骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2019-04-12 15:30


スコット・ウォーカー追悼 ドキュメンタリー映画4/20(土)よりアップリンク渋谷にて緊急上映

デイヴィッド・ボウイやトム・ヨークに影響を与えた伝説のシンガーのキャリアを紐解く
スコット・ウォーカー追悼 ドキュメンタリー映画4/20(土)よりアップリンク渋谷にて緊急上映

シンガー・ソングライターでウォーカー・ブラザーズのリードボーカリストとして知られるスコット・ウォーカーが3月25日、76歳で亡くなった。所属レコード会社4ADは死因は明らかにしていない。アップリンク渋谷では追悼企画として映画『スコット・ウォーカー 30世紀の男』を4月20日(土)より1週間限定でアップリンク渋谷にて緊急上映する。

『スコット・ウォーカー 30世紀の男』は、60年代にウォーカー・ブラザーズのメンバーとしてビートルズと並ぶ人気を誇ったものの、その後ソロアーティストに転向してからはサイケデリックで内向的な作品を発表し続け、デイヴィッド・ボウイやトム・ヨークなど多くのアーティストに影響を与えたスコット・ウォーカーの半生を追ったドキュメンタリー映画。

本作にはデイヴィッド・ボウイがエグゼクティブ・プロデューサーを務め自身も出演している他、スコット・ウォーカーを敬愛する多数の有名ミュージシャンが出演。ウォーカー・ブラザーズのデビュー時から2006年に発表されたアルバム『ザ・ドリフト』に至るまでの軌跡を、スコットを始めとする関係者の証言を元に追うほか、アルバムの制作風景も収録し、孤高のミュージシャン、スコットの知られざる素顔に迫っている。

※デヴィッド・ボウイの表記について、今回のwebDICEの記事は、字幕監修担当の故・今野雄二さんに敬意を表して「デイヴィッド・ボウイ」と表記いたします。




映画『スコット・ウォーカー 30世紀の男』

スコット・ウォーカー追悼上映
映画『スコット・ウォーカー 30世紀の男』
2019年4月20日(土)~4月26日(金)1週間限定

料金:一般¥1,300 ユース・シニア¥1,100 UPLINK会員¥1,000
場所:アップリンク渋谷(東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1・2階)
https://shibuya.uplink.co.jp/movie/2019/54132

エグゼクティブ・プロデューサー:デイヴィッド・ボウイ
監督:スティーヴン・キジャク
出演:スコット・ウォーカー、デイヴィッド、マーク・アーモンド、ルル、ジョニー・マー、ブライアン・イーノ、エクトル・ザズー、スティング、デーモン・アルバーン、ジャーヴィス・コッカー、レディオヘッド他
字幕監修:今野雄二
2007年/イギリス/95分/カラー/ビスタ/英語/ステレオ




「レディオヘッドや僕は、彼から大きな影響を受けた」
―トム・ヨークらアーティストが追悼

この訃報に、『スコット・ウォーカー 30世紀の男』の監督を務めるスティーヴン・キジャク監督やトム・ヨークなど多くのアーティストが哀悼の意を表している。

スティーヴン・キジャク監督はスコットのドキュメンタリー制作の後、『ストーンズ・イン・エグザイル 「メイン・ストリートのならず者」の真実』『JACO』『WE ARE X』など多くの音楽ドキュメンタリーを発表。最新作としてザ・スミスをモチーフにしたコメディ『Shoplifters of the World』の公開を控えている。

「小人たちを見よ、そして巨人たちを見よ、どちらをあなたは選ぶのか…?」(「30 Century Man」の歌詞より)、巨匠(giants)との作業は、短い期間でしたが、私の人生の事件でした。安らかに眠ってください。「彼は力強かった/彼は大胆だった/ 彼らが彼にさせるとき/彼らは古い殻を破った」(「ティルト」の歌詞より)
──スティーヴン・キジャク監督


スコット・ウォーカーがこの世を去ったと聞いてとても悲しい。レディオヘッドや僕は、彼から大きな影響を受けた。自分の声や言葉をどのように使うかを教わりました。彼とは一度、メルトダウン・フェスティバルで会ったことがあるけれど、本当に優しいアウトサイダーでした(※2000年、スコット・ウォーカーがキュレーターを務めブラーやレディオヘッド、ジム・オルークなどが出演した)。本当に惜しいことです。
──トム・ヨーク


最初にスコットを聴いたのは90年代前半から半ば、アメリカをツアーしていたときでした。風景を見ながら彼の音楽を聴くのは素晴らしい体験で、とてもミステリアスで美しい男である彼の音楽を知ることができた。彼の音楽は広大でエモーショナルで、残忍で陽気。とても感謝しています。
──グレアム・コクソン[ブラー]


スコットは後期の作品同様に、この世の中には定まらない複雑な人でした。スコットの60年代後期のアルバム、そして彼が制作した『Climate of Hunter』(1984年)以降の全ての作品は未知の世界への創造的な飛躍でした。「声」を持つ者で、超越できない存在でした。残念でなりません。
──デイヴィッド・シルヴィアン


スコット・ウォーカーの訃報を聞き悲しんでいます。本当に偉大な人でした。とてもユニークで、真のアーティストでした。『OKコンピューター』のレコーディング初日に向かう途中、チジック・ハイ・ストリートで彼が自転車に乗っってるのとすれ違った。そしてスタジオに着いたら、トム(・ヨーク)が『スコット4』を持っていたのを覚えています。
──ナイジェル・ゴドリッチ[レディオヘッド・プロデューサー]


