ・ラディヴォイヤヴィッチ

キプロス共和国=USA/2014年/73分

エッセイ・ドキュメンタリー

日本初公開



セルビアで生まれたイヴァは、ユーゴ紛争とNATO空爆を逃れて家族で移り住んだキプロス島で十代の多感な時代を過ごした。クリスチャンのギリシャ系住民とイスラム教のトルコ系住民の対立で70年代以降島が南北に分断統治されているキプロスでは、現在トルコが占領する北部に中東やアフリカ、アジアからの主にイスラム系移民/難民が大量になだれ込み、緊迫状態が続いている。



地中海の青、フラミンゴのピンク、EUへの活路を求めて命からがらたどり着いたまま虚無の日々を送るイラク人女性の黒いヘジャブ、ネオ・ナチ運動で激しくシャウトするギリシャ系若人達の黒いシャツ。世界情勢の縮図としてのキプロスを、世界を旅するイヴァの繊細な視点が捉えた美しいビデオ・エッセイ。この5月、ブリュッセルのEU議会で移民問題が話し合われた際に上映された、今まさに旬の作品。エグゼクティブ・プロデューサー:ローラ・ポイトラス(アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作『Citizenfour(原題)』監督)。ロッテルダム国際映画祭、サウス・バイ・サウスウェスト映画祭、ホット・ドックス、人権映画祭(ロンドン、NY)他、多数。6月アメリカ劇場公開、この夏UPAFで日本上陸!スカイプトーク予定。






『鳥はどこを飛ぶ(仮題)』



ガザ地区初のパレスチナ人女性ビデオジャーナリストによる貴重な記録



映画『鳥はどこを飛ぶ』より

映画『鳥はどこを飛ぶ』より



監督:フィダ・キシュタ

パレスチナ自治区/2013年/58分

ドキュメンタリー

日本初公開

15歳以下のお子さんにはお薦めしません。



イスラエル軍のブルドーザーに家を潰され、永遠に終わらない戦火のガザ地区で育ったフィダは、やがてビデオカメラを武器として手にとり、ガザ地区初のパレスチナ人女性ビデオジャーナリストになった。この映画は、フィダが長年にわたって撮りためた、西側先進国のニュースでは決して伝えられない映像を、一つの作品に仕上げた貴重な記録映画。



パレスチナ人と言えばまるで全員が兵士のような印象を受けるが、作品に出てくるのは皆、農民や漁民など、普通のパレスチナ人。でも彼らの暮らしは普通とはほど遠い。全く罪のない人々が何十年にも渡り囚人のような生活を強いられているのを、世界は見て見ぬ振りをしてきた。なぜ?この、時に衝撃的な映像を直視する責任は誰にあるのだろうか。何人もの家族を一度に目の前で殺された少女モナに、フィダは自分の過去とパレスチナの将来を重ねる。モナの心の傷は癒えるのだろうか。この作品で、希望を描きたかったとフィダは言う。そのかすかな希望を、遠い日本の私達は、読み取ることができるだろうか。本当に、日本は遠いのだろうか。日本初公開、フィダとのスカイプトークも予定。お見逃しなく!






『聖者の谷(仮題)』



インド・カシミール地区を舞台にしたラブストーリー



映画『聖者の谷』

映画『聖者の谷』より



監督:ムサ・サイード

インド(カシミール地方)/2014年/83分

フィクション

日本初公開



カシミア発祥の地カシミールが誇る美しい避暑地のダル湖を舞台に、現地の貧しい船頭と、アメリカで環境学を学ぶ美しいサイエンティストとのふれ合いを描いたほろ苦いラブストーリー。ロマンチックな光景に生々しく対照的に映るのはカシミールの現実。インドからの分離独立を訴えるイスラム教徒(カシミール地方は主にイスラム教)たちのデモ、それに対しインド政府が出した外出禁止令の中で生きる人々。撮影中に現実に起こったそれらの事件をその場で物語に取り込むことに決めて脚本を書き換え、主人公にも現地の住人を抜擢したリアルな映画。サンダンス映画祭の観客賞&アルフレッド P. スローン賞、インディペンデント・スピリッツ賞ノミネートーベスト・シネマトグラフィー、ほか。日本初公開!ムサとのスカイプトークも予定。






『ジューン・ブライド:ヤクザの購い(仮題)』



ヤクザから転身した刺青牧師を追うドキュメンタリー



映画『ジューン・ブライド』

映画『ジューン・ブライド』より



監督:デレク・シモダ

日本=アメリカ/2015年/81分

ドキュメンタリー

日本初公開



今年4月にロスアンジェルス・アジア・パシフィック映画祭でプレミアしたばかりのできたてほやほや、心に元気をもらえるドキュメンタリー。埼玉県の刺青牧師、進藤龍也。かつては大きな暴力団で組長代理まで務めた本物のヤクザ。今は悔い改めた敬虔なクリスチャン。母親が3代目のオンボロ・バー『ジューン・ブライド』の教会には、もと極道や前科者の皆さんが、救いを求めて続々集まってくる。岡山もかなり登場。日本初公開。






『小さき声のカノン:選択する人々』



鎌仲ひとみ監督が福島とベラルーシのお母さんたちを取材



映画『小さき声のカノン』より ©ぶんぶんフィルムズ

映画『小さき声のカノン』より


監督:鎌仲ひとみ

日本/2015年/119分

ドキュメンタリー



玉野市の移住者支援団体ラックハウスとの共同キュレート企画。『ミツバチの回転と地球の羽音』『六ヶ所村ラプソディ』の鎌仲ひとみ監督の最新作。福島に残る選択をしたお母さん達、子供達を守るために、実際何ができるのか。最初は泣いてばかりだったお母さん達が、仲間を作り強く現実に向かって行く様を描く。チェルノブイリ原発事故後に故郷の街に残って子育てしたベラルーシのお母さん達にも取材。遠く離れた安全な地域に生きる人達が、福島の子供達を守るためにできることの具体的な提言をしてくれる貴重な映画。岡山初公開!



