webDICE 連載『2010年 “水”大作戦』 webDICE さんの新着日記 http://www.webdice.jp/dice/series/22 Mon, 16 Dec 2024 20:13:53 +0100 FeedCreator 1.7.2-ppt (info@mypapit.net) 「アメリカは世界一のバーチャル・ウォーター輸出国」佐久間智子氏×沖大幹氏トークショー・レポート http://www.webdice.jp/dice/detail/2282/ Wed, 03 Feb 2010 12:20:26 +0100

映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』公開を記念して、渋谷アップリンク・ファクトリーにて水問題の調査・研究に長く取り組むアジア太平洋資料センター理事の佐久間智子氏と、バーチャル・ウォーター研究の第一人者である東京大学教授の沖大幹氏によるトークショーが行われた。

映画の上映後に行われたこの日の講演は、日本での水の安全に関する意識の高さを象徴するように、バーチャル・ウォーターという概念について、そして水の権利についてお二方が持論を展開し、終盤には参加者との質疑応答も活発に交わされた。




640億立方メートルの水を輸入している日本



沖大幹(以下、沖):日本が輸入している主要な食料として小麦や大豆とうもろこし、大麦といったものがあります。輸入するのではなく、もしそれを日本で作ったとしたとしたらどのくらい水が必要だったのでしょうか。実は、とうもろこしや小麦だとだいたい2,000倍くらい、1キログラムの穀物に2立方メートルの水が必要だと推計されます。

さらに、牛肉の場合では、1キログラムの肉にその約20,000倍、20立方メートルくらいの水が必要な計算になります。そうした値を用いて推計すると、2000年の段階で640億立方メートルくらいの水を輸入しているのと同じくらいになるという計算になるんです。映画の中で先進国の人々は水問題なんてまったく考えなくなっているだろうという話がありましたが、実は海外の水に非常に依存しているのです。京都で2003年に開催された第3回世界水フォーラムの時にもこのような話が出ていました。





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佐久間智子氏(左)、沖大幹氏(右)



こうした研究をふまえ、沖氏は「日本がこれだけ海外の水に依存していると、ちょっとした循環が変化しただけで日本にくる食糧生産に影響が出て、不作だと値段がすぐ上がることになります。2008年の春頃にいろんな食べ物の値段が上がりましたけど、あれはまさに食物を海外に依存している日本の実態が端的に現れたものだと思っています」と、各国の水問題が世界一の食糧輸入国である日本の経済や私たちの生活に影響を与えていることを示唆した。

また佐久間氏は、今作がアメリカで作られた北米の国から観た世界と視点である上で、農業用水が世界で私達が消費している淡水消費の7割を占めているという現状では、『ブルー・ゴールド』で提示された解決策では充分ではないと語る。








佐久間智子(以下、佐久間):アメリカは世界一のバーチャル・ウォーター輸出国なんです。つまり世界一の農業輸出国なわけで、もっと自分たちの水が大事ならばこれだけ外に水をバーチャル・ウォーターとして出している現実というのをもっと見るべきだと私は思います。アメリカの消費されている水の3分の1は、農業のバーチャル・ウォーターで出ていっているといわれているぐらいなんです。その最大の受け手であるのが日本で、日本の牛の餌に使われているとうもろこしの99%はアメリカから来ています。

例えばアメリカの水が枯渇してしまえば、日本の牛や豚や鳥が全部死んでしまうというすごく密接な関係にある。別に肉を輸入しなくても、国産でもですよ。そのような関係が深い中で、アメリカがこれだけバーチャル・ウォーターを輸出し続けて、アメリカの最大のオガララ帯水層は、あと20年か30年で枯渇してしまうかもしれない。そうしたところに私たちの生活が乗っかっているという危うさが、もう少しこの映画から見えてくると良かったので、こうした補足をしたいなと思いました。



私たちの食生活をどう考えるかが、水を守ることにも繋がる



こうした複合的な水問題に対し、沖氏、佐久間氏はこの日のトークショーで次のように提言した。



佐久間:特に私たちにとって大きいのは、食べ物の問題だと思う。食物の6割を輸入している中で半分近くがアメリカで、アメリカ・カナダ・オーストラリアの3ヵ国ではバーチャル・ウォーターの7割を占めている。そうした国々で水が無くなりつつある中で、私たちの食生活をどう考えるかという問題がある。世界中の肉食拡大と、私たちの日本食との関係で言うと、日本では過去50年くらいの間にお肉にしても油脂にしても消費が4倍から5倍に増えているんです。もちろん乳製品もそうです。

そうした中で、本当にそういう食生活をしなきゃいけないのか。アメリカではそうした食に対する意識が問い直されています。特に私たちは海に囲まれた国に住んでいて魚も食べ、大豆文化もある──大豆もほとんど輸入になってしまっていますが。そうした食べ方については、アジアひいては世界の農業を変えていくことから水問題を考えていく、一つのキーワードになっていると思います。私たちは水を意識しながらどのように食生活をもう一回考え直せるか。これは、別に健康に悪い方向に行くわけでもなく、かえって飽食の今の時代には、健康にいい方向に向かうという気がします。このようなことが水問題をグローバルに考えたときに一番大きいと思います。



さらに佐久間氏は、水の権利についても「水道水の所有権、あるいは水道局や水道会社の運営権をどうやって民主的なものにしていくのか、これは公営でも民主的じゃない場合もあるので、そういったものを民主的にする、情報を得る。そしてまずは関心を持つことが課題だと思います。それは私たちがこれからどうアプローチできるかにかかっていると思います」と語った。



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当日は約1時間に渡って水をキーワードに対話と議論が繰り広げられた。


そして沖氏は、水循環の研究者の立場からとして、そのような研究が私たちの意識を高めることに繋がるとする。



沖:世界を見ると水の問題は社会の貧富の差や、あるいはインフラがきちんと整備されてないことが大きな原因で、その解決自体には水循環の科学的研究は直接は役には立たないかもしれない。しかし、例えば地下水ってどのくらい地表面から水が染み込むのか、地域地域で推計する手法、観測する手法が発展すれば、『この地域の地下水は、このぐらいの量なら持続的に使えますよ』ということを示していけるのではないかと思います。社会として水分野にきちんと投資をしたり、水マネジメントの仕組みを整備する以外にも科学技術が多少貢献できることがまだあるのではないか、ということを今日思いました。



映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』公開をきっかけに、様々な水に対する議論が活発すること、そして私たち日本人がより貴重な水について考えることがこれから行われるのではないかということを実感できる、貴重なトークショーとなった。

(2010年1月24日、渋谷アップリンク・ファクトリーにて)







佐久間智子 プロフィール


アジア太平洋資料センター理事。1996年~2001年、市民フォーラム2001事務局長。現在、女子栄養大学非常勤講師、明治学院大学国際平和研究所研究員などを務めており、経済のグローバル化の社会・開発影響に関する調査・研究および発言を行っている。著書に『穀物をめぐる大きな矛盾(仮題)』(筑波書房、近刊)、共著書に、『どうなっているの?日本と世界の水事情』(アットワークス、2007年)、『非戦』(坂本龍一監修、幻冬舎、2002年)など、訳書に、『ウォーター・ビジネス』(モード・バーロウ著、作品社、2008年)、『世界の水道民営化の実態』(トランスナショナル研究所編、作品社、 2007年)、『世界の<水>が支配される!』(国際調査ジャーナリストナリスト協会著、作品社、2004年)などがある。



