迫力のサスペンションショーをみせてくれた「ルイス・フライシャー&レディーサマル」(左)と、日本一小さいマジシャン「マメ山田」
年に一度の大人のトラウマ! 真夜中の巨大な見世物小屋をコンセプトにしたイベント『サディスティックサーカス』が、鶯谷にある東京キネマ倶楽部にて開催された。昭和30年代に流行ったグランドキャバレーの内装そのままに、レトロ感あふれるゴージャスでムーディな空間の会場には、国内外からつめかけた大勢の紳士・淑女が集まり、一種異様な熱気をおびていた。
司会を務める活弁士・山田広野氏の軽快で歯切れの良いしゃべり口調で紹介される出演者は、どれも「見てはいけない物」な方たちばかり。サーカス、緊縛、切腹、手品など様々な身体パフォーマンスが続けられる中、思わず目を見張ってしまったのが劇団「ゴキブリコンビナート」。創○学会の池田○作をモチーフとした主人公と姉2人との兄弟愛を描いた美しき(?)話のクライマックスは、自転車のスポークを頬に貫通させ(!)、三人がまるで団子のように繋がってしまう!!! しかも、その貫通した状態で「だんご3兄弟」を歌うというバカバカしさ! 声にならない迫力! 大スペクタクル! あんぐりと口を開けてしまう、とはこのことか。
平成のフリークス見世物劇団「ゴキブリコンビナート」。思わず目をそらしたくなる素晴らしいパフォーマンス!
そして、美しき少女たちが飲んだ液体を一斉に吐きまくるという、見ていてスッキリ気持ちのいい「ルドルフと素敵な少女オーケストラ」、大柄な女王様「ローズ女王」が率いる「椛&Crew144」のエロティックで鮮やかな緊縛ショーなど、次から次へとショーが進み、今回注目とされているルイス・フライシャーの登場である。
美少女たちが嘔吐しまくる様は爽快!「ルドルフと素敵な少女オーケストラ」
事前にサスペンションショーとは聞いてたものの、見たことがないので実感が湧かない。が、これが実際やっぱりめちゃくちゃすごかった。ステージ上では、ほぼ全身刺青で黒マスクをした格好いい黒子たち(?)や、ブリッジをしながら現れた(エクソシストを彷彿)防毒マスクのようなものを被ったマスクマン(?)、そして単調なドラム音が響くという緊張感が漂うステージの中、サスペンションを背中につけたルイス・フライシャーが登場。ちなみに、腕にはエフェクターをつけてノイズをだすという、音を含めて構成がきちんとされたショーにとても感心した。
次に、背中のサスペンションに天使の羽をつけた女性、レディーサマルが登場し、注射器で彼の腕から採血をし、紙に何かしらの模様を描くという儀式的なことをおこなう。そして、二人の背中のサスペンションに縄が装着され、ゆっくり吊り上げられていく、、、「げぇ!痛くねぇ?」と素人なら誰しもが突っ込みたくなるような言葉を、声にならない声で発しながら、その様子を眺める。
で、何をするかと思いきや、彼女が彼の額に針を何本も刺し通していき、彼もお返しにと言わんばかりに彼女の鼻や唇に針を刺していく。肉体の痛みとは、快感とは一体なんなんだと改めて考えさせられる瞬間でもあった。ビジュアルの美しさといい、物語性のあるステージといい、実にクオリティの高いショーを見させていただいた。
最後は、華道家・上野雄次がドラム缶に入った木花を破壊せんばかりに生け、その生け花とギタリスト・JINMOの狂気の演奏をバックに、早乙女宏美が切腹ショーをおこなった。日活ロマンポルノ出身という早乙女さんだけに、手の先、足の先まで動きが華麗で、恍惚とした表情も素晴らしく、彼女の世界へと惹きこまれていった。
切腹マニア必見の「早乙女宏美」と、情念のサディスティックギタリスト「JINMO」の切腹ショー
サディスティックサーカスを主催しているヴァニラ画廊の内藤巽氏は、「今年は全16組の出演者が次から次へと、まさに凝縮した濃厚な見世物スープを飲んだ気分です。初めて出演するパフォーマー達も相乗効果で、大いにサーカスを盛り上げてくれました。小屋が火気厳禁だったので、火を吹くようなパフォーマンスが出来なかったのは誠に残念でした。いつも丑三つ時からが、衝撃のサディスティックサーカスの演目になります。例年でしたら毒気にやられていたたまれずに退出する人や、酸欠と目眩で運び出される人が続出するのですが。今年は交通の便が悪いので(笑)、途中で帰る人も少なく最後まで残ってた人が多かったようです。
口外厳禁なので(笑)とても全ては言い切れませんが、本邦初公開となった、ルイス・フライシャー&レディーサマルのサスペンションショーは、大掛かりな構想と神秘的な演出で、深遠な宗教的儀式を観るかのようでしたし、破壊的華道家、上野雄次とJINMOのギタープレイのセッション、そして早乙女宏美の花魁切腹に至っては、まさに鳥肌のたつ圧巻の感動的な時間の流れでした。目頭が熱くなりました。錚々たる出演者の皆さん有り難うございました」と、イベントを振り返った。
次回の開催については、「今年やり残した課題を、来年にぶつけます。会場を含め、また仕切り直して新しいサディスティックサーカスに挑みます。まだ発表できませんが、海外からのアーティストも招聘すべく交渉に入っています。来年のサディスティックサーカスもご期待ください」と意気込みを述べた。
2009年の「サディスティックサーカス」はますますパワーアップしそうな予感。乞うご期待!
(文:牧智美)
【関連リンク】
サディスティックサーカス 公式サイト
ヴァニラ画廊
サディスティックサーカスインタビュー(webDICE)