▼『30世紀の男』にも出演するジョニー・マー(ex.ザ・スミス)のツイート


▼ソニック・ユースの公式アカウントのツイート



『ティルト』で彼は私がこれまで知らなかった音の扉を開きました。私のミュート・レコードでのソロLPは大きな影響を受けました。彼は自身の本能に従い、断固として譲ろうとしませんでした。彼が遺した沈黙と空間はルールを壊しました。本当の天才です。
──サイモン・フィッシャー・ターナー

【The Gurardian】'They’re film scores to his imagination': music stars pay tribute to Scott Walker





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60年代のポップ・アイコンから
“静寂”を追い求める音の求道者へ
―スコット・ウォーカー略歴

1943年アメリカ・オハイオ州生まれのスコットは、イギリスで1965年ウォーカー・ブラザーズの一員としてデビュー。1966年のシングル「太陽はもう輝かない」が全英チャート1位のヒットを記録。イギリスのみならずヨーロッパ、オセアニア、そして日本でザ・ビートルズに匹敵する絶大な人気を獲得。1967年2月に初来日の後、解散後の1968年1月には日本のみで再結成を果たし日本武道館公演を行うほどの加熱ぶりだった。スコットはこの映画のなかでアイドル的な熱狂を次のように振り返っている。

「(ウォーカー・ブラザーズ時代は)観客が絶叫するから僕らの演奏はまるで聞こえない。それを利用する人も多いが僕らは違った。ステージに立つのはたった1~2分で演奏はそれで終わり。人が押し寄せ大混乱になるからだよ。その繰り返しさ」
──スコット・ウォーカー


▼ウォーカー・ブラザーズ「太陽はもう輝かない」(1966年)

1967年にウォーカー・ブラザーズを解散後にソロ活動に乗り出した彼は、ベルギーのシャンソン・シンガー、ジャック・ブレルに心酔し、同年にソロアルバム『スコット』を発表。『スコット2』(1968年)、『スコット3』(1969年)、『スコット4』(1969年)とソロ作を連続リリースし、ポップ・シンガーとしてのペルソナを脱ぎ捨て、次第に実存主義的な表現へと没頭していく。


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米国人なのに彼の音楽は実に英国的で、英国人の生活や音楽や意識のズレに共感していた。そして彼以前のポップスには存在しなかった憂うつ。それからスコットを聴き始めた。
──デーモン・アルバーン[ブラー](『スコット・ウォーカー 30世紀の男』より)

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僕らは“スコット・ソング”が多い。「クリープ」もそうだ。プロデューサーがカバー曲だと思い込むほど“スコット的”だった。常に彼の音楽が原点だからね。
──レディオヘッド(『スコット・ウォーカー 30世紀の男』より)


▼スコット・ウォーカー「The Old Man`s Back Again」(1969年)

1978年に、再結成を果たしたウォーカー・ブラザーズ名義で制作した『ナイト・フライツ』は、ポップスの枠組みを持ちながら前衛的な表現を極めたオリジナリティの高いアルバムとしてブライアン・イーノをはじめとする多くのクリエイターを驚かせた。


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『ナイト・フライツ』で彼の音楽に衝撃を受けた。とてつもない曲だからぜひ聴いてみてくれと言ってデイヴィッドの製作現場に持ち込んだんだよ。感性の一致というか何か通じるものを感じた。ポピュラー音楽でなくオーケストラや実験音楽のようだった。ポップスの枠組みにありながらそこから遠く離れてる。これを聴くのは屈辱的だ。今でもこれを超えられない。
──ブライアン・イーノ(『スコット・ウォーカー 30世紀の男』より)


▼『ナイト・フライツ』(1978年)より「The Electrician」


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彼の曲のいいところは絵を描くように音楽で主張していることだね。彼が言いたいことは分からないが、彼が歌うままに曲を受け入れる。そこから何かをつかみ解釈すればいい。
──デイヴィッド・ボウイ(『スコット・ウォーカー 30世紀の男』より)


『Climate of Hunter』(1984年)、『ティルト』(1995年)、『ザ・ドリフト』(2006年)『ビッシュ・ボッシュ』(2012年)とインダストリアル・ミュージックやノイズなどを取り入れ、寡作ながらアルバムごとにプロダクションを変容させながら、強烈な孤独感を内包した楽曲を発表。2014年にはドゥームメタルバンドSunn O)))とのコラボレーション作『Soused』をリリースするなど、常に新しい音への探求を絶やさなかった。

▼『ティルト』(1995年)より「The Cockfighter」

▼『ビッシュ・ボッシュ』より「Epizootics!」ミュージック・ビデオ(2012年)

▼Sunn O)))との共演作より「Brando」ミュージック・ビデオ(2014年)

映画のなかでスコットは『Climate Of Hunter』が完成するまでの6年間を次のように振り返っている。

「6年間の大部分は一人で過ごしていた。その間はずっと“静寂”を追い求めた。僕がつかみ取るのでなく僕に流れてくるものだ。だから環境を整えて待った」
──スコット・ウォーカー

また映画ファンには、レオス・カラックス監督『Pola X』(1999年)、ブラディ・コーベット監督『シークレット・オブ・モンスター』(2016年)などのサウンドトラックを手がけたことで知られている。ブラディ・コーベット監督の新作で、ナタリー・ポートマンやジュード・ロウらが出演のミュージカル映画『Vox Lux(ヴォックス・ルクス)』(2018年)の音楽も担当している。


▼『Vox Lux(ヴォックス・ルクス)』サウンドトラックより「Druggie」(2018年)

▼映画『スコット・ウォーカー 30世紀の男』予告編

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