骰子の眼

art

東京都 港区

2008-08-01 16:36


アール・デコ空間に佇む「舟越桂」の新境地

「納得のいく変化をしてきた」という舟越桂が切り開く新たな表現方法とは。展覧会の招待券を5組10名様にプレゼント。
アール・デコ空間に佇む「舟越桂」の新境地
(写真)《遠い手のスフィンクス》2006年 楠に彩色、革、大理石、鉄 高橋コレクション

木彫人物像によって1980年代から一貫して日本の現代彫刻をリードしてきた舟越桂。近年、両性具有のスフィンクスのシリーズを手がけ、新たな表現領域を切り開きつつある舟越氏の展覧会『舟越桂 夏の邸宅』が現在、東京都庭園美術館にて開催されている。
初期から2000年代前半までの各時期の彫刻から厳選し、さらに新作を含む近作群をまとめて紹介。同時に、舟越氏が彫刻と同じく重要な創造の領域と考えているドローイング、版画にも等しく光を当て、表現者舟越桂の全体像に迫る。


funakoshi_kouenkai

同展の関連企画として、舟越桂氏と塩田純一氏(同館副館長)による記念講演会「舟越桂 スフィンクスの夏の邸宅」が開催され、定員の250名を上回る来場客が会場を埋めつくした。

(写真)記念講演会での舟越桂氏(奥)と塩田純一氏(手前)

遠い手のスフィンクス

舟越氏の木彫人物像は、2003年の東京都現代美術館の個展で大きな変貌を遂げたと言われているが、「自分の中では急激に変わったとは思っていません。2003年の個展より前から変わり始めていて、ひとつの柵が外れたという感じでした。その都度、理由があるというよりも納得のいく変化の仕方をしてきたと思っています。人間が抱えていること、人間がしていることをある独特な場面を与えて、象徴的に感じられるような人物像をつくりたいと思っていたんです」と、近年手がけている謎めいた両性具有のスフィンクス・シリーズについて語った。このシリーズは、両性具有の身体と獣のような長い耳を持っており、人間の世界の外から人間を見つめる存在である。

(写真)《遠い手のスフィンクス》2006年 楠に彩色、革、大理石、鉄 高橋コレクション 撮影:内田芳孝 写真提供:西村画廊

funakoshi

そのスフィンクスの姿について、「スフィンクスは群れではなく、単独でいるイメージがあります。動物のイメージを入れた人物像をつくっている中で、たまたまテレビで見たオカピという単独で行動する動物が、大きくて威厳があって美しかったんです。その影響で、首を長くしたり、動物の象徴として色をつけたり、縞模様をつけたりもしました」と、貴重な制作過程についても語った。
また、胴体に4本の木を通して彫刻を浮かせる大胆な手法については、「彫刻を浮かせたいのではなく、“浮かせられる”と思ったんです。彫刻が浮いたらスゴイと思ってワクワクしましたね」

(写真)個人邸宅ならではの空間と彫刻の美しさに誰もが見惚れる。《森に浮くスフィンクス》2006年 楠に彩色、大理石、革、雑木、鉄 広島市現代美術館寄託

同展のもうひとつの見どころは、白い壁に囲まれた展示室ではなく、アール・デコ装飾に彩られた庭園美術館の空間と作品の見事な調和である。
「作品を持ってくるまで、壁と彫刻が喧嘩をして難しいかなと思っていましたが、実際に作品を置いたときには安心しました。空間に負けることもなく、とても新鮮な気持ちです」

funakoshi01
(写真)彫刻が浴室に設置されており、不思議な空間を醸し出している。《言葉をつかむ手》2004年 楠に彩色、大理石 作家蔵

最後に塩田氏より、「彫刻がなまめかしいという感想がある一方で、空間も息づいてきたと感じています。美術館が持っているポテンシャルをこの展覧会ではっきり見せてくれたと思います」と今後の美術館の可能性を語った。

ドローイング

同展を開催したきっかけについて、広報の八巻香澄氏は、「きっかけはすごくシンプルで、当館はもともと個人の邸宅であったところを美術館にしたものなので、“人が暮らしていた空間に人物彫刻を置いてみたら面白いのではないか”ということでした。展示室も小さいですし、美術館としては決して使い勝手は良くありませんが、その中で当館ならではの展示ができればというのが根底にありました。
それから、2003年に舟越さんの大規模な個展が東京都現代美術館ほかで行われましたが、その後に発表されたスフィンクスのシリーズはまだ正当な評価というか批評がなされていませんでした。これを美術史の中で位置づけたい、というのも一つの大きな要因としてあります」

(写真)彫刻のほかにドローイングも展示されている。《ゆがんでいく顔》2001年頃 紙に水彩、墨 作家蔵 撮影:今井智己

最大の見どころとして、「それぞれの部屋の中に置かれた作品が、まるでその部屋の住人のように我が物顔をしているところが見どころです。空間と作品の共鳴をお楽しみください」と述べた。

8月30日(土)には、舟越氏と安東孝一氏(アンドーギャラリー)の講演会も予定されている。

(取材・文:牧智美)

webDICEユーザー対象に抽選で5組10名様に、同展の招待券をプレゼントします。応募方法は下記をご覧ください。



『舟越桂 夏の邸宅~アール・デコ空間と彫刻、ドローイング、版画』

会期:2008年9月23日(火・祝)まで
会場:東京都庭園美術館[地図を表示]
(東京都港区白金台5-21-9)
開場時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:第2・4水曜日(8/27は臨時開館)
入館料:一般1,000円、大学生(専修・各種専門学校含む)800円、小・中・高校生および65歳以上500円

東京都庭園美術館ホームページ


【応募方法】 招待券を5組10名様にプレゼント

webDICE会員の『webDICE編集部』アカウントまでメッセージをお送りください。
(ログインした状態でのみメッセージ送信が可能です)

■メッセージ送付先

webDICE編集部
http://www.webdice.jp/user/283/

■メッセージに下記の項目を明記してください

(1)氏名 (2)郵便番号・住所 (3)電話番号 (4)ご職業 (5)性別 (6)応募の理由

※『webDICE編集部』アカウントにメッセージを送るにはwebDICEのアカウントを取得する必要があります。登録がまだの方は以下ページより、新規ご登録ください。

webDICE新規登録ページ
http://www.webdice.jp/signup.html

■応募締切り:2008年8月8日(金)

※当選者の発表は、招待券の発送をもって代えさせていただきます。

レビュー(0)


コメント(0)