横浜のジャック&ベティで『第1回横浜黄金町映画祭』が開催されている。
メインプログラムのテーマは「再上映─海外が注目する日本の才能」その他「アートフィルム特集」「学生映画」そして横浜、地元黄金町を舞台にした「横浜名画」「黄金町映画」と盛りだくさん。
初日の7月26日(土)は、海外映画祭に出品した9人もの映画監督たちが一堂に介し「海外における日本映画」と題してシンポジウムが行われた。
また同じく初日には「横浜名画」の企画として上映された天地真理主演の『虹をわたって』では、なんと天地真理本人がお忍びで訪れ、観客に挨拶を行うというハプニングがあったそうです。
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映画祭直前に映画祭実行委員の渡辺国寿さん、ジャック&ベティのスタッフ浅井理央さん、メインプログラムで『東京失格』が上映される井川広太郎監督、そして「黄金町映画」で上映される『ヨコハマメリー』の中村高寛監督に話を聞いた。
映画祭開催のきっかけは、横浜市の助成事業の一環で映画祭を企画すれば助成金が降りるかも知れないと知ったジャック&ベティサイドから映画館の常連だった渡辺さんや中村監督に相談の連絡があったところから始まったという。
中村監督は、その相談を受け映画祭のコンセプトをたてるにあたって、まず現実的な事を考えたという。
「今回始めてのスタッフで黄金長映画祭を運営するには、映画を海外から出品してもらい、日本語字幕をつけ、監督を招聘出来る体力はないだろうという、現実的な問題の消去法によって今回のテーマ『再上陸─海外が注目する日本の才能』になった」そして『ヨコハマメリー』が世界の映画祭に招待された時の経験として「僕も海外の映画祭に招かれたときに、知らない日本映画とたくさん出会い、海外ですごく評価されているのに、日本では評価はおろか劇場公開もされていない事に疑問に持ちました。そして、その差異とはなんなのであろうか?と。日本で評価されてない作品を、黄金町映画祭によって、出会い、再評価できたら面白いのではないのだろうかと考えました。まだ見ぬ日本映画を、この映画祭によって、知ることが出来、発見できる。それは、“映画祭=発見”として成り立つのでないか、と思いつきました」と語った。
中村監督のコンセプトが実行委員会に採用され、次に作品の選定に入っていた。
「川喜多財団の資料などより、まず2~30本を選択し徐々にみんなと話し合いながら絞っていきました。当初、映画祭のテーマとして、アジア映画祭、太平洋映画祭などあがっていて、範囲を広げておけば、何か許容できるのではないかとか、ジャック&ベティは、今まで中国映画祭などでアジア映画など多く取り上げていたが、実際その内容で他の映画祭と差別化できるのだろうか? など、話し合い繰り返しました」と実行委員長の渡辺さん。
自作の『東京失格』ロッテルダム国際映画祭を始めとしてが世界の映画祭に招待された経験を持つ井川監督は「映画祭をやる街というのはどこも個性が強い。“街と映画と映画祭”という連帯が、面白いですね。完全に僕の見解ですが、映画祭をやる街というのは、昔炭鉱だった街と、港町だと思っている。横浜は古くからの港町だし、黄金町もそういう意味では、映画祭をやるのにふさわしい街ですね」と言い、さらに作り手からみた映画祭の魅力を述べてくれた。「作り手としては映画祭というのはとても“映画的”であると考えています。その一つとしては観客と直接接することが出来る。観客は僕の作品だけを見に来ているわけではなく、映画祭を楽しみに他の多くの作品を見ている場合が多い。一つの映画を見に来ているわけではないと考えると、いくつもの作品がある中で、自分の作品を相対化してみることが出来る。僕は、映画は一本だと意味のないものだと思っていて、それは全ての映画は映画の歴史の中に在るからです。映画祭だと、たくさんの作品が他にもあるので、横のつながり、たてのつながり、時間的のつながりなど、自分の作品と他の作品のつながりや連鎖を発見出来たりすることは、とても刺激的です。黄金町映画祭は今回初めてだけれど、歴史が深い映画祭では、過去の作品などと比べて自分の映画の立ち位置を確認することが出来る。映画の歴史の中に組み込まれているのが楽しい」。
最後にジャック&ベティのスタッフ浅井さんは「今回の『横浜黄金町映画祭』のプログラムは、興行うんぬんではなく文化的な側面で純粋に映画を楽しんでもらいたいと思います。全部日本映画ですけれど、もう一つの日本の中の価値観として発見してほしいです」と語ってくれた。
黄金町映画祭は8月1日(金)まで上映している、メインプログラムのタイトルどおり海外が注目した日本映画を発見しにいってほしい。
(取材:松下香奈子、テキスト:浅井隆)
横浜黄金町映画祭公式サイト
http://www.koganecho.com/