岡山県は、福島からの移住者が多いと聞く。宇野/玉野の街にも震災以来沢山の若い家族が移住しておられる。3PMの室内上映の後には、震災以降玉野に増えている福島や関東圏からの移住者を招いての1時間のパネルトークを行い、移住にまつわる体験などをお聞きしながら、新旧の住人が話し合える場所を創りたい。福島に残った人達は今どうしている?新たな場所に移住してきた人達は今何を思っている?受け入れた街の住人に、子供達を引き続き守って行くために、具体的に何ができるのか?ガッツリ話し合いたい。また、パネルトークのある8月9日(日)3時PMの回の前には、2時PMから無料の子供映画プログラムを置き(内容、すっごくいいです!)、その後、3~6時PMまで、託児サービスも用意して、新旧住民が(または遠方からの方達も!)お子さんを連れて楽しめるイベントにしたい。






『トラップ・ストリート』



中国インディペンデント映画界気鋭の監督による秀作



映画『トラップストリート』

映画『トラップ・ストリート』より


監督:ヴィヴィアン・チュイ(文晏)

中国(南京)/2013年/94分

フィクション



デジタル地図測量士の卵リー・チュミンは、ある日街のロータリーで測量中に、薄暗い通りに消えて行くきれいな女性に出会う。彼女を忘れられないチュミンは、その薄暗い通りを再び訪れ彼女を見つける。二人の関係は少しずつ深まるが、彼女のことは何もわからない。やがて、その薄暗い通りは、計ってもデジタルマップにどうしても登録されないことが判明。彼女会いたさからまたその通りを訪れるうち、チュミンは予想だにしなかった大きな力に飲み込まれていく。



ヴェネチア、トロント、ヴァンクーヴァー、ロッテルダム、NYリンカーンセンターのNew Directors/New Filmsなど、世界の映画祭総ナメながら、中国当局の認可下りず中国では上映されていない。中国インディー映画界で実力派プロデューサーとして活躍中のヴィヴィアン・チュイの監督デビュー作。スタッフの半分はジャ・ジャンクーのクルーから、またウォン・カーウァイの照明技師なども参加で、技術的にも内容的にも大変ソリッドな秀作品。日本初公開。













【短編作品】



今年の短編は7本。3本は長編作品とカップリングで、後の4本は子供プログラム(無料)での上映。





『イスラム記号論』



映画『イスラム記号論』

映画『イスラム記号論』より


監督:フォウジア・ナジェール

アメリカ/2014年/7分

実験映画



マーサ・ロスラーの『 キッチンの記号論 』(1975、台所用品の使い方の実演を通して主婦のうっぷんをユーモラスに表現したフェミニスト実験映画)にヒントを得、パキスタン系アメリカ人監督が、身の回りのものをアラビア語で呼ぶそのシンプルなパフォーマンスで、西洋メディアが描くイスラムのイメージに疑問提起。日本初公開。『鳥はどこを飛ぶ』とカップリング上映 。






『パラダイス』



映画『パラダイス』

映画『パラダイス』より


監督:ナダヴ・クルツ

アメリカ/2012年/10分

ドキュメンタリー



風の街シカゴで、朝早くから体を張って高層ビルの窓を拭く男達、彼らは一体誰なのか。トライベッカ、シカゴ、シアトル、シネ・ラス・アメリカス(ペルー)、ビルバオ、メルボルンの各映画祭で最優秀短編賞受賞。サンダンス映画祭・シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭公式招待作品。日本初公開。『国境蒸発』とカップリング上映 。






『天使モドキ』



映画『天使モドキ』

映画『天使モドキ』より



監督:中村智道

日本/2014年/13分

アニメーション



「ある女が、何気ない日常に変化を欲していた。日常を変えるべく、ペットとして鳥を飼っているのだが、彼女はその鳥との間に生まれる子供の夢を抱くようになる。人間と鳥の間に生まれる子供は、「天使モドキ」と言われ、それは天使のような姿をしているのだが……視線、そして、ある人が置かれた状況は時として個とは何かをその人自身に問いかける。その中で自己を見つめ、時として自己を否定し、変化し、そして時として諦める。」──イメージフォーラム映画祭より



UPAFが設立当初からイチオシ上映して来た赤磐のアニメーション作家の最新作、そして、すごい力作。ちょうどUPAF開催と同時期(8月8日~)に東京下北沢トリウッドで「孤高の天才─中村智道の世界」と題し、過去の2作品と『天使モドキ』3本の劇場公開が始まるようです。東京へ、世界で活躍する中村監督の成功を祝って、UPAFでも上映します。イメージフォーラム映画祭、タンペレ映画祭(フィンランド)、岡山芸術文化賞準グランプリ受賞作品。『ジューン・ブライド』とカップリング上映 。



