webDICE 連載『特集:映画『世界が食べられなくなる日』』 webDICE さんの新着日記 http://www.webdice.jp/dice/series/45 Mon, 16 Dec 2024 20:34:21 +0100 FeedCreator 1.7.2-ppt (info@mypapit.net) 特定秘密保護法が通過したら「再稼働反対」以前に原発の情報自体発信できなくなる http://www.webdice.jp/dice/detail/4007/ Tue, 15 Oct 2013 14:47:20 +0100
『(株)貧困大国アメリカ』の堤未果氏


現代社会における1パーセントの富裕層である大企業と残された99パーセントとの二極化をレポートし続けてきたジャーナリストの堤未果氏。2012年の『政府は必ず嘘をつく─アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』に続き上梓した『(株)貧困大国アメリカ』は、グローバリゼーションが押し寄せる私たちの食卓を主題に、豊富な資料と取材をもとに、アメリカの現状や1パーセントに対抗する各地の人々の運動が記されている。堤氏にこの著作、そして映画『世界が食べられなくなる日』で描かれる多国籍企業の構造、さらに現在衆議院通過が目前とされ、最も緊急の問題となっている特定秘密保護法案について聞いた。





アメリカは新自由主義の先に来るものを体現している




──『(株)貧困大国アメリカ』というタイトルについて伺います。株式会社は株主の利益を追及する組織ですが、この場合、誰が株主なのでしょうか?




この場合は多国籍企業を中心に、投資家、銀行家などの1パーセントと呼ばれる層ですね。



── (株)貧困大国アメリカは法令遵守をしない、ブラック企業に相当するのでしょうか?



逆です。(株)貧困大国アメリカは企業が国家を合法的に手に入れたモデルケースです。



── 取材をされていくなかで、時代とともに変わっていっていくことを感じましたか?



はい、三部作を通してものすごい勢いで世界の枠組みが変わっていく実感がありました。

『ルポ・貧困大国アメリカ』はブッシュ政管家の新自由主義、『ルポ・貧困大国アメリカⅡ』
ではオバマ政権下の全体主義、そして今度の完結編である『(株)貧困大国アメリカ』では、司法、行政、立法府、憲法など法治国家の持つチェックアンドバランスの機能を超越した存在にのまれてゆく国家の姿がモチーフになっています。

考えてみたら、資本主義が進化していった先に、新自由主義があり、その先に来るものを世界のどこよりも早く体現しているのがアメリカなんです。ですからこれはアメリカだけの話ではなくて、時代の変化のなかで進んでいくなかのひとつのフェーズとして、韓国でもインドでも欧州でも南米でも、世界中に拡大しつつありますね。




── 『世界が食べられなくなる日』の感想はいかがでしたか?



さすがフランス映画、そのまま直球だなと感心しました。『フード・インク』のロバート・ケナー監督と去年の今ごろ京都で食事をしていた時に、「原発とGM(遺伝子組み換え作物)の構造は同じだね」という話で盛り上がったのを思い出しました。国を挙げての安全神話、低線量、微量で長期間摂取し続けた際の人体に与える影響について長期の実験がされていない(させてもらえない)事。動くお金が巨額すぎて、業界によってマスコミや政府、学者が抑えられている現状……共通点がとても多いのです。

『世界が食べられなくなる日』の中でも、同じ指摘がされていましたが、現象だけでなく構造をとらえる事の重要性を改めて確信しました。




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映画『世界が食べられなくなる日』より



── ジャン=ポール・ジョー監督は、最初の『未来の食卓』(2008年)でオーガニックの給食をフランスの田舎町で始める話を撮って、次の『セヴァンの地球のなおし方』(2010年)でセヴァン・スズキを軸にして、彼女が1992年のリオの環境サミットでのスピーチの時と18年後の現在も世界が何も変わっていないということを描いた。そして今作で福島原発事故とGMの問題を、別々に撮ろうかと最初は言っていたのですが、根は一緒、人間がコントロールできないテクノロジーだから、しかも訴訟しても因果関係を非常に特定しにくい。この『世界が食べられなくなる日』がヒットするのがいい時代とは思わないけれど、みなさん興味を持って観に来て下さっています。



嬉しいですよね。今も日本全国で講演をすると、マスコミ情報を鵜呑みにしていまだにTPPは農業の話だと思い込んでいる方がとても多いです。日本は世界でも大手マスコミの情報をそのまま信頼する率が高い国。先日も「マスコミ鵜呑み度で世界一位」と言う調査結果が出ていました。マスコミの偏った報道は、多角的議論を出来なくさせます。

例えば「強い農業」や「JA利権解体」などのフレーズは出ても、その論理の中で「では中小零細農業はどうなるのか?」「食の多様性は?」という角度からの議論はなかなか深まりづらい。また、「農業」はどうしても農家の人の話で消費者には遠いイメージを持たれがちですが、「世界が食べられなくなる日」をみて、日常の中で身近な「食卓」からTPPを考える人が増えてゆくことは、とても大きな意味があると思いました。





原発と遺伝子組み換え食品はアカデミズムからも世論が形成される





── この本を読んで知ったのですが、セラリーニ博士の研究が発表された『Food And Chemical Toxicology』誌は、担当者が交代になったそうですね。



あっという間でした。『Nature』誌に遺伝子組み換え食品の安全性に問題があるという論文が掲載された時、編集長には即「非科学的だ」という批判文が大量に送られてきて一度下ろさざるをえなかったのです。『Nature』誌は査定が厳しいことを誇りにしている雑誌ですが、放射性物質と同様遺伝子組み換え食品も長期の実験がされておらず、科学的データがない中で「非科学的だ」と言われてしまうとなかなか反論できません。例えば遺伝子組み換え食品を食べ続けてがんになりました、と言っても、他にも喫煙や遺伝など原因があれば特定は難しい。福島第一原発からの放射性物質で癌が急増するリスクを海外から警告されても、日本人の死因の1位は既にがん。因果関係を証明出来なければ、裁判を起こしても勝つのは難しいと言われています。権威ある『Nature』誌ですら、押し切れませんでした。



── メディアにもアカデミックな専門誌にも当たり前のようにバイオ関連企業の手が入っているということですか?



ええ、研究者や編集者の過去の経歴を調べればそれがわかります。

この映画が明らかにしているように、巨額のお金が動く業界の構造はみなよく似ています。原発や食品、医薬品……他にもたくさんありますね。

アカデミズムの世界を抑えることも大変効果的です。例えば311前まで、日本でも多くの人が「内部被曝」や「汚染水」などの言葉すら聞いたこともなかった。原発事故の後テレビに沢山の学者が出てきて「プルトニウムは食べても大丈夫です」などと言った時も、多くの国民は疑わなかった。そこにはもともと難しい専門分野であることと、学者が嘘を言うわけないという2つの思い込みがありました。マスコミは嘘をつくだろう、と疑う人は増えてきましたが、「~科学研究所」とか「日本~学会」という名前は東大神話と一緒で、いまも一定の効果がある。人間はイメージを皮膚感覚でとらえる生き物です、その方が楽ですから。だから大きな利権を守るには、そこを押さえる事が最も効率的なのです。



マスコミにはカウンターがありますが、アカデミズムの世界では学会で発表した論文が認められて初めてステイタスとして承認される。発表させてもらえなければ、どんなにいい論文を書いても地位も権威も得るのは難しい。その構造に侵入してゆく戦略です。

発表された研究結果は国民に信用され、そのまま世論に反映されてゆきます。世論の形成はマスコミだけではなく、アカデミズムからも出来るという典型的な例が原発と遺伝子組み換え食品でしょう。



── (株)貧困大国アメリカはブラック企業ではないということですね。



はい。そこが怖いのです。独裁者が理不尽に暴走しているのであれば、その独裁者をおろすなり力を奪えばいい。でももう、そういう昔のような単純な構図は通用しなくなっている。企業のアキレス腱の一つは訴訟ですよね。訴訟するとお金も時間も取られるし、何より大事な企業イメージが落ちる。イメージが落ちると、商品が売れなくなり利益が下がる。利益が下がると、株主を怒らせる。では訴訟を回避する一番の方法は何か。法律をいじって合法にしてしまえばいいわけです。その権限を持つのは立法府の政治家だけですから彼らを合法的に押さえればいい。すごくシステマティックです。だからブッシュは暗黒の8年の中で、人ではなく司法そのものをいじった。そのことを国民が見落とした結果何が起きたか。反イラク戦争、反格差紛争だったのが、途中から市民運動に煽られて「反ブッシュ運動」にすり替わってしまったんです。「特定の悪役」ではなく政治や政策決定プロセスそのものの歪みをみなければいけなかったのに、ブッシュ憎しになってしまったのです。

だからブッシュからオバマになったら、国民は安心して政治から目を離し、オバマ政権下でブッシュ時代の悪法が次々に強化されていく事にも気がつかなかった。その結果が今のアメリカです。






── この本でALEC(米国立法交流評議会/州議会にかけられる前に議員と企業が草稿中のモデル法案を検討する)が法をお金で買う、そんなことができるんだと知りました。



実はあの事実も30年間まったく出てこなかった、すごいスクープだと思います。アメリカでもこの内部告発文書を受け取った女性が一生懸命発信しようとしていますが大手マスコミは沈黙しており、国民はほとんど知らないですね。



── しかも青天井に献金していいということになった。



2010年のあの最高裁判決で、この『(株)貧困大国アメリカ』は完成形になりました。

でも今言ったように、国会での審議も法改正も、裁判所の判決も、マスコミもまともに報じないし国民は日常の中で全く関心を持たない。だから実現したのです。

日本だってそもそも献金の上限などあってないようなもの、政党支部を作ってしまえばいくらでも献金額は上げられます。それから原発で言えば、当然業界は民主・自民の両方をバックアップしていますし。311の後「民主党だったら再稼働しないのか」と国民が淡い期待を抱いたものの、ちゃんとしましたよね。

企業の力がここまで巨大化した結果、二大政党もまた幻想になったのです。




私たちの相手は国籍のない1パーセント




── 日本が全体主義に陥らないためにはどうしたらいいでしょうか。



アメリカは愛国者法で全体国家になってしまいましたが、私が今日本で非常に危機感を持っているのは今度の国会に提出される「特定秘密保護法案」です。

TPPで原発再稼働されてしまう大変だ!と言う人がいますが、それ以前に「特定秘密保護法」が通過したらもう原発の情報自体発信できなくなるかもしれない。もう一つ同時に進められている安倍政権の「国家戦略特区構想」も要注意ですね。これが実施されればTPP後の環境が前倒しで整備されてしまうでしょう。私たちは分かりやすくて敵と味方がはっきりしている象徴的なものに気を取られますが、それしか見なければいつのまにか別のもので包囲されている事に気づけなくなるので注意しなければなりません。多くの場合危険な法律は、いくつも同時進行で進むからです。



── 野党側が1パーセントに対向する論理を作らない限り、変えられないですよね。



野党が変わるのを待つよりも、私たち自身がまず、対峙している相手が今の与党でなく国籍のない1パーセントだと思うところからスタートですね。敵が自民党政権じゃなく、アメリカでもなく、1パーセントの多国籍企業や投資家、銀行家だと気づいた時、法律や省庁の動きの方に目がいくでしょう。そして「選挙が最後の砦」だと思わなくなります。法改正にとって大事なのは選挙の後だからです。後はいかに分裂を回避するか。1パーセント側は目的が揃っているのでがっちり団結していますから。選挙が終わっても、異なる党の支持者同士対立や批判をせず、「支持政党は違っても、あなたの支持する先生に真実を伝えて下さいね、例えば秘密保全法については慎重に検討を」と伝える。出来るだけ多くの議員に真実を手渡してゆく事が大事です。選挙が終わった後は、彼らが私たちの代理として法律に関わる採決の際に貴重な一票を投じるのですから。


1パーセントと99パーセントが綱引きをしていて、真ん中に政治がある。この綱を離してしまったら最後、全部取られてしまうでしょう。けれど実は99パーセント側で綱を引く人数が、国境を越えて今どんどん増えている事が希望でしょう。世界を帝国化する「多国籍企業のグローバリゼーション」だけではありません。多様性と共に人間らしく生きる事を目指す「個」のグローバリゼーションも、確かに存在するのです。




(2013年7月10日、南青山にて 取材・文:浅井隆 構成:駒井憲嗣)










