リドリー・スコットが製作総指揮を務めるNetflix映画『アースクエイクバード』が、11月15日(金)からの配信に1週間先駆け、11月8日(金)からアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて日本劇場公開される。
『アースクエイクバード』は、1989年の東京を舞台にした心理サスペンスで、イギリスの作家スザンナ・ジョーンズの同名小説を原作としている。辛い過去に取り付かれ、謎めいた雰囲気のある外国人女性ルーシー・フライは、同じような危険な香りがする日本人のハンサムなカメラマン禎司 と恋に落ちる。だが、やがて彼女は交友関係のあったリリー・ブリッジズとの三角関係に心を乱され、行方不明になったリリーを殺したのではないかと容疑をかけられる。
東京と新潟・佐渡島で撮影が行われ、主人公のルーシー・フライにアリシア・ヴィキャンデル(『エクス・マキナ』『リリーのすべて』)が扮し、禎司を三代目 J SOUL BROTHERSの小林直己、そしてリリー・ブリッジズをライリー・キーオが演じている。監督を務めるのは、ウォッシュ・ウエストモアランド(『コレット』『アリスのままで』) 。そして撮影にチョン・ジョンフン(『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』『お嬢さん』)、プロダクション・デザインを種田陽平(『思い出のマーニー』『ヘイトフル・エイト』)、そして音楽をアッティカス・ロス(『ドラゴン・タトゥーの女』『ゴーン・ガール』)と弟のレオポルド・ロスが担当している。
『アースクエイクバード』は10月28日、第32回東京国際映画祭で特別招待作品として上映され、上映に先立つ記者会見でウォッシュ・ウエストモアランド監督、アリシア・ヴィキャンデル、小林直己が登壇した。
東京国際映画祭記者会見より、右からウォッシュ・ウエストモアランド監督、アリシア・ヴィキャンデル、小林直己
スザンナ・ジョーンズの原作に出会い、強い結びつきを感じたというウエストモアランド監督はまず、「ある西洋女性と日本の関わり、そして日本人との関わりを大切に描いた、私にとって特別な物語」と今作への並々ならぬ思い入れをアピール。そして「スリラーというよりも心理的ドラマだと思っている。謎の部分というのは彼女の頭の中や過去に起こったことだからだ。黒沢清監督の『CURE』や石井聰互監督の『エンジェル・ダスト』に近い」と日本人監督の名前を挙げて解説した。さらに「1989年の日本を再現してくれた美術監督の種田陽平さん、コスチューム・デザイナーの小川久美子さん、ヘアメイクの吉原若菜さん、といったスタッフのサポートがあったからこそできたと思う」と、多くの日本人アーティストのコラボレーションによる成果であることも強調した。
<ウォッシュ・ウエストモアランド監督
ヴィキャンデルは日本語のセリフのチャレンジについて「東京が舞台ということもあり、全員が英語でしゃべるのは不自然なので、シーンごとにディスカッションしてセリフを日本語にするか英語にするか決めました。主人公のルーシー・フライは自分の国を捨てて日本に根を張ろうという覚悟を持っているという設定なので、できるだけ日本語がうまくしゃべれる必要がありました。私自身も、もともとスウェーデン語の映画から英語の映画に出るようになった経験があります。ここ数年で世界がどんどん小さくなっていっていますから、様々な文化が混ざりあい新しい芸術が生まれる環境があると思っています。日本語を覚えるということはルーシーの役作りだけでなく、日本の文化を知ることでもあります」と、充実した日本での撮影期間であったことを語った。
映画『アースクエイクバード』
ウエストモアランド監督は小林の起用について「キャスティング・ディレクターの奈良橋陽子さんからいろんな俳優を紹介してもらったが、なかなか禎司役がきまらなかった。でも直己さんに出会って、彼に決めた。直己さんは激しい部分、闇の部分、そして複雑な部分と様々な要素を持っていて、本読みを重ねていくなかで、彼こそが禎司だと確信しました。私は奈良橋さんに『彼にはスターパワーがある』と伝たんです」と絶賛。
アリシア・ヴィキャンデル
ヴィキャンデルも小林について「初日から役について掘り下げていたところに感心しました。いつもカメラを持って撮影していましたし、なにより、眼でストーリーを語れる。それは俳優として大事なことだと思います」と高く評価した。
映画『アースクエイクバード』
小林は役作りついて、「カメラは普段は撮られる側が多いですが、撮る側になったときに、禎司にとってのカメラは僕にとってのダンスみたいなものかなと。自分の心の内を表現するのに一番フィットしているもの。なので、ダンスと向き合ってきたことと同じように、カメラと向き合う時間が必要だと考え、撮影が始まる5ヵ月前から80年代に製造されたオリンパスのフィルムのカメラを買って、東京の街を撮りはじめました。自分で現像とプリントもして、何を撮りたいのかを探っていくことで、主人公と自分のリンクを見つけたように思います」と明かした。
小林直己
物語のポイントとなるというダンスのシーンについては、監督からリファレンスとして挙げた黒澤明監督の『醉いどれ天使』から衣装や踊りのスタイルのインスパイアを受けたという。小林は「ロンドン映画祭でリドリー・スコット監督から『映画にとって必要な存在感が君にはあるから、(役者を)続けたほうがいい」という言葉もいただいた」と語り、世界の舞台へ挑戦を続けていく決意を述べた。
映画『アースクエイクバード』
11月8日(金)よりアップリンク渋谷・アップリンク吉祥寺ほかにて上映
監督:ウォッシュ・ウェストモアランド
キャスト:アリシア・ヴィキャンデル、ライリー・キーオ、小林直己
107分/カラー/英語、日本語/2019年/アメリカ