以下は、子供の回(40-45分くらい)に無料上映される秀作品。どれも、大人も全然楽しめます。もしかしたら、もう一本増えるかも……。






『来世』



映画『来世』

映画『来世』より


監督:カシミア・ノズコウスキー

アメリカ/2013年/11分

フィクション



親愛なるおばあさんから、「もうすぐ私は死ぬ」と聞かされる孫。来世でまた会えるように、二人が考えた作戦は。日本初公開。 フェニックス映画祭ほか。






『ウサギとシカ』



映画『ウサギとシカ』

映画『ウサギとシカ』より


監督:ピーター・ヴァックス

ハンガリー/2013年/16分

2D/3Dアニメーション



仲良しのウサギとシカが、ある日2Dと3Dの世界に分かれてしまう。二人の友情は、どうなるの?世界中の子供映画祭などで70賞受賞。






『ニエッタ』


映画『ニエッタ』

映画『ニエッタ』より


監督:ニコラス・P・ヴィラレアル

アルゼンチン/2014年/5分x2回

アニメーション



カンヌ映画祭出品、トロント国際映画祭子供特別審査員賞



突然の通り雨、小さな女の子が心の目で見た世界は……最後の驚きでもう一度絶対観たくなる作品なので、2回繰り返しで上映する。






『ウォンボ』


映画『ウォンボ』より

映画『ウォンボ』より


監督:ダニエル・アハト

ドイツ/2013年/8分

実写+CG



地球に不時着したエイリアン……犬に吠えられ野菜かごに隠れるが、おっと、あやうく夕飯のおかずに!だって、エイリアン、ジャガイモにそっくりなんだもん!ブルックリン子供映画祭、シアトル子供映画祭他。












番外編:プレUPAF


ユース・プログラム



日本はマルシェブームだが、宇野の街にも「UNOICHI:海の見える港のマルシェ」が昨年から年4回開催されるようになり、毎回3千~5千人を動員している。これを中心になって始めた方々は、過去数年間に新たに宇野に越してこられた人達。そして彼らが、UPAFを応援してくださっている方々。中には、UPAFの野外上映を体験したのが移住を決めるきっかけになったという方もいるなんて、嬉しいお話も聞く。それで、そのUNOICHIさんに沢山地元の高校生がボランティアとして参加しているから、と声をかけてもらって、今年は海の日の週末の日曜日に、プレUPAF@UNOICHIイベントを開催、普段は本開催にあるユース・プログラム(世界中のティーンが創ったビデオの秀作品を上映!)をこの日に2回上映した。写真は、以下の通り。上映後には、ブルックリンのかっちょいい黒人の女の子制作者3人とインターネット・ビデオチャットで交流、話がイマイチ噛み合ないながらも、それもお互いに文化体験、ってことで、楽しい時を過ごした。



プレUPAF2015より

プレUPAF2015より、地元と高松の高校生


また、その日には街の商店街でお祭りもあって、出店が出ているにぎやかな商店街のビルの壁に、UPAFの上映予定作品の予告編を映写。なかなかいい感じで、これも楽しい晩となった。




プレUPAF2015より

プレUPAF2015より、夜市の様子




宇野の街



と、UPAFの見どころ&紹介をさせていただいたが、UPAFと街、一緒に育っている感じがあるので、街がここ数年でどうなっているかも軽くご紹介したい。かなり多種多様な新しい人々がゆるやかなネットワークを保ちながら新しい文化を作り上げている感じ。もともと直島に近い立地で県内や他都市からのアーティストが移り住みつつ、現代アートを花開かせかけていたところへ、震災後に前述の福島や関東圏からの移住者がぐぐっと増えた。結果、 前衛アートや無農薬野菜や手作りクラフトを評価して楽しんでくれるコミュニティができ上がって来ている。2年前の第2回瀬戸内国際芸術祭には、宇野も公式会場の一つになって、アートによる街おこしが具現化し評価もされてきていることで、地元の人も少しずつ反応している。港に温泉温浴施設もできた(そのためUPAF野外会場の巨大な空き地は半分になってしまったが)。






街に店やイベントも増えた。街は30年来不況で、でもその前は国際港としてモダンな街だったから、時が止まったようなレトロモダンな建物も結構残っている。ちょっと港から離れると、立派な武家屋敷みたいな屋根瓦の家々が並ぶ古風な街で(植木の形がおもしろい)、そのコントラストも興味深い。ライフスタイルを提案するような遊び心のある生活用品とギフト&美味しいコーヒーの店や、DJナイト、ギャラリー展示、屋上ビアガーデン、魚市場での朝ご飯会、ゲストハウス、ゲイ・レズビアンワークショップ、移住者が日替わりで無農薬のヘルシーで美味しい食事を出してくれるカフェ、古民家を改造して作った無国籍料理カフェバー兼ジュエリー作家さんのアトリエ、はたまたご自宅で 自作・自演・自力建設『54帖の中庭』(9つの住居空間モバイルハウスに囲まれている)を本当に作ってしまった建築家さん、また、来年には作家さん数人が集まってのアトリエ/ギャラリーがまた一つ、廃屋工場でオープン、と色々起こっている。UNOICHIで瀬戸内の他の島々ともつながったりで、どこから流れ着くのやら、20代後半から30代のいい感じの方々が夏に帰省する度に増えている。近くの島々には、それぞれの時の流れ、家並み、人情があって、それも楽しい。しかも、言わずもがな、食べ物本当に美味しい……景色は瀬戸内……UPAFに来てもらえたら、直島・豊島等の瀬戸内現代アートはもちろん、宇野の新しい文化も、新鮮な瀬戸内の海の幸も楽しめます。



と、今回は宣伝三昧でしたが、この記事を読んでUPAFに来てくださる方がいたら嬉しいです。必ず声をかけてくださいね!