堤未果 プロフィール


ジャーナリスト、東京都生まれ。ニューヨーク州立大学国際関係論学科修士号所得。国連、アムネスティ・インターナショナル・NY支局員を経て、米国野村證券に勤務中、9・11同時多発テロに遭遇。以後、ジャーナリストとして各種メディアで発言、執筆・講演活動を続ける。著書に『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(海鳴社)で日本ジャーナリスト会議黒田清新人賞、『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)で日本エッセイストクラブ賞+新書大賞2008、『ルポ 貧困大国アメリカ II』(岩波新書) 『政府は必ず嘘をつく』(角川SSC新書)『(株)貧困大国アメリカ』など他多数。J-Wave Jam the World 水曜日パーソナリティ。

http://mikatsutsumi.org/











【関連記事】


貧困大国アメリカのようにならないために政治をあきらめてはならない

『政府は必ず嘘をつく─アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』堤未果インタビュー(2012-04-18)

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「モンサントの遺伝子組み換え食品に毒性の疑い」ルモンド紙報じる(2012-10-01)

http://www.webdice.jp/dice/detail/3664/



市民の声によりモンサント保護法の破棄がアメリカ上院で決定(2013-09-29)

http://www.webdice.jp/dice/detail/3992/















堤 未果『(株)貧困大国アメリカ』

(岩波新書)



ISBN:978-4004314301

価格:798円

版型:172 x 106ミリ

発行:岩波書店

発売中





★購入はジャケット写真をクリックしてください。Amazonにリンクされています。











映画『世界が食べられなくなる日』



2009年、フランスである動物実験が極秘に開始された。それはラットのエサに遺伝子組み換えトウモロコシ、農薬(ラウンドアップ)を、いくつかの組み合わせで混ぜて与えた長期実験だった。分子生物学者のジル=エリック・セラリーニ教授が行ったこの世界で初めての実験は、2012年9月に専門誌に発表され、フランスをはじめ世界中に大きな波紋を投げかけた。『未来の食卓』『セヴァンの地球のなおし方』のジャン=ポール・ジョー監督が、遺伝子組み換え作物と原発の危険性に迫るドキュメンタリー。





監督:ジャン=ポール・ジョー

製作:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク



公式サイト:http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

公式twitter:https://twitter.com/uplink_els

公式FACEBOOK:http://www.facebook.com/sekatabe



▼『世界が食べられなくなる日』予告編



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市民の声によりモンサント保護法の破棄がアメリカ上院で決定 http://www.webdice.jp/dice/detail/3992/ Sun, 29 Sep 2013 15:28:59 +0100
プラカードを持ったモンサントへの抗議活動を行う女性の写真とともに掲載された、INTERNATIONAL BUSINESS TIMESの記事



アメリカで「モンサント保護法」と呼ばれていた「包括予算割当法案」において、遺伝子組み換えを利用する企業を保護する条項を削除する法案が9月24日上院で可決された。今月末までに「モンサント保護法」は撤廃される見通し。




この「包括予算割当法」(HR993)は今年の3月26日、オバマ大統領の署名により成立。第735条に、モンサント社などが販売する遺伝子組み換え作物で消費者に健康被害が出ても、因果関係が証明されない限り種子の販売や植栽を法的に停止させることができない、と定めたこととから、「モンサント保護法」と呼ばれるようになった。この法案撤回を求めるオバマ大統領への請願書に、25万人以上の署名が寄せられた。成立後も抗議行動は世界規模で高まり、日本でも、環太平洋経済連携協定(TPP)が締結がされるとこの法案が日本に持ち込まれてしまう可能性があるのではないかと注目されていた。



今回の上院の決定に、農家や市民による持続可能な食物システムを構築するための草の根の運動を続ける団体Food Democracy Now!のリーダーDave Murphy氏は「これは食べ物の安全をめぐる運動にとって、そして政府の開放性と透明性に留意するすべての人々にとって大きな勝利だ。私たちの声が効果的に組織されれば、変えることができるという証しなのだ」と声明を発表している。




FDN

Food Democracy Now!のサイトより


日本では、2012年にモンサント社の実態を追ったドキュメンタリー『モンサントの不自然な食べもの』が公開され、現在もグローバル企業による遺伝子組み換え食品と原子力の関連に迫るドキュメンタリー『世界が食べられなくなる日』が公開され話題を集めるなど、引き続き食の安全について多くの関心が寄せられている。




【INTERNATIONAL BUSINESS TIMES】‘Monsanto Protection Act’ Killed In Senate: Controversial Provision Removed From Spending Bill(2013.9.27)

http://www.ibtimes.com/monsanto-protection-act-killed-senate-controversial-provision-removed-spending-bill-1412160



【Food Democracy Now!】

http://www.fooddemocracynow.org/











【関連記事】



日本にも影響か〈モンサント保護法〉が米で成立(2013-04-03)

http://www.webdice.jp/topics/detail/3831/



[TOPICS]モンサント 欧州のGM反対運動にギブアップ(2013-06-10)

http://www.webdice.jp/topics/detail/3900/



[TOPICS]GM大豆を中国が輸入承認でモンサント株急騰(2013-06-21)

http://www.webdice.jp/topics/detail/3908/


[骰子の眼]「モンサントの遺伝子組み換え食品に毒性の疑い」ルモンド紙報じる(2012-10-01)

http://www.webdice.jp/dice/detail/3664/











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映画『世界が食べられなくなる日』より









映画『世界が食べられなくなる日』

渋谷アップリンクにて公開中、ほか全国順次公開



2009年、フランスである動物実験が極秘に開始された。それはラットのエサに遺伝子組み換えトウモロコシ、農薬(ラウンドアップ)を、いくつかの組み合わせで混ぜて与えた長期実験だった。分子生物学者のジル=エリック・セラリーニ教授が行ったこの世界で初めての実験は、2012年9月に専門誌に発表され、フランスをはじめ世界中に大きな波紋を投げかけた。セラリーニ教授は警告する「20世紀に世界を激変させたテクノロジーが二つあります。核エネルギーと遺伝子組み換え技術です。これらは密接に関係しています。米国エネルギー省は原爆につぎ込んだ金と技術者を使って、ヒトゲノムの解析を始めました。そこから遺伝子組み換え技術が誕生しました」。『未来の食卓』『セヴァンの地球のなおし方』のジャン=ポール・ジョー監督が、遺伝子組み換え作物と原発の危険性に迫るドキュメンタリー。





監督:ジャン=ポール・ジョー

製作:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク



公式サイト:http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

公式twitter:https://twitter.com/uplink_els

公式FACEBOOK:http://www.facebook.com/sekatabe



▼『世界が食べられなくなる日』予告編



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縦・横・斜めの3つの方向から可能性を考え未来を見ることが大事です http://www.webdice.jp/dice/detail/3907/ Thu, 20 Jun 2013 16:19:13 +0100
『世界が食べられなくなる日』公開記念のトークイベントに登壇した田中優氏[2013年6月10日、渋谷アップリンク・ファクトリーにて]



原子力エネルギーと遺伝子組み換え作物の関連を描くドキュメンタリー『世界が食べられなくなる日』が上映中。公開を記念して渋谷アップリンク・ファクトリーで環境活動家の田中優氏によるトークイベントが行われた。自ら岡山に移住し、電力会社からの電力を使わずに生活する田中氏から、これからの安全な暮らしへの提言が語られた。












日本もこういう映画を作ってほしい



──まず『世界が食べられなくなる日』の感想からお願いします。


みなさん既にご存知ですか、モンサントがヨーロッパをギブアップしたというニュース。それに繋がったのがこの映画で実証した内容なんじゃないだろうかと思っています。今回の映画は、そうした実証的なことを描く一方で、実際にいろんなものが食べられなくなっていくということを中心に、放射能の問題も合わせて出してくる。日本ではあたかも大丈夫であるかのような話ばかり出てきますが、先日岩手県の子どもたちの尿のなかの放射能量を調べたら、子どもたちの体の中に、体重1キログラムあたり、だいたい7ベクレルくらいの放射能が入っている結果になっていました。子どもたちが心臓の不整脈が出ないギリギリのラインは5ベクレルくらい。それを超えているので、ぼくは危険だと思う。ところが、残念ながら日本政府そして推進派の人たちはこれを大丈夫だと言いまくっている。



チェルノブイリの経験を日本に当てはめてみると、数年後に放射能により特に心臓・血液関係の病気は90パーセントくらいに上ってしまうんですけれど、その時期は2017年頃になるんです。ところが2013年時点で出てきた甲状腺がんを否定して、挙げ句には他の病気が出る前ですから、それをいいことに人々を20ミリシーベルト/年間被ばくするようなところに人々を送り返すことを始めているわけです。これはまるっきり逆方向なので、日本がこういう映画を作って、その参照にモンサントの遺伝子組み換えの話が出てくるという、中心が逆転するようなものを作らなきゃいけないなと思います。





──田中さんがこの映画に寄せていただいたコメントは下記でした。このエネ(ルギー)・カネ(金融)・タネ(食糧)の関係性についてお話ください。


覚醒か、惰性か

人々が必要とするものを独占すれば、世界支配も不可能ではない。その手段がエネ(ルギー)・カネ(金融)・タネ(食糧)だ。しかしそれは自給もできる。上から下への支配か、下から上の自給か。これを観れば私たちの今いる位置が確認できる。

覚醒して生き延びるか、惰性に滅ぶのか、それが今の私たちの選択肢だ。



大手の企業は上から下へのピラミッドを作っているんです。例えば電力、みなさんのなかで東京電力以外から電気を買っている方はいないわけで、家庭は100パーセント電力会社の独占ですから、電力会社から電力を買う以外方法がない。そうした上から下の仕組みだと、ひとり1円だけ値上げしただけで、1億2千万円入る。だからいちばん儲けやすい方法は、そのがんじがらめのピラミッドのなかに人を追い込んで、上から下に支配してしまうことなんです。その支配の構造は、エネルギーそして金、そしてタネに進もうとしている。タネ自体が既に壊されていて、その壊されたタネを使わなければ農業ができないというところに追い込んでいけば、タネ業界の勝ちです。でも一方で下から上へ進むための転換期に今ちょうど私たちはあるのです。



ぼくは今日のトークを頼まれたときに、未来についてこんなことが現に可能だということを出したいと思ったんです。話を聞いて映画を観て暗くなって終わってしまったら次に進めない。やっぱりこんなことをやれたら楽しいという、ワクワク感が最後に残るようなトークができたらいいなと思っています。



──タネの支配というのは、遺伝子組み換えもそうですが、F1種などが農業の世界に深く根付いていますよね。



F1というのは、異なる種を配合してふたつの遺伝子を合わせたときにできる種の第一世代のことで、F1種は優秀なんだけれど、そのタネを作って使って次の田植えなり作物を作ろうとすると、次はダメになるんです。だから、永遠にF1種を買わなくてはいけない。ぼくが今住んでる岡山の農家では、みんなタネを自分で採ってそのタネを代々使って栽培してます。だから「それはなんという種類のタネですか」と聞いても「分からない」と言うんです。そんな暮らし方が一方であったのに、今の時点ではF1が中心で、2世代目はダメになるので、必ず買わなくてはいけない。そのようにしてタネについての支配が起こってきた。


しかもそこに、ラウンドアップ(=皆殺しという意味の名前)の除草剤をかけると、それ以外の草はぜんぶ死ぬんだけれど、その遺伝子を組み替えられたラウンドアップ・レディだけが残るようになっている。これはタネを通じて完全な支配のピラミッドのなかに農業もすべて組み込んでしまえ、ということです。





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映画『世界が食べられなくなる日』より





農薬業界は構造的にあってはいけない



──この映画で描かれるセラリーニ教授の実験については、ラットに4ヵ月以降から異常が見られたという報告がありました。



そうして期間を限定して実験するのは、意図的に4ヵ月目から腫瘍が出るという結果を隠そうとしているからです。実は日本にもチェルノブイリ事故のときに放射能の雨が降ったんです。そのときに、食べものについて放射能を測っていたんですが、1ヵ月で調査を止めたんです。1ヵ月経つと今度は内側から汚染されるんです。例えば牛乳だと、牧草が1ヵ月経って汚染され、それを牛が食べたことによって、牛乳が汚染するのは1ヵ月後なんです。だから、わざわざ1ヵ月の手前まで調査して、そこで止めたんです。今回の実験も似ています。


安全性の試験といっておきながら、安全じゃないことを立証するその寸前のところで寸止めをして大丈夫だというデータを出してくる。しかし今困ったことに、遺伝子組み換え作物でアメリカでも許可されていないものが日本で許可されていますから、ほんとうに今日本が好き放題やりたい放題の状況になってきてしまっているんです。それはパブコメを募集しますなんて出てくるんだけれど、読んだって分かりやしない。書いたって、いい加減な数字にしか反映されてこない。そういうものをきちんと立証してくれたのが今回の映画の重要な点だと思います。