沖大幹 プロフィール


東京大学 生産技術研究所人間社会系部門教授。博士(工学、東京大学)、気象予報士。2006年より現職。アメリカ航空宇宙局NASAゴッダード研究所、内閣府総合科学技術会議事務局にも勤務。専門は地球水循環システム。土木学会環境賞(平成17年)、日本水大賞奨励賞(平成16年)ほか表彰多数。2006年8月には米国科学雑誌「Science」誌にレビュー論文『地球規模の水循環と世界の水資源』を発表。監訳に『水の世界地図』(丸善出版、 2006年)などがある。

公式HP







『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』



渋谷アップリンクほか、全国順次公開中




撮影・製作・監督・編集:サム・ボッゾ

エグゼクティブ・プロデューサー:マーク・アクバー、サイ・リトビノフ

出演:マルコム・マクダウェル、モード・バーロウ、トニー・クラーク、ウエノア・ホータ、ヴァンダナ・シヴァ、オスカー・オリベラ、ミハル・クラフチーク、ライアン・ヘリルジャク、バージニア・セシェティ、ロバート・グレノン、ヘレン・サラキノス

2008年/アメリカ/90分/ビデオ/カラー/1:1.66/ステレオ/英語、スペイン語、スロバキア語、フランス語

配給:アップリンク

公式サイト

上映劇場はこちらまで



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「私たち生活者には水問題の未来を変える力がある」Waterscape野田岳仁氏からの提案 http://www.webdice.jp/dice/detail/2260/ Mon, 25 Jan 2010 12:21:34 +0100
Waterscapeの公式ホームページより



現在ロードショー公開中の『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』に合わせて、身近な水の問題を様々な角度から考えていこうという連載。今回は世界のさまざまな水問題に対し、国内外の若者と連携しながら解決の道を探っていくNPO法人Waterscapeの代表・野田岳仁氏に話をうかがった。“水問題の未来を変える生活者の力”を提案し続けてきた氏の立場から、日本の水問題と私たちができることについて解説していただいた。






子どもたちの“伝える力”で水の未来を変える



Waterscapeの展開は多岐にわたるが、3つの柱に集約し活動を行っている。



柱の1つ目は政策提言活動で、これはモード・バーロウ(『ブルー・ゴールド』の原作『「水」戦争の世紀』著者)さんの考えともリンクするし、『ブルー・ゴールド』ともリンクするんですけれど、水をどう捉えるかというところ。世界的な動きとしては〈経済財〉という捉え方があるし、一方で我々としては〈水は公共財、共有財〉というところで議論しています。その世界的なコンセンサスをつくるところの受け皿としては国連しかないわけですから、国連がそういうことをやるべきだと思っているところは僕らもバーロウさんと同じ考えです。僕らは「世界青年水憲章」を提言して50ヵ国、5,000人くらいの人と節目ごとに議論しています。これのベースになっているのは、2003年の世界水フォーラムで提言した宣言文です。その後2005年の愛知万博でも、友人であり環境・平和活動家でもある南アフリカのマンデラ前大統領の孫であるセッツァ・ドラミニさんや、南アフリカ内務省副大臣を呼んでアフリカの水問題に何ができるかということを話し合い、ステイトメントについても議論しました。実際に国連の会議に参加して提言活動をしているんですが、〈水は人権〉であるということに、もう少し水を生活者の視点から考えて実践するということを加えています。これが我々のベースになっています。



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「ユース世界水フォーラム2005」








さらに社会貢献活動のサポート、野田氏が行う講演・ワークショップが挙げられる。



2つ目の企業の社会貢献活動をサポートしていく事業は、企業とコラボレーションで進めていく活動です。一緒にやっている企業には水の企業もあって、企業の立場から真剣に社会貢献活動をやろうという思いがあるので、我々と協働で子どもたちのワークショップをやったり、コンテンツをつくったり、水の問題を解りやすく楽しく伝える活動をしています。企業活動をチェックしていく一方で、これからの時代は企業と一緒に新しい価値をつくっていくようなアプローチも求められていると考えています。3つ目は僕自身が小学校から大学などの教育機関をまわって講演やワークショップをする活動です。たとえば、遊びながら学べるように、水の循環を学ぶための水のすごろくをやったり、かるたやカードゲームを通して水問題の解決策を考えてみたり、といった活動です。私たちは、子どもたちは潜在的に“伝える力”を持っているのではないかと考えているんですね。考えてみると、年上の人の話はなかなか素直に聞けないんですが、自分より若い人の話は素直に聞けるものです。特に、子どもの話だと親は素直に聞いてくれますよね。水のワークショップで学んだことを家族やお友達に伝えてくれることが、社会を変える第1歩につながっていくと思っています。







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Waterscapeが開発したカルタゲーム。遊びながら水問題と解決策について考えることができる。






ポジティブなメッセージを伝えていきたい





生活者の視点による水の問題を若い人たちと考えたいと活動を続けてきた野田氏が水問題に関心を持つきっかけとなったのは、なんと小学4年生の時。地元である岐阜県関市の自宅近くに流れていた長良川の支流がなぜこんなに汚いんだろうという素朴な疑問からスタートしたという。野田氏はWaterscapeについて「水を大切にしようというと、人の生活とを切り離して考えてしまいがちだけど、そうではなく、生活者の立場から水問題を考えて、できることを提案していくことが我々の特徴だと思う」と語る。



2003年には、世界の水問題を話し合う国際会議『第3回世界水フォーラム』が日本で開催されました。そこで私たちはそこで海外のいろいろな若い人とのネットワークを活かして、世界の政策決定者を直接呼んで、若い人たちと政策決定者とが対話する場をつくりたくて「ユース世界水フォーラム」という会議を行いました。各国大臣や国際機関の政策責任者、50ヵ国、1,500人の若者に参加してもらいました。今までの水政策では生活者の視点がかなり欠けていると感じていました。我々は当時は学生だったし専門性というのはかなわないけれど、生活者としてできることを軸にして考えたときに、多くの人が誰でもできることをみんなで一緒にやっていく、それはすごく小さいことなんだけれど、一番大きな力になるんじゃないかと思っていたので、「生活者として実践していることを教えて下さい」と質問を大臣たちにぶつけたんです。しかし、水問題の専門家でさえも、誰一人として答えられなかったんですね。世代や立場にかかわらず、すべての人に日々、生活があるわけです。それでも、水問題の解決につながる実践を日々できないでいる現実があるんです。私は、ここに可能性を見いだしたいと考えたわけです。





野田氏は積極的なフィールドワークをもとに、日本に伝承されてきた水を大切にする生活を見直すべきではないかと提案する。



たとえば、私がフィールドワークをする岐阜県の郡上八幡では現在も山水や湧き水を引き込んで自然の水を利用しているんですね。近所の人びとと共同で利用する水舟や洗い場はいつもきれいに保たれています。水神様がお祀りされていて、水への感謝と他者への思いやりの心が残っているから、水も汚れないんですよね。もう一つ大切なことは、社交場でもある水場に集う女性の笑い声が町全体の活気をつくり出していることです。こうした光景は各地で見られたんですが、上水道が導入されて消え去ってしまいました。その結果、身近な湧き水は汚染されて、清潔であったはずの水道の水源も汚染され、水道水を口にする人は少なくなりました。「洗い場があった時は楽しかった。洗い場まで行くのはしんどかったけれど、それがいい運動になっていた」と話してくれたおばあさんも今は足が弱って家に引きこもっていると言うんですね。






