写真:『目玉レコード』より「Morgan's Organ」のライブ録音をリリースしたモーガン・フィッシャー
今年8月、西麻布のイベントスペース「SuperDeluxe(スーパー・デラックス)」が音楽レーベル『目玉レコード』を立ち上げた。SuperDeluxeはミュージシャンによるライブだけでなく、映像、アート&デザイン、ダンス、演劇などさまざまな公演がおこなわれ、日本のみならず海外の著名なアーティストも利用する実験的な表現スペースとして注目を集めている。
これまで毎晩繰り広げられたSuperDeluxeならではのライブからセレクトし、『目玉レコード』として多彩なミュージシャンの音源をリリース。第一弾は、モーガン・フィッシャーによるソロ・インプロヴィゼーション・ライブ「Morgan's Organ」の第1回目から5回目のライブ録音をiTunes Store、Napsterなどのダウンロードサイトから配信している。
SuperDeluxeと共に『目玉レコード』をプロデュースするマイク・クベック氏に、新レーベル立ち上げについて話を訊いた。
── 多彩なジャンルのライブをおこなってきたSuperDeluxeが、音楽レーベルを立ち上げるのは自然な成り行きだったと思います。レーベルを立ち上げたきっかけを教えてください。また、なぜ今レーベルを始めたのでしょうか?
2002年にSuperDeluxeを初めてから、その場限りの素晴らしいライブ演奏を幾度も目にしてきました。そういった素晴らしいライブのレコーディングが年月を重ね序所にたまっていき、ちょうど時代がCDから音楽配信に変わるタイミングにもさしかかっている現在、音楽配信という方法を基本として考え、SuperDeluxeでのライブアーカイブをリリースするこのレーベルを立ち上げるに至りました。実は2年程前からレーベルを立ち上げる企画はあったのですが、普段の業務が忙しく、なかなか進展させる事が出来なかったという事も現在のタイミングになった理由としてはありますね。
── 『目玉レコード』のコンセプト、テーマを教えてください。
SuperDeluxeでおこなった素晴らしいライブを、少しでも多くの人々に聴いてもらうことです。そして、気になるアーティストをより多くの人に知ってもらいたいです。
写真:『目玉レコード』のロゴマーク
── 『目玉レコード』ならではの特徴は何ですか?
実際にSuperDeluxeで行われたライブレコーディングであるというところですね。スタジオ録音と違って、レコーディングのプロセスを出来るだけ意識させないところもウリだと考えています。全てのライブをリリースするつもりはないです。何か特別なマジックを感じる音源を選び出してリリースしていきたいと考えてます。その時、その空間だったから生まれた音、しかもその場に居合わせなかった人も録音された音楽を通じて何かを感じていただく事ができるのでは、と思われる音源をリリースしているつもりです。
── モーガン・フィッシャー氏のソロ・ライブ「Morgan’s Organ」をリリース第一弾としたのはなぜでしょうか?
モーガンは4年間以上、ほぼ毎月SuperDeluxeでライブをやっていて、立ち上げ早々から支えてくれたアーティストの一人です。また、「Morgan's Organ」はゆっくりと聴いてもらいたいと考えています。部屋でゴロゴロしている時や公園で散歩している時、または寝る前や移動中などに是非試していただきたいですね。即興の演奏ですが、とても落ち着きのある音楽です。モーガンは「耳のための映画」とよく言ってますね。よくよく考えるとライブ会場ではなくて、聴き手にとって一番居心地のよい場所で聴いてもらった方がよい音楽だとも言えます。もちろんその場で演奏を繰り広げているモーガンと時間を共有できるのはライブならではの醍醐味ですが、音源をリリースすることによって新しい楽しみ方も体験していただけると思っています。
写真:オルガン・キーボード奏者、モーガン・フィッシャー氏のライブ風景。1985年より日本に在住し、喜納昌吉、細野晴臣、ブームらとの共演、オノ・ヨーコのアルバムをプロデュースしている
写真:六本木界隈のカルチャースポットとして、SuperDeluxeでは毎晩さまざまなイベントがおこなわれている
── CDでのリリースではなく、音楽配信のみにされたのはなぜでしょうか?
