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新作『シティ・オブ・メン』と前作『シティ・オブ・ゴッド』の違いについて、監督・制作のパウロ・モレッリは、「前作はドラッグ・ディーラーたち、ギャングたちのドラマだった。少年たちもギャングになろうとする。今回の作品も、リオデジャネイロの貧困地域、ファヴェーラを舞台にしているけれど、少年二人の物語、父親と息子の物語が中心になる。出発の物語でもあるしね」と語る。
今回の主役である少年たちを演じている二人は前作から続いての出演となる。
「ドグラスとダーランが前作に引き続いて出演しているが、彼らが演じているのは前回とは違った二人の少年なんだ。同じ地域に生まれ、同じ背景で育った少年という設定だけどね。そうなった背景には、前作と並行して放送された、映画の原作者パウロ・リンスが関わったテレビシリーズの存在がある。
テレビシリーズの最初は2000年の『PalaceⅡ』。そして、2002年の映画『シティ・オブ・ゴッド』に続いて同じ年に始まったテレビシリーズ『City of Men』。これは四年間続いた。毎週放送されるドラマだから、麻薬取引をめぐる銃撃戦だけでなく、ファヴェーラの人々の生活も丹念に描かれることになる。ユーモアもたくさん含まれる。両方のテレビシリーズでドグラスとダーランが演じていたのが、原作に登場するアセロラとラランジーニャという役柄だったんだ」と、前作の映画に加えてテレビシリーズも引き継いでいることを述べている。
本作でのテーマが“父親”であることに対して、「ファヴェーラという環境は子供にとってとてもタフな、困難なものだ。学校へ行くことができず、ギャングの仲間になるという誘惑も大きい。そして家庭崩壊。とくに父親の不在が子供にとって大きな影響を与えることになる。これらの背景は少年たちにゆっくりと成長することを許さない。簡単な「成熟」の方法は周囲と同じように暴力に走ることだと思いかねない」と、父親の不在が作品の大きなポイントになっていることを語った。
『シティ・オブ・ゴッド』の世界での成功によって、ブラジル映画に与えた影響については、「実は誰もあそこまでの成功は予想していなかったんだ。あの作品の監督のフェルナンド・メイレレスも含めてね。だって、強烈なリアリティがあって、相当にタフな、つまり観客をなごませるわけじゃない作品だったから。もちろん、後から考えれば、タフなリアリティこそ、あの作品の成功の理由だったとも思えるが。
いずれにせよ、あの作品が大ヒットしたことによって、ブラジル映画の状況は大きく変わったといっていいと思う。より若い監督たちが登場する土壌を作ったし、映画祭などを通じてアメリカをはじめとする他の国の資本とも結びつくことが可能になった。我々はこの状況をさらに押し進めていかねばならないね」
映画『シティ・オブ・メン』
8月9日(土)より渋谷シネ・アミューズほか全国ロードショー
監督・製作:パウロ・モレッリ 製作:フェルナンド・メイレレス
2007年/ブラジル/1時間46分