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岐阜県郡上八幡の伝統的水利用施設「水舟」









また、水の災害についても生活者の視点から同様の指摘ができるんですね。川沿いに住んでいるおばあちゃんに聞き取りをすると、ちょっと川の水かさが増えたら近くのお宮さんに逃げたものだった、と言うんです。水屋のようにもともと水が溢れるところは石垣で高くしていたり、昔の人は知ってるんですが、新興住宅地のようになって外から人がやってきたり、川も行政が工事してくれて堤防がつくられていくことで忘れ去られてしまう。けれどいざ堤防が壊れたときにそれを知っているか知らないかで変わってくる。そこに暮らす生活者の知恵は、実は本当に実行力のある政策を考える上で大切になってくるんですね。昨年4月に訪問したアフリカのマリ共和国でも現地の生活者のニーズにマッチしていない水道化の現場に出会っています。水道は便利な一方で水使用量を増加させる傾向にあるんです。日本でもそうですから、ましてや水資源の乏しい海外において高コストな水道化は優れた政策とは言えなくなっていますよね。これからの水政策のヒントは生活者の生活の知恵にありそうですよね。それは、海外の水問題の解決策にも応用できるはずです。






やみくもに節水をよびかけるのではなく、節水することがどのように私たちの生活にフィードバックするのかを野田氏は解りやすく解説してくれる。



まず、水を使うことは汚れを流していくことですから、家庭からの排水量を減らすことは、川の水質にとってプラスです。それに、日本のほとんどの川はダムなどによって流れがせき止められていて、川は本来の流れを失っているんです。利水だけでなく、治水機能もあるんですが、流れのない川は景観的にもマイナスで、水量と水温が安定せず生物にとってもすみにくい環境になっています。つまり、節水をすることで川に安定的に流す量を増やすことができるんですね。このことで、川がよい景観を生んだり、生物が増えるというプラスの効果があります。魚が増えれば私たちの遊び場も増える。そういうところまで伝えていきたい。今の子供は川で遊んだこともなかったりするから、節水を通してそういうコミュニケーションをしていきたいんです。水がすごく貴重で、枯渇しそうだから節水するという危機感をあおっていくということも必要なのですが、僕らの活動のスタンスはポジティブなメッセージを伝えていきたいということで、節水することでこんな楽しい未来が待っているんだから一緒に節水をしませんか、という伝え方をしたいんです。





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Waterscape代表の野田岳仁氏








川を積極的に利用していくことが保全に繋がる



川を利用すると川は汚くなるというイメージがあるんですけれど、川を積極的に利用すると人々の意識が川に向いていくんですね。そうすると、川には監視の目が入ることになるんです。だから、川を汚しにくくなる。その目は次第に、愛着の目に変わっていきますよ。掃除をしてみたり、コイを飼ってみたり。実は、川を積極的に利用していくことが保全にもなり、川はきれいになるということなんですね。これは、川をきれいに変える私たちの生活者の力なんです。



ユース世界フォーラムのような世界各国の若者と大臣や政治家を繋ぐ機会を設けると同時に、日本の土壌に根ざした水問題の解決法を日々探っているWaterscape。かつて私たちが持っていた生活の知恵を活用すること、そして水に対して常に意識を持つことが、水をきれいにし、おいしい水のある生活を守ることができるのだ。



『ブルー・ゴールド』でも言っていたように「ひとりひとりが水の番人になる」というのは大事なことです。海外でもいろんな水の危機があるけれど、そうしたグローバルなことを頭に入れながら身近な水の番人になることで、身近な水辺であるとか、毎日の生活の中で水のことを考えていくことが大切。節水はもちろんのこと、大量の水によって育てられる食べものを残さず食べることも節水につながりますよね。雨水を貯めることは、洪水を軽減させることにつながるし、夏には打ち水に使えたり、家庭菜園の水やりや災害用水源としても有効なんですね。そして、お話ししてきたような水の知恵を活用したり、水辺を積極的に利用していくこと。これらのことは、一人ではなかなか続かないので、家族や友達とやるのがいいんです。つまり、毎日1人の友達に声をかけていく。誘われた人も毎日1人に伝えていく。これを続けていくとたったの28日で日本中に伝えることができるんですね。1ヵ月あれば、みんなが水の番人になる。つまり、私たちは誰もが生活者として水の未来を変える大きな力を持っているんだ、ということを伝えたかったのです。


(インタビュー・文:駒井憲嗣)






野田岳仁(のだ たけひと) プロフィール


NPO法人Waterscape代表

1981年岐阜県関市生まれ。清流長良川の水で育ち、10歳より水環境問題に関心を持つ。99年大学入学時に国際青年環境NGOを設立。02年大学を休学し、政府系機関「第3回世界水フォーラム事務局」チーフを兼任。オランダ皇太子ら世界のリーダーと50ヵ国1,500人の若者を集めた「ユース世界水フォーラム」の最高責任者を務め、第6回日本水大賞国際貢献賞受賞。最近は、国内外の水辺を歩き生活者の視点から水問題の解決策を研究し、国連や社会への政策提言活動、企業の社会貢献活動のサポート、子どもたちへのワークショップなどを通じて、水と人のかかわりを次代につむぐ試みを続けている。早稲田大学大学院修了。








『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』



渋谷アップリンクヒューマントラストシネマ有楽町

ほか、全国順次公開中




撮影・製作・監督・編集:サム・ボッゾ

エグゼクティブ・プロデューサー:マーク・アクバー、サイ・リトビノフ

出演:マルコム・マクダウェル、モード・バーロウ、トニー・クラーク、ウエノア・ホータ、ヴァンダナ・シヴァ、オスカー・オリベラ、ミハル・クラフチーク、ライアン・ヘリルジャク、バージニア・セシェティ、ロバート・グレノン、ヘレン・サラキノス

2008年/アメリカ/90分/ビデオ/カラー/1:1.66/ステレオ/英語、スペイン語、スロバキア語、フランス語

配給:アップリンク

公式サイト




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「豊かな自然溢れてるアフリカで問題があるなら、それは人間の手によるもの」―“アフリカと水”についてアドゴニーにインタビュー http://www.webdice.jp/dice/detail/2278/ Tue, 02 Feb 2010 13:14:24 +0100
撮影:後藤武浩(ゆかい)


ベナン共和国出身で、現在タレントとして活動するアドゴニー・ロロ。様々なイベントの親善大使などとして日本とアフリカの架け橋として活動している。渋谷アップリンク他で上映中の映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』にはアフリカ諸国の水にまつわる厳しい現状が描かれている。映画を観て「“アフリカと水”について深く考えた」と言う氏に、映画の感想について、アフリカの現状について聞いた。




良い意味で“人間”を中心として水の問題を扱っている




──映画の感想を教えてください。



まず『ブルー・ゴールド』というタイトルに、「なるほど」と思いました。石油を意味する“ブラック・ゴールド”など、色々な“ゴールド”があるけれど、“ブルー”。まずそこに注目しました。最近色々な人たちが環境や水の大切さについて力を入れて話していますが、責任を負うべきは、人間。この映画の特徴として一番感じたのは、良い意味で人間を中心として水の問題を扱っている、ということです。増加していく人間と発展していく技術、それらと環境の関係。それは、今やっと気付くようになったけれども、30年や40年、50年もの間、人間はその発展の中で地球に与えているダメージに気付かなかった。1850年のイギリス革命から今まで、人間は前しか見てこなかった。ソクラテスが言ったように、空ばかり見て足元を見ていなかったのです。足元というのはつまり井戸、水ですね。今は、その井戸の中に落ちるか、落ちなくてもぎりぎりのところにいます。



──かなり危険な状態にあるわけですね。



人間が発展させた農業も、畜産も、地球にはマイナス。車もです。人口も増え、人間が出しているCO2だけでも大量。人間は色々なレベルで、地球に迷惑をかけている。今回サム・ボッゾ監督は、人間による地球への干渉として、ひとつの表面的な事象だけではなく世界の色々な国々の色々な人々を訪れてリサーチしている。映画を観てとても感動しました。