(文責:タハラレイコ)











「宇野港芸術映画座 Uno Port Art Films」

2015年8月7日(金)~10日(月)



MotionGalleryクラウドファンディング・ページ:

https://motion-gallery.net/projects/UPAF2015

Facebookイベントページ:

https://www.facebook.com/events/949672951762092/

公式サイト:http://unoportartfilms.org









▼『アルジェの戦い』予告編







▼『国境蒸発』予告編









▼『ジューン・ブライド:ヤクザのあがない』予告編








▼『トラップ・ストリート』予告編








▼『鳥はどこを飛ぶ』予告編







▼『聖者の谷』予告編









▼『小さき声のカノン』予告編









▼『来世』予告編







▼『パラダイス』予告編








▼『ウサギとシカ』予告編



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イスラエル式サーフ・ロック!BOOM PAMの東京単独公演実現へ向けてクラウドファンド! http://www.webdice.jp/dice/detail/4771/ Tue, 30 Jun 2015 17:13:22 +0100

クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は、イスラエル・テルアビブで結成された地中海のサーフ・ロック・バンド、BOOM PAM(ブーム・パム)の東京単独公演実現を支援するプロジェクトを紹介する。




今回のプロジェクトでは、8月30日に静岡でのイベント「WINDBLOW'15」出演、小島麻由美デビュー20th記念ツアー『WITH BOOM PAM』出演の為に来日が決定している彼らの東京での単独公演実現のために、120万円を目標に2015年8月14日23:59までクラウドファンディングを行なう。集まった資金は、渡航費、ギャランティー、バンドのPR費、ホスピタリティー、公演の宣伝、運営費に使用される。



クラウドファンディングでは、3千円から30万円までの支援を受け付けており、3千円で彼らの7月にリリースされるニュー・アルバムをサイン入りで進呈、5千円でライブとバンドメンバーとの交流会を行うパーティーに招待、8千円でバンドとベリーダンサーNOURAH(ノーラ)さんが出演するライブで一緒に踊ることができるワークショップへの参加権、1万5千円で東京・青山月見ル君想フでのワンマン・ライブ招待とサイン入りCD&TBSシャツをプレゼント、そして30万円で東京ワンマン・ライブの冠クレジット権と、金額に応じて様々な特典が用意されている。



webDICEでは今回のプロジェクトを企画した青山「山羊に、聞く?」の朝河俊介さんからのメッセージと、昨年の来日時に共演し今回は彼らのライブパフォーマンスに出演可能となるワークショップを実施するベリーダンサーNOURAH(ノーラ)さんによるメッセージを掲載。さらに、よろずエキゾ風物ライター/中東料理研究家/DJのサラーム海上さんがBOOM PAMについて語った2014年のインタビューを抜粋して紹介する。




詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。





BOOM PAMとは?



Boom Pam


ギター/リーダー:ウリ・ブラウネル・キンロト(Uri Brauner Kinrot)

チューバ:ユヴァル“チュービー”ゾロトヴ(Yuval “Tuby” Zolotov)

キーボード:ダニ・エヴァ-ハダニ(Dani Ever-Hadani)

ドラム:イラ・ラヴィヴ(Ira Raviv)



中東の音楽大国イスラエルを代表するオリエンタル・サーフ・ロック・バンド。ザ・ヴェンチャーズ直系のサーフィン・ギターと、ベースの代わりにチューバ、そしてドラムス&キーボードという編成で、中東ベリーダンス音楽から、エキゾティックなギリシャ歌謡、マカロニ・ウェスタン、バルカンのジプシーブラス、どこか日本の昭和歌謡にも通じるイナタく懐かしいイスラエル歌謡までを取り上げ演奏する。レッド・ツェッペリンの名曲を独自の解釈でカヴァーした「Black Dog」も話題を呼んだ。



2006年にバルカンビーツのDJ Shantelのレーベルからファースト・アルバムをリリース。WMCE(ワールドミュージックチャートヨーロッパ)のベスト10入りを果たす。その後、現在までに4枚のアルバムをリリースし、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、メキシコ、南アフリカなど全世界でライブを展開。



日本には2012年秋に初来日。2014年にはイスラエルのバンドとして「FUJI ROCK FESTIVAL'14」に初登場。東京、大阪、横浜でもライブを行った。




発売中のサード・アルバム『ALAKAZAM』と4枚目のアルバム『MANARA & SUMMER SINGLES』に続き、日本編集のベスト盤『The Very Best Of Boom Pam』と、小島麻由美とコラボレーションした『With Boom Pam』が2015年7月22日に発売。8月31日(月)梅田Shangri-La、9月1日(火)下北沢GARDENで行われる小島麻由美デビュー20th記念ツアー『WITH BOOM PAM』、そして「WINDBLOW'15」(静岡)出演の為に来日することが決定している。









「山羊に聞く?」朝河俊介さんのメッセージ

「唯一無二のパフォーマンスにノックアウト!」



山羊に聞く?




「現時点、地球上で最も濃い”音楽の場”は、テルアヴィヴだろう。もの凄い才能が次々と現れる様は、まるで60年代のUKやサンフランシスコかニューオーリンズ、70年頃のキングストンのようだ。

BOOM PAMは、チューバがベースラインを吹くレトロなサーフ・ロック、涼やかでエキゾなメロディーが命。」

~久保田麻琴(ミュージシャン/プロデューサー)~



久保田麻琴さんに御紹介頂き、昨年ツアーを決行。東京、大坂、フジロックと全ての会場を沸かし、その唯一無二、想像以上のサウンド、パフォーマンスにノックアウトされた。



世界でも有数の「ライブ大国」日本での海外アーティスト公演の中でもかなり希少な内容、体験となる本公演の企画。



知られざる音楽大国、イスラエルから、今最も招聘すべきアーティスト、「BOOM PAM」の東京単独公演実現の為に、是非お力をお貸し下さい!!






