骰子の眼

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東京都 渋谷区

2020-10-09 19:44


デモと裁判「これは今を描く物語だ」E・レッドメインら出演のNetflix映画『シカゴ7裁判』
映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.

エディ・レッドメイン、ジョセフ・ゴードン=レヴィットらが出演し、1968年に逮捕・起訴された反戦デモ主催者の裁判を描くNetflix映画『シカゴ7裁判』が10月16日(金)からの配信に先駆け、10月9日(金)からアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、アップリンク京都ほかにて日本劇場公開される。2021年のアカデミー賞を狙ってNetflixが手掛ける作品で、監督を務めるのは『ソーシャル・ネットワーク』でアカデミー賞の脚色賞を受賞、Amazonで配信の『ニュースルーム』(原案・製作総指揮)や『モリーズ・ゲーム』(監督)などで活躍するアーロン・ソーキン。

webDICEでは『シカゴ7裁判』の劇場公開にあたり、アメリカのメディアに掲載された情報やソーキン監督の発言から、作品の魅力についてまとめた。

▼映画『シカゴ7裁判』予告編

公開を遅らせる選択肢はない―Netflix配信の経緯

この作品は当初、アメリカではパラマウント・ピクチャーズが2020年9月25日から劇場公開を予定していたものの、新型コロナウイルスの影響で変更を余儀なくされた。ハリウッド・レポーターによると、配信での公開に切り替えるという決定は初夏、アーロン・ソーキン監督、パラマウントの最高責任者ジム・ジアノプス、パラマウント幹部および映画のプロデューサーの間でマーケティング戦略が行われた後だったという。

Aaron Sorkin
アーロン・ソーキン監督

「電話の終わりに、ジムは言った、『聞いてほしい、私たちは秋に劇場ビジネスがどのようになるか分からない。〈最初に映画館に戻ってくるのは、コロナウイルスがデマだと思っている人たちだ 〉 という厄介なデータがある』。私は『アイダホ州の人々がこの映画に最初に来る人になるとは思わない』と答えた[※編集部注:アイダホ州はマスク着用を拒んだ牧師について大きく報じられた地域]」(アーロン・ソーキン監督)

【The Hoolywood Reporter】The Long Journey and Intense Urgency of Aaron Sorkin's 'The Trial of the Chicago 7'

映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.
映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.

制作チームは代替案を模索することに同意し、Netflix、Amazon、Apple、Huluに24時間限定で映画を視聴する時間を与えた。激しい入札競争の後、『シカゴ7裁判』は、強力なマーケティングキャンペーンと劇場公開の約束により、3,500万ドルの制作予算に対して5,600万ドルの取引でNetflixが獲得した。日本でもショーゲートが日本での配給権を獲得したと2019年2月に報道された)が、変更となった。

「 『公開を1年遅らせよう』という選択肢がないことは理解していた。この問題はたった今私たちが考えていることであり、議論していることだ。今公開しないのは本当に残念なことだ」(アーロン・ソーキン監督)

【The Hoolywood Reporter】The Long Journey and Intense Urgency of Aaron Sorkin's 'The Trial of the Chicago 7'

映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.
映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.

アメリカ史上最も狂った裁判

映画の舞台となるのは1968年8月。ベトナム戦争に関する反戦の動きが高まるなか、米イリノイ州シカゴでの民主党全国大会にて反戦デモが行われた。抗議は平和的に行われるはずだったが、デモは思わぬ盛り上がりを見せ、やがて参加者は警察や軍と正面から衝突する。暴動を扇動した容疑で、参加者のうち7名が逮捕・起訴された。7人のうち、社会活動家でヒッピーのアイコンであるアビー・ホフマンをサシャ・バロン・コーエン(『ボラット』)が扮し、社会活動家のトム・ヘイデンをエディ・レッドメイン(『博士と彼女のセオリー』)が、社会活動家のデヴィッド・デリンジャーをジョン・キャロル・リンチ(『ラッキー』監督)演じ、彼らと対峙する検察官リチャード・シュルツ役としてジョセフ・ゴードン=レヴィットが加わっている。

予告編でも映し出される警棒を振るう警官と抗議者たちの姿は、2020年世界中で巻き起こった人種差別に対する抗議行動「ブラック・ライブス・マター」を想起せずにはいられないだろう。

「1968年についての映画にしたかったわけではない。懐古趣味や歴史の授業のような映画にしたかったわけでもない。今現在をテーマにしたかった。しかし、今が1968年のようになるとは想像もしていなかった」(アーロン・ソーキン監督)

【The Hoolywood Reporter】The Long Journey and Intense Urgency of Aaron Sorkin's 'The Trial of the Chicago 7'

映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.
映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.