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映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』より


アル・ゴアの『不都合な真実』が私が出合った最初の環境的な映画です。島根県での映画祭で、私はこの映画のプレゼンターを務めたのですが、大人になって初めて地球規模の目線を持つことができた経験でした。その後「第4回アフリカ会議」や、北海道でのサミットの仕事をしました。私も仕事柄よく飛行機に乗るし、車にも乗る。人間はそれに慣れてしまっている。現代人が慣れているこの生き方を見直さないと、ソクラテスが言うように私たちは井戸の中に落ちてしまう。



フランソワ・ラブレーという作家による「“science(科学)”より“conscience(良心)”を」という好きな言葉があります。お腹の胎児が母親とへその緒で繋がっているように、私たちも地球と繋がっています。私たちが排出した汚い水が地球に入り込み、そしてその汚い水をまた飲まなくてはいけないのも私たちなのです。何千年前の地球だったら、汚い水を排出しても自然の力が浄化してくれたかもしれません。しかし降ってくる雨すら汚れている今は、そのシステムが機能しません。私が子供のとき、雨の水を口を空けてそのまま飲んでいた思い出があります。



“ゴールド”を2人で分け合うのは難しい



──映画には、世界水フォーラムが開催されたケニアのナイロビ、バラの栽培をするガーナ、電子キーで水を管理する南アフリカなど、アフリカ大陸の国々が登場します。



私の出身のベナン共和国は西アフリカにあります。水資源が豊かな国です。民主化が進んでいますが、水道事業はノープロブレム(笑)。映画に登場するアフリカの国々には、水と人間の関係性にまつわる歴史があります。ケニアの場合は、色々な民族、大きく言うと2つの民族があります。南アフリカは黒人と白人、ガーナでは原住民とそれを開発しようと訪れる開発者たち。“ゴールド”の価値のある“水”を、2つの対立する存在で共有することは難しい。宝を2人で分け合うのが難しいように。そのような対立や搾取の中でアフリカ大陸の川や湖はどんどん小さくなってきているのも事実です。アフリカ大陸全てが超パンデミックな問題の中にあるわけではないけれども、実際に問題はそこにあるのです。




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撮影:後藤武浩(ゆかい)



アフリカでは大昔から水は貴重な地域があります。サハラなど大きな砂漠やナミビアなど小さな砂漠がある地域ですね。その中を通るナイル川のおかげでエジプトは発展しました。砂漠地帯の多い北アフリカに住む人々にとって、水は産まれたときから貴重なものです。それらの地域で水が政治的に利用されていないのは、昔から水の大切さがわかっているからです。この映画では、“人間vs問題”が描かれています。人間と問題を対峙させているのですね。これまで私が観てきた環境問題を扱った映画では“人間vs政府”“人間vs大企業”という姿勢が多かったのでとても新鮮でした。



──ベナン共和国ではどうですか?



私が生まれ育ったベナンでは、水に困ることはありませんでした。豊かなマングローヴの森がたくさんあり、1mも掘れば水が出ます。南アフリカの地域では、おそらく20~30m掘らないと水が出てこないところもあるでしょう。ベナンでは、世界5位の収穫量を誇る綿の栽培をしています。綿もそうですが、外国の会社が求める製品しか作っていないというのは、あまり地元の人々にとってハッピーなことではありません。ガーナやエチオピアや栽培されるバラもそうですよね。フェアトレードの名の下に、ヨーロッパなど一部の人々のためだけに栽培しているのです。なぜ自分たちのためではなく、先進国に住む一部の豊かな人たちのために綿やバラを栽培しなくてはならないのか。なぜアフリカに住む彼らが食べる野菜は海外から輸入される缶詰なのか。なぜ彼らが食べる魚はどこから来たのかわからない冷凍の魚なのか。つまり、オーガニゼーション全体が間違いなのです。




──映画の中に、アフリカで水にまつわる悲しい事件が描かれています。そのことは知っていましたか?



知りませんでした。火事で子供たちが亡くなった話は、ベナンでは有り得ません。水というものは、生命維持のためのものだけではなく、スピリチュアルなもの、浄化するもの、清めるものとして大切にされている歴史がアフリカにもあります。水は自分一人だけのものではありません。飲む前に神様に捧げる、そういう習慣がある宗教も多くあります。一方で水のせいで戦争が起きてきた歴史もあります。


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映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』より



世界を見渡しても、水の大事さがわかるまでに色々な人為的な間違いがありました。日本は水俣病のような公害を経験して、学んできましたよね。そのおかげで汚水を浄化する技術も発展してきました。アフリカの人たちにはまだその力がなく、被害者のままです。コートジボアールなどは一時期とても不安定だったので、大企業が狙っていました。大企業がお金を渡し産廃を埋めていたのです。1980~90年の間、そういった大企業からたくさんオファーを受けて、ゴミを受け入れていました。最近は政府も「NO」と言えるようになりましたが。




水と環境問題に配慮したライフスタイルを開拓する必要がある




──アフリカの問題を考え続けてきたアドゴニーさんから見た、現在のアフリカの問題はどこにあると思いますか?



アフリカは豊かな自然に溢れているところです。もし問題があるとすれば、それは人間の手によるもの以外何者でもありません。それは増加、発展を続ける人間の手です。アフリカで最も重要なのは、良い政府です。良い政府か悪い政府か、そして戦争があるか戦争がないかで大きく環境が違います。



日本に来て改めて思うことは、アフリカの政府は甘いということ。国家予算の半分の出所は世界からの支援。残りの四分の一は借金。残りが税金と貿易から得たお金。政府と公務員は給与を貰い過ぎだと私は思っています。お金を増やさないのにたくさんもらいすぎなのです。多額な年金以外にも、賄賂をもらったりね。それにアフリカの政府が管理しているのは、都市に住む20~30%の人々だけ。日本と違い70~80%の人が田舎で自給自足をしながら暮らしている状態。国がしていることは彼らには届かない。だからこそJICAのような機関やNGOがたくさんあるのです。そういう人々のおかげでその70~80%の人々のケアができているのが現状です。




──政府を変える、それ以外に何か方法はありますか?



ひとり一人がライフスタイルを変えることです。今の生活はインダストリアルブームに合わせたもの。ペットボトル水もそうですが、便利という言葉には毒があります。先代は便利さに溢れたライフスタイルを夢見て、実現してきました。恋愛も一緒でしょ? イノセントな男女がいて、恋が盛り上がってある程度マチュアになってくると、イノセントの中では必要がなかった欲しいものなどが出てきて、関係に問題が生じてくるのです。そこで我々はその次の時代を作らなければいけません。水と環境問題に配慮したライフスタイルを開拓する必要があると思います。



(インタビュー・文・構成:世木亜矢子 インタビュー写真撮影:後藤武浩(ゆかい))





■アドゴニー・ロロ PROFILE


1974年、ベナン共和国出身。フランス語圏の学校でアフリカの歴史、地理、哲学、文学をさまざまな分野を学んだ後、北京言語文化大学へ留学。その後北京中央演劇学院に学び、俳優として活躍。さらなる活躍の場を求めて来日し、テレビ、映画、舞台などで活躍。「愛・地球博」のアフリカ共同館の親善大使や「日本赤十字シンポジウム」のパネリスト、「アフリカンフェスタ2007」のナビゲーター、「第四回アフリカ開発会議」司会などを務めるなど、日本とアフリカの架け橋として活動中。主なTV出演は「さんまのSUPERからくりTV」(TBS)、「いきなり!黄金伝説」(テレビ朝日)など。主な映画出演は『ミラクルバナナ』(2006年)『スシ王子』(2007)『新宿の事件』(2007年)など。



公式ブログ







渋谷アップリンク・ファクトリーにてアドゴニー・ロロを迎えたトークショー開催!




