写真 : 福岡・警固公園にてボギー氏とその息子モンド君。ちなみに5歳にして『ヨコチンレベール』よりカセットテープ音源リリース!
九州、福岡にコンセプトを「進化しすぎた人々の、進化しすぎた人々による、進化しすぎた人々の為のイベント」と掲げた、90回を超え開催されている『ハイコレ』というイベントがある。
"食い合わせの悪そうなキャスティングを意図的に楽しむバッドテイストな感覚と、チープで悪趣味な要素をブチ込んで観客をアッと驚かせるエンターテイメント"と説明されているそのイベントはロックあり、テクノポップあり、弾き語りありのジャンルレス。出演陣は結構エッジな音を鳴らしている…はずなのに、何か変…通しで見るとこれが「エンターテイメント」と呼ぶにふさわしい「祭」っぽさ。このイベントを主催し、自身もバンドnontroppoで活動している、『ヨコチンレーベル』のボギー氏に話を聞いた。
『照和』から「はみ出した」ちょっと変わった人たちを集めた
── では、まずレーベルを立ち上げた経緯を教えてください。
1996年に当時活動の拠点にしてたのが『照和』*で、そこから「はみ出した」ちょっと変わった人たちを集めた『ハイセンスコレクションライブ』というイベントをやったのが切っ掛けだったんですけど。その時にレーベル名があった方が格好いいやろうということで、警固公園(福岡市中央区天神)で酔っ払って名前付けたのが『ヨコチンレーベル』(笑)。最初は1回で終わるはずだったんですけど、一年後にロゴマークなんかも用意してイベント名も略して『ハイコレ』としてコンスタントにやるようになったんです。
画像 : 『ヨコチンレーベル』のロゴマーク
* 井上陽水、ルースターズ、海援隊などが活動していた福岡の老舗ライブ喫茶。
ていうのも、当時まだ福岡にいたPANICSMILE、NUMBER GIRLがやってた『チェルシーQ』っていうイベントがあって、それに出たかったんですけど結局出れないままイベントが終わってしまって。その欲求を叶えるために97年に自分で『ハイコレ』を始めたんです。第一回目のキャストはPANICSMILE、ロレッタセコハン、ひなげし(二階堂和美)、当時自分がやってたヒマワリとかで。レーベルって形をとろうと考えたのも『チェルシーQ』が「HEADACHE SOUNDS」ってレーベルやってて、格好いいやん!って、パクったわけ(笑)。
『ハイコレ』ではライブ+αで他と違うことやろうってのは思っていて。イベントの転換時にDJをはさんでるんだけど、当時は自分でラジオのDJ風に嘘のラジオ番組やって、お悩み相談の葉書読んだりしてました。他にも、自分たちでゾンビ映画作ったり、お笑い芸人が出てきたり、ファッションショーやったり…ファッションっていっても、チン○ン出したやつとか、ガムテープで全身グルグルとかやけど(笑)。
画像 : 第一回目『ハイコレ』のフライヤー。イラスト、デザインはボギー氏。
── イベントをはじめて色々な人がだんだん集まって来た感じですか?
そうやね。もともと福岡のどのシーンからもはみ出していた、モノラルセンス、オクムラユウスケ、鈴木拓也、オオクボTなんかと遊んでたわけやけど。県外にも音源を置くようになって、だんだん全国の変な人からデモテープがレーベル宛に届くようになったんです。関西ではオシリペンペンズ、あふりらんぽ、ミドリ、BOGULTA、東京だと毛皮のマリーズとかはそれがきっかけでイベントに出てもらいました。
最近は海外からも、『ヨコチンロックフェスティバル'08』にはN.YからGANG GANG DANCEが、それ以前ではRed Krayolaとか、Of Montrealがイベントに出てくれたり。ジョン・マッケンタイアがヨコチンマークを背にドラムを叩く奇跡とか。ここ数年でそういう繋がりが広がってます。
県外や海外バンドと、福岡の面白いバンドとぶつけるのが面白くて今もイベントを続けてます。でも、これは昔からなんだけど、お客さんはゲストを有難がってしまうんですよね。もちろんゲストも凄く格好いいけど、前後に出る地元のバンドも負けとらんやろって、並列に見せたくてイベントやってるんです。いつでも見れると思っちゃうんだろうけど。いつかバンドは無くなるよってね。今、見とかんと。そういう意味で福岡がもっと成熟した街になると良いなと思います。
写真左 : GANG GANG DANCE (N.Y) / 写真右 : neco眠る (大阪)
9/21に福岡VooDooLoungeで行われた、『ヨコチンロックフェスティバル'08』は福岡のバンドに加え海外、関西よりゲストをむかえ、日付を跨ぎ大いに盛り上がり終了した。
写真 : nontroppo (福岡) @9/21『ヨコチンロックフェスティバル'08』
ダメ面白いとか、バカダサいとか、そういうものに惹かれるんですよね
── 先日、円盤の田口さんにwebDICEのインタビューでお会いしたとき「福岡シーンの楽しむ力が半端じゃない」って仰ってて。アップリンクでやったイベント『円盤上映会』でボギーさん主催のイベントでのカシミールナポレオン*のライブ映像が流れたんですよ。上映されたライブ映像の中であの日、一番お客さんの脳裏に焼きついたのでは…。
あははは!撮ってたもんなー!「OZdisc」の頃からアホな音源とかのリリースがとにかく多いから、田口さんには凄く共感してて。実際、東京にnontroppoで呼ばれて『円盤ジャンボリー』に行った雰囲気とかにもやっぱ共感して。そしたら、田口さんが『ヨコチンレーベル』の紹介を「福岡のOZdisc」って言ってて、やっぱ向こうもそう思ってたんだと(笑)。ダメ面白いとか、バカダサいとか、そういうものに惹かれるんですよね。
* 多分、世界一しょぼいビジュアル系バンド(カラオケだが…)、福岡のKISS
── レーベルとしてイベントをやりつつ、音源のリリースもされてると思うんですけどのようなものを出されているんですか?
