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2019-01-25 22:00


名優グレン・クローズ初のオスカー受賞なるか!?『天才作家の妻 -40年目の真実-』
映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』 © META FILM LONDON LIMITED 2017

女優グレン・クローズがノーベル文学賞を受賞した世界的作家の妻を演じる『天才作家の妻 -40年目の真実-』が1月26日(土)より公開。主人公ジョーンを演じたクローズが第91回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされ、『ガープの世界』(1983年)での助演女優賞ノミネート以来7度目のノミネートにして初のオスカー受賞なるか、と話題を集めている今作について、webDICEでは監督を務めたビョルン・ルンゲのインタビューを掲載する。

ノーベル賞の授賞式が行われるストックホルムに赴いた小説家ジョゼフと妻ジョーンは「ジョゼフの作品はジョーンが書いているのでは」と疑いの目を向ける記者と出会う。物語は、文才がありながらも作家への道を諦めざるを得なかったジョーンが真実を語ろうと決断するまでのサスペンスを軸に、ストックホルムでの授賞式の様子と平行して、作家になることを夢見ながらも志半ばでジョセフの妻となり彼を支えることを選んだジョーンの過去がフラッシュバックしながら描かれる。女性が小説家になっても売れないという偏見が色濃かった1950年代当時の社会的状況を体験し、夫のノーベル賞受賞を前にして運命を変えようとするジョーンの姿は、現在の#MeTooを巡る運動と真実を語り始めた女性たちの声を反映した姿であることは言うまでもないだろう。


「この映画は音楽に似ている。ふたつの楽器のデュエットだ。グレン・クロースとジョナサン・プライスは、一緒に演奏する偉大なソリストのようだ。彼らの芸術を通して物語を融合させる。私の監督としての野心は、俳優にスクリプトから音楽を探してスウィングさせるために、自由になってもらうことだ。そうすれば絶好のタイミングで、観客はそのスウィングを共有することができる」(ビョルン・ルンゲ監督)


ミニマルな物語を映画的にするには

──この物語の脚本は2003年に出版された小説家メグ・ウォリッツァーによる2003年に出版された小説『the Wife』を原作にしていますが、どのようなところに魅力を感じましたか?

登場人物たちの緊迫した関係だ。父と母と息子の間の駆け引き。さらに私が心惹かれたのは、ノーベル賞授賞式が舞台という点だ。

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』 © META FILM LONDON LIMITED 2017
映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』ビョルン・ルンゲ(左)、40年前の主人公ジョーンを演じたのはグレン・クローズの実の娘アニー・スターク(右) © META FILM LONDON LIMITED 2017

私はこの物語に、大きなスケールの中にチェンバー・ドラマ(最小限の舞台設定と役柄で構成されるドラマ)の要素があることに気づいた。母と父と息子という3人の小さな私的なキャラクターのドラマだ。どうしたらこのミニマルな物語を映画的にできるだろう?キャスティングが鍵だった。そのエモーショナルさで脚本の世界に飛び込んでいける俳優を探すこと、そして俳優を信じることが大切だと思った。

──グレン・クローズを妻ジョーンに配役した理由は?

実はグレンが私をキャスティングして、それから私が残りの俳優をキャスティングしたんだ。彼女はカメラの前で演じることについてきわめて優れた感覚を持っているが、脚本から登場人物について理解する事にも素晴らしい感覚を備えている。例えば私たちが撮影を中断して照明の調整を行っている時にも、彼女は私が見たことのないような形で役に入り込んでいるんだ。そのキャラクターが観客に何を伝えるべきか、どんな感情を表現するべきか分かっているんだ。彼女は私がいままで会ったなかで最も熟練した女優だ。

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』 © META FILM LONDON LIMITED 2017
映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』© META FILM LONDON LIMITED 2017

──夫のジョゼフ・キャッスルマンを演じたジョナサン・プライスについては?

