骰子の眼

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東京都 渋谷区

2019-02-28 17:55


自分らしさって何?東京で暮らす女性たちの生活描く映画『シスターフッド』

ドキュメンタリーとフィクションの境界捉えた西原孝至監督「いろんな生き方肯定したい」
自分らしさって何?東京で暮らす女性たちの生活描く映画『シスターフッド』
映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory

『わたしの自由について』『もうろうをいきる』の西原孝至監督が、ヌードモデルの兎丸愛美(うさまる・まなみ)と、シンガーソングライターのBOMI(ボーミ)を主演に迎え、フェミニズムをテーマにドキュメンタリーと劇映画を混在させ描く新作『シスターフッド』が3月1日(金)よりアップリンク渋谷にて公開。webDICEでは西原監督のインタビューを掲載する。

西原監督は前作『もうろうを生きる』の際に「カメラが入るってことに対して盲ろうの方が、こういうふうに撮ってほしいと言ってくれたことと、僕らがこういうふうに撮りたいっていうことをせめぎ合わせていく」とドキュメンタリー映画における演出について持論を語った。『シスターフッド』ではドキュメンタリーと劇映画を混在させることことで、東京に生きる女性の心の機微を丁寧に映し出しているが、西原監督の穏やかな眼差し、人間の複雑さをそのまま捉えようとする視点、将来についての不安や人間関係の悩みについて率直に語りだす登場人物たちの姿に息づいている。


「東京はいま、特に若い人たちにとって非常に生きづらい街なのではないかという思いが漠然とあり、様々な境遇の下、東京で暮らす女性たちの生活をポートレートのように記録することを始めました。社会から『こうしなければいけない』という圧力を感じることは、誰しもあるのではと思います。でも、いろんな生き方があっていいと思うし、この映画ではそのことをまず肯定したかったです」(西原孝至監督)


東京で暮らす女性たちの生活を
ポートレートのように記録する

──本作の成り立ちをお教えください。

元々は、東京という都市に興味があり、2015年に自主制作で撮影を始めました。世界でも有数の大都市である一方、いま、特に若い人たちにとって非常に生きづらい街なのではないかという思いが漠然とあり、様々な境遇の下、東京で暮らす女性たちの生活をポートレートのように記録することを始めました。同時に、撮影を重ねる中で2017年に起きた#MeToo運動を日本でも目の当たりにし、出演者とディスカッションを重ねながら、劇映画の設定を演じてもらっています。最終的には、4年間かけて撮りためた「ドキュメンタリー」と2018年に撮影した「劇映画」が混在している映画となりました。

映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory
映画『シスターフッド』西原孝至監督 ©2019

──本作で兎丸愛美さんとBOMIさんの2人をW主演として起用したいと思った理由はどこにありますか?

兎丸愛美さんとBOMIさんは、本作の構想を考えていた時に、SNSで見つけました。とても、それぞれの活動に興味が湧いたからです。BOMIさんのライブに足を運んだり、兎丸さんとは企画書を送った上で喫茶店でお話をする中で、私のやりたいことやお二人の興味のあることなどを率直に話し合いました。その中で、とても人間としても信頼の出来る方だと感じたので、是非撮影をお願いしたいと改めてご相談し、了承を頂きました。お二人は、変わった撮影の依頼が来たなと思ったのではないでしょうか。

──兎丸愛美さんは、フィクション部分で演技もされています。普段はモデルをされていていますが、演出していて、いかがでしたか?

普段カメラを向けられていることもあるのかもしれませんが、とても堂々としている印象を受けました。映画の中では、兎丸さんに脚本をお渡しして台詞を言ってもらっている場面と、シチュエーションだけを決めて、自由に話してもらっている場面があります。私自身が普段はドキュメンタリーの制作を中心にしているので、そこで培った手法を試したい気持ちもありご相談しました。

映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory
映画『シスターフッド』兎丸愛美 ©2019 sky-key factory

──フィクション部分に登場する女性として、遠藤新菜さんと秋月三佳さんを起用されました。お二人は西原さんが2014年に監督した実写映画『Starting Over』にW主演されていましたが、お二人を再度起用した理由はどこにありますか?

お二人には、前作でご一緒させてもらった関係性がすでにあったので、再びお願いをしました。韓国のホン・サンス監督の作品では、同じ俳優が別の映画でも役を変えてよく登場します。「ホン・サンス劇団」と言われたりもしています。日本でも、是枝裕和監督が樹木希林さんと近作でタッグを組み続けてこられたように、信頼関係から生まれるものがあることは、私がこれまでのドキュメンタリーの制作体験から学んだことです。私もそのような俳優との関係性に憧れますし、秋月さんと遠藤さんとは、これからも別の作品でも是非ご一緒できればと思っています。

映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory
映画『シスターフッド』秋月三佳(右)岩瀬亮(左)©2019 sky-key factory

──遠藤新菜さんが演じたのは女子大生、秋月三佳さんが演じたのは女優兼モデルですが、この2つの役の設定にはどのような理由があるんですか?