ベリーダンサーNOURAHさんのメッセージ

「新しいのに切なく懐かしい」



NOURAHさん

昨年の来日公演で共演が実現したNOURAHさんとBOOM PAM





BOOM PAMの音楽はサーフ・ロックと中東音楽がミックスされた、ベリーダンス音楽の真骨頂です。

昨年のFUJI ROCKでのBOOM PAMとの共演は私にとってすごくスペシャルなステージでした。

トラディッショナルなのに新鮮。新しいのに切なく懐かしい。

イスタンブールと東京を行き来しながらベリーダンスを踊る私にとって、東京だからこそ生まれるベリーダンスがあるように、BOOM PAMの音楽も、イスラエルから生まれた中東音楽なんだと思います。

西海岸でサーフ・ロック、イスタンブールで中東音楽、そういうど真ん中では出会えない不思議なバランスに、東京でベリーダンスな私も共感します。

また政治的には対立しているけれど、文化的にはアラブと混ざり合っているイスラエルの中から生まれた彼らの音楽にはピースフルな想いも強く感じられます。



肌にまとわりつくような熱気に身を任せるように踊るベリーダンスとBOOM PAMの音楽の宴をお楽しみに!


Love&Peace ∞ NOURAH






【Ruhani BellyDance Arts主催、BOOM PAM&ベリーダンサーNOURAHによるライブパフォーマンス・ワークショップ&ベリーダンサーズハフラ(パーティー)!!!】



ライブパフォーマンス・ワークショップ

9月2日(水)16:00~18:00[会場:代官山「山羊に、聞く?」予定]

ダンサーズハフラ(パーティー)

9月2日(水)18:30~20:30[会場:代官山「山羊に、聞く?」予定]








イスラエルの寺内タケシ!

サラーム海上さんが語るBOOM PAM


サラーム海上さん

サラーム海上さん(fujirockers.orgより Photo:森リョータ)




― BOOM PAMにとって何故今サーフ・ロックなんでしょう?



サラーム:(BOOM PAMの取材をメンバーのウリの家で行ったときに)ウリの家で最初に見せられたのが、寺内タケシとバニーズの『レッツ・ゴー「運命」』っていうアルバムだったんです。1967年のレコード大賞で編曲賞を獲った曲が収録されているレコード盤を、彼が持っていて。ベートーヴェンの“運命”をエレキ・ギターでカバーしてる曲が入っているやつなんですけど、「学生のころにコレを聴いて、すごくビビったよ!日本人が西洋のクラシックを、しかもサーフ・ギターでやってるんだよ!」って(笑)。学生のときに寺内タケシに出会って、10年後ぐらいに日本人の僕にそのアルバムを見せて、彼の中で何か縁が一回りしたように感じたんじゃないかな。そういう感じがすごく伝わってきて。



ウリは、アメリカはもちろん日本や旧ソ連といった世界中のサーフ・ギターのレコード・コレクターでもあって。「なんでサーフ・ギターなの?」って訊いたら、「サーフ・ロックってギタリストなら1度は憧れるんだよ。メロディが主役の音楽だから。それに普通のロックだと、ヴォーカリストが主役だよ。ギタリストが主役なのはメタルかサーフ・ロックだから(笑)」って。彼は自宅で全部レコーディングしていて、エレキ・ギターも自分で作ってピックアップのコイルも自分で巻いているんですよ。



― サラームさん流のキャッチ・フレーズでいくと、BOOM PAMは?



サラーム: なんて言えばいいんでしょうね…“イスラエルの寺内タケシ”もしくは“イスラエルのザ・ベンチャーズ”じゃないですか(笑)。




【fujirockers.org】

「“地中海のビック・ウェーブ”BOOM PAMがフジに到来!中東音楽の伝道師・サラーム海上に直撃取材!」(2014年7月21日)より

http://fujirockers.org/?p=7196















Boom Pam




MotionGalleryプロジェクトページ:

知られざる音楽大国、イスラエル・テルアビブで結成された地中海のサーフ・ロック・バンド、BOOM PAM東京単独公演実現プロジェクト!!


https://motion-gallery.net/projects/BOOM-PAM-JAPAN-TOUR-2015












『The Very Best Of Boom Pam』


『The Very Best Of Boom Pam』

Boom Pam

2015年7月22日リリース




2,700円(税込)

UBCA-1047

Tuff Beats

http://www.amazon.co.jp/dp/B00XNRRJOW/webdice-22







『With Boom Pam』



『With Boom Pam』

小島麻由美

2015年7月22日リリース



2,800円(税込)

DDCB-12078

AWDR/LR2

http://www.amazon.co.jp/dp/B00XNRRJME/webdice-22





▼BOOM PAMによるレッド・ツェッペリンのカヴァー「Black Dog」

[youtube:_yvA2SfO2HA]
▼BOOM PAM「Neimat HaOud」

[youtube:by8C-RCfrek]
▼BOOM PAM「No Wave」

[youtube:-QpbqT2nuXc]


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チカーノになった日本人が米極悪刑務所を生き抜いた壮絶半生、映画クラウドファンド実施 http://www.webdice.jp/dice/detail/4727/ Tue, 02 Jun 2015 14:17:58 +0100

クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は「チカーノになった日本人」として知られるKEIさんを追うドキュメンタリー映画『HOMIE KEI』の2016年劇場公開を支援するプロジェクトを紹介。サカマキ マサ監督からのメッセージ、そしてKEIさんとサカマキ監督が出演したトークイベントのレポートを掲載する。



今回のプロジェクトでは、日本語字幕版のポスト・プロダクション費用のために、200万円を目標に2015年7月13日23:59までクラウドファンディングを行なう。集まった資金は、ポスト・プロダクション作業のほか、資料映像入手費用、劇場公開費用、宣伝費用に使用される。



