骰子の眼

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東京都 渋谷区

2019-04-11 19:05


理想の息子がドラッグ依存に『ビューティフル・ボーイ』父子の絆と戦いをリアルに描く

スティーヴ・カレル×ティモシー・シャラメ、プランB(『ムーンライト』)最新作
理想の息子がドラッグ依存に『ビューティフル・ボーイ』父子の絆と戦いをリアルに描く
映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel

『オーバー・ザ・ブルースカイ』でその名を知らしめたベルギーのフェリックス・バン・ヒュルーニンゲン監督が、『フォックスキャッチャー』のスティーブ・カレルと『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメを迎え父子の絆を描く映画『ビューティフル・ボーイ』が4月12日(金)より公開される。この物語は作家である父デヴィッド・シェフとをかけてドラッグ依存を克服した息子ニック・シェフふたりの手記をベースに、『ムーンライト』を手がけたブラッド・ピットが率いるプランBエンターテインメントが製作を手がけている。

スポーツも勉強もできる優等生である息子ニックと彼に対して良い父であろうと務めた父デヴィッド。『ブレイキング・バッド』にも登場する“クリスタル・メス”という依存性の高いドラッグに手を染めていくニックと彼をかばうことを止められないデヴィッドの関係は、親子関係において愛と束縛は何が違うのか?というシンプルかつ普遍的な問題を浮き彫りにする。そして、タイトルの『ビューティフル・ボーイ』は、ジョン・レノンが自らの息子ショーンに捧げた曲の名前でもある。「きみはいつかは大海に漕ぎ出す」とやがて成長して社会へ出ていく我が子へ友達のように語りかけるこの歌の語り口は『ビューティフル・ボーイ』全体を覆うトーンでもある。


「原作を手がける2人の物語に描かれていた生々しい感情やその描き方に心を動かされた。家族は無償の愛を捧げるのだが、それが簡単にできることではなく、またドラッグ依存と付き合うことは信じられないほどの不条理を受け入れなければならないことだと気づいていく」(フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督)


この特別な絆を描けることに興奮した

──どのような経緯でこの作品を手がけることになったのでしょうか?

2014年にデヴィッドと息子のニックの回顧録を読んだ時、心の底から感動した。デヴィッドとニックは、ニックの復帰とドラッグ依存の再発という家族の体験を綴っているが、それと同時に人生の喜びや純真さ、愛を感じる瞬間も描いている。

映画『ビューティフル・ボーイ』 フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.
映画『ビューティフル・ボーイ』 フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

父子の関係はすばらしい題材だった。この特別な絆を描けることに興奮したんだ。家族は愛情に溢れていて、誰もあんなことが起こるなんて考えもいなかったんだから、すごく痛ましいことなんだ。自分の人生の3~4年を賭ける価値があると思ったんだよ。

私はこれまでに英語の映画を作ろうと考えたことはあったけど、私自身の心に響く題材がなかった。だが2人の物語は違っていたんだ。家族の絆、理解への幻想、時の経過……、私が今までの映画でテーマにしてきたものばかりだ。2人の物語に描かれていた生々しい感情やその描き方に心を動かされた。家族は無償の愛を捧げるのだが、それが簡単にできることではなく、またドラッグ依存と付き合うことは信じられないほどの不条理を受け入れなければならないことだと気づいていく。

映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel
映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel

製作にあたり2人は私を家に招いてくれて、自身の体験を驚くほどオープンに語ってくれた。彼らは自分たちが体験したことすべてを包み隠さず明かしてくれた。デヴィッドとニックらは僕の以前の作品を見ていて、この物語を紡ぐ適任者だと思ってくれていた。でも時間をかけて僕らは個人的な絆を深めていったんだ。一緒にビーチを散歩して、ディナーを食べ、語り明かしたんだよ。2人ともどこまでも正直な人間で、自分たちの心の奥底にある恐怖や恥ずかしい部分もさらけ出してくれたし、こちらも山のように質問をしたよ。

彼らの暮らしや人柄に触れることは、すばらしいことだった。私が育った場所から遠く離れて、かつ私の家族とは全く違っていていたが、そこに漂っている愛情には似通ったものがあった。すばらしい家族の核となる部分が大きな試練という形で試され、それに対処するお互いの心からの想いには、本当に感服と感動をした。私が映画を作っているのは、私自身の経験を精査して、必要としている難題に自分を追い込むためだ。自分の過去や喪失感に向き合うことで、学べる。私は26歳の時に父を亡くしたが、父は映画を通して私の中で今も生きているんだ。だからこそ、父と子の物語に私は惹かれるのだろうな。自分の映画を通して人生を謳歌することを学んでほしいんだ。私はそれぞれのキャラクターを理解しようとしているし、自分が感じた彼らへの共感を観客の人たちにも感じてほしいんだよ。

ティモシー・シャラメをキャストに挙げないなんて考えられない

──主演にティモシー・シャラメとスティーヴ・カレルを起用した理由は?

