骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2021-04-12 21:00


次の冒険が死でも構わない―94歳ケネス・アンガーが自らの謎を語る映画『アンガー・ミー』

『マジック・ランタン・サイクル HDリマスター』発売記念 アップリンク渋谷・京都で上映
次の冒険が死でも構わない―94歳ケネス・アンガーが自らの謎を語る映画『アンガー・ミー』
映画『アンガー・ミー』

現在、映像作品集『マジック・ランタン・サイクル』HDリマスターが渋谷アップリンク、吉祥寺アップリンク、京都アップリンクほかで上映中のケネス・アンガーですが、この度、 謎と神話に満ちた映画作家ケネス・アンガーに迫るドキュメンタリー映画『アンガー・ミー』(エリオ・ジェルミーニ監督/71分/2006年)をアップリンク渋谷にて1週間限定で劇場公開中。4月16日(金)からはアップリンク京都でも上映される

本作品は、アンガーへのインタビューを軸に盟友ジョナス・メカスの証言などで構成されたドキュメンタリー映画で、3月31日(水)発売された『ケネス・アンガー マジック・ランタン・サイクル HDリマスター』Blu-rayに特典映像として収録されている。

2021年2月4日に94歳となったアメリカの実験映画作家ケネス・アンガー。『アンガー・ミー』は、カナダのフィルムメーカー、エリオ・ジェルミーが2006年に制作したインタビュー・ドキュメンタリーで、1時間あまりカメラに向かってケネス・アンガーが幼少期から『スコピオ・ライジング』など自作について語る作品だ。
ハリウッドの著名人たちのゴシップを書いたアンガーの著作『ハリウッド・バビロン』に例えるならば、『アンガー・ミー』はアンガー自身が語る『ハリウッド・バビロン:ケネス・アンガー編』とも言えるだろう。

映画『アンガー・ミー』
映画『アンガー・ミー』

神秘主義的映像や革ジャンにバイクというハードコアなイメージの映像で知られるアンガーの作品だが、このインタビュー映像を見ると、本人は、映画の冒頭でジョナス・メカスが語るように「ケネスのことは、誰もがかなり気難しく、どうしようもない奴だと言っていたが、私が知っているケネスは誰よりも優しくて親切な人だったよ彼は繊細で知的な天才映像作家だ」というのがよくわかる。

映画『アンガー・ミー』
映画『アンガー・ミー』

マヤ・デレンらと実験映画の配給会社『クリエイティブ・フィルム・アソシエーツ』を立ち上げた話、ジャン・コクトーに会いにパリに行き、シネマテーク・フランセーズでアンリ・ラングロワに採用され働き始めたこと、そのシネマテークでは収蔵していたエイゼンシュテインの『メキシコ万歳』のフッテージを再編集し、コッポラが所有していた35ミリフィルムを借りて、船のマストに掲げられる旗を赤色に手作業でしたエピソード。ローマに住んでいたときに接したフェリーニ、ヴィスコンティ、パゾリーニの話、『快楽殿の創造』を1958年ブリュッセル万国博覧会で3台の16ミリ映写機を同期させ3面マルチスクリーンで上映したこと。『ルシファー・ライジング』では、ルシファーにキャスティングし、のちにマンソンファミリーの一員として投獄されたボビー・ボーソレイユと仲違いし、彼にフィルムを盗まれ落ち込み、映画監督をやめようと思った話。その後ロンドンに行き、そこで監督引退の気が変わり、ローリング・ストーンズとBFIの協力で、『我が悪魔の兄妹の呪文』を製作できたエピソード。そして、『スコピオ・ライジング』がLAのミッドナイト・スクリーニングでプレミア上映された際に、劇場に警察が現れ、映写技師と支配人が逮捕され、フィルムは押収されたこと。その後、カリフォルニア州の最高裁判所では公共の場での上映にふさわしいという判決が出て、映画の社会的価値を取り戻し、表現の自由に関しての先駆的な訴訟事件としてその後の映画の表現に影響を及ぼしたことを自らが語るアンガーの映画史である。

映画『アンガー・ミー』
映画『アンガー・ミー』

インタビューの最後でアンガーはこう語る。
「私は映像詩人だ。コクトーが生み出した流れを喜んで継承する。生は死と同じくらい神秘的だ。どちらも誰にも解けない謎だろう。恐ろしくて不可解な謎というより興味をかき立てられる謎だ。自分の次の大いなる冒険が死でも構わない。それは新たな挑戦だ」




映画『アンガー・ミー』

映画『アンガー・ミー』
アップリンク渋谷にて4月15日(木)まで上映
アップリンク京都にて4月16日(金)より上映

監督:エリオ・ジェルミー
出演:ケネス・アンガー、ジョナス・メカス
原題:Anger Me
2006年/カナダ/カラー/ステレオ/71分




『マジック・ランタン・サイクル』

初回限定版『ケネス・アンガー マジック・ランタン・サイクル HDリマスター』Blu-ray

アップリンク店頭、オンラインにて販売!ポストカードと河村康輔氏デザインステッカーの特典つき!
※4月中旬以降、アマゾン、タワーレコード オンライン、HMV&BOOKSほか、各ECサイトにて販売開始
品番:ULD-630
発売・販売:アップリンク
価格:税込7,920円(税抜7,200円)
仕様:アウターケース付き2枚組(本編BDディスク168分/短編DVDディスク125分)

<収録内容>
◆本編BDディスク収録
1.『花火』(15分/1947年)
2.『プース・モーメント』(6分/1949年)
3.『ラビッツ・ムーン』(17分/1950,1971年)
4.『人造の水』(13分/1953年)
5.『快楽殿の創造』(38分/1954年)
6.『スコピオ・ライジング』(29分/1963年)
7.『Kustom Kar Kommandos』(4分/1965年)
8.『我が悪魔の兄弟の呪文』(11分/1969年)
9.『ラビッツ・ムーン』(7分/1979年)
10.『ルシファー・ライジング』(28分/1980年)
*全10作品ケネス・アンガーによるコメンタリー付き

◆特典DVDディスク収録
1.『アンガー・ミー』(エリオ・ジェルミーニ監督/71分/2006年)
 アンガーへのインタビューを軸に盟友ジョナス・メカスの証言などで構成されたドキュメンタリー映画
2.『ザ・マン・ウィ・ウォント・トゥ・ハング』(14分/2002年)
 1998年にロンドンで開催されたアレイスター・クロウリーの展覧会を撮影したドキュメンタリー
3.『マウス・ヘブン』(10分/2004年)
 ミッキー・マウスのアイコンとしてのパワーを徹底的に利用したストップ・モーション・アニメ
4.『ラビッツ・ムーン』フッテージ(22分)
 1950年に白黒35mmで撮影した『ラビッツ・ムーン』元素材

◆封入特典
(1)ブックレット(解説:ゲイリー・ラックマン)
(2)『プース・ウィメン』スケッチ・ミニポスター

◎アップリンク・オンライン・マーケット
https://uplink-co.square.site/anger

レビュー(0)


コメント(0)