──実験に対してはいろんな意見がありますが、この実験をやり遂げて科学誌『Food and Chemical Toxicology』に発表したことはとても大きな力になっていると聞きました。先ほどのモンサントがヨーロッパをギブアップしたというように、大きな力になっていくためには私たちひとりひとりどういう風にできるでしょうか。



ネオニコチノイドという世界中でミツバチがいなくなった原因の農薬がありますが、これを今年の年末からEUが使わせないようにして、その間にチェックをして、最終的に止まることになる、という状況なんですが、日本ではうなぎのぼり。実は日本は単位面積当たりの農薬の使用料が世界一なんです。



農薬が多すぎるだろうということになって、特別栽培米というものが出てきています。減農薬というものです。ところが減農薬にはネオニコチノイドを使う。金沢大学の山田先生がデータを集めたところ、もっとも薄いレベルの水田の水を取ったものでも、すべて蜂の巣が崩壊したんです。山田先生は研究結果を発表したんですが、それに対して三井化学アグロ社が批判しているんです。これを我々が減農薬と受け止めていてはだめですね。



農薬での闘いはいたちごっこなんです。永遠にそれに対する耐性を持った虫が出てくる。モンサントはもともと日本では三菱と組んでいました。ところが、最近既に耐性を持った雑草が出てきてしまい、次の農薬に耐性を持った遺伝子を入れる必要があるために、住友と組んだのです。こういう業界は、程度問題ではない。止める、という方向に進まなければならない。構造的に、あってはいけない業界なんだと思います。




──日本は遺伝子組み換え作物の大量輸入国で、トウモロコシをアメリカより1,600万トン輸入していて、アメリカの大半のトウモロコシが遺伝子組み換えということで、私たちの食卓にいろいろなかたちで入っています。



日本の食料自給率は低いと言われますが、39パーセント(平成23年度)というのはカロリーベースなんです。他の貿易統計はすべて価格ベースなのに、数字を低く見せるためにこうしている。価格ベースですと7割自給できています。そのなかで多い輸入は飼料なんです。動物を経由して人間が食べるから、動物のほうに影響が出たとしても人間は食べないからだいじょうぶなんじゃないか、ということになっている。だから、遺伝子組み換えを避けたかったら、肉を避けたほうがいい。でも困ったことに、日本のなかの肉って、放射能がほとんど出たことのないのは、豚肉、鶏肉、卵なんです。なぜかというと配合飼料ばかり与えていて、アメリカ産のエサだからです。牛肉と牛乳に放射能が出るのは、日本のなかの飼葉を与えている比率が大きいから。ですので、日本の場合、現に「食べられない日」になっています。




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映画『世界が食べられなくなる日』より






生きた証は、その人が意見を言ったことでしか立証できない



──(観客からの質問)TPPに交渉参加ということで7月に参議院選挙があって今度自民党が勝ったら、原発も遺伝子組み換えも拒否できないと思います。



その通りなんだけれど、ではどういう風に我々はやっていったらいいのか考えると、我々にできることって3通りだと思っているんです。その1つ目が「縦」方向。政治家を変えるなり、自分たちが政治家になるなりして、社会を下から上に、上から下に変えていく動きは重要です。もうひとつ重要なのは、「横」方向の動き。ヨーロッパではネオニコチノイドでも遺伝子組み換えでも、数十万人規模のデモが行われているんです。そんなレベルでデモをやられたら、政府もそのままではいられなくなる。署名やデモで「横」方向に人々が伝えていくことで、社会を変えていこうとする動きも重要です。そして、「縦」と「横」では絶望的な状況になってしまっていても、まだできることがあります。それが「斜め」の方向。日本語でいえば第三の道、英語でいえばオルタナティブ。別なやり方で社会を変えていく、新しい方向を作ることです。この3つのなかの1つの可能性として、今回の選挙はすごく大きな意味を持つと思います。



選挙を分析してみると、自民党の得票率は毎年減っている。なのになぜ勝つかというと、投票率が下がっているから。若い人が投票しないおかげなんです。ということはこれをひっくり返したかったら、若い人に投票に行け、といえばいい。でも若い人たちはモラトリアムをしないと生きていくのが危険だと思っている。例えば自分は反TPPとか反原発だと言ったら就職できない。それが怖いので誰に何を言われようとはっきりさせないでおこう、その習性のせいで、何についても自分の意見を持たない方が無難だという生き方をしてきた。



なので、若い人に質問を突きつけるべきなんじゃないかな。その人が生きた証ってその人が意見を言ったことでしか立証できないんだから。一生自分の意見を持たなかったら、その人なんて存在した意味が見えないでしょう。アウトプットしてなんぼなんだと思います。あなたはこれについてどう思うの?ということを突きつける社会が必要なのかなと思う。



若者の投票率ですが、アメリカも以前は低かったんです。ところが、今は8割くらいに上がっている。ロック・ザ・ボートという運動をやって、「選挙行かないなんて、おまえ意見持ってないのかよ」とロックのコンサートをやりながら若者に訴える、かっこいい活動にしていった。投票率を上げようというのは、どこの自治体でも必ず言っている話だから、その選挙予算をちょっとください、我々が上げてみせるから、とロック・ザ・ボートやったらいいし、いろんなところと組んで投票率を上げるために、若い人たちに人気のあるロック・ミュージシャンを呼んで「こんなイベントやりませんか」と運動として定着できればいいと思います。



ドイツが原発を止めることにしたら、スウェーデンの原発メーカーから訴えられたんです。原発を輸出した側から、なんでお前止めるんだ、そのせいで企業が損したじゃないか、金返せ、とISD条項によって国が訴えられてしまっている。そうすると、日本も原発を止められなくなる。アメリカのGEとかが「どうしてくれるんだ」と賠償を求めてくる。その賠償が怖いから原発を止められない、という構図になってしまう。

明治時代、私たちの祖先が飲まされてきた不平等な条約をぜんぶ撤回させていったんです。それを自分から呑みにいっているのが今回のTPPだと思うので、独立心を持て、自分の国のことは自分で決めろよ、そんな不平等な条約を受け取るな、と感じています。






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映画『世界が食べられなくなる日』より



新しい可能性「菌ちゃん農法」





佐世保で「大地といのちの会」をやってる吉田俊道というぼくの友人が、いま「菌ちゃん農法」というのをやっている。微生物の菌で土を豊かにすることが農業の9割だと、子どもたちと残飯を堆肥にさせるんです。細かく踏んで土に混ぜ込んでビニールシートをかけて完全な堆肥を作る。残飯だけだとC/N比といってチッ素が多すぎて腐敗に向かうことが多い。そこで彼は草を加える。草を刈って濡れた状態で土の上にかぶせて、残飯を加えてビニールシートを載せて3ヵ月経ってみると見事な土になる。その土で育てた野菜は虫がつかないんです。虫って弱い個体を滅ぼすために存在する。カブトムシを見つけたかったら、弱ったクヌギの木を探せばいい。その土が貧相で、野菜が病的だと虫が寄ってくるけれど、土が豊かだと、虫がつかないんです。だから、無農薬だと虫がついていて当たり前、というのは間違いです。



そして、そこでできた野菜は抗酸化力が強いんです。アンチエイジング効果とかガンの抑制や放射能の予防効果などがある。彼が作った人参をジュースにしてみると、市販の人参のジュースはあっという間に酸化して色が変わってしまうけれど、全然色が変わらない。子ども子どもも自分で野菜を作ると愛着があるので食べるようになった。いま、子ども子どもたちの半数が病気の温床となる低体温症なんですが、子ども子どもたちにそうした野菜を食べさせると、低体温症がほとんど消えてしまいました。病気をしなくなって、保育園の登園率が上がって、病気してもすぐ回復してくる、というのが実証されてきて、彼の野菜の作り方がいよいよ知られることとなったのです。





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映画『モンサントの不自然な食べもの』より




別な解決策と仕組みを出していくことで、原発を進められなくする




──(観客からの質問)こんなにみんなでがんばって、若い人たちに選挙に行こうと発信したりしても、なかなか結果が出ずにときどき心が折れそうになるんです。優さんはそんなときどうしているんですか?



ぼくは基本的な考え方は、自分一人で社会は変えられないと思っているんです。みんなが変わっていくから社会が変わっていくのであって、誰かひとりがその社会を変えるとしたらファシズムです。ファシズム社会で良い方向に向かっても、必ずひっくり返されてしまう。だから、みんなで納得づくで動かなければ解決しないんです。



そして、ぼく自身フェイスブックやフィード購読や無料・有料のメルマガその他で、3万人に伝えることができる。みなさんも1万人くらいはすぐ作れると思うんです。意識的にやったら、この会場だけで、100万人くらい伝えられるでしょう。そういう仕組みがどんどん作れる時代になったので、そこは昔と比べたらずっといい方向に進んでいる。それを感じながら、心折れないようにする、というのがまずひとつめ。




それからもうひとつは、ぼくの家は太陽光発電パネルとパーソナルエナジーという電気をコントロールする装置を購入して、100パーセント電気を自給にしました。それでも暮らせるし、みなさんも暮らせるんです。そういう状況になっているのに、なぜ私たちが支配がされるのを当たり前だと思い込んでいるのか。今や時代が変わって、自給が可能な時代になってきたのに、思考のほうが追いついていない。支配されるのが当たり前だと思い込んでいる。この端境期に我々がいて、その先に何を見るのか、というのが重要だと思っています。



晴れの日は電気が発電されすぎて、バッテリーがいっぱいになったあとはロスしていくんです。それがもったいなくて、やたら電気製品が増えて、電動草刈機とか電動のこぎりとかが増えて、有り余った電気を一生懸命使うんです。そういう暮らしが一方ででき、雨が3日以上続くと、バッテリーが足りなくなる。そういうときのために発電機を買ってきたのですが、ガソリン式のいちばん安いのは3万5千円ですよ。みなさんが携帯買うお金で発電機が買えてしまう。その発電機で自給することが可能です。3日以上雨が続いたらその発電機を動かしてしまえばいい。その発電機を入れて電気なしで自給できる仕組みを作ってから、中国電力に電話して、送電線を切りにきてもらいました。



みんな逃げちゃえばいいんです。今はバッテリーが高いから、太陽光発電は合計で500万円かかってしまいますけれど、今後下がっていくだろうし、そして誰かが最初に買わないと安くならない。だからそそっかしいけど、今から買うという人が現れないと次の時代は生まれていかない。実は東京電力の利益の91パーセントは一般の個人と小さな商店からとっているんです。電気をものすごく消費している大きな企業からは、9パーセントしか利益を取っていません。不都合なコストはみなさんの家庭のうえに乗っているんです。家庭に乗せようとしたとたんに、東電は今後3倍値上げをするつもりですから、そのときに「私はもういいです、自給しますから」と言えたら、その社会は変えられます。だって利益の9割を占めている家庭に逃げられてしまうんですから。



別な解決策と仕組みを出していくことで、原発を進められなくすればいい。もし政治に負け、署名活動に疲れ、となったとしても、もうひとつの方法で勝つことが可能です。「縦」「横」「斜め」の3つの方向のなかでいまどれがいちばん可能性があるかを考えながら、未来を見ることが大事だと思います。





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映画『世界が食べられなくなる日』より





自然のかしこさをうまく利用した循環に入っていけばいい



──(観客からの質問)最近、支配のなかで入りたくないという思いを実現するために畑をやろうと自給をしようとやりはじめたのですが、雑草や虫の脅威を実感することができました。ホームセンターでタネを買ったんですが、ああやって売っているタネはどうなんですか?