近年携わってきたドキュメンタリー作品で、その2つの被写体を撮らせてもらうことが多くありました。それぞれ別の作品として既に完成しているのですが、その作品内には収まりきらなかった、しかし胸に残る「言葉」が、ドキュメンタリーを制作していると私の中にどんどん蓄積されていきます。その「言葉」たちを今回の映画の中で描くことが出来ないかと思い、学生とモデルを登場させました。具体的には、プロットや台詞の端々に反映をさせています。

映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory
映画『シスターフッド』遠藤新菜(左)兎丸愛美(右)©2019 sky-key factory

──遠藤新菜さんが演じる女子大生の彼氏役で戸塚純貴さんを起用されています。戸塚さんの起用理由も教えてください。

戸塚さんにも、前作の『Starting Over』に出演を頂いています。まだ20代なのですが、独特の力の抜けた存在感があり、とても好きな俳優のひとりです。個人的な話になりますが、彼の出身がどこで、住んでいる家も知っている(いまはもう引越しをされたみたいですが)そういう関係性を持った俳優と仕事を共にすることで生まれてくる何かがあると信じているので、今回も出演をご相談しました。

映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory
映画『シスターフッド』戸塚純貴 ©2019 sky-key factory

──モデル・女優のSUMIREさんがドキュメンタリー部分で出演されていますが、出演の経緯をお教えください。

遠藤さんがカフェで友人と話すシーンで出演してもらったのですが、設定だけを決めて自由に話してもらいたかったので、実際のご友人を紹介してもらえないかとご相談したところ、SUMIREさんの名前が挙がりました。普段からプライベートで良く遊んでいる親友だそうで、その関係性を映画の中でも使わせてもらった形です。

映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory
映画『シスターフッド』SUMIRE ©2019 sky-key factory

すべての映画監督は
自分の経験と創作を交錯させて作っている

──岩瀬亮さん演じるドキュメンタリー映画監督の池田は男性ですが、彼を登場させた理由を教えてください。

ドキュメンタリーと劇映画が混在している映画なので、ともすればストーリーが破綻しかねないと考えていました。ひとり、映画を貫く存在として登場させたいと思い、池田の存在を思いつきました。岩瀬さんの『ひと夏のファンタジア』という主演作が大好きで、以前から是非ご一緒してみたいと思っていたので、今回はこのような小さな制作体制でしたが、本当にラッキーでした。

映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory
映画『シスターフッド』岩瀬亮(左)、西原監督(右) ©2019 sky-key factory

──実は最初、「なんで男性である西原さんが、女の私以上にフェミニズムについて熱心なんだろう」と思って見始めたんですが、冒頭から女性インタビュアーに同じようなことを言わせていて、面白かったです。大学でのインタビューのシーンでも、西原さんご自身が、池田の隣でカメラを回していますよね?池田は西原さんの分身的な位置づけなのでしょうか?

すべての映画監督は、自分の経験を投影する部分と、創作の部分を交錯させて映画をつくっているのではないかと想像しています。ご指摘の部分はまさにそうで、私自身の経験を反映されている部分もあれば、そうではない部分もあります。池田に同調するところもあれば、全く違う考えのところもありますし、そういう人間の複雑さを描ければと思っていました。

──この作品をどんな人に観てもらいたいと思いますか?

社会から「こうしなければいけない」という圧力を感じることは、誰しもあるのではと思います。でも、いろんな生き方があっていいと思うし、この映画ではそのことをまず肯定したかったです。自分の幸せに悩んでいる人に、届けばいいなと思っています。

(オフィシャル・インタビューより)



西原孝至(にしはら・たかし) プロフィール

1983年9月3日、富山県生まれ。早稲田大学で映像制作を学ぶ。14年に発表した『Starting Over』は東京国際映画祭をはじめ、国内外10ヵ所以上の映画祭に正式招待され高い評価を得る。近年はドキュメンタリー作品を続けて制作。16年に学生団体「SEALDs」の活動を追った『わたしの自由について』がカナダ・HotDocsに正式出品、毎日映画コンクール ドキュメンタリー部門にノミネート。17年に、目と耳の両方に障害のある「盲ろう者」の日常を追った『もうろうをいきる』を発表。




映画『シスターフッド』 ©2019 sky-key factory

映画『シスターフッド』
2019年3月1日(金)アップリンク渋谷にて公開ほか全国順次公開

ドキュメンタリー映画監督の池田(岩瀬亮)は、フェミニズムに関するドキュメンタリーの公開に向け、取材を受ける日々を送っている。池田はある日、パートナーのユカ(秋月三佳)に、体調の悪い母親の介護をするため、彼女が暮らすカナダに移住すると告げられる。ヌードモデルの兎丸(兎丸愛美)は、淳太(戸塚純貴)との関係について悩んでいる友人の大学生・美帆(遠藤新菜)に誘われて、池田の資料映像用のインタビュー取材に応じ、自らの家庭環境やヌードモデルになった経緯を率直に答えていく。独立レーベルで活動を続けている歌手のBOMI(BOMI)がインタビューで語る、“幸せとは”に触発される池田。それぞれの人間関係が交錯しながら、人生の大切な決断を下していく。

出演:兎丸愛美 BOMI 遠藤新菜 秋月三佳 戸塚純貴 栗林藍希 SUMIRE 岩瀬亮
監督・脚本・編集:西原孝至
撮影:飯岡幸子、山本大輔
音響:黄永昌
助監督:鈴木藍
スチール:nao takeda
音楽:Rowken
製作・配給:sky-key factory
2019 / 日本 / モノクロ / 87分 / 16:9 / DCP
©2019 sky-key factory

公式サイト

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