音楽配信の魅力は手軽にローコストでリリースする事が可能ですし、CDより安くお客様の元に音楽をお届け出来る点にあります。レーベル側も音楽配信であれば在庫を抱える事なく運営できる訳で、管理する場所も人手もかかりません。そうやって、レーベルを運営して行く事で、アーティストにできるだけ多くの利益を還元したいとも考えています。そして配信の魅力にはなんと言っても、海外への販売を行いやすいということがあります。インターネットに接続できれば、購入可能ですし。特に第一弾リリースの「Morgan’s Organ」のモーガン・フィッシャーは本国イギリスでの輝かしいキャリアの持ち主でもありますし、海外にお住いの方々で欲しいと思っていらっしゃる方々も多いのでは、とも考えました。
── レーベルを運営する上で苦労したこと、そして大切なことは何だと思いますか?
まだ始まったばかりで、何とも言えないというのが正直な所ですね。しかし、今後、継続して行くことが大事だと思っています。
── 例えば、音源以外にDVD映像をリリースするお考えはありますか?
映像を中心のイベントも沢山おこなっているので、映像もリリースしたいですね! しかし、どの様な形がベストかはまだまだ検討中です。
── 今後、どれくらいの間隔でリリースをされていく予定でしょうか?
「Morgan's Organ」のシリーズに関しては一ヶ月おきに5タイトルをリリースしていきたいと考えてます。第二弾は11月ぐらいになりそうです。そして、モーガン以外のライブも毎月、レギュラーにリリースしていきたいと思ってますが、どれぐらいのペースでリリースが可能かはまだ検討が必要な段階ですね。希望としてはできれば毎月2~3タイトルを出したいと考えています。SuperDeluxeを始めた時もそうだったのですが、全てを手探りで進めていくしかないんですよね。
── 『目玉レコード』からリリースしてみたいアーティストはいますか?
ものすごく沢山います! しかし、現在は過去に出演していただいたアーティストと色々相談しているところので具体的な名を現在あげられないですね。すみません!
── レーベルが目指していることを教えてください。
会場としてのSuperDeluxeはジャンルを関係なく、いいものや面白いものを少しでも多くの人に知ってもらうことを心がけてますが、『目玉レコード』もその延長です。まず一番には東京在住ではなく、普段なかなかSuperDeluxeに足を運べない人たちに SuperDeluxeで行われている音楽を届けたいです。そこでそのアーティストの活躍がより広く知られることになればとても嬉しいです。『目玉レコード』のリリースがきかっけとなって、そのアーティストの他の音源やライブなども聴きたくなるようなお客さんが居たら最高ですね。また、実際にライブに来てくれた方が「良かったな!もう一度聞きたい!!」と感じた時に、その日のライブ音源を購入していただけるようなレーベルを目指していきたいです。
(インタビュー・文:牧智美/協力:SuperDeluxe)
SuperDeluxe主催レーベル『目玉レコード』第一弾
Morgan Fisher - Morgan’s Organ 01~05
iTunes、Napsterなど各種ダウンロードサイトにて同時5タイトル販売中!詳しいアルバム解説・リリース情報はこちら。(English)
▼ Morgan Fisher - Morgan's Organ 01より、試聴できます。プレイヤーをクリックで再生!
Morgan Fisher - Morgan's Organ 01
┗ track list: MO-01-1 (39'31"), MO-01-2 (22'29")
Morgan Fisher - Morgan's Organ 02
┗ track list: MO-02-1 (17'14"), MO-02-2 (7'29"), MO-02-3 (6'22")
Morgan Fisher - Morgan's Organ 03
┗ track list: MO-03-1 (22'44"), MO-03-2 (11'59")
Morgan Fisher - Morgan's Organ 04
┗ track list: MO-04-1 (29'47"), MO-04-2 (13'52)
Morgan Fisher - Morgan's Organ 05
┗ track list: MO-05-1 (20'41), MO-05-2 (7'53), MO-05-3 (10'22"), MO-05-4 (24'10)
Morgan's Organ 080515 live @SuperDeluxe
【関連リンク】
・Morgan Fisher(myspace)
・Morgan's Organ 01~05 リリース情報
・SuperDeluxe