シャラメとスティーヴが読み合わせをすると、どこからどう見ても完璧だったんだ。父親と特別な絆がありながら、ドラッグ中毒に陥ってしまういたいけな少年役にふさわしい能力がティモシーには備わっていた。彼は感情を表に出すタイプだ。献身的で、存在感があり、リアリティがあった。彼をキャストに挙げないなんて考えられない。

映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel
映画『ビューティフル・ボーイ』ティモシー・シャラメ © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel
映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel
映画『ビューティフル・ボーイ』スティーヴ・カレル © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel

──ニルヴァーナやマッシヴ・アタックなどの楽曲が使用されていますが、音楽についてはどのようなコンセプトがありましたか?

ニックやデヴィッドが本の中で取り上げている数曲を使おうとずっと考えていた。映画のタイトルはジョン・レノンの曲から取っている。これがデヴィッドにとって思い入れがある理由は、作家である彼が駆け出しの頃、ジョンにインタビューしたことがあるからだ。生前最期のインタビューもしたりと縁が深いんだ。

僕が幅広いジャンルの音楽を聞くからだけど、デヴィッドもニックも何でも聞くんだ。シガー・ロスの『Svefn-g-englar』(英題:Sleepwalkers)はうまくハマった。雰囲気のある夢心地のインディーズ・ポップだ。曲のクライマックスになるとニックが叫んで、再発したことに気づく。もうどうしていいのか分からなくなる。次なる予測ができない音楽だから、なおさら衝撃的に響くんだ。

映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel
映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel

──あなたと長年タッグを組んでいる撮影のルーベン・インペンスと編集のニコ・ルーネンは俳優陣のリハーサルにも参加したそうですね。

アメリカではリハーサルに参加するのが普通じゃないことは分かっているが、僕にとっては重要なんだ。お互いのことを知るために、俳優との暗中模索の時間を共有したいんだ。僕はいろんなことを試すのが好きだけど、いざ撮影となって時間に追われると、難しくなる。前もって“遊びの時間”を持つことは、大事なことなんだ。

映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel
映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel

──これまでのあなたの作品と比べて、物語がほぼ時系列通りに描かれているのも特徴ですね。

ニックがドラッグ依存になる前の数多くのフラッシュバックが含まれているため、冒頭は物語にはまり込む前に観客の心をつかむために時系列で遊んでいるる。さらに僕らはフラッシュバックを使って、家族が何を失い、また何を失おうとしているのかを見せている。

映画を作り終えて、ベルギーに戻ってきた私は、自分の息子に対して初めて父親になったような気がした。あれほどまでに誰かを愛する喜びを感じるなんて信じられないくらいだ。2人の物語が私にしてくれたように、この映画で多くの人が、多くのことを感じ、心を開いてくれることを望んでいる。

(オフィシャル・インタビューより)



フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン(felix Van Groeningen) プロフィール

1977年ベルギー生まれ。2000年にゲントの王立芸術アカデミー(KASK)を卒業し、映像芸術の学士を取得。2009年のカンヌ国際映画祭の監督週間でプレミア上映された『The Misfortunates』(09)で国際的な注目を集めた。『オーバー・ザ・ブルースカイ』(12)で世界的に高い評価を受け、2014年アカデミー賞® 外国語映画賞にノミネートされ、セザール賞最優秀外国映画賞を受賞。『ベルヒカ』(16)〈未〉は2016年サンダンス映画祭でプレミア上映され、ワールド・シネマ・ドラマ部門で監督賞を受賞した。本作品が彼の初めての英語作品である。




映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel
映画『ビューティフル・ボーイ』 © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. Francois Duhamel

映画『ビューティフル・ボーイ』
4月12日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国公開

監督:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
出演:スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ、モーラ・ティアニー、エイミー・ライアン、ケイトリン・デヴァー
制作:ブラッド・ピット、テデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー
脚本:ルーク・デイヴィス
原作:デヴィッド・シェフ、ニック・シェフ
美術:イーサン・トーマン
撮影監督:ルーベン・インペンス
編集:ニコ・ルーネン
衣装:エマ・ポッター 
2018年/アメリカ/120分/ビスタサイズ/R-15
原題:Beautiful Boy
字幕翻訳:松浦美奈
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ/朝日新聞社
配給:ファントム・フィルム

公式サイト


▼映画『ビューティフル・ボーイ』予告編

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