上映+トークショー

ゲスト:アドゴニー・ロロ




2010年2月7日(日)

開場12:15/上映12:30/トーク14:05


料金:予約1,300円/当日1,500円


予約方法:(1)お名前、(2)人数 、(3)住所、(4)電話番号を明記の上、件名を件名を「2/7『ブルー・ゴールド』イベント」として、factory@uplink.co.jpまでメールでお申し込み下さい。予約者数が定員60名に達し次第、受付を締め切りますので予めご了承下さい。



※イベント・ご予約の詳細はこちら






『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』



渋谷アップリンクポレポレ東中野ヒューマントラストシネマ有楽町

ほか、全国順次公開中




撮影・製作・監督・編集:サム・ボッゾ

エグゼクティブ・プロデューサー:マーク・アクバー、サイ・リトビノフ

出演:マルコム・マクダウェル、モード・バーロウ、トニー・クラーク、ウエノア・ホータ、ヴァンダナ・シヴァ、オスカー・オリベラ、ミハル・クラフチーク、ライアン・ヘリルジャク、バージニア・セシェティ、ロバート・グレノン、ヘレン・サラキノス

2008年/アメリカ/90分/ビデオ/カラー/1:1.66/ステレオ/英語、スペイン語、スロバキア語、フランス語

配給:アップリンク

公式サイト




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「水に恵まれた島国の僕たちだからこそ心しなきゃいけない」アースガーデン南兵衛@鈴木幸一氏が語る水のこと http://www.webdice.jp/dice/detail/2261/ Mon, 25 Jan 2010 16:02:38 +0100
映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』より



渋谷アップリンクほかでロードショー公開中の『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』と連動して、私たちの生活に密着したところでの水の問題を捉え直してみようという連載『2010年 “水”大作戦』。今回はアースガーデン代表としてオーガニックそしてエコロジーをテーマに掲げイベントを多数手がける南兵衛@鈴木幸一さんに話を聞きながら、私たちの生活をとりまく水や環境の問題について考えていきたいと思う。2010年は1970年アメリカで環境について人々に考えてもらう日として提唱されたアースデイがスタートして40周年、日本でも市民レベルに広がって20年が経ち、代々木公園で開催されているアースデイ東京についても10年目となる節目の年。実は南兵衛さんご自身の生活環境にも変化が訪れたという



ちゃんと希望を見せて〈結〉になるところが素晴らしい



僕はずっと文京区に住んでいたのですが、実は春からあきる野市の武蔵五日市というところに引っ越すんです。東京都心から最短距離の深山で、家の軒先に沢水が引かれていて、そのまま飲めるようなところなんです。やっぱり蕩々と水が流れているそばに住むというのはなんとも深い安心感があるんだよね。もともと20年ぐらい前に百姓をやっていて、そこもかなり大きな農場だったんだけれど、そこの水が田植えしている水を汲んで飲めるようなところだった。なかなかそこまできれいな水のある場所はないんです。そこで一年過ごしたことがあるので、どこかでそういう環境に住みたいとずっと思っていたんでしょうね。



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南兵衛さんの五日市の家の軒先には、沢水が引き込まれている




都会のオアシス・代々木公園という絶好のロケーションで環境について考える取り組み、アースデイ東京を2000年代に育ててきた南兵衛さんは、自ずと水に惹きつけられていることを感じていたのかもしれない。気持ちも新たにした2010年のはじめに観た『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』について〈映画『アバター』のリアル版〉だと形容するほど、多くの刺激を受けたようだ。



すさまじいよね、ドキュメンタリー・エンタテインメントとしては今までで最高の作品じゃないかと思います。機関銃のような言葉のアクションと言える作風だから、日本にはもうちょっとゆったりした流れのなかで伝えるほうが向いているのかもしれないけれど、そうするともっと情緒的になっていって、社会的な情報よりも情感に訴える方向に行ってしまう。だからドキュメンタリーとしてはこれで正解。確かに消化しきれていない人は少なくないと思いますけれど、それはその人個人の勉強の問題もあるし。起承転結がすごくあるから、最初は普通のドキュメンタリーの感覚で観ていて、最後4分の3くらいのタイミングで終わっちゃうんだろうなと思ったんだけれど、ちゃんと希望を見せて〈結〉になるところが素晴らしかったし、エンタテインメントとしても上質だと思った。





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代々木公園で行われて10年を迎えるアースガーデンとアースデイ東京



世界各国を旅し、その土地ごとの風土や人間性と向き合うことを続け、そうした経験や自然と触れ合う楽しさをフェスティバルで、そして飾らない言葉を用いた言葉で私たちに伝えてきた。なかでも作品に登場する南米の風景は、南兵衛さんにとっての旅の原体験ともいえる場所で、皮膚感覚で水の問題を感じることができたという。




僕の南兵衛というニックネームは南米に行っていたからで、今回の舞台になっているボリビアにも行っていたんです。ペルー、ボリビア、チリの北部というのは砂漠地帯で、自転車で延々と走っていると、水の有無で風景がここまで劇的に変わるのかって実感する。今でも鮮烈に覚えているのは、旅の前半に行ったペルーの海岸線で、朝は霧が多かったり湿度のある砂漠みたいな不思議なところで、川のある谷筋になると、いきなり緑が広がるんだ。ほんとうに緑の絨毯をひいたのかと思うくらい。水が川から這い上がってこれる距離感にしか緑が存在できないというのがほんとうによく解る。あれはアフリカのオアシスの姿よりドラスティック。ラパスの町も月面都市みたいなところがあって、高山の高地が続いているところにいきなり谷があって、そこに人が住んでいる。



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アースガーデン代表の南兵衛@鈴木幸一氏 撮影:後藤武浩


命、緑、水という源流へ辿っていくということを大事にしたい




家でも水道水を飲んでいる、という南兵衛氏は、映画で描かれている企業や政府の水の利権の掌握や水道事業の民営化の問題について「日本人にはなかなか実感しづらい面があるかもしれない」としながらも、そうした「日本一水に恵まれた国」日本だからこそ考えなければいけないことがあると語る。




ぜひ地球儀で日本くらいの緯度にあって同じサイズの島を探してみてほしいんだ。ニュージーランドやイギリス、アフリカのマダガスカルとか、大陸に寄り添った大きな島はあるんだけれど、どの島も日本より緯度が高いか低い。日本くらいの島と呼ぶには大きいサイズで、大陸性でもなく、これだけ水や緑に恵まれていて、それなりの降水量のあることによって気温と湿度が適度に保たれている島というのは、地球的にみても日本しかないんだ。ただ、この映画に出てくる水の問題は、この星の上で確実に起こっていることだから、水に恵まれた島国の僕たちだからこそいろんな意味で心しなきゃいけない。そんな恵まれた国に住む僕たちがなぜミネラルウォーターを輸入してるのか、難しいところは確かにある。僕もこの映画を観て、ミネラルウォーターの販売中止ということもあり得るのかなとちょっと考えたけれど、線の引きどころが難しいよね。



豊かな自然そして水の恩恵を受けながら、便利だからという理由でミネラルウォーターを無意識に買ってしまう自分がいる。では私たちはどんな選択をすればいいのだろうか、そしてこの映画からどんな教訓を汲み取ればいいのか。南兵衛さんはアースガーデン設立のきっかけとなった屋久島の詩人・山尾三省さんの言葉を例に挙げてくれた。