基本的には、遺伝子組み換えではないが、野口種苗以外はF1だと思ったほうがいいと思います。だけど、F1は4回か5回タネを採ると先祖帰りするんです。だから自分のところで採るものというスタイルにしていけばいいんじゃないかと思います。



荒れた土地に生えた稲科の草は土を豊かにするために生えている、そこの場所に切ってビニールシートの下で発酵させると、どんどん土が豊かになっていく。そこの土に足りないものを作るために雑草が生えてくる。雑草は味方なんです。ナウシカの世界のように、そこに育ってくる生き物にはそれなりの役割があるのに、それを見いだせずに殺せばいいとやってきてしまったから、こんな悪い状態になってしまった。そこにある環境を味方にしていくことが大事。そして、味方につけていくときには、気が長くないといけない。農業は若いうちから始めないといけないです。1年に1回しか経験できないから。弱った土を完全に回復させるには年数がかかります。だから長い年月を見ながらそこに生きている生き物を応用することで農業はなりたっていくものです。今年や来年がうまくいかなくてもあきらめないことが大事かなと思います。



ぼくが住んでいる岡山県和気町の集落は農薬を使う農家が一軒もなくて、小学校の給食は完全無農薬なんです。そしてネオニコチノイドも使わないから、うちのツツジが咲いたときはミツバチだらけ。そしてもうひとつ大事なのは、マルハナバチというおとなしいハチが飛んでくるのですが、これがホタルと共生している。そのおかげで、うちの周りでたくさんホタルを見ることができる。



岡山は災害が少ないんです。地震がなく、台風がこなくて、そうした災害がない地域は助け合うことがあまりない。そのおかげでお互いに関係性が薄く、あえてベタベタの関係を作らないんです。独自の生き方をしている人が多いので、そのおかげで東京から引っ越してきた私でも居心地がいいんだけれど、「なんで農薬を使わないんですか?」と聞いてみたら、「だって一度も使ったことないから」と当たり前に言って、周りの人が使っているから、ということを思わないんです。



そんな岡山のJAが、『奇跡のリンゴ』で知られる木村式自然栽培の米を作りはじめた。農薬で儲けているJAが農薬を否定した農法を実験しているんです。これはたぶん全国的にここしかないと思います。木村秋則さんは堆肥があれば堆肥を入れればいい、なかったら入れなければいい、と言う。土のなかにチッ素が不足するとそれを補填するバクテリアが住み着く。実は自然の循環のほうがはるかにかしこいんです。それなのにモンサントがそこに手を出すのでダメになっていく。ぼくは次の農法が現実にあるので、それを広めていくことの方が、モンサントに反対とか言うよりもいいんじゃないかと思っています。



こういうやり方があちこちに増えてきて、無農薬のものから売れていくと、こっちの方が得だからと変わっていく。しかも吉田俊道の農法だと簡単だと分かってくる。自然のかしこさをうまく利用した循環に入っていけばいいのです。



──最後にもういちど、『世界が食べられなくなる日』が来ないために私たちができることをお話いただけたらと思います。



「縦」「横」「斜め」の方向で考えて、自分にどれが向くか、どれが最適な方法か考えてもらって、それをアウトプットしてほしい。そのときに、誰もが文章を書けばいいというものではない。自分に向いた表現でやっていってほしい。例えば音楽で表現したり、マンガにしたり。日本のなかで学術論文だったら40人くらいしか読まないけれど、マンガだったら1万人が読むでしょう。そしてぼくは、人が存在するというのは常に何らかの自分の意思を持って、それを表現するから存在の意味があると思う。意識的にアウトプットしていきましょう、みんながそれをしていったら、明らかに世界は変わります。上から下の社会から下からの上の社会へ変わる寸前まで来ています。一気にひっくり返して、「電力会社?昔そんなものがありましたね」と言えるような社会に変えてしまいましょう。それをやっていくことが大事かだと思います。



(2013年6月10日、渋谷アップリンク・ファクトリーにて 構成:駒井憲嗣)











田中優 プロフィール


1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「ap bank」監事、「一般社団法人 天然住宅」共同代表を務める。立教大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。

公式HP 田中優の持続する志












映画『世界が食べられなくなる日』

渋谷アップリンクにて公開中、ほか全国順次公開



2009年、フランスである動物実験が極秘に開始された。それはラットのエサに遺伝子組み換えトウモロコシ、農薬(ラウンドアップ)を、いくつかの組み合わせで混ぜて与えた長期実験だった。分子生物学者のジル=エリック・セラリーニ教授が行ったこの世界で初めての実験は、2012年9月に専門誌に発表され、フランスをはじめ世界中に大きな波紋を投げかけた。セラリーニ教授は警告する「20世紀に世界を激変させたテクノロジーが二つあります。核エネルギーと遺伝子組み換え技術です。これらは密接に関係しています。米国エネルギー省は原爆につぎ込んだ金と技術者を使って、ヒトゲノムの解析を始めました。そこから遺伝子組み換え技術が誕生しました」。『未来の食卓』『セヴァンの地球のなおし方』のジャン=ポール・ジョー監督が、遺伝子組み換え作物と原発の危険性に迫るドキュメンタリー。





監督:ジャン=ポール・ジョー

製作:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク



公式サイト:http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

公式twitter:https://twitter.com/uplink_els

公式FACEBOOK:http://www.facebook.com/sekatabe



▼『世界が食べられなくなる日』予告編



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命と生活を守るためのアクションを起こすときに見えてくる“もう一つの世界” http://www.webdice.jp/dice/detail/3899/ Fri, 07 Jun 2013 19:06:08 +0100
映画『世界が食べられなくなる日』より


GM作物の問題と原発問題の性質の類似性を

今、日本人は他のどの国の人々よりも実感できるはず



 《世界経済フォーラム》年次総会と聞いてピンと来なくても、《ダヴォス会議》という通称は知られていると思う。それは、新自由主義/経済のグローバリゼイションを信奉し、世界中の富と権力を握る“リーダー”たち(銀行家、投資家、多国籍企業社長、彼らと懇意の政治家や知識人、ジャーナリスト etc.)が、毎年1月にスイスのリゾート地ダヴォスに集い、そこで彼らの“帝国”を繁栄させるための相談をする、エリートによるエリートのための国際会議である。この場合の“世界経済”という言葉を平たく翻訳すると、地球上のごく一部の少数の者たちがこの惑星の富の大部分を独占し、大多数の“弱者”の生殺与奪の権を握る、そのためのシステムのことだと言っていい。(国連開発計画(UNDP)の2003年の発表によると、事実、地球上で最も豊かな2割の人間が全体の富の90%を消費し、最も貧しい2割の人々で全体の富の1%しか消費していない)




 その《世界経済フォーラム》に対抗するべく発足した、まさに“弱者”の代表者たち(労働組合、協同組合、NGO、NPO、学者、政治家 etc.)が、地球を蝕むグローバルな搾取と格差の構造を民主的に是正するためのアイディア、取り組みについて話し合う会議/ネットワークが《世界社会フォーラム》。そしてそのスローガンが、「もう一つの世界は可能だ(Un autre monde est possible - Otro mundo es posible - Outro mundo é possível -Another world is possible...)」である。



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映画『世界が食べられなくなる日』より


 ジャン=ポール・ジョー監督の『世界が食べられなくなる日』は、我々が直面している地球規模の脅威(核エネルギー技術と遺伝子組み換え技術の恐ろしさ)を、誰の目にも明らかなように示してくれる素晴らしく有益な映画だ。その中に、こうした技術に反対する市民が「もう一つの世界は可能だ」という言葉を掲げて闘っている象徴的なシーンが出てくる。つまり核エネルギー技術も、遺伝子組み換え技術も、ダヴォスに集まるような、あちら側の“リーダー”たちによる、あちら側の“リーダー”たちのための技術だ、という意味だ。その彼らの金儲けのシステムは、地球の大部分を隷属状態に組み敷き、そこから搾取する構造の上に成り立っている。だから、彼らの底知れぬ欲望の餌食にならない「もう一つの世界」を作ってみせる、という主張、闘いなのだ。




 マリー=モニク・ロバン監督作品映画『モンサントの不自然な食べもの』でも詳しく掘り下げていたけれど、遺伝子組み換え(GM)作物の種の世界シェア9割を持つ多国籍バイオ化学メイカーのモンサント社は、除草剤(ラウンドアップ)と、それを撒いても枯れない耐性を持つ遺伝子組み換え作物の種子をセットにして世界中に売り込む。そして一度同社の種を使った農家に対して他の種子の使用を禁止する契約を結ばせたり、さらにはラウンドアップを撒くことによってその土壌をGM作物以外が育たないように変質させてしまうという後戻りのできない恐ろしいカラクリで、世界中の農民と農地を完全に種子会社に依存させ、家畜と人間の胃袋を征服しようとしている。




 その目的のためにモンサントは、「研究によってGM作物が人体に害を及ぼさないことが実証済みだ」と強弁し続け、その論拠の不正が『世界が食べられなくなる日』で暴かれる(だから必見な)のだが、しかしどうしてこんなに怪しげな遺伝子組み換え作物が世界中に広がり、日本にも(たとえばそれが国民的コーン・スナック菓子の原料に使用されていることを親が知らないまま子供に買い与えてしまうまでに)浸透してしまうのかといえば、ロックフェラー財団が援助し、ビル・ゲイツも投資するモンサント社が、世界中の“エリート”、“リーダー”たちのネットワークを巻き込む膨大強大な資金とコネクションで、世界を支配下に置く仕組みがちゃんと構築されているからだろう。ぼんやりしていると、我々は見えない力に征服され、気づくと自分の口に入れるものの選択肢すら奪われており、次のレヴェルの GM作物開発のための実験用モルモットとして飼われてしまう事態になる……。



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映画『モンサントの不自然な食べもの』より



 これから何十年間も、見えない放射性物質の脅威にさらされて生きていかなくてはならない我々日本人は、GM作物の問題と原発問題の性質の類似性を今、他のどの国の人々よりも実感できるはずだ。




 過疎化問題と地場産業の乏しさにつけ込まれ、巨額な原発交付金で原発を受け入れた自治体は、気づくと原発依存から後戻りできない体質になっている。福島第一原発の事故で拡散された放射性物質の量と種類に関しては、「ただちに人体に害を及ぼすほど深刻なものではない」という一部の機関や学者の意見だけが、すんなりと“オフィシャル”に採用される行政と巨大メディア報道の構造もできあがっている。電気が足りなくなるというウソもバレてしまい、さらにはこの国に核のリサイクル技術どころか、そのゴミを安全に処理する場所すらないことも、加えて国中活断層だらけだということも国民はみな知っている。それなのに、「強い経済、デフレ脱却のため、産業の空洞化を防ぐため」という“だけ”の理由をゴリ押しする勢いで国民の生命、尊厳の問題を俎上から脱落させ、かつ“憎き隣国”の経済に負けじ、という対抗心とナショナリズムを国民の間にあの手この手で(原発反対派=売国奴左翼という一部の妄執も利用して)うまい具合にかき立たせながら、過去の原発政策の誤りについての責任も負わず、この期に及んでまた再稼働を進めようとするばかりか外国にまで原発を売ろうとする政権が、何故か国民から絶対安定支持を得られていることになってしまうという、実に奇異で強力な“仕組み”に、我々は今、直面している。そして、まさにその仕組みゆえ、チェルノブイリの状況を調査研究した内外の専門家多数が同じ警鐘を鳴らしているのに、国はその意見を完全無視し、国民は避難する権利を与えられずにいる。きっとここでも我々は、誰かが欲しがっているデータのための人体実験の“検体”なのに違いなく……、そのうち、友人からも番号で呼ばれるようになるかもしれない。




 こうした特定の権益の獲得→保持→拡大を目論んで群がり、グローバル規模で巧妙に形成される巨大権力は、安全保障、金融/投機、貿易(TPP)、各種産業、医療、文化、スポーツ等々、ありとあらゆる分野に及び、その中に入り込んでは利権構造を完成させている。それによって、知らないうちに、そして常に、庶民は食い物にされていくし、自然もまたその搾取構造から免れず、金儲けのための容赦ない自然破壊が続いていく。「もう一つの世界は可能だ」というモットーは、まずはその恐ろしいシステムを学び、その隷属から脱し、持続可能で、自然と共存できるストレスの少ない世界に暮らしたいと望む人たちに対する呼びかけなのである。



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映画『世界が食べられなくなる日』より


個人個人がオルタナティヴな世界の実現に向けて闘う

その手引きとヒント



 ぼくは先日、その呼びかけに呼応する『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』というフランスの本を翻訳した。“コンバ(combat/闘い)”は、『世界が食べられなくなる日』に登場する人たちも映画の中で何度も口にしている言葉で、“もう一つの”(=オルタナティヴな、現行のシステムに取って代わる)よりよい世界実現のためのアクションを指している。この本は、そのためにみんな個人個人ができることとして、たとえばこんな行動や工夫をしてみてはどう? ――というサジェスチョンをするものだ。




 著者はパリの人気ラジオ局《Radio Nova》のパーソナリティー:マティルド・セレル。彼女が朝の10時に持っていたコーナーの内容をまとめたもので、今の世界の問題に対応する88のコンバ(アクション)が、語り口も軽快かつユーモラスに綴られている。もちろん生命に対する直接的な脅威である核や遺伝子組み換え作物の問題、およびそれらに対するリアクションの提案も出てくるほか、地球上で最もリッチな2割の人間が全体の富の90%を消費し、その状態を保ち続けようとしている今、そんなパワーに対して、我々ひとりひとりが日常生活のいろいろな場面で〈NO〉の意思表示をするための、実にヴァラエティー豊かで、ときに革新的、あるいは愉快、ラディカルな、いろいろな方法があることを教えてくれる。