今回のプロジェクトでは3千円から100万円までの支援を受け付けており、映画の前売りチケットはもちろん、5万円のサポートでカメラマン名越啓介氏撮影の写真集「CHICANO」プレゼントと映画のエンドロール・クレジットに名前掲載。10万円の協力で企業団体へ出張試写会&ディスカッションを開催できる権利を進呈。そして30万円の協力で、KEIさんが運営する「HOMIE MARINE CLUB」の1DAYチケットをプレゼントなど、金額に応じて様々な特典が用意されている。




詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。







映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より



KEI プロフィール



1961年、東京・中野生まれ。少年期は阿佐ヶ谷と八王子で過ごす。その後は暴走族を経て、ヤクザの道へと進む。ヤクザ時代にハワイでFBIのおとり捜査にはまり、10年以上、ロスを始めサンフランシスコ、オレゴンなどの米刑務所で過ごす。刑務所内で知り合ったチカーノと呼ばれるメキシコ系アメリカ人との交流から、人生における大切なものを学ぶ。帰国後はその経験を生かし、カウンセリングやイベントを通し、若者と触れ合う。神奈川県平塚にて『HOMIE』というチカーノ系ブランドを経営し、本場のチカーノカルチャーを広める。自身の人生を綴った書籍『KEI チカーノになった日本人』が話題を呼ぶ。また湘南で「HOMIE MARINE CLUB」を運営する。













サカマキ マサ監督のメッセージ

「KEIさんの奇跡的体験を知る」



サカマキ監督


【映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』について】



私は偶然にもKEIさんと同じ時期をアメリカで過ごしました。

1980年代後半から90年代の約14年間、私は塀の外。KEIさんは塀の中。

90年代前半のニューヨークはまだまだ危険の多い、犯罪が絶えない街だった。夜な夜なストリートには酔っ払いやホームレスが蔓延っていた。しかし、90年代半ばになると物凄いスピードで街中はクリーンナップされ、浮浪者や低所得者たちが排除された。お陰で遊園地のように煌びやかで安全、犯罪のない土地となった。

が同時に、お金が無くてはこの高級繁華街では遊べなくなっていた。

ヘタクソな大道芸人もミュージシャンもいなくなった。そして、ストリートに子供達が笑いながら走り回る姿がほとんど見られなくなった。

その頃、KEIさんは塀の中でチカーノギャングたちと出会い、忘れかけていた家族愛、仲間愛を取り戻していた。まるで子供の頃に憧れていた先輩の大きな背中や我が身を犠牲にして守ってやったカワイイ後輩といった古き良き日本社会と同じ人間関係の中、見事に蘇生したKEIさん。

アメリカ刑務所の中で、日本のヤクザがアメリカ最凶のチカーノギャングと出会い、家族愛と仲間愛を教わり、地の果てから真っ当なライフを手にしようとする姿は、あまりにもエクストリームなストーリーであり、無縁社会と化した今、金でない、人との付き合いが難しい時代だからこそ、KEIさんの奇跡的体験を知ることは価値があると思います。

皆さん、この作品をよろしくお願い致します。





サカマキ マサ プロフィール



ロサンゼルスで映画を学んだ後、NYへ。そしてCMプロデューサーを経て、アメリカの撮影現場で演出や制作など多種なポジションで活躍。帰国後、2003年に日本人写真家、荒木経惟氏についてのドキュメンタリー映画「アラキメンタリ」を制作。この作品は2004年に日本全国劇場公開、続いてアメリカやヨーロッパにおける劇場公開・DVDリリースと展開。現在は海外の映像制作にクリエイティブディレクター/プロデューサーとして活動中。










「チカーノたちは、お金のために人助けをしない。

でも、仲間のためだったら体も張る」

KEIさん☓サカマキ マサ監督トークショー・レポート




今回のクラウドファンド実施にあたり、2015年5月20日、代官山「晴れたら空に豆まいて」にてKEIさん、サカマキ マサ監督、そしてチカーノ文化に詳しい宮田信さん(BARRIO GOLD RECORDS)を迎えてのトークセッションが行われた。当日は完成間近のドキュメンタリーからの映像上映を交え、今作の製作経緯についてトークが繰り広げられた。



宮田信(以下、宮田):最初に、サカマキさんはどうしてKEIさんについて映画にしたいと思われたのですか?



サカマキマサ(以下、サカマキ):『KEI チカーノになった日本人』(2009年/東京キララ社刊)を読んですごい!と思いました。KEIさんと僕はリンクしているところがあって、出身が同じ中野であったり、塀の中と外にいるだけの違いで、アメリカにいた時期も同じだったので、遠い存在に感じられなくて。最初は正直なところ、アメリカにいるときに『カラーズ』といった映画を観て、チカーノについてはマイナスなイメージがあった。そして、ヤクザという職業も暴力も好きではなかった。でも、KEIさんに会って、その人柄を知り、製作に踏み切りました。



KEI:最初にサカマキさんがうちの店に来たときに、あからさまに嫌な顔をしたんです(笑)。3回目くらいでやることになりました。



『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』トーク

映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』トークイベントより、左からサカマキ マサ監督、KEIさん、宮田信さん


宮田:自分の人生を映像化されることについて、分かってもらえるんだろうかという不安はありませんでしたか?



KEI:子どもがいるので、映像が世にでることによっていじめられたりしないか、というのがいちばん心配でした。だからテレビもずっと断っていて、最近少し出演するようになってきましたが、それは子どもがある程度大きくなったからなんです。






宮田:サカマキさんはKEIさんを撮り始めて6年経つということですが、どういう部分から撮影をしていこうと?