三省さんは神田のお生まれで、五日市の僕の移り住む集落に住んで日本で最初の有機農業の八百屋を始められた。彼の詩の朗読会を自分たちでやりたくて、僕たちはアースガーデンというオフィスを始めたんです。三省さんは亡くなる前に、私たちは神田川の水を飲めるようになるような文明を目指すべきなんじゃないかという問いをたてられた。それはひとつの文明観として究極だと思う。神田川は歌のタイトルにもなっているし、一方ではどぶ川の代表みたいな言われ方もするシンボリックな川。その川の水を飲めるようにすることは、三省さんの完全に夢想ではなくて、今の都市文明におけるここ10~20年での上下水道の発達を踏まえれば、僕たちの決意ひとつでありえないことではない。5年くらい前は、大量に鮎が上がってきたことが話題になったし、実際に日本の都市河川は下水道施設や各家庭の浄化槽が普及して、70~80年代に比べると確実にきれいになっている。僕の家の軒先で流れ続ける川が三省さんに繋がっていると思えば、三省さんの問いに対する僕自身の答えをこれからさらに探していかなければいけない、ということはすごく考えます。



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Natural High!の様子。今年も山梨県道志の森キャンプ場で5月22、23日に開催される


『ブルー・ゴールド』で語られる私たちへのセンセーショナルな警告と、アースガーデンの東京の真ん中で環境について考えていこうという理念は、決して遠いものではなく、深いところで繋がっている。アースガーデンの行うイベントでは自由な空気を満喫しながら、環境への意識を自然と高めることができるし、新たなコミュニティや自然体験の場の創造を通して、これからさらに変化していくことだろう。まず率先して体験してみること、そこから次の世代へ受け継ぐ地球が育てられていくはずだ。



命、緑、水の源流へ辿っていくということは大事にしたいと思っています。源流は決して遠いわけではなくて、例えばアップリンクだったら、明治神宮の一番奥に渋谷川の源流があるから、映画を観た後にぜひ行ってみてほしい。映画館の前に「源流まで2キロ」と書いたほうがいいんじゃない?(笑)。神田川の水も、吉祥寺の井の頭公演の池が源流のひとつだという話があるよね。それから僕たちがやっているフェスティバルNatural High!の会場である山梨県の道志の森は、横浜の水源林なんです。キャンプをやっているところより下流から取水されてミネラルウォーターとして売られているようなところ。「これ飲めますか?」っていうお客さんが毎年必ずいるんだよね(笑)。いつも「飲めるも飲めないも最高のミネラルウォーターですよ!」って答えるんだけれど、みんな自分で川の水に口をつけて飲むという実感をもっと持つべきだね。「上流に何人住んでいるんだろう?」とか考えを巡らせて、自分で判断して飲んでみてよ、まずはそこからだと思う。



(インタビュー・文:駒井憲嗣)









南兵衛@鈴木幸一 プロフィール


アースガーデン代表/前アースデイ東京事務局長であり、渋谷の自然派立ち呑みBar/お弁当Cafeキミドリのプロデューサー、“渚”Nagisa Music Festivalプロデューサー、著書『フェスティバル・ライフ』他文筆業、お茶の水GAIAの創業スタッフ/相談役顧問、と〈自然/オーガニック/カルチャー〉をワークコンセプトに多彩な活動を続ける。

20歳前後の4年間に日本全国と南米へ自転車による旅と百姓暮らしで過ごす。南米への1年間の旅以来の通称が「ナンベイ」。95年のアースガーデン設立以来、フェスティバルや各種イベントの企画制作、2001年以来のアースデイ東京実行委員会への参加、環境省関係や国連大学でのエコイベント制作、ap bank fesでのオーガニックフードエリアのコーディネートなど、自然派の仲間たち、お店とのネットワークを背景にして、物語と関係性の豊潤な場を作り続けている。FUJI ROCK FESTIVALを筆頭とした数々の野外音楽フェスティバルにもオーガナイザーとして深く関わり、FUJI ROCKではアバロンフィールド・ディレクター、および会場全体の飲食出店運営に関わる。03年秋からはお台場を舞台としたダンス・ミュージック・フェスティバル“渚”をプロデューサーの一人として支え、他にもメタモルフォーゼ佐渡島アース・セレブレーション朝霧JAM、等のフェスの現場に数多く関わってきた。ライターとしては、BE-PAL、山と溪谷社Outdoor誌、フリーペーパー88、BALANCE他で執筆を続け、06年5月に初の単独著作『フェスティバル・ライフ』(マーブルトロン刊)を上梓。共著書に『良品活力』(山と溪谷社刊)がある。



アースガーデン公式HP

南兵衛@鈴木幸一ブログ












『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』



渋谷アップリンクポレポレ東中野ヒューマントラストシネマ有楽町

ほか、全国順次公開中




撮影・製作・監督・編集:サム・ボッゾ

エグゼクティブ・プロデューサー:マーク・アクバー、サイ・リトビノフ

出演:マルコム・マクダウェル、モード・バーロウ、トニー・クラーク、ウエノア・ホータ、ヴァンダナ・シヴァ、オスカー・オリベラ、ミハル・クラフチーク、ライアン・ヘリルジャク、バージニア・セシェティ、ロバート・グレノン、ヘレン・サラキノス

2008年/アメリカ/90分/ビデオ/カラー/1:1.66/ステレオ/英語、スペイン語、スロバキア語、フランス語

配給:アップリンク

公式サイト




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[CINEMA] いよいよ今週末公開!水にまつわる衝撃の事実『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』クロスレビュー http://www.webdice.jp/dice/detail/2186/ Thu, 24 Dec 2009 19:25:42 +0100

1月16日(土)より、渋谷アップリンク、ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町での公開が開始される『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』。「20世紀が“石油戦争”の時代だとしたら、21世紀は“水戦争”の時代になると言われている」というように、なくなってしまっても代替物がある石油と違い、水は、人間を始めとする生き物全ての生死がかかった問題であることを提起している。



映画は、アメリカの各州、ヨーロッパ、アフリカなど世界中で繰り広げられる“水戦争”を紹介。水が共有の資源であることを主張した人々に対する企業の脅し、そして水資源が不足している地域でボトル水により利益を得ていること。この映画を観た後では、ペットボトルの水や大手飲料メーカーの商品に手が伸びなくなるだろう。地球上の有限な淡水の量、海水の淡水化が進まない理由……。また、仮想水として知られる、作物や工業を通して輸出される見えざる水。フェアトレードという名の元で行われる見えざる水の輸出とそれに反対する人々への容赦ない戒め。




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水資源が豊富な日本に住んでいると、危機感を持つことは難しいかもしれないが、安全な水を供給し続けている日本の水道技術は高く、世界に貢献できるもののひとつだ。『「水」戦争の世紀』著者のひとりであるモード・バーロウによると、日本は水のマネージメントがとてもうまくいっている国。民営化されていないのは興味深いのだという。カナダも日本と同様WTOの4極の一つでもあり、水が豊富な国の一つでもあるが、この映画に対するリアクションが非常に強かったようだ。カナダでは、水は今確かにあるがいずれアメリカに取られるのではないかという恐怖心を持っている。モード・バーロウは、この日本でも管理をしっかりしていかないとすぐくずれてしまう可能性を指摘している。




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“水戦争”のために命を落としてしまう人々がいる一方、この映画には希望もある。映画に登場するライアン・ヘリルジャクは、小学校1年生の時、教師に飲み水がないために死んでゆく人たちがいることを教わって以降、アフリカの村に井戸を作るため、<ライアンの井戸基金>を設立。2百万ドルの寄付金を集め、アフリカの50万近くの人たちに飲み水を提供することのできる、319の井戸を114の郡に作っている。水道事業の民営化をやめる都市も出てきている。「水を買う」という身近なことをきっかけに、水を取り巻く世界の情勢を知ってみてはいかがだろうか。




※サム・ボッゾ監督のインタビューはこちら

[youtube:XLHgtQ__1aU]




『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』



2010年1月16日(土)より、渋谷アップリンク、ポレポレ東中野、

ヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国順次公開




撮影・製作・監督・編集:サム・ボッゾ

エグゼクティブ・プロデューサー:マーク・アクバー、サイ・リトビノフ

出演:マルコム・マクダウェル、モード・バーロウ、トニー・クラーク、ウエノア・ホータ、ヴァンダナ・シヴァ、オスカー・オリベラ、ミハル・クラフチーク、ライアン・ヘリルジャク、バージニア・セシェティ、ロバート・グレノン、ヘレン・サラキノス

2008年/アメリカ/90分/ビデオ/カラー/1:1.66/ステレオ/英語、スペイン語、スロバキア語、フランス語

配給:アップリンク

公式サイト








1月16日(土)に、公開の3館で監督舞台挨拶&トークショー開催!