 たとえば食事をするとき、酒を飲むとき、買い物をするとき、旅に出るとき、本当のエコな暮らしを考えるとき、子供の健康を気にするとき、貧困層や性的マイノリティーなどの人権を思うとき、困っている人を助けたいとき、自分と考えの合うエコな恋人を作りたいとき、社会的に公正なブランドを探して買いたいとき、ブラック企業や不誠実な企業と闘うとき、インターネットを使って抗議したいとき、リサイクルするとき、行き過ぎた消費社会から文化を守るとき etc. にどうするか……の例、案から、フラッシュ・モブのアイディアや、街の新しい発見の仕方、シャワー中のおしっこのススメまで出てくる。




 これらすべてが、管理され搾取される受け身の生き方から脱し、自発的にアクションするための手引き、ヒントとなっている。「だって世の中こうなんだから、しょうがない。どうしようもない」と考える自分に内心忸怩たる思いを抱いている人には、是非『コンバ』の提案から、実現可能で持続可能な“もう一つの世界”をイメージしてみていただきたいと思います。




 とにかく今、命と生活を守るために重要なのは、何よりもまず、胡散臭いものを注視することだろう。自分に不安を抱かせる事態は解消されない中で発せられる、結果として権力側を利することに繋がりそうな言説を疑うこと。そこで同じ疑念を抱く人たちがいれば、インターネットで繋がることができるし、即、抗議のネット署名運動に参加することもできる。

 それがコンバであり、そういうアクションを取ったあなたに見えているものが「もう一つの世界」、なのだ。



(文/鈴木孝弥)








鈴木孝弥(すずき・こうや) プロフィール


音楽評論家、翻訳家。翻訳書に『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』(マティルド・セレル著/うから)、『だけど、誰がディジーのトランペットをひん曲げたんだ? ~ジャズ・エピソード傑作選』(ブリュノ・コストゥマ著/うから)。他の監著書に『ディスク・ガイド・シリーズ ルーツ・ロック・レゲエ』『クロニクル・シリーズ ルーツ・ロック・レゲエ』(共にシンコ―ミュージック・エンタテイメント)、『定本リー“スクラッチ”ペリー』(リットーミュージック)。監訳書に『ジャズ・ミュージシャン3つの願い』(Pヴァイン・ブックス)、『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』(シンコ―ミュージック・エンタテイメント)。その他、雑誌、書籍に寄稿多数。

ブログ:http://www.3cha40otoko-dico.blogspot.jp/

ツイッター:https://twitter.com/Suzuki_Koya











『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』

マティルド・セレル著/訳・解説:鈴木孝弥




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パリのクールなFM局“Radio Nova”。そこで最新モードの“ミニ革命”を紹介する朝10時の人気コーナーを採録した1冊に、解説を附記。今、これから、踊らされないで自分で踊るための―複眼的に世界を眺め、行動し、楽しむための―88篇。

この世の中何とかしたい、何かやりたい……。でもどこかの党の党員になるとか、デモに行くとか、組合運動をするとか、政治的な集会に参加する、といった従来型の社会運動には興味が湧かない方々におすすめのアクションの数々を紹介!




■B6判/336ページ/定価1,890円(税込)

■ISBN 978-4-904668-01-6 

■2013年/出版社:うから http://www.ukara.co.jp/



本書で紹介されている愉快なアクションの例





この世からきれいに消えよう

火葬は温暖化に影響するし、棺を作るにも木が必要。オーストラリアには垂直に埋葬するエコな墓地がある。遺体はバクテリアによって分解される素材でできた袋に包まれ、地下3mに掘られた円柱状の墓穴に入れられる。場所、費用、そして二酸化炭素の節約!



地球のことを思っておしっこしよう

一人が1日に1回、シャワーの下でおしっこを済ませば、世界でどれほど水の節約になるだろうか。フランスには「シャワー中のおしっこに賛成」というタイトルで、エコロジー/エネルギー/持続可能開発/海洋大臣に宛てた嘆願書まで存在する。



山頂を塗り直そう

氷河の融解スピードを鈍らせるために、ある科学者が考えたアイディア。それは、より多くの熱を吸収する山肌の褐色部分を、化学物質を含まない石炭塗料で白く塗ること。雇用の創出にももってこい! 世界銀行は彼に20万ドルを与え、作業が進行中。
















映画『世界が食べられなくなる日』

6月8日(土)より渋谷アップリンクほかにて公開



2009年、フランスである動物実験が極秘に開始された。それはラットのエサに遺伝子組み換えトウモロコシ、農薬(ラウンドアップ)を、いくつかの組み合わせで混ぜて与えた長期実験だった。分子生物学者のジル=エリック・セラリーニ教授が行ったこの世界で初めての実験は、2012年9月に専門誌に発表され、フランスをはじめ世界中に大きな波紋を投げかけた。セラリーニ教授は警告する「20世紀に世界を激変させたテクノロジーが二つあります。核エネルギーと遺伝子組み換え技術です。これらは密接に関係しています。米国エネルギー省は原爆につぎ込んだ金と技術者を使って、ヒトゲノムの解析を始めました。そこから遺伝子組み換え技術が誕生しました」。『未来の食卓』『セヴァンの地球のなおし方』のジャン=ポール・ジョー監督が、遺伝子組み換え作物と原発の危険性に迫るドキュメンタリー。





監督:ジャン=ポール・ジョー

製作:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク



公式サイト:http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

公式twitter:https://twitter.com/uplink_els

公式FACEBOOK:http://www.facebook.com/sekatabe



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どの街にもあるチェーン店ばかりになってしまった、それが渋谷で感じるグローバリゼーション http://www.webdice.jp/dice/detail/3895/ Tue, 04 Jun 2013 10:59:08 +0100
『世界フェアトレード・デーに考える』より、左から吉澤真満子さん(APLA事務局長)、鈴木隆二さん(ぐらするーつ代表)、鶴見済さん(フリーライター)




遺伝子組み換え作物と原発、そしてグローバル企業の関連を考えるドキュメンタリー『世界が食べられなくなる日』の公開記念として、5月の第2土曜日である5月11日に『世界フェアトレード・デーに考える 未来を生きるために知っておきたいTPPのこと』が渋谷アップリンクで開催。NPO法人APLA事務局長の吉澤真満子さん、フェアトレードショップ・ぐらするーつ代表の鈴木隆二さん、フリーライターの鶴見済さんによるトークが行なわれた。日本が交渉に参加するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)により、私たちの暮らしはどうなるのか、そして世界にどのような影響がでるのか。私たちがこれからできることについて、フェアトレードの現場から語られるイベントとなった。



原発や遺伝子組み換えとTPPは構造としては同じ(吉澤)




── 最初に『世界が食べられなくなる日』の感想からお願いします。



吉澤真満子(以下、吉澤):遺伝子組み換えと原発を技術というところで繋げていますが、企業が推進して利益を上げていこうとすることが、いろんなかたちで自分の命や食べものに浸透して、いつのまにか自分の体や子供たちの体が汚染されていくことをあらためて感じました。



鈴木隆二(以下、鈴木):僕は家にテレビのない生活をしているので、福島の原子力発電所の爆発の映像を大きな画面で観たのが初めてだったんです。すごいことが起きたんだなとあらためて思い起こされました。フェアトレードの生産者は多くが手を使って仕事をしている方々なんですが、「手仕事がなくなってしまう日」と「世界が食べられなくなる日」はイーブンな感じがしました。



鶴見済(以下、鶴見):我々日本人がいちばん食べているんじゃないかというくらい、放射能と遺伝子組み換え作物を食べてしまっている。この映画はフランス人監督により作られていますが、日本の私たちはこの映画に出てくるような遺伝子組み換え作物に対する知識ってほんとうに知ってるのか、というと知らないことばかり。いかに私たちの周りの情報空間が、こうした映画ができる国と違うのか、ということは恐ろしいと思います。



── 日頃フェアトレードの現場で活動されているみなさんの見地から、TPPとフェアトレードの関連についてお聞かせください。



吉澤:今日(5月11日)は世界フェアトレード・デーです。このフェアトレードを考える日に、今日本がTPPに加盟するかどうかと言われるなか、フェアトレードをやってきた私たちも一緒に考えたいとトークをすることになりました。映画のテーマである原発や遺伝子組み換えとTPPは違う問題に見えるし、個別の問題として取り上げられがちだけれど、構造としては似ているのではないかと思います。日常的に食べる食べ物に大きな影響を与えること、そして企業の利益拡大を助長することが共通していて、こうした枠組みをさらに強化していくのがTPPなのではないかと危惧しています。自由貿易や大量生産・大量消費をベースとする私たちの暮らしが、見えないところで他の国の人の生活を脅かしていたり、人権を侵害していたり、環境を破壊している。そうではない貿易の方法として、フェアトレードがあると思います。



TPPにはISD条項(投資家対国家間紛争処理)が盛り込まれていますが、企業にとって不都合な規制がある国を、企業が訴えることができる。その訴訟により規制が緩和され、食べものや医療など、自分たちの生活に直接関わることが脅かされるかもしれない。生きていくことに関しては自分たちで決めていける、ということを守れる世の中にしていきたいと考えています。



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映画『世界が食べられなくなる日』より



鈴木:フェアトレードに関わる者として、貧しいといわれる国々の生産者の方々の生活や人権、あるいは作り手を取り巻く環境を大事にしながら、僕らも一緒に生きていきたいというところから始めてきました。ぐらするーつの活動を始めて18年くらいになるんですけれど、フェアトレードを通して世の中がどれくらい変わってきたのかというと、実はそんなに変わっていないんじゃないかと思うことがあります。でも、TPPというものがこの先の世の中を変えていくとしたら、生産者の人たちにもいろんな不利益を被らせることになる。そして僕らの住んでいる地域や社会の有り様も変えてしまう。この先世の中はどうなってしまうのかという獏とした不安があって、不安に思うのであれば、ちょっとみんなで考えようよ、という時間や機会を持っていきたいと思います。



鶴見:私からは自由貿易がここ数十年の間に進んできた経緯を説明します。戦後やその前の植民地時代から搾取的な状況は続いていたけれど、80年代くらいから新自由主義という規制緩和をする方向の政策がとられはじめ、世界的に自由貿易が押し進められた。例えば94年にアメリカとカナダとメキシコの3国の間で関税を撤廃するというNAFTA(北米自由貿易協定)が結ばれた。そうすると、メキシコにアメリカから安いトウモロコシがたくさん流れてきて、メキシコのトウモロコシ農家200万人が離農しなければならなくなってしまい、メキシコはその後世界第2位のトウモロコシ〈輸入国〉になってしまった。第1位は日本なんです。トウモロコシはそもそもメキシコが原産なのに、そこで育てることができなくなったなんて、どう考えてもおかしい。私にとって自由貿易というのはこういうイメージなんです。日本で米を作ることができなくなって、カリフォルニアから米を輸入するようなものでしょう。そういうことを考えると自由貿易というのはほんとうにやばい。遺伝子組み換え作物は、安くて大量に作れる農産物の代表なんです。



だから、環境に悪いなどいろいろな理由があるけれど、農家の方々は、自分たちが負けてしまうという切実な気持ちがあって反対していると思う。同時に、工場をアジアや南米に持っていって安く作って輸入したり、第三国に輸出したり、そういうこともやりやすくなってしまって、そうした自由貿易に対して2000年代に世界的な反対運動が起きている状況です。WTO(世界貿易機構)という全体を統括する貿易の話し合いの場が作られていても、その機能が失われているなかで、TPPという部分的な貿易協定に、我々は反対していかなければいけないと思っています。




日本の食べ物の自給率は40%、服の自給率はさらに4%しかない(鶴見)




── NAFTAに関連して、アメリカの国民はどう考えているのでしょうか?



吉澤:世界フェアトレード・デーの今日、米国のワシントン州でもワシントンフェアトレード連盟(Washington Fair Trade Coalition)がTPPに関して反対の声を上げる集会があるということです。その仲間のカナダからも「NAFTAから20年経っているけれど、市場や企業のビジョンのみを地域に押し付け、持続的かつ公正な経済という選択肢が凍結されてしまった。自由貿易の時代を終わらせて、人びとのための貿易の時代を作ろう」というメッセージがありました。こうした声はすごく勇気づけられます。TPPについては他の加盟国でも反対の声が上がっていることはあまり報道されませんが、実はいろんなところでそうした動きが起こっているのです。日本だと、自分の国がTPPに参加するかしないか、それで利益があるのかどうかという見方が多いけれど、加盟している国の普通に生活している人々すべてに対しての影響を、もう少し広い視点で考えていくことが必要ではないかと思います。





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映画『世界が食べられなくなる日』より




── グローバリゼーションがわたしたちの生活にどういった影響があって、これから私たちにどんなことができるでしょうか?