サカマキ:最初はインタビューから入りましたが、すぐLAに行ったのが良かったです。でも現地で何があってもいいように、行きの飛行機で自分の娘に遺書を書きました。



もちろん事前にKEIさんの本は読んでいて、様々な資料や映像も見ていますが、本人からいろいろな体験談を聞いて、KEIさんとはどういう人なのかを調べながらカメラを回していきました。KEIさんは、毎日事件があるような、壮絶な人生を歩んでいる。だから、いろんな面白い話を聞くのですが、その様々なところに飛んだトピックを映像作品としてひとつのアーチになかなかできなかったのが苦労した点でした。




映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より

映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より




映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より

映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より


宮田:完成前の映像を観ていると、ロサンゼルスのいろいろなところから違うギャングがやってきて集まっている場所でKEIさんがリスペクトされているのが分かります。彼らとHOMIEと呼び合える仲になっていくなかで、チカーノたちがすごいなと思ったところはどういうところですか?



KEI:日本の(ヤクザの)組織の人たちは、昭和50年代の頃と、バブルが来た当時とでは、だいぶ変わってきたと思うんです。みんなお金で動くようになってしまった。だけどチカーノたちは、昔の日本のように、お金は関係ないんです。お金を持っている奴が強いとか、お金がないから弱いとかじゃなく、お金のために人助けをしない。でも、仲間のためだったら体も張る。それで懲役30年の判決を受けようが、自分の仲間をいじめるやつは自分が殺しに行く、というスタイルなんです。



宮田:そこには昔の日本人の助けあう精神、仲間意識と繋がるところを感じます。サカマキさんはカメラを回していて、どう思われましたか?




サカマキ:インタビューを撮っているときも、みなさんすごく真面目なんです。熱く自分たちのルーツを語る。チカーノとして生まれて誇りを持っていることを力説する。あのパワーがすごいんです。




映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より
映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より



映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より

映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より




宮田:刑務所にいるKEIさんのところに、血が繋がっていないメキシコの人たちが心配して来てくれるのはまさにチカーノ、メキシコ人の感性ですよね。



KEI:子どもの頃から育児放棄されて親に愛を受けずに育ってきたので、最初はそういう経験がなくて、多少とまどいがあったんです。けれど、次第に親近感を覚えていきました。月に2回、3回と、自分が刑務所から出るまで10年間、常に知らない人が会いにきてくれたんです。



サカマキ:KEIさんの人柄には様々なところがあって、もちろん楽しいところもあるからKEIさんが語る社会的な問題についても入っていけた。人間的な懐の深さがある人だからこそ、逆境にいて死ぬ手前までいっても楽しんで、まったくしゃべれなかった英語を勉強して、ペラペラになってカウンセリングの資格までとってくる。こんな人いないですよ。こんなKEIさんの存在を今の若い人に伝えられたら、と思っています。




映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より

映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』より





宮田:チカーノというスタイルは日本でも知られるようになってきましたが、違和感を覚えたことはありませんか?



KEI:日本に帰ってきたときに、チカーノの洋服が流行っていて、みんなスキンヘッドにしていてとまどいました。アメリカだと、スキンヘッドは「喧嘩上等」というサインですから。自分はチカーノの子たちと生活していて、刑務所でも19歳くらいから80歳くらいまでいるなかで、格好うんぬんよりも、心で繋がっていたんです。



宮田:チカーノはハートであり生き方であるということですね。現在KEIさんはどんな活動をされているのですか?



KEI:「HOMIE MARINE CLUB」で、育児放棄された子どもや親のいない子どもにマリンスポーツをさせて遊ばせたり、母子家庭の子どもを週末だけ預かってストレス解消してもらったり、うつ病のカウンセリングをしたり、それを全て無料で行っています。




サカマキ:KEIさんのマリンクラブにいくと、みなさん笑っています。パッと見は怖いですけれど(笑)、この笑顔がなかったら大変なことになるなって。KEIさんのやっていることを支援すべきですし、KEIさんの姿をこの映画で見せることができれば、社会の状況に一矢を報いることができると思っています。











【関連記事】



「チカーノファッションの店をやって最初は1年で2500万円の赤字を出して大変だった」KEI(2008-07-05)

http://www.webdice.jp/dice/detail/550/














『KEI チカーノになった日本人』

著:KEI

発売中



1,620円(税込)

221ページ

東京キララ社



購入は書影をクリックしてください。

amazonにリンクされています。












映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』






監督・構成・プロデューサー:サカマキ マサ

アシスタントプロデューサー:戸山剛

共同プロデューサー:中村保夫、YAS

撮影:加藤哲宏

編集:有馬顕/西川文恵

制作:Cicada Films、マウンテンゲートプロダクション

2015年/日本/90分/カラー/デジタル




公式サイト:http://homie-kei.com/



MotionGalleryプロジェクトページ:

FBI囮捜査にハマったヤクザが、殺人・抗争だらけの米国刑務所を生き抜き、ギャングから学んだ愛と絆を現代に一石投じる映画!

https://motion-gallery.net/projects/homie-kei





▼映画『HOMIE KEI ~チカーノになった日本人~』予告編

[youtube:j8EvO2R8_3E]
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なぜシリアの若者たちは武器を持つことになったのか?映画『それでも僕は帰る』クラウドファンディング http://www.webdice.jp/dice/detail/4684/ Fri, 01 May 2015 18:11:47 +0100
映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』より



クラウドファンディングサイトMotionGalleryとwebDICEとの連動連載、今回は『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』(仮)[原題:Return to Homs]の劇場公開を支援するプロジェクトを紹介。今回のプロジェクトの発起人で、シリアにアラビア語の研修経験もある、映画配給会社ユナイテッド・ピープルのスタッフ・アーヤ藍さんからのメッセージを掲載する。