はじめた当初は、カセットテープで福岡のバンドを集めたコンピレーションやバンド単体のものをかなりの本数出しました。置いてくれてたのがタワーレコード福岡店とカメレオンレコードとかで。当時はタワレコも今と違って納品書を書いて持っていけば次の日にはお店に置いてくれたんですよ。ヨコチンのカセットテープだけがズラッと並んでる棚がありました。もう、10年以上前の話です。
その後、CDもリリースしてるけど、ここ2年はカセットテープが多いです。今時カセットっていうパッケージの面白さと、あのジャケ入れたカセットそのもの可愛くて好きなんで。まぁ、手間はっきり言ってCD-ROM焼いたほうが早いけど(笑)。お金かけてプレスしてリリースしても宣伝をきちんとしないとレコード屋さんも置いてくれないし、置いてくれてもそんな売れない。むしろ音源を売ろうっていう気はあまり無くて、イベントに人を集めたいと思ってます。今はネットとかで視聴できたりするし、お客さんは音源買わないと思うんです。本当に欲しい人はアンテナ張ってるから、そういう人にライブ会場での物販とか、ネットでの通販とかで届けば良いかなと。
── 福岡という地方都市でレーベルをやり続けるってのは、東京でやるのとまた違うような気がするんですけど、その辺どうですか?
それはもう、レーベル業を本業にしようとかは最初から全く思ってなくて、東京でやるというのも頭に無くて。福岡でもイベントやって暮らせるとは思ってないからね。やりたいことをやってるだけです。
実質レーベル業は制作、運営、企画、雑用まで自分ひとりでやってて、自分の思いついたことは全部やってます。企画とかを頭の中で考えるのが好きで、思いついたらやらずにはいられない。ジャケット作ったり、フライヤー作ったりとかも自分でやってるんやけど、その作業とかめちゃくちゃ好きやから、そういうのは全然苦じゃないです。出したい音源も無いけどかっこいいジャケットができて後から中身作るとか(笑)。でも、ひとりだからとにかく時間がかかる!めんどくさい!
── 東京でのイベント予定とか、レーベルとしての今後の展望などはありますか?
東京の秋葉原GOODMANで『ハイコレ東京』も2年前までやってたんですけど、子供が生まれたこともあって今はやってません。展望は…続けていく、地道に続けていくことかな。まだまだ日本中に、世界中に誰も知らんアホバンドがいると思ので。夢は世界のアホバンドを集めたフジロックみたいなバカでかいのをやりたい!!フジロック行ったことないけど。
(文・写真:大場小麦)
ボギー(nontroppo) プロフィール
福岡在住、『ヨコチンレーベル』主宰。トロピカル・アヴァンダンスグループ、nontroppo(ノントロッポ)でも活動中。
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nontroppo 公式サイト
nontroppo MySpace
ヨコチンレーベル リリース作品
全リリース作品一覧はコチラから。
nontroppo / 酒池肉林 LIVE AT HAWAII (CDR | YC-052)
1,500円
2007年6月に開催したソウルバード(ex.ブルーノート福岡)での3時間半に渡るワンマンライブから厳選した12曲を収録。
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▼ nontroppo / 酒池肉林 LIVE AT HAWAIIより、試聴できます。プレイヤーをクリックで再生!
V.A / 乱調の美学 (CDR | YC-047)
1,050円 廃盤・在庫希少
全国から集った産地直送の狂った果実を鮮度そのままに真空パックしたコンピレーションCDR。
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参加アーティスト : 石頭地蔵(熊本)、Conti(東京)、HOSOME (大阪)、FLUID(京都)、MACHINE AND THE SYNERGETIC NUTS(東京)、サラダバー(ハワイ)、ブライアンベースボール(福岡)、nontroppo(福岡)、やないけい&ニール・UMA (福岡)、Test Pattern(岡山)、music from the mars(東京)、オシリペンペンズ(大阪)、accidents in too large field(福岡)、香港男祭(山口)、アンダーソン(福岡)
モンド / モンドのABC (カセットテープ | YC-054)
300円
「モンドが生まれた時に父は25曲入りアルバム「MONDO MUSIC FOR MY SON」を作り上げました。それから4年、今度はモンド自身に楽器を持たせ、歌わせ、強引に息子のデビュー作品を作り上げたのです。はっきりと言いましょう、親バカであると。そしてこれもはっきりと言っておきましょう、ただの企画ものであると。」
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