鈴木:渋谷で十何年仕事をしていて、渋谷で感じるグローバリゼーションというのがあるんです。ぐらするーつを作った当初は、やりたいことをやりたいようにやる、そんなお店が多かったんです。それが、古いビルがなくなって、新しいビルが建つなかで、小さなお店がどんどんなくなっていって、どこにでもあるお店が入ってくる。自分で仕込みをやっているお酒を飲めるお店がほとんどなくなってしまって、やりたいことをやっていこうと考えている人にとっては肩身の狭い街になっている感じがします。渋谷に限らず街ごとに顔色って違っていていいはずなのに、どの街でも同じような居酒屋があってスーパーやデパートがある。実はそれがグローバリゼーションのひとつの結末なんじゃないかと思っています。



鶴見:食べ物の自給率は40%くらいしかないというのはよく聞きますけれど、服の自給率についてはご存知ですか。4%しかないんです。でも1990年ごろには50%あった。輸入品の8割は中国から来ていますが、ユニクロのような企業が中国に工場をもっていって、安く作って持ってくる、という植民地主義的なことで私たちの服はできている。中国の労働者は団結権や団体交渉権がないので、非常に劣悪な環境で作らされている。これがグローバル化のメリットとされていますが、こうしたことをもっと言っていかなければいけない。こうした企業が各国に出ていきやすくするために、企業からの圧力を政府が受けて、自由化、規制緩和が行われているのです。



吉澤:25年前から、フィリピン・ネグロス島の小規模農民から直接農薬を使わず栽培されたバナナを買って持ってくることを始めています。1980年代半ばにネグロス島で起こった飢餓に対する救援活動から、ネグロスの人びとの自立した生活を創るための経済的仕組みを作ろうとバナナの交易を継続してきました。これを私たちは民衆交易と呼びますが、始まった当時、日本ではスーパーで売られているバナナを子供に食べさせない人たちもいました。ミンダナオ島にあるバナナプランテーションで栽培され、たくさんの農薬や化学肥料を投入して作られていたからです。ネグロス島から届けられるバナナを食べることは、ネグロスの人をサポートするだけでなく、食べたいバナナを食べられるという、オルタナティブな意味も込めて続いてきました。現在のミンダナオ島でも日本で食べられるバナナがたくさん作られていますが、より糖度が高いバナナがブランド化され売られています。こうしたバナナは、高地を切り崩し木を切り倒して畑が作られ、使われる農薬による地下水汚染の問題で住民との問題が起きたりしています。日本ではそういうことはまったく知らされず、高地バナナのほうが美味しいという認識になってしまう。グローバル化というのは私たちが見えない間にこうした構造に組み込まれていってしまうことであり、知ろうとしない限り知ることができないことが、グローバリゼーションの怖さだと思っています。



手仕事をする生産者がいることに思いを巡らせることで、僕らの生活のありようも変わっていくんじゃないか(鈴木)



── 鶴見さん、環境についてこの作品を通して思ったことを教えてください。



鶴見:日本の農業もものすごい農薬を使っていて、単位面積あたりの農薬使用量は日本が一番なんです。原発をみても、いちばん危険な仕事をする人の汚染度がいちばん高くなる。世界中で、周辺や下層にそうした仕事が押し付けられている。ただ環境を破壊しているだけでなくて、たいてい安くあがってよかった、と言っている陰では人間を搾取したり足蹴にしている構造も隠れているのです。



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映画『世界が食べられなくなる日』より




── 最後に、世界が食べられなくならないために、市民ひとりひとりがフェアトレードできることについて教えてください。



吉澤:例えば280円の牛丼があって、材料として使われる牛や米がどう作られたのかを知らずに、安いから食べるという現実がある一方で、今の日本ではそういうものしか食べられない人がいるのが現実なのではないかと思います。そのこと自体が良いとか悪いとかではなく、そういう状況にあること自体がグローバル化の結末なのではないでしょうか。フェアトレードは南北の格差を前提にその解決の方法として進められてきましたが、格差は南北だけではなく世界で横断的に生まれてきていると感じています。そういうときにフェアトレードが、相手を尊重しお互いに共存して生きていく方法のひとつであっていいと思っていて、これまで通り世界の人たちと関わり続けると同時に、これからは日本国内の人たちとも繋がっていきたいと思っています。大きな企業が世の中を独占する社会ではなくて、それぞれの地域でがんばって暮らしている人たちと交換・交易をしていく。これがもうひとつのフェアトレードのかたちであっていいのではないかと、その方向を模索していきたいと思っています。



鈴木:僕が被っている帽子はネパール製なのですが、日本にも洋服を糸と布から手で作るという人がいたはずなんですけれど、今は仕事というよりもこうした手仕事の商品はアーティストが作っている。そういうことも不思議だなと思います。でも、そうした手仕事をする生産者がいることに思いを巡らせることで、僕らの生活のありようも変わっていくんじゃないかなと思っています。



鶴見:我々が日常的に使っているものって誰がどこで作っているかよく分からないけれど、フェアトレード品だったら、例えばコーヒーを作った人の顔写真や言葉が載っている。そうしたことって、いま私たちは分からなさすぎるんですよ。食べものや着るものだけじゃなく、紙や木材、金属がどこから来ているのか、全部分からない。セメントが全部国内産だということも普通は分からない。誰がどこで作ったものか分からないものに囲まれて生きているなんて、こんなこと人類史上始めて。だからなんでも捨ててしまったり、粗末にしてしまう。作っている人の側も誰が着るのか分からず作っている。だから繋がりを思い出すことが必要で、みんなが健忘症になっている状態を、フェアトレードから見直していけば、それが起爆剤になると思っています。



(2013年5月11日、渋谷アップリンク・ファクトリーにて 取材・構成:駒井憲嗣)











映画『世界が食べられなくなる日』

6月8日(土)より渋谷アップリンクほかにて公開




監督:ジャン=ポール・ジョー

プロデューサー:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク

協力:福島農民連、農民運動全国連合会、大地を守る会、生活クラブ生協、ビオ・マルシェの宅配、食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク、パルシステム生活協同組合連合会、ナチュラル・ハーモニー



公式サイト:http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

公式twitter:https://twitter.com/uplink_els

公式FACEBOOK:http://www.facebook.com/sekatabe











『世界が食べられなくなる日』公開記念「食べもの映画祭」

6月8日(土)~6月28日(金)

渋谷アップリンク



『モンサントの不自然な食べもの』(2008年/フランス、カナダ、ドイツ/108分)

『パーシー・シュマイザー モンサントとたたかう』(2009年/ドイツ/65分)

『Life running out of Control 暴走する生命』(2004年/ドイツ/60分)

『セヴァンの地球のなおし方』(2010年/フランス/115分)

『未来の食卓』(2008年/フランス/112分)

『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』(2008年/アメリカ/90分)

『フード・インク』(2009年/アメリカ/94分)

『ありあまるごちそう』(2005年/オーストラリア/96分)

『PLANEAT』(2010/イギリス/72分)

『よみがえりのレシピ』(2011年/日本/95分)

『ファン・デグォンのLife is Peace』(2013年/日本/75分)



http://www.uplink.co.jp/movie/2013/12323





▼『世界が食べられなくなる日』予告編


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どういう未来を選ぶか、持続可能な生活でひとりひとりが少しでも行動に起こすことが必要 http://www.webdice.jp/dice/detail/3842/ Fri, 12 Apr 2013 17:38:03 +0100
映画『世界が食べられなくなる日』より









『未来の食卓』でフランスの村のオーガニック化への取り組みを捉えジャン=ポール・ジョー監督は、前作『セヴァンの地球のなおし方』制作の際、ジル=エリック・セラリーニ教授による画期的な実験の情報を入手する。アメリカのアグロバイオ企業・モンサント社による農薬を散布して栽培した遺伝子組み換えトウモロコシを2年間に渡り与えたこの実験を主題にする予定だったものの、2011年3月11日の東日本大震災により、否応なく原子力の問題を作品に組み込むことになった。遺伝子組み換え技術と核エネルギーの共通点を解説しながら、カメラは311後の福島、そして自然と未来の世代を尊重し行われる持続可能な農業システム・アグロエコロジーを実践するセネガルへと向かう。





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映画『世界が食べられなくなる日』より







被害を受けた福島の人々の言葉の重さや、フランスの港湾労働者たちに広がる遺伝子組も変え作物や原発により汚染された資材によるものとみられるガン被害の深刻さなどに、隠れてしまいがちだが、安全な世界を未来の世代に残すための策として、セネガルのカイダラ・アグロエコロジー農業学校を中心に、現地で取り組まれいる農業を紹介していることに注目してほしい。レタスとタマネギを一緒に畑に植えることで、タマネギが自然の防虫剤になって虫がつかない、など、小規模でありながら自然や環境と調和したやり方こそが、世界に拡大し続けている遺伝子組み換え作物を使わず、食の権利を守ったうえで、飢餓と貧困を解決するための食べものを生み出すことができることを示唆している。TPP参加により食の安全が脅かされることが問題となっている今こそ、観てもらいたい作品だ。



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映画『世界が食べられなくなる日』より














映画『世界が食べられなくなる日』

6月8日(土)より渋谷アップリンクほかにて公開




監督:ジャン=ポール・ジョー

プロデューサー:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク

協力:福島農民連、農民運動全国連合会、大地を守る会、生活クラブ生協、ビオ・マルシェの宅配、食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク、パルシステム生活協同組合連合会、ナチュラル・ハーモニー



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『世界が食べられなくなる日』公開記念「食べもの映画祭」

6月8日(土)~6月28日(金)

渋谷アップリンク



『モンサントの不自然な食べもの』(2008年/フランス、カナダ、ドイツ/108分)

『パーシー・シュマイザー モンサントとたたかう』(2009年/ドイツ/65分)

『Life running out of Control 暴走する生命』(2004年/ドイツ/60分)

『セヴァンの地球のなおし方』(2010年/フランス/115分)

『未来の食卓』(2008年/フランス/112分)

『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』(2008年/アメリカ/90分)

『フード・インク』(2009年/アメリカ/94分)

『ありあまるごちそう』(2005年/オーストラリア/96分)

『PLANEAT』(2010/イギリス/72分)

『よみがえりのレシピ』(2011年/日本/95分)

『ファン・デグォンのLife is Peace』(2013年/日本/75分)



http://www.uplink.co.jp/movie/2013/12323





▼『世界が食べられなくなる日』予告編


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『世界が食べられなくなる日』コラム(2):天笠啓祐「遺伝子組み換え食品と原発」 http://www.webdice.jp/dice/detail/3880/ Thu, 23 May 2013 16:49:05 +0100

遺伝子組み換え食品と原発

文:天笠啓祐(ジャーナリスト)



この間、遺伝子組み換え(GM)食品を用いた動物実験で、安全性に疑問が出されるケースが増えている。この映画で紹介されている、フランス・カーン大学分子生物学及び内分泌学者セラリーニなどの研究チームが行った動物実験も、その一つである。



しかし、従来の実験と異なり、画期的な点が多い。まず、実験を始める前から結果が出るまで、映画でその過程を公開しており、このようなケースは初めてである。また客観的評価に耐えうるように、独立した資金で行われた点も画期的である。しかも、実験の方法が緻密である。



実験には、モンサント社の除草剤耐性トウモロコシ「NK603」と、それに用いる除草剤ラウンドアップが用いられた。ラットは200匹(雄・雌100匹ずつ)で、通常実験に用いる数十匹程度に比べて多い。しかも通常の実験期間が90日であるのに対して、2年間というラットの寿命の長さで、長期の影響を見た点でも画期的である。また、こまめに観察が行われ、検査項目も多い。



ラットは細かく分けられ、それぞれ雄・雌10匹ずつが用いられた。ラウンドアップをかけていないGMトウモロコシを与えた集団、ラウンドアップをかけたGMトウモロコシを与えた集団、ラウンドアップを含んだ水を与えた集団で、それらが投与群である。それぞれ飼料でのGMトウモロコシの割合や農薬の割合が変えられている。そして通常の動物実験同様、対照群としてラウンドアップもGMトウモロコシも含まない飼料を与えた集団と比較された。



この実験の結果を簡略に述べると、投与群は、対照群に比べて、それぞれ少しずつ違いはあるものの、低い暴露でも影響があることが分かった。量依存による変化が見られなかったが、対照群との間には寿命の長さやがんの発生で大きな違いがあった。