ジョナサン・プライスと仕事をすることは素晴らしい経験であり、私にとって本当に名誉なことだ。ジョナサンがベッドで目を覚ます場面がある。観客は彼がどんな夢を見ていたか、彼の様子から想像できる。それはとても不思議なことだ。彼が目を覚ますとき、私は彼に「彼女は部屋に入ってきて、少し寝坊しているあなたを起こします」と伝えただけだった。そしてそのシーンを撮影した時に、彼の目を見ただけで彼が奇妙な夢を見ていた事が分かるんだ。特に指示していないけど、そんなふうに演じてくれたんだ。

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』 © META FILM LONDON LIMITED 2017
映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』© META FILM LONDON LIMITED 2017

グレン・クローズとジョナサン・プライス、ふたつの楽器のデュエット

──グレン・クローズとジョナサン・プライス、ふたりの演技のアンサンブルはおおきな見どころのひとつですね。

この映画は音楽に似ている。ふたつの楽器のデュエットだ。グレン・クロースとジョナサン・プライスは、一緒に演奏する偉大なソリストのようだ。彼らの芸術を通して物語を融合させる。私の監督としての野心は、俳優にスクリプトから音楽を探してスウィングさせるために、自由になってもらうことだ。そうすれば絶好のタイミングで、観客はそのスウィングを共有することができる。

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』 © META FILM LONDON LIMITED 2017
映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』 © META FILM LONDON LIMITED 2017

グレンとジョナサンと働くのはとても素晴らしかった。ふたりは完璧なカップルだ。ある意味、ふたりで一緒に演じるために俳優になったと言ってもいいくらいだ。互いに刺激し合い、どちらも非常に経験豊富な俳優だ。論理的な小さな細部を詰めることがふたりの演技の出発点なんだ。それから、自分たちが作り出す空間でその細部がどのように見えるかを理解したら、すぐにそのシーンにおける感情を掘り下げていく。彼らが特殊な現場で、ありふれた日常世界を自分達が納得行くように作り上げて行く様は、非常に興味深かった。運命と闘っているふたりの人間として出会う。それがこの映画なんだ。

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』 © META FILM LONDON LIMITED 2017
映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』記者ナサニエル役のクリスチャン・スレーター(左)、ジョゼフとジョーンの息子デビッドを演じたマックス・アイアンズ(右) © META FILM LONDON LIMITED 2017

──撮影においては、ふたりのクローズアップを多用している点が特徴ですね。

イングマール・ベルイマン監督と彼の作品の撮影で知られる撮影監督スヴェン・ニクヴィストのクローズアップからインスピレーションを得た。演技においても、撮影においても、そして編集室においても、私はシンプルであることにより興味がある。私は編集者であり妻であるレーナ・ルンゲと30年近く共同作業をしている。場面のエモーショナルさを失うことなくストーリーテリングに注意を払い編集するメソッドを構築しているんだ。

(オフィシャル・インタビューより)



ビョルン・ルンゲ(Bjorn Runge) プロフィール

1961年、スウェーデン・リューセヒール生まれ。1996年に『Harry och Sonja』の監督・脚本を務め、その後『Daybreak』(03)がベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀芸術貢献賞)とヨーロッパの最優秀映画に贈られる青い天使賞をダブル受賞したほか、スウェーデンのアカデミー賞に当たるゴールデン・ビートル賞で最優秀監督賞・最優秀脚本賞を受賞。更に『Mouth to Mouth』(05)で再びゴールデン・ビートル賞の作品賞・監督賞・脚本賞にノミネートされたほか、ノルディック映画賞の監督賞にもノミネートされた。先日、最新作としてSF映画『Stardream』を監督することが発表された。




映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』
1月26日(土)より、新宿ピカデリー、アップリンク吉祥寺他全国公開

監督:ビョルン・ルンゲ
出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター、マックス・アイアンズ、アニー・スターク
原題:THE WIFE
2017年/スウェーデン、アメリカ、イギリス合作/英語/101分/シネスコ/カラー
日本語字幕:牧野琴子
後援:スウェーデン大使館
配給:松竹

公式サイト


▼映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』予告編

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