ヒューマントラストシネマ有楽町

サム・ボッゾ監督による舞台挨拶


■時間:11:00~(11:00の回、上映開始前)

■劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町




ポレポレ東中野

サム・ボッゾ監督による舞台挨拶


■時間:12:00~(10:30の回、上映終了後)

■劇場:ポレポレ東中野




渋谷アップリンク

サム・ボッゾ監督にトークショー


■時間:14:00~(12:30の回、上映終了後)

■劇場:渋谷アップリンク<

※トークショーは60分程度行います。

※予約不要。当日は11:30より整理券を配布します。














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「この映画で水問題の解決法を見つけることは自分に課したゴールだった」『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』サム・ボッゾ監督に訊く http://www.webdice.jp/dice/detail/2237/ Thu, 14 Jan 2010 10:32:09 +0100

2010年1月16日よりロードショーとなる映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』。公開に合わせサム・ボッゾ監督が来日を果たした。今作は行政と企業による水の利権争いや、ボトル・ウォーターがいかなるシステムで利益を上げているかなど、グローバルな水を取り巻く問題をレポートしている。そうした大きな視点を元に、身の回りでできるアクションで私たちの水の権利ひいては生きる権利を守ることができることをあらためて確認できる作品だ。劇映画をメインの表現活動としてきた監督がドキュメンタリーにのめりこんでいったきっかけからインタビューはスタートした。



モード・バーロウの本に出会ったのが制作のきっかけ



── 本作は〈POLITICS〉、〈THE WATER WARS〉、〈THE WAY FORWARD〉と3つのセクションに分けてトピックが語られていくことで、解りやすく世界的な水の問題について知ることができ、監督のメッセージに対しても説得力が強まっていると感じます。このような構成にした理由を教えてください。



私はもともと劇映画をメインに制作を行っていました。数年前ですが、デイヴィッド・ボウイ主演の『地球に落ちてきた男』のエグゼクティブ・プロデューサーであるサイ・リトビノフと映画の続編を作るために脚本を書くことになりました。そのリサーチのためにこの映画の原作となるモード・バーロウとトニー・クラークの『「水」戦争の世紀』を読んだのです。この本が「淡水資源危機」「政治の策略」「進むべき道」という3部構成になっていたんです。劇映画においてもそうした3部構成をとることは一般的ですし、そのほうが観客にとっても解りやすく、消化しやすいと思い、『「水」戦争の世紀』の構成をそのまま使うことにしたのです。




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映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』より







── 取材をスタートさせて世界中をまわっていく際にも、その3部構成というのは監督の頭のなかにあったのですか?



ドキュメンタリーというのは劇映画と違って、誰が何を言うかわからないので、あらかじめ脚本を書くことができません。ですから質問もその3つのカテゴリで振り分けていました。ただ、最後の解決法については原作にはあまり書かれていませんでしたが、取材を続けていくことで、多くの質問に対しての解決法が見つかりました。



── 水の既得権争いについて様々な取材をされていますが、取材を断られた団体や人物、取材はしたけれど監督の意図と合わず編集の段階でやむなくカットせざるを得なかったインタビューなどはありますか?




取材を断られたのはフランスのヴェオリアとスエズでした。ネスレについても、インタビューはできても回答者の音声を変えさせられたり、まともに答えてくれなかったり、最終的な私たちを訴えないというリリース・フォームにサインしてもらえなかった、ということがありました。全部で40本ぐらいのインタビューをしましたが、時間の関係もあり、同じような回答をした人の話や、多弁だった方のインタビューはカットしたりということはありました。






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まず水について意識することが重要



── 取材を続けていく中で解決法を見つけ出したということですが、具体的にはどのような事柄で成果がありましたか?



解決法を見つける、というのはこの映画について自分に課したゴールでした。一番大変だったのは砂漠化の問題でしたね。例えば、スロバキアのミハル・クラフチーク博士に会った時は、小規模な貯水池を造っていくことによって砂漠を緑地化できるということを教わったのです。それからダムは下流に栄養物が届かず、水が停滞して循環が悪いので、マイクロタービンを使う方法があることが解りました。そうしてひとつひとつ解決法を見つけていくことができました。それを実行するかどうかは、これからの行政の問題に関わってくると思っています。



── 国家レベルの改革だけでなく、自分の住んでいる地域の水の水源先や排水先を知ること、シャワーヘッドを変えること、といった身近な解決策もきちんと提示されているところが素晴らしいと思います。この日常的な市民の視点にこそ監督の哲学があるのではないかと感じたのですが?



それに関しては興味深いプロセスがあったのです。取材を続けていくなかで、水の消費の90%は工業用や農業用で使われており、生活で使用される水はたったの10%に過ぎないのだから、個人が水の保全をする必要はないと考える専門家も多くいたんです。気持ちの上で引き裂かれる思いもありましたが、サイ・トリビノフと話しあい、たとえ生活にまつわる水消費が圧倒的に少なくても、まず水について意識することが重要で、それによって最終的にはもっと行政に関わる大きな問題として投げかけなければならないと感じました。ですので、こうした身近なエピソードも盛り込むことにしたんです。



── 監督のお話の通り、ドキュメンタリーというスタイルは、その場で対象に対してどのような撮影を行えばいいのか直感や瞬発力が必要とされると思います。また、取材する人物とのコミュニケーションも必要だと思いますが、今作に関してはどのようにそれを構築し、克服していきましたか?



実は制作の最初の段階では、私は水の問題について何も知りませんでした。偶然出会った『「水」戦争の世紀』でいろんなことを教わり、世界的な資源の争奪に関して水こそが石油に替わるものなのだと驚かされました。とにかく自分が〈知らない〉、ということを基準にしたのです。観客も私自身と同様だと思いましたので、少しでも解らないことがあれば専門家に聞いて説明を求めていく、そういったコミュニケーションョンを続けていくことで、信頼関係が生まれていったと思います。また回答をもらう時にも、それが政治的な争いにどうつながっていくかという意味合いを持たせることを考えていきました。そうしてこの映画としての方向性を持たせていくようにしました。資金についても苦労しました。各地で取材するにあたり、出資者を俳優の友人に頼もうとして、一時的に自分のクレジットカードで機材や航空券を手配していたんです。そうしたら、出発前夜になって彼がスポンサーを降りてしまった。ひとりで取材をキャンセルすべきかどうか悩んでいた時、眠っていた息子がたまたま起きてきて「喉が渇いたよ」と言ったんです。その時、やっぱりこの映画をとるべきだ、と思い直しました。妻には「出資者がいなくなった」とは言えないままでしたが(笑)。その後原作の著者が、私が一人で制作しているのを知って、助成金やあらゆるサポートしてくれて、ようやく制作にこぎつけることができました。



── 今作品は監督ご自身で脚本、撮影、レコーディング、編集を行っています。全てをコントロールするという制作は監督にとってやりやすい方法ですか?