また雌と雄では寿命でも、腫瘍などでも健康被害の出方が異なっていた。とくに雌での影響が顕著で、投与群の早期死亡率が高く、大きな腫瘍の発生率も高く、その大半が乳がんだった。雌では他に、脳下垂体の異常が多かった。雄では肝機能障害と腎臓の肥大、皮膚がん、消化器系への影響がみられた。生化学的データでも、腎臓の異常を示す物質の増加がみられた。



その原因として、GMトウモロコシに関しては、除草剤に耐性をもたらすために生じる酵素が、がんなどへの抵抗力を弱めているのではないか、ラウンドアップに関しては、内分泌系に悪影響をもたらしたのではないか、そのため低いレベルでも影響が出たのではないか、と研究者は指摘している。



この映画のもう一つの特徴は、福島第一原発事故を取材し、核と遺伝子の共通性を示している点にある。事実、両者には共通点が多い。極小のところに本質があり、一方は物質の本質ともいえる原子核を分裂させ、他方は生命の本質ともいえるDNAを操作している。



また、放射能汚染にしても、遺伝子汚染にしても目に見えず、感じることもできない。多くの人が気づかないうちに、手遅れになる大きな被害を引き起こす危険性を持っていることも共通している。



両者とも、国が推進する大型プロジェクトとして、多額の予算がつく国家戦略として、開発が進められてきた。それとともに、原子力村、バイオ村ともいうべき、利益共同体が形成されてきた。少しでも問題点を指摘する科学者がいると、その共同体が一致して攻撃を始めるところも共通である。



もともと分子生物学は、原爆開発を進めてきた物理学者が、大量に参入して形成された分野である。それは原爆開発が一段落して、目標を見失った物理学者が、生命に興味を持ち、物理学の世界で生命を紐解こうとして成立した学問である。20世紀を核の世紀とするならば、21世紀は遺伝子の世紀になる可能性がある。作物以外にも、iPS細胞やゲノム解析、遺伝子医療などが無限の可能性と危険性を併せ持って開発が進められてきた。しかし、この実験で、遺伝子を操作することは原発同様、大変にリスクが大きいことが示されたといえる。このような技術に依存している限り、放射能汚染と同様に、世界から食糧が奪われてしまう、といっても過言ではないようだ。




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映画『世界が食べられなくなる日』より









映画『世界が食べられなくなる日』

6月8日(土)より渋谷アップリンクほかにて公開



監督:ジャン=ポール・ジョー

製作:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク



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『世界が食べられなくなる日』コラム(1):根本きこ「絶望からはじまるあたらしい暮らし」 http://www.webdice.jp/dice/detail/3874/ Mon, 20 May 2013 17:45:54 +0100

絶望からはじまるあたらしい暮らし

文:根本きこ(主婦)



とことん不安な懸案材料をあたまに並べ、出来るだけネガティヴにこれからのたべものについて想像を巡らす。どこまでも果てしなく、暗く、絶望の淵まで気持ちをもっていくことができる。それくらい、世は「終わったたべもの」で満ち満ちている。極まっている感すらある。



この映画のテーマでもある遺伝子組み換え。その技術を駆使してつくられた、たべものを食べ続けると、いったいどんな作用が及ぶのだろう。ラットで実験をいくら重ねたところで、「安全です」とは言いがたい結果が出るのだろう。そんなことは、すでにわかっている。というか、ばれてちゃってる。



例えば、スパイスの劣化を防ぐために、そしてジャガ芋の芽が発芽しにくくするために、一部では放射線照射があてられていることも、世界の核実験や原発由来によって、放射能の影響がつよい食べ物があることも、残留農薬がきつい食べ物があることも、いろいろな理由によって添加物がたくさん入った食べ物があることも知っている。結果、とくにちいさな子どもを持つ母親は、原材料表記や産地、遺伝子組み換えか否かをじっくりと確認してから、ようやく買い物かごに入れることが出来る。そして、そんな信じられないたべものが幅を利かせていることに、「ふー」っと深いため息をもらす。子どもが「これ、たべていい?」と聞いたものが、頭を悩ますものだったりすると、「ごめんね、食べないほうがいいと思うよ・・」と促すときに抱く、ある種の申し訳なさ。



でも、それでもわたしたちは生きている。明日もごはんを食べて、お日様に照らされて生かされている。絶望のなかの一筋のひかりのように、野菜や米を作り始めたという話しや、脱原発を訴える声は絶えない。そしてこのような映画を見ることができるしあわせに感謝して生きていこうってすら思える。せっかくだから、野草について学ぼうとか、デトックスしやすい身体作りを目指したりとか、やってみるとものすごくたのしいことばかり。むしろほんとうの生きる知恵の取得は、これからなのかもしれない。



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映画『世界が食べられなくなる日』より









映画『世界が食べられなくなる日』

6月8日(土)より渋谷アップリンクほかにて公開



監督:ジャン=ポール・ジョー

製作:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク



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「わたしもあなたもひとつのメディア、発言力とお金の使い方を考えなければいけない」 http://www.webdice.jp/dice/detail/3834/ Thu, 04 Apr 2013 12:53:36 +0100
ジャーナリスト岩上安身氏(左)と『世界が食べられなくなる日』ジャン=ポール・ジョー監督(右)によるIWJ収録の模様。監督は今回の来日取材時、毎回インタビュアーを撮影していた。


6月8日(土)より公開となる『世界が食べられなくなる日』のジャン=ポール・ジョー監督が来日。ジャーナリスト岩上安身氏によるインターネット報道メディアIWJに出演し、岩上氏のインタビューに答えた。『世界が食べられなくなる日』は、2012年9月に専門誌に発表され、フランスをはじめとしてヨーロッパ諸国そして世界中に大きな波紋を投げかけた、ラットのエサに遺伝子組み換えトウモロコシ、農薬(ラウンドアップ)を与えた2年間の長期実験の結果と、福島第一原発事故後の福島での取材をもとに、遺伝子組み換え”と“原子力”といういのちの根幹を脅かすふたつのテクノロジーの共通点を暴いている。




遺伝子組み換え作物と原子力は、人類の歴史上最大のスキャンダル




── 素晴らしい映画でした。特に我々日本人にとっては、非常に考えさせられるテーマでした。いま日本人が直面しているふたつのテーマ、ひとつは福島第一原発の事故、もうひとつはTPPという問題があります。TPPに入ると、モンサントが日本に本格的に入ってくることになります。TPPの問題は日本では完全にタブーになっていて、批判的に報道しているメディアは、日本農業新聞(JAが発行)と我々IWJなど、わずかしかありません。アップリンク配給の『モンサントの不自然な食べもの』や監督の『セヴァンの地球のなおし方』など、こういう作品を取り上げて正面から報道するメディアは極めて少ない。核とGM(遺伝子組み換え作物)というふたつの問題を重ねあわせながら描こうと思った理由を教えてください。



実は最初は、核とGMのテーマに同時に挑むという〈野心的な冒険〉をするつもりはなかったのです。もとはと言えば、セラリーニ教授の実験に焦点を絞るつもりで始めた企画でした。セラリーニ教授の実験は世界初のことで、これまでモンサント社はGM作物や除草剤を3ヵ月のラットの実験で認可してきたのですが、ラットの寿命である2年という年月をかけた画期的な試みだったのです。





しかし撮影の途中に、福島第一原発事故という耐え難い出来事が起こってしまったので、必然的に原子力を同じ作品に取り入れることになったのです。



というのも、私は以前からこのふたつのテクノロジーは、人類の歴史上最大のスキャンダルだと思っていました。多くの共通項があり、密接な関係を持っているので、これを結びつけて語らないわけにはいかないと思ったのです。




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映画『世界が食べられなくなる日』より



── ふたつのテクノロジーを結びつけるものとして、3つの特徴があるとセラリーニ博士はおっしゃっていますが、あなたの考えでもあるのでしょうか。



3つ以上あるのですが、そのなかのメインとして教授が話されたのは、ひとつ目は民主主義的に作られたテクノロジーでないこと、もうひとつは、いまだに我々に押しつけ続けられているということ。世界中の人々が不透明さのなかに置かれていて、そこには嘘も,混じっている。だからこそ今なお続いているのです。



そして3つ目の共通点は、人間の力では制御不可能であるということです。GM作物は現在、アメリカや南米、インド、南アフリカ、オーストラリアといったところで蔓延している。私はそれを人類が止めることができないカタストロフィだと思っています。






原子力も同じことです。1986年にチェルノブイリの事故が起こって以来、問題は今も続いています。福島の事故からも2年経ちましたが、危機(あるいは危険な状態)はまだ続いている。つまりそれは、人間が原子力を制御できないことを証明しているのです。世界のどんな保険会社でも、GM作物と原子力に関しては保障対象にはしません。



我々国民は納税により、間接的に原発に加担している




── GMを保障対象にしないというのは、どういう意味ですか?



実はGM作物が引き起こしている被害額は計算できないくらい大きいものなのです。保険会社が保障しないというのはそういう意味です。ただ、ひとつだけカタストロフィに対して保障している会社があります。それをご存知ですか?



── わかりません。



あなたであり、私、つまり納税者です。原発を作るときに、〈悪魔の契約〉がなされたのです。チェルノブイリの事故が起こったとき、フランスの国民は知らないうちに15億ドルぐらいのお金をそこに注いでいる。間接的に我々は原発に加担しているのです。福島の事故も同じように、どれくらいの額が分からないが国民が負担を強いられている。国民の皆さん、世界の皆さんが不透明な情報の下に置かれていて、嘘もないまぜになっている。そうした状況下で、私たちは知らないうちに保険会社のような役割をしてしまっているのです。



── 同意していない保険ですね。



だからこそいま、緊急なのです。私はこの映画のなかで、東京の公園で若いお母さんにインタビューをしているのですが、彼女の言葉で「原発事故以前、私は子どもたちに有機作物やGMでない作物を食べさせるよう心がけてきました。でも、福島第一原発事故が起こってからは、放射能に汚染されていない食物を与えることを心がけています」というものがあります。私のなかで、事故が起こる前にNOと言わなかったことに反省があるのです。彼女の言うように原発に対して「NOと言わないことはYESと同じことだ」ということに気がついたのです。



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映画『世界が食べられなくなる日』より




ラットの実験は完璧な独立性のもと検証を行うことが必要だった




── セラリーニ監督の実験について、お聞きします。このグラフの持つ意味を簡単に教えてください。



重要なのは、この下の棒の日数です。実験が行われた600日というのはラットの寿命にあたります。このグラフから分かることは、モンサントの遺伝子組み換えトウモロコシを与えたラットを見てみると、4ヵ月目以降に死亡率が伸びています。しかし、モンサント社に限らず、ほかの企業が行ってきたすべてのラット実験は3ヵ月で終了しているのです。これは偶然といえるでしょうか。そして今回、餌のなかに混ぜるGM作物の割合を11%、22%、33%と分けて実験を行いました。実は、今回、研究者たちもほんとうに驚いたのですが、11%といちばん低いパーセンテージにも関わらず、高いパーセンテージのGM作物を食べているラットと同じくらい、あるいはそれ以上に死亡率が高かった。これは研究者にとっても、大きな驚きでした。食べ物全体に対する割合がわずかであっても、死亡率が高いことがGM作物では起こりえるのだ、ということは、ひとつの発見だったのです。





── それから、農薬での被害というのも出ているわけですね。



もちろんです。モンサント社の開発した除草剤ラウンドアップに関しては、これまでいくつもの実験が行われてきました。ラウンドアップの悪害については映画『未来の食卓』でも語っていますが、ラウンドアップに含まれるホルモン撹乱物質が癌を誘発するということは既に知られていることなのです。しかし、セラリーニ教授の今回の実験で画期的だったのは、ラウンドアップと同じようにGM作物もそのように生物の器官を破壊するということが分かったということです。



── 今回の実験は秘密裏に、情報を管理して行われました。撮影し続けている間、最後まで情報が漏れないようにしました。これはなぜでしょうか。情報が途中で漏れると、何らかの圧力がかかるからですか。



その通りです。実はセラリーニ教授の実験に関して正当性を与えるためには、信頼のおける科学雑誌で発表することが必要になります。今回は食品関連に関しては最も権威があると言われている、アメリカの雑誌『Food and Chemical Toxicology』に掲載されることが決まっていました(注:エキスパートがお墨付きを与えれば掲載される)。掲載にあたっては、この分野のエキスパートたちが実験について検証を行います。ですので、その期間、彼らが完璧な独立性のもとに安心して検証を行うことが必要だったのです。それが極秘にされた理由のひとつです。



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映画『世界が食べられなくなる日』より



── その圧力をかける人物とは、誰ですか。



多国籍企業の方々です。彼らは、まるで8本の足を持つタコのように様々な分野に触手を伸ばしていきます。以前、イギリスでハンガリー人の研究者による除草剤の悪害を指摘する研究内容が、途中で漏れてしまった、ということがありました。そのときには、モンサントをはじめとする人たちがいち早く手を回して、この研究の信用性を完璧に失墜させたのです。



この作品は2012年の9月26日にフランスで公開されましたが、同時にセラリーニ博士の研究も公になりました。〈爆弾〉がとうとう爆発したのです。そして、多国籍企業の人たちもこの爆発の被害を受けたと私は思っています。いま人々の脳裡には、この腫瘍を持っているネズミの映像が焼き付けられ、それをGM作物とリンクして考えるということが起こっています。モンサントは元に戻ることのできない被害を被ったのです。





一握りの多国籍企業の経営者が世界を制覇しようと目論んだ




── フランスで公開されてから、彼らから攻撃を受けたり圧力を受けたりしていませんか?