今回のプロジェクトでは、今夏の劇場公開にあたり、映画の買い付け金以外の宣伝費のために、180万円を目標に2015年6月1日23:59までクラウドファンディングを行なう。集まった資金は、上映素材・予告編作成、チラシやポスターのデザインと印刷費、試写会や上映イベントの開催費などに使用される。




映画『それでも僕は帰る』より

映画『それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさと』より


応援にあたっては500円から50万円までチケットを選ぶことが可能。今回は「シリア」を感じてほしいというアーヤ藍さんのセレクトによる趣向を凝らした特典が用意されており、3,000円でシリア難民Yaserさんが撮影したシリア難民の”日常”を映した写真のポストカード、5,000円でシリアから直輸入のアレッポ石鹸、8,000円でシリア難民のお母さんたち手作りのニットアクセサリーを進呈。





©Yaser

3,000円以上の協力でプレゼントされるシリア難民Yaserさんが撮影したポストカード。 ©Yaser


そして、3万円でアーヤ藍さん主催の上映会&モスクツアーに招待。5万円でシリアのトークと料理を楽しめる特別先行試写会に招待、そして10万円でニューヨークで活躍中のフォトグラファー・鈴木雄介さんによる内戦以降のシリアを撮った限定写真集を進呈、と様々なかたちで「シリア」の市井の人々の生活を感じることのできる特典が用意されている。





詳細はMotionGalleryのプロジェクトページまで。




©Yusuke Suzuki

フォトグラファー・鈴木雄介氏による写真。10万円の協力で限定写真集が進呈される。 ©Yusuke Suzuki











映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』とは





映画『それでも僕は帰る』より

映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』より

舞台はシリア西部、ダマスカス、アレッポに続く第3の都市と呼ばれるホルム。2011年にアラブで始まった民主化運動の波はシリアにも起こり、サッカーのユース代表チームのゴールキーバーとして活躍した青年・バセットは、そのカリスマ性が若者を引きつけ、民主化運動のリーダーとしてデモの先陣を切るようになる。




反体制派の拠点のひとつとなったホムスで、バセットの友人のオサマは、デモを撮影し、インターネットで公開することで民主化運動を広げようとする。ふたりは同志として非暴力の抵抗運動を先導し、抵抗運動の波はシリア全土へと広がっていった。



映画『それでも僕は帰る』より

映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』より




しかし、2012年2月に事態は一変。政府軍の容赦ない攻撃によって、ホムスで170人の市民が殺害。政府側との対話は不可能と悟ったバセットたちは、これを機に武装闘争へと転換していく。廃墟と化したホムスの街で、政府軍に包囲されてしまった彼らの姿をカメラは追っていく。




監督を務めるのは、シリア人のタラール・デルキ。










アーヤ藍さんからのメッセージ

「普遍的な『戦争』のリアル、

『生きること』『死ぬこと』が映し出される」




アーヤ藍さん

アーヤ藍さん


【『それでも僕は帰る』について】



4年。気づけばそんなにも長い時間が経過しました。



2011年3月、私は中東・シリアに1ヵ月間アラビア語の研修で滞在していました。初めて訪れたイスラーム圏の国に、最初は緊張と不安もあったものの、日本では見たことのないくらい透き通った青空、歴史の積み重ねを感じる建物、そして、人懐っこく、ハートの熱いシリアの人たちに、すっかり魅了されました。



しかし、帰国直前から「アラブの春」の影響を受けた民主化運動が始まり、その後ほどなくして、内戦状態となってしまいました。少し前まで、一緒にご飯を食べ、言葉や宗教の違いを超えて笑い合い、「また会おうね」と手を振って別れた友人たちが、悲惨な言葉や写真をSNSでアップするのを見て、とても「他人事」にはできませんでした。



でも、私に一体何ができるのだろう。



自問自答を繰り返しながら、そして、何もできない自分に苛立ちを覚えながら、時は流れ、シリアを訪れた時から丸4年が経過しました。そんななかで出会ったのが今回の映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』(仮)[原題:Return to Homs]です。自分と同年代の2人のシリア人青年を追ったこの映画を見ていると、シリアで共に過ごした友人たちも同じような環境にいるのだろうかと、胸が苦しくなります。一方で、「死」と隣り合わせの状況でも、シリア人の陽気な面が垣間見え、ふと笑ってしまうような作品でもあります。そして何よりこの作品には、政権側か反政権側かに依らない、また、シリアにも限られない、より普遍的な「戦争」のリアル、「生きること」「死ぬこと」が映し出されています。この作品を日本に届けることが、今の私にできる、そして4年が経過してようやく踏み出せる“一歩”だと感じています。



今回のクラウドファンディングと映画を通じて、だんだん日本のマスメディアでは取り上げられなくなってきた「シリア」に、目を向けていただければと願うとともに、日本における「平和」を見つめ直す材料にもなれば、と考えています。また、クラウドファンディングがうまくいった暁には、「シリアに関心を持っている人が日本にこれだけいるよ!」と、シリアの“友”たちに向けて、アラビア語で発信をしたいと思っています。










映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』






監督:タラール・デルキ

プロデューサー:オルワ・ニーラビーア、ハンス・ロバート・アイゼンハウアー

編集:アンネ・ファビニ

原題:The Return to Homs

国際共同制作:Proaction Film / Ventana Film / NHK / SWR / SVT / TSR / CBC 他

シリア/2014年/アラビア語/94分




MotionGalleryプロジェクトページ:

https://motion-gallery.net/projects/return_to_homs












▼映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』海外版予告編





▼映画『それでも僕は帰る―シリア 若者たちが求め続けたふるさと』抜粋映像

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