<隠された庭への道>部分 札幌芸術の森 北海道 1992-1999年©新津写真
比類ない規模の環境彫刻(周囲の環境との調和を図るような大規模の立体作品)を手がけてきた稀有な芸術家、ダニ・カラヴァンの展覧会『ダニ・カラヴァン展』が、9月2日(火)より世田谷美術館にて開催。本展はテル・アヴィヴ美術館(イスラエル)とマルティン・グロピウス・バウ(ドイツ)の協力のもとに企画された国際巡回展であり、環境彫刻家の広大な活動の軌跡を回顧する。
ダニ・カラヴァンは建国前のイスラエルの地に生まれ、フィレンツェやパリで絵画とフレスコ画を学び、マーサ・グレアム、ジャン・カルロ・メノッティらの舞台美術を担当。そしてイサム・ノグチやブランクーシ、ジャコメッティに多大な啓示を受けて環境彫刻へとその表現を展開し、ヴェネツィア・ビエンナーレ(第38回)やドクメンタ(第6回と第8回)に参加、その国際的評価を確実なものにした。その後イスラエル国内はもとより、世界各地で様々な依頼による環境彫刻を実現し、今なお多数のプロジェクトを精力的に進めている。
(写真)<はじめに> 霧島アートの森 鹿児島県 1998-2000年 ©Dani Karavan
本展を開催したきっかけについて、担当学芸員の高嶋雄一郎さんに話を訊いた。
「1995年に日本初のカラヴァンを紹介する展覧会が神奈川県立近代美術館であったのですが、その後の10年間で日本でも多くのカラヴァンの作品が完成したこと、また今回新たに初期の油彩画や彫刻などが明らかになり、その全貌を紹介することが出来ることから、回顧展を開催することになりました」。
(写真)壁画 <平和のパイプ>スケッチ 1963年
同展の見どころとして、「今まではカラヴァンの環境彫刻が特に注目されており、初期の作品や、なぜ彼があのような大規模の彫刻作品に至ったのかということは図録などの情報でしか知られてこなかったのですが、今回ようやくその彼が初期に描いていたイスラエルの風景画や、重要な転機となった舞台美術、壁画やレリーフなどの調査が進みまして、まさに理路整然と彼の次々と展開していくキャリアが明らかになりました。そうした、何もかもを縦断してきた彼の全貌は、彫刻だろうが絵画だろうが身体芸術だろうが、もちろん現代美術だろうが、どのような美術を好まれる方にもきっと興味深くご覧いただけるものと思っています」
(写真)<夢かうつつか> 舞台美術 1965年 ©Agor
本展では、カラヴァン自らが会場デザインを手がけ、世界初公開となる初期の油彩画や挿絵、壁画や舞台美術の資料に始まり、レリーフや彫刻を経て環境彫刻へと至るその軌跡を、映像や資料を交えて展示する。そして、豊かな緑に囲まれた当館展示室のために特別に考案されるインスタレーションは、今なお第一線で活躍し続ける作家の新たな表現に触れる、貴重な機会となるはずだ。
期間中、関連企画として、大友良英やジム・オルーク、Sachiko M、ユタカワサキ、町田良夫、にかスープ&さやソースといった多彩なミュージシャンたちが、展覧会場の思い思いの場所で即興演奏を繰り広げ展覧会を鑑賞するイベントも予定している。
(写真)<パサージュ ヴァルター・ベンヤミンへのオマージュ> ポルト・ボウ、スペイン 1990-94年 ©Jaume Blasi
「カラヴァンの作品にとって音というのは非常に重要な要素なんですね。それぞれの作品に、風によって鳴り響くオルガン・パイプの音、水の滴る音、鳥の鳴き声など、五感に訴えるために何かしらの音が付されていることが少なくありません。そんな中で、展示室というのはそういった音という要素がはぎとられてしまう無菌室のようなところなのですが、ならば、そこに我々ならではの音からのアプローチをし、それを加えながら作品を鑑賞すると今までにない新たな体験となるのではないか、と思った次第です。それらを踏まえた上で、たとえば“音”そのもので勝負できるミュージシャンの方々であったり、そこを舞台にしてより刺激的なパフォーマンスを繰り広げてくれるだろう方々を選びました」
他にも、10年前にカラヴァン展を担当した水沢勉氏(神奈川県立近代美術館企画課長、横浜トリエンナーレ2008総合ディレクター)や、平出隆氏(詩人)、三宅理一氏(慶応大学環境情報学部教授)の講演会や、カラヴァンのドキュメンタリー映画『砂の一粒』が無料で上映されるなど、さまざまな角度からカラヴァンを知ることができる充実した展覧会となっている。
最後に高嶋さんは、「イスラエルという国を全く知らない人たち、絵画や彫刻をそれぞれ全く相容れない表現だと思ってしまっている人々たちに是非観てほしいです。これまでの美術の枠を打ち破るようなダイナミックさやボーダレスな感覚が、カラヴァンの作品にはあると僕は信じています。平和、などと言うと少なからず陳腐さがつきまとうものですが、カラヴァンの作品で美術の凄みを実感していただいた後に、そうした、人間がありきたりに希求するものの切実さについて考えていただけるような機会になれば幸いです」と述べた。
webDICEユーザー対象に、抽選で5組10名様に同展の招待券をプレゼントします。応募方法は下記をご覧ください。
<文:牧智美>
『ダニ・カラヴァン展』 DANI KARAVAN RETROSPECTIVE
会期:2008年9月2日(火)~10月21日(火)会場:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)[地図を表示]
休館日:毎週月曜日(但し9月15日と10月13日は開館、9月16日、10月14日は閉館)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
観覧料:1,000円/大高生・65歳以上800円/中小生500円
(写真)ポートレイト 1993年 ©Schmidt and Pflauner
- 【関連イベント】 ※詳細は世田谷美術館公式ホームページをご覧ください。
- 9月13日(土)
大友良英+Jim O'Rourke+Sachiko M+ユタカワサキ - 9月28日(日)
町田良夫(美術家/音楽家、スティール・パン奏者) - 10月4日(土)
にかスープ&さやソース - 9月6日(土)、15日(祝・月)
映画「砂の一粒」上映会 - 9月20日(土)
講演会「ダニ・カラヴァン 時空の軸線」(水沢勉) - 9月23日(祝・火)
講演会「ダニ・カラヴァンと環境、建築」(仮)(三宅理一) - 10月11日(土)
講演会「丘・パサージュ・階段―《ベンヤミンへのオマージュ》をめぐって」(平出隆) - 9月27日(土)、28日(日)
《誰もいない美術館で vol.20》 風景がダンスを…
【関連リンク】
世田谷美術館
Dani Karavan
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■応募締切り:2008年8月31日(日)
※当選者の発表は、招待券の発送をもって代えさせていただきます。