これまでの短編の制作の経験を通してプロデュースのやり方を知っていたのが良かったのだと思います。また、予算のほとんどが12ヵ国に渡る取材旅行の旅費に費やされることが解っていたので、小規模で取材を行ったほうがいいと思ったのです。一人といってもCGについては友人が参加してくれましたし、音楽はオーストリアの素晴らしい作曲家ハネス・バートリーニが作ってくれたので助かりました。ドキュメンタリーでは編集で全ての語り口が決まるので、とても楽しんで作業を進めることができましたね。



── 編集のリズムや構成については、純粋なドキュメンタリー作家ではないことが、逆に監督にとってのアピール・ポイントになったのではないですか?



制作していく中で、ドキュメンタリーと劇映画では正反対の作り方をするということが解りました。劇映画の場合は、プロットと脚本があり、絵コンテを書いて編集の時点では既にどうなるかを確認することができます。一方、ドキュメンタリーは話がどう展開するか解らないので、編集段階で膨大な量なフッテージがあり、インタビューをつなぎ合わせていかなければなりません。3部構成というコンセプトがなかったら、どう取りかかっていいかわからなかったと思いますが、その構成のアイディアを元に流れをふくらませていきました。



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── 今回の撮影の経験はボッゾ監督にとって映画作家としての新しい方向性や可能性の礎になりましたか?



フォトジャーナリストに対してこれまで以上に尊敬の念を抱くようになりましたね。制作中は危険な目にたくさん遭いました。撮影を続けるために軍人に賄賂を渡さなければならないような状況にありましたし、白人が一人で行くと誘拐されかねないといった警告も受けるような場所で、本当に悪い人たちと対峙しなければなりませんでした。女性が水がめを頭に乗せて何キロも運ぶシーンを撮るためにケニアの電気もないような奥地へ入っていった時に、「大学に行きたいから金を出せ」と脅かされたりもしました。その時に、以前フィクションを作っている最中にある俳優が撮影中に髪を切ってヘアスタイルが変わってしまったことに怒ったことがあることを思い出して、なんてイージーなことで腹を立ててしまったのだろうと後悔しました。ドキュメンタリーの大変さに比べたら、フィクションを作ることは本当に楽しいことなんだということをあらためて感じましたね。



── 作品内では、ウルグアイでの市民が声を上げることで憲法改正まで至り、パリでの水道事業の民営化の取りやめなど、具体的な変化が現れている内容も描かれています。その他に映画が公開されてから、今作で取り上げられている問題について、行政や企業の対応や取り組みに進展はありましたか?



公開後、モード・バーロウは国連総会の水問題のアドバイザーになりました。彼女は現在、水は人権であるということを主張できるより良い立場にいます。先ほどもお話したミハル・クラフチーク博士は、サウジアラビアに貯水池を作って緑地化を推進しようという提案をしています。そうした目にみえる大きな変化もありますし、観客の反応もすばらしい。「他の人に観せたい」「地域の学校や教会などで上映したい」という声がたくさん上がっています。皆が意識して話題にしていくことで、今後も政治的に良い影響を与えるだろうと思います。今回日本でも公開され、多くの方に観ていただいた時に、さらに変化が起こることを期待しています。



(インタビュー・文:駒井憲嗣 撮影:Koji Aramaki)

  

※『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』クロスレビューはこちら




[youtube:EUBN_EsuPDg]




サム・ボッゾ プロフィール


1969年アメリカ生まれ。カリフォルニアのArt center College of Designを卒業後、サムは国際映画祭で受賞歴を持つ3本のショートフィルムを監督・脚本・編集した。それらはサンダンス・チャンネルやショータイム、トロント国際映画祭とサンダンス映画祭などで上映された。最新作はコンピュータのハッカーを題材に取材したドキュメンタリーで、ナレーターをケビン・スペイシーが務めた。マット・デイモンとベン・アフレック発案によるオンライン脚本コンテスト「プロジェクト・グリーンライト」のトップ10ディレクターとして選ばれ、小説家として著書を出版しているほか、自身の製作会社Purple Turtle Filmsからリリースされている数本の長編映画の脚本執筆者でもある。






『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』



2010年1月16日より、渋谷アップリンクポレポレ東中野ヒューマントラストシネマ有楽町

ほか、全国順次公開




撮影・製作・監督・編集:サム・ボッゾ

エグゼクティブ・プロデューサー:マーク・アクバー、サイ・リトビノフ

出演:マルコム・マクダウェル、モード・バーロウ、トニー・クラーク、ウエノア・ホータ、ヴァンダナ・シヴァ、オスカー・オリベラ、ミハル・クラフチーク、ライアン・ヘリルジャク、バージニア・セシェティ、ロバート・グレノン、ヘレン・サラキノス

2008年/アメリカ/90分/ビデオ/カラー/1:1.66/ステレオ/英語、スペイン語、スロバキア語、フランス語

配給:アップリンク

公式サイト







渋谷アップリンク・ファクトリーにて公開記念関連イベント続々決定!




上映+トークショー

ゲスト:佐久間智子(アジア太平洋資料センター理事)

×沖大幹(東京大学教授)




水問題の調査・研究に長く取り組んでこられた佐久間智子さんと、バーチャル・ウォーター研究の第一人者である東京大学教授の沖大幹氏を
お招きし、映画では語られていない日本の現状についてお話いただきます。

2010年1月24日(日)

開場12:15/上映12:30/トーク14:05


料金:予約1,300円/当日1,500円


予約方法:(1)お名前、(2)人数 、(3)住所、(4)電話番号を明記の上、件名を件名を「1/24『ブルー・ゴールド』イベント」として、factory@uplink.co.jpまでメールでお申し込み下さい。予約者数が定員60名に達し次第、受付を締め切りますので予めご了承下さい。





HARCOスペシャルトーク+ミニライヴ



イベントにご予約いただき当日『ブルー・ゴールド』をご覧の方は特別割引が適応され、¥1,000で映画をご覧いただけます。




2010年2月7日(日)

開場17:00/開演17:30


料金:予約/当日1,500円

※ご予約いただいて当日『ブルー・ゴールド』をご覧の方は1,000円で映画をご覧いただけます。



予約方法:(1)お名前、(2)人数 [一度のご予約で3名様まで] 、(3)住所、(4)電話番号、(5)当日『ブルー・ゴールド』を合わせてご鑑賞の方は割引となりますので、[ブルー・ゴールド鑑賞希望]とお書きください。以上を明記の上、件名を件名を「予約/2月7日『HARCO』」として、factory@uplink.co.jpまでメールでお申し込み下さい。



HARCO公式ホームページ

ご予約の詳細はこちら






上映+トークショー

ゲスト:三本裕子(A SEED JAPAN事務局長)





映画に出演している環境活動家のモード・バーロウ、ヴァンダナ・
シヴァらと共に「第3回世界水フォーラム」で活動された経験を持つ、国際青年
環境NGO「A SEED JAPAN」の事務局長の三本裕子さんをお招きいたします。

2010年2月14日(日)

開場12:15/上映12:30/トーク14:05


料金:予約1,300円 /当日1,500円


予約方法:(1)お名前、(2)人数 、(3)住所、(4)電話番号を明記の上、件名を件名を「2/14『ブルー・ゴールド』イベント」として、factory@uplink.co.jpまでメールでお申し込み下さい。予約者数が定員60名に達し次第、受付を締め切りますので予めご了承下さい。


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