常に妨害されています。『未来の食卓』の頃からそうです。彼らが持っている武器、つまりお金によって仕事を妨害されているのです。彼らはいろんなところに〈共犯者=コラボレーター〉がいます。ブリュッセルの欧州議会で、1人の議員につきロビイストが10人ほど控えていて、議員たちにお金を使って情報を流すのです。そして私の映画は、メディアのプレスからボイコットされています。フランスではもっとも勢力を持っているテレビ局TF1は、フランスのみならず世界で原発を建設しているブイグという企業の傘下にあります。雑誌や新聞といったメディアは武器商人をスポンサーに持っている。ラジオも同じことです。そういうわけで、メディア総勢で私の映画を語らない、そういうかたちのボイコットがあります。かつ、今回の場合はセラリーニ教授の実験に対して異義を唱える人たちの論文や記事を大々的にメディアに流すことによって、『世界が食べられなくなる日』もその悪影響をこうむっているのです。





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映画『世界が食べられなくなる日』より




── とてもよく分かります。僕も同じような立場です。この3月末に僕はラジオのレギュラーのコメンテーターをひとつクビになりました(笑)。でも、このような独立の媒体を作りましたので、発信し続けることができています。あなたも圧力に負けずにがんばっていらっしゃるのはほんとうに素晴らしい。

映画の冒頭に非常な言葉があります。「米国エネルギー省は原爆につぎ込んだ金と技術者を使って新たな計画を始動しました。巨大なコンピューターによるヒトゲノムの解析です。そこからGM技術が誕生しました」。このふたつの技術を結びつけ、世界を支配しようとしているのはアメリカ国家なんでしょうか。それとも、あなたが言う多国籍企業なのでしょうか、帝国か資本か、どちらなのでしょう。






ほんとうに一握りの多国籍企業の経営者が世界を制覇しようと目論んだのです。でもそこには強力なコラボレーターがアメリカの政府にいました。それは、ご存知のジョージ・W・ブッシュではなく、彼のお父さんのジョージ・ブッシュです。彼がモンサント社と非常に密接な利益関係を持っていました。アメリカは石油をテキサス州で発掘しましたが、石油化学は我々の地球にとって大切なことで、地球の未来のためにはこの化石燃料から手を切らなければならないんです。テキサスで石油を発見した人たちが世界を牛耳ろうと目論んだと解釈しています。



ですから、「アメリカ国民が(支配しようとしている)」、という主語はぜったいに使えないのです。私はアメリカ国民を尊敬しています。だからこそ、映画の冒頭で若いアメリカ人の兵士たちがノルマンディ上陸作戦で自分たちの命を投げ出して血を流したというシークエンスを引用しています。彼らは、地球のよりよい未来のために、血を流し自分の命を投げうってくれたんだ、ということを私も確信しているからです。



── では、そのヒトゲノム解析の技術からGM技術が生まれた、という情報は正しいのでしょうか。



原子力爆弾とGM作物の繋がりのきっかけというのは、そこなのではないでしょうか。これは言っておきたいのですが、「この映画のなかで描かれていることは本当ですか」とよく質問を受けますが、すべて検証されています。私は映画監督で、もちろん、科学者ではありません。しかし、私のブレーンには、科学者もいれば、エキスパートの人たちもいます。彼らの意見を聞いて「この情報は見せてもいい」「この情報はまだ不確かだから見せない」といったサポートをきちんと受けています。ですから、全て正しい情報として提示しています。モンサント社のような人たちは、私の作品に対してしらみつぶしに「なにか欠点はないか」と目を凝らしているからです。



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映画『世界が食べられなくなる日』より



── モンサントはきっとこの中継も見ていると思いますよ。



彼らにはボンジュールと言いたいです。もちろん、多国籍企業モンサントの人たちだけでなく、いろんな国々の国家警察の方々にも挨拶したい。なぜなら、国家警察の人たちは私の映画にとても関心を持ってくださっているみたいですから。私の映画が上映される予定の映画館にわざわざ足を運んでいただいて「あなたほんとうにこの映画を上映するつもりですか、この映画を上映したらきっと暴動が起こるかもしれませんよ」と通達をして回ったということを聞きました。その結果、いくつかの映画館は私の上映を取りやめたということがあるのです。





── 僕らは中継配信を取りやめませんのでご心配なく。こういう絶望的な状況のなか、日本ではTPPというものが持ちだされ、交渉参加すると総理が表明してしまったんです。私はTPPはとても危険だと思っています。あなたはそういった自由貿易協定について詳しいのであれば、どういう問題があるか、お話ください。



危険です。私たちだけでなく、人類の未来にとっても受け入れてはいけません。しかし、この資本主義経済ではロビー団体は強い力を持っています。我々エコロジストたちが、「危険だ」と声を上げたところで、この法律は通ってしまうでしょう。



ただ、この映画の冒頭で言っていることを思い出してください。我々はいま第三次世界大戦下にいるのです。人類の歴史において、これほど多くの生物を殺してしまった戦争はありません。単に生物と言いましたが、微生物も植物も動物も人間も、あらゆる生物に被害を与えてしまった戦争はこれまでになかった。そうした戦時下にあるのです。攻撃してくる捕食者たちが手にしている武器は、お金です。彼らがその利益をどうやって蓄積してきたか、それは我々が与えてしまったからなのです。





だからこそいま我々、世界の人々すべてがやらなければいけないのは、お金を蓄積している多国籍企業に対して、1ユーロたりともお金を与えるのをストップすることです。そして我々が持っているお金を、世界のエコシステム、あるいは環境にやさしい、未来の世代をリスペクトする食品に供給するべきだと思うのです。それがまた雪だるま式に大きな力を持っていけば、多国籍企業も考えなおさなければならないことがあるだろうし、本当の意味で使われるべきところに我々のお金が使われるようになるのだろうと思います。






21世紀のレジスタンスのかたちはお金、そしてコミュニケーション



── この映画のなかでビル・ゲイツ財団がろくでもない仕事をしている、というのが一瞬出てきます。我々は1円足りとも出してはいけないとなると、パソコンを使えなくなりますね。アップルを使えばいいのかな。



どんな少額のお金でも、誰にあげるかということを自ら選んでください、ということを言いたいのです。エコノミストのなかにも、私と同じようなことを言っている人もいますけれど、我々ができることはやらなければならない。できることをやることでそれが積み重ねとなって、日本人のみなさんの目の前でこういう言葉を使うのは辛いですけれど、地球の捕獲者に対する“大津波”を引き起こせるのではないかと私は思っているのです。







── 抵抗のかたち、抵抗の方法、20世紀の方法では通用しないかもしれません。21世紀のグローバリズムあるいは新自由主義が支配する時代にあって、できる抵抗のかたちというのはどういうものでしょうか。



だからこそ、21世紀のレジスタンスの方法として2つの武器があると考えています──2つと限らずもっと武器はあるかもしれませんが。それはみなさん知っているお金、そしてコミュニケーションです。お金については、今言ったやり方が武器になります。私の言葉でいうとパロール(発言力)です。我々はもっと発言しなければいけない。この映画を観て、もっとコミュニケーションして、思っていることをあなたの周りの人たち、友人やご家族の方と共有して、また、懐疑的な人たちを説得するために言葉を使わなければならない。わたしもあなたもメディアなんです。だから言葉というのはとても大事です。私たちがここでやっていること、言葉を使ってインフォメーションを流しているということです。私たちはこの発言力を持っています。もちろん多国籍企業の人たちも同じようにお金と発言力という2つの武器を使っていますが、私たちもまたそれを活用すべきなのです。かつ、有利なのは、私たちのほうがずっと多数だということです。


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『世界が食べられなくなる日』のジャン=ポール・ジョー監督



── 多数があるためには、分断されない、ということがとても大切ですね。



また例を挙げましょう。ご存知だと思いますが、映画監督としての私を形成してくれたのは、映画史上最も偉大な映画作家、黒澤明監督です。よく聞かれる質問なんですが、あなたが好きな環境映画はなんですかと言われたとき、私は『七人の侍』と答えるんです。



── 農民が最後に勝利するからですか!



完璧な比較ができます。このストーリーはある村を舞台にしています。毎年農村のお金は野武士という捕獲者に奪われ、村を焼かれ女性はレイプされてしまったりする。でもふたりの農民がNOと言って立ち上がり、彼ら7人の侍に会いに行くのです。既に侍のキャリアが終わってしまった怠け者の浪人たち。誰も彼らをガードマンに使おうとは思わないような、7人の侍たちです。



── リストラされたような人たちだからね。



村人たちは「お金は少しだけあります」「ご飯を供給できます」そういうことを言って少しずつ7人の侍たちを説得し、モチベーションを高めることさえやってみせるのです。そこで侍たちには、今までになかった、悪者をやっつけるためのエネルギーがみなぎってくる。そして勝利を収めるのですが、その収穫をキープすることが大事なのです。
この物語と我々の現代社会のどこが似ているかというと、有機的なかたちで農業が行われていて、有機米が普通だった。でもそこでGM作物が入ってきてしまった、そこで我々がしなければいけないのは、単に生物をリスペクトするだけではなくて、そこで戦わなければいけないんです。そして搾取しようとする捕獲者たちに対してNOと言う勇気を持たなければならない。そういう意味で、私はこの映画をエコロジストな映画だとジャーナリストたちに答えているのです。



── あなたはフランスの現代における志村喬(侍のリーダー)ですね。



すごく誇りに思います。それにふさわしい人物になるように映画監督として精進します。地球というものを村に例えるならば、戦って村を救うために、貢献したいと思います。



── あなたを支える多くの農民たちがいるわけですね。



もちろん私も彼らを支援します。



── あなたの映画を観て、フランスから寄せられたメッセージに我々日本人が勇気づけられると思います。



そう願っています。ガンバッテ!




(2013年3月28日、渋谷アップリンクにて インタビュー:岩上安身 協力:IWJ 構成:駒井憲嗣)









【IWJ】映画「世界が食べられなくなる日」ジャン=ポール・ジョー監督、独占インタビュー! 「我々は今、第三次世界大戦下にいる」

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【関連記事】

「モンサントの遺伝子組み換え食品に毒性の疑い」ルモンド紙報じる:
『セヴァンの地球のなおし方』監督のGMOと原子力が題材の新作公開にあわせ、ラットの2年間の実験結果が公表(2012-10-01)

http://www.webdice.jp/dice/detail/3664/










ジャン=ポール・ジョー プロフィール



国立ルイ・リュミエール大学卒業後、1979年より監督として多くのテレビ番組の制作を行う。1984年のCanal+(フランスの大手ケーブル放送局)の設立当初より、主なスポーツ番組の制作と中継を担当し、スポーツ映像に革命をもたらす。
1992年には自身の制作会社J+B Sequencesを設立。2004年自らが結腸ガンを患ったことを機会に、「食」という生きるための必須行為を取り巻く様々な事象を振り返り、『未来の食卓』を製作。フランスでドキュメンタリーとしては異例のヒット作となる。2010年、環境活動家のセヴァン・スズキを追い地球環境への警鐘を鳴らした『セヴァンの地球のなおし方』では、すでに遺伝子組み換え食品と原発の危険性を示唆していた。その際の来日で、東日本大震災後の日本を取材し、今作『世界が食べられなくなる日』を完成させる。












映画『世界が食べられなくなる日』

6月8日(土)より渋谷アップリンクほかにて公開




監督:ジャン=ポール・ジョー

プロデューサー:ベアトリス・カミュラ・ジョー

ナレーション:フィリップ・トレトン

パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ

原題:Tous Cobayes?

2012年/フランス/118分

配給:アップリンク

協力:福島農民連、農民運動全国連合会、大地を守る会、生活クラブ生協、ビオ・マルシェの宅配、食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク、パルシステム生活協同組合連合会、ナチュラル・ハーモニー、アバンティ



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▼『世界が食べられなくなる日』予告編


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