骰子の眼

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東京都 中央区

2019-01-04 13:00


40年前、シネコンを越える映画館が山形・酒田に存在した 映画『世界一と言われた映画館』

大杉漣がナレーションを担当、伝説の映画館グリーン・ハウスを巡るドキュメンタリー
40年前、シネコンを越える映画館が山形・酒田に存在した 映画『世界一と言われた映画館』
映画『世界一と言われた映画館』佐藤広一監督(左)とナレーションを担当した大杉漣(右) ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

山形県酒田市に存在した伝説の映画館グリーン・ハウスについての証言を集め、2018年2月に亡くなった大杉漣がナレーションを担当したドキュメンタリー映画『世界一と言われた映画館』が1月5日(土)より公開。webDICEでは佐藤広一監督のインタビューを掲載する。

グリーン・ハウスは1949年に開館。初代支配人の佐藤久一の方針により映画だけでなくコンサートなども行い、ロビーにはカフェを併設するなど、映画を取り巻く様々な文化が交差する場所として、人々から愛された。1976年10月に起きた酒田大火の火元となり消失してしまったが、このドキュメンタリーは当時の従業員や関係者の証言から、グリーン・ハウスの先進性について迫っている。佐藤監督の言葉にもあるように、佐藤久一が作品選定から館内の音楽まで「目に見えないところへの努力を惜しまない」隅々にまで行き届いたホスピタリティと心意気が、グリーン・ハウスに関わった人々、そして観客達に脈々と受け継がれていることを感じとることができる。そして彼のこだわりは多様化が進む現在にこそ必要な精神なのではないだろうか。

「ナレーション収録時に大杉さんからは、「心ある丁寧なドキュメンタリー作品」と本作を評して頂き、ここに辿り着くまでの過程を労ってくれました。いま思い返しても、感謝の思いでいっぱいです」(佐藤広一監督)

伝説の映画館についてまとめなければいけないという思い

──今作制作のきっかけを教えてください。

元を辿れば、本作は山形国際ドキュメンタリー映画祭2017で上映される短編作品として、映画祭自らが企画しました。監督を引き受けて取材を重ねていくうちに、「これは短編に収まるような題材ではない」ことに思い至り、長編化を提案しました。映画祭の髙橋卓也プロデューサーが快諾してくれたこともあり、取材は続きました。その後も取材先で元チケットガールの山崎英子さんを紹介してもらうなどの幸運に恵まれました。

映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

──以前からグリーン・ハウスのことはご存知だったのですか?

私自身、もちろん酒田に伝説の映画館があった、しかも大火の火元になったということは知っていました。しかも山形の映画関係者に大きな影響を与えているということも。この機会にきちんとまとめなければいけない、という思いを強くしました。

映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

──多くの貴重な資料映像や画像が用いられていますね。

映画祭事務局でも地元新聞社を通じて当時の資料募集を呼びかけるなど、この映画制作に大きな期待を寄せてくれました。

「世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか」(講談社刊)の著者・岡田芳郎さんからは何度もアドバイスを頂き写真も提供して下さいました。

映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

──大杉漣さんがナレーションを務めることになった経緯を教えてください。

酒田と大杉さんとのつながりが、山形放送のラジオ番組で既にあったこと。大杉さんと懇意にしているシネマ・パーソナリティーの荒井幸博さんが山形にいたこと。16年前、大杉さんが主演する自主映画に私がスタッフで参加していたこと、などの巡り合わせがあって実現にこぎ着けられたように思います。

ナレーション収録時に大杉さんからは、「心ある丁寧なドキュメンタリー作品」と本作を評して頂き、ここに辿り着くまでの過程を労ってくれました。いま思い返しても、感謝の思いでいっぱいです。

シネコンを越えたホスピタリティー

──グリーン・ハウスが唯一無二の映画館だったことの理由を、館主の佐藤久一さんの映画館にかける情熱、そして酒田という場所の地域性と双方から掘り下げているのが今作の特徴だと思います。まず佐藤さんの経営方針、サービス精神、エイターテイメントへの情熱をどのように感じていらっしゃいますか?

現在の経済理念からすれば考えられないことだと思います。酒田という場所、そして時代と佐藤久一という存在が奇跡的に重なり合い、グリーン・ハウスが生まれたと思っています。

映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
映画『世界一と言われた映画館』より、グリーン・ハウス初代支配人の佐藤久一 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

──グリーン・ハウスが映画にとどまらず様々な文化が交差する場所だったことは佐藤久一さんの狙いだったのでしょうか?そして酒田という場所が、東京にひけをとらない文化の発信源だったのには、どんな理由があるのでしょうか?

グリーン・ハウスのあり方としては、今のシネコンの流れに繋がっていると思いますが、ホスピタリティの面ではそれを越えたなにか途方もないものを感じます。

佐藤久一さんがグリーン・ハウスの後に取り組んだ、本格フランス料理店もそうですが、「文化に貴賎なし」の思いがそこには込められています。

映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
映画『世界一と言われた映画館』より、酒田市出身の歌手、白崎映美 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

──山形国際ドキュメンタリー映画祭での上映を経て、今回いよいよ劇場公開となります。

「実は酒田には、まだグリーン・ハウスが存在しているのではないか」と思わせるほどの鮮明な記憶と愛情に満ちた証言の数々が、この映画には収められています。

グリーン・ハウスが失われてから40年。なにか目に見えない力によって映画を作らされたような、そんな気がしてなりません。

──最後に、グリーン・ハウスと佐藤久一さんが保ち続けた姿勢でいまの私たちが受け継ぐべきところは、どんな部分だとお感じになりますか?

目に見えないところへの努力を惜しまない精神だと思います。

(オフィシャル・インタビューより)



佐藤広一 プロフィール

1977年生まれ、山形県出身。1998年、第20回 東京ビデオフェスティバル(日本ビクター主催)にて、短編映画「たなご日和」でゴールド賞を受賞。監督作に、「隠し砦の鉄平君」(株式会社BBMC)、DVDドラマ「まちのひかり」(特定非営利活動法人 エール・フォーユー)がある。ドキュメンタリー映画「無音の叫び声」(16/原村政樹監督)、「おだやかな革命」(17/渡辺智史監督)、「YUKIGUNI」(18/渡辺智史監督)では撮影を担当。




映画『世界一と言われた映画館』 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
映画『世界一と言われた映画館』より、酒田市出身の歌手、白崎映美 ©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

映画『世界一と言われた映画館』
2019年1月5日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次公開

語り:大杉漣
プロデューサー:髙橋卓也
監督・構成・撮影:佐藤広一
証言協力:井山計一 土井寿信 佐藤良広 加藤永子 太田敬治 近藤千恵子 山崎英子 白崎映美 仲川秀樹
企画・製作:認定 NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
映像提供:山形放送
協力:山形大学社会科学部付属映像研究所
音声技術:折橋久登
整音:半田和巳
製作助手:稲田瑛乃
宣伝美術:菅原睦子 玉津俊彦
協力プロダクション:ZACCO
製作協力:大久保義彦 成田雄太 オフィス佐藤
配給:アルゴ・ピクチャーズ
配給協力:MAP
2017年/日本/67分/カラー(一部モノクロ)/DCP・Blu-ray/16:9
©認定 NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

公式サイト


▼映画『世界一と言われた映画館』予告編

キーワード:

大杉漣 / ドキュメンタリー


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