アーロン・ソーキンは『モリーズ・ゲーム』(監督・脚本)『スティーブ・ジョブズ』『マネーボール』『ソーシャル・ネットワーク』(脚本)など、これまでも実話映画を数多く手がけ、得意としてきた。ソーキン監督はこの物語に惹かれた理由を次のように語っている。

「確か2006年だったと思う。ある土曜日の朝にスティーブン・スピルバーグの家に来るように頼まれた。彼は、シカゴの暴動とそれに続くクレイジーで理不尽な裁判についての映画を作りたいと言った。私はその事件のことを知っているふりをして、『それはいいね。やるべきだ。脚本を書きたい』とその場で答えた。そして彼の家を出て車に乗るとすぐに、父に電話して、『お父さん、シカゴでの暴動とその後のクレイジーで理不尽な裁判について教えてくれないか?』と聞いたんだ。その時点では1968年の民主党大会で混乱があったこと、逮捕されたアビー・ホフマンがカウンターカルチャーの代表的人物だったこと、そしてトム・ヘイデンについては、ジェーン・フォンダと結婚していたことぐらいしか知らなかった」(アーロン・ソーキン監督)

【Esquire】Aaron Sorkin Wishes The Trial of the Chicago 7 Was Less Relevant Right Now. But Here We Are.

映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.
映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.

「これは、アメリカ史上最も狂った裁判の一つだ。半年間続き、裁判官は狂っていて、被告はとても多様で、証人も多かった。しかし、正直なところ、私は被告に共感することが難しかった。アビー・ホフマン、ジェリー・ルービン、そして彼らの仲間たちは、私たちが支持すべき大義に対して必要悪だったのではないかと感じたんだ。ヘイデンもアビーに対し疑問を感じていたことが分かり、その摩擦は映画の中で描いている」(アーロン・ソーキン監督)

【Esquire】Aaron Sorkin Wishes The Trial of the Chicago 7 Was Less Relevant Right Now. But Here We Are.

映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.
映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.

「この事件を学ぶにつれて描きたいと思ったことが3つあった。1つ目は『法廷ドラマ』。2つ目は『暴動の進化』、平和的なデモであるはずだったものが、どのようにして恐ろしい暴動になったのかということ。そして3つ目は、『アビーとトムの間の軋轢と、彼らがお互いを尊重するようになったのか」』という、より個人的な物語だ」(アーロン・ソーキン監督)

【Esquire】Aaron Sorkin Wishes The Trial of the Chicago 7 Was Less Relevant Right Now. But Here We Are.

ソーキンは脚本執筆を開始したが、2007~08年の米脚本組合によるストライキの影響でクランクインが延期となり、その後、スピルバーグ監督が降板。ポール・グリーングラスなどの候補が挙がったが実現せず、ソーキンが担当することになった。しかし、この映画が完成するまでスピルバーグはこ「名誉ある役割で関わってきた」とソーキン監督は言う。ニュージャージーの法廷シーンの撮影でセットに顔を見せたりもしたという。

「私に良い台詞のメモをくれたり、キャスティングやカットのアイディアのメモをくれた。スティーブン・スピルバーグの前で演出しなければならないなんて緊張するよね」(アーロン・ソーキン監督)

【The Hoolywood Reporter】The Long Journey and Intense Urgency of Aaron Sorkin's 'The Trial of the Chicago 7'




映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.
映画『シカゴ7裁判』© 1997-2016 Netflix, Inc.

映画『シカゴ7裁判』
劇場にて10月9日(金)公開、Netflixにて10月16日(金)より配信開始

監督・脚本:アーロン・ソーキン
出演:エディ・レッドメイン、アレックス・シャープ、サシャ・バロン・コーエン、ジェレミー・ストロング、ジョン・キャロル・リンチ、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、ダニー・フラハティ、ノア・ロビンズ、マーク・ライランス、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、フランク・ランジェラ、マイケル・キートン、ベン・シェンクマン、ジョン・ドーマン、J・C・マッケンジー、ケルヴィン・ハリソン・Jr、ケイトリン・フィッツジェラルド
プロデューサー:マーク・プラット(全米製作者組合)、スチュアート・ベッサー(全米製作者組合)、マット・ジャクソン、タイラー・トンプソン
製作総指揮:ウォルター・パークス、ローリー・マクドナルド、マーク・バタン、アンソニー・カタガス、ジェームズ・ローデンハウス、ニア・ヴァジラーニ、他
撮影監督:フェドン・パパマイケル(全米撮影監督組合)(ギリシャ撮影監督組合) プロダクションデザイナー:シェイン・ヴァレンティノ
編集:アラン・ボームガーテン(全米映画編集者組合)
衣装デザイナー:スーザン・ライアル
音楽:ダニエル・ペンバートン
キャスティング:フランシーヌ・メイズラー(全米キャスティング組合)
2020年/アメリカ/130分

キーワード:

Netflix / アーロン・ソーキン


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