映画『おとなの恋は、まわり道』
キアヌ・リーブスとウィノナ・ライダーが4度目の共演を果たしたラブコメディ『おとなの恋は、まわり道』が12月7日(金)より公開。webDICEでは日本一のキアヌ・リーブスファンと言われる植田綾子さんによるレビュー、そしてヴィクター・レヴィン監督のインタビューを掲載する。
『おとなの恋は、まわり道』レビュー:
恋に不器用なおじさん役のキアヌに萌える!何と言う小気味のいい会話の応酬!良質の舞台劇を観ているようだ!
近年、キアヌは『ジョン・ウィック』シリーズ、ウィノナはTVシリーズ『ストレンジャー・シングス』でまたまた表舞台に浮上中。そんな旬な2人の共演は『ドラキュラ』『スキャナー・ダークリー』『50歳の恋愛白書』に次いで、今回が4度目。その2人が、息の合った怒涛の台詞バトルを展開する。この映画、セリフを喋るのはこの2人だけ!9日間で撮影したそうだが、よくぞこれだけの台詞を覚えたとびっくりするほど、喋る喋る。
我が道を行く的なフランク(キアヌ)とキャンキャン喋り捲るリンジー(ウィノナ)。ウィノナが脚本を読んで、キアヌに送ったそうだが、2人に当て書きしたのかと思う程、役にはまっている。
私は1988年に『危険な関係』を観てからキアヌファン。キアヌは私生活でも人目なんか気にせず我が道を行く人。靴にマスキングテープを貼って履いていたり、公園でのボッチ飯が話題になったり。着る物もジャケットにヨレヨレTシャツ&ジーンズ。全く変わらない(小ネタ:実はジャケットはアルマーニ等の高級品ですがそう見えないところがキアヌらしい)。そんな頑固一徹キアヌが本作の偏屈フランクにドンピシャだ。
彼は決してヒュー・グラントタイプのラブコメが似合う人ではないと思う。しかし、本作での恋に不器用なおじさん役は、素のキアヌを見ているようで萌える。
アクションとラブストーリーがメインのキアヌ。初期にはヤングスターとしてビル&テッド・シリーズはじめコメディーにもいくつか出演している。過去に出演したラブコメ『恋愛適齢期』では主演のダイアンキートンの美し~い甘~い彼氏役。どちらかと言うと、とろける様な美しい外見が重要だったが、本作の様な本格的なラブコメ演は初めて。新鮮だ!製作が決定しているビル&テッド・シリーズの第3作『Bill & Ted Face The Music』にも期待できる。
原題の『Destination Wedding』とは、日常生活から離れた旅先での結婚式のこと。日本で言えばハワイとか、軽井沢ウェディングの様なもの。映画ではカリフォルニア南部のワイナリーが舞台。招待された結婚式の新郎は、フランクの疎遠な異父弟であり、リンジーの元婚約者。普通、初対面の人にはよそ行きの顔で挨拶したりするが、この2人、今までに新郎からそれぞれの悪口を散々聞いていたので、最初から最悪……。
本作の主人公フランクとリンジーは、それぞれの人生経験からすでに自分を確立しているお年頃。まだまだいける美男美女なのに、愛を信じない残念なヘンクツ男と、やたら絡む痛いヘリクツ女に出来上がっている。その2人の膨大な台詞を聞いていると、妙に親近感が湧く。「うん!それ、あるある!」と、自分自身の人生経験から共感する部分も多々。そして2人共、羨ましいほど自分に正直だ。出会いから最悪だったので飾る必要がなく、正直でいられるのだろう。自分に正直でいられる相手というのは、実はとても貴重で、心地良い存在なのかもしれない。
おじさんおばさんだけれど、なぜか可愛い大人の恋物語。どう発展して行くのかは観てのお楽しみ。作中にピューマが出演。このピューマ、いい味出している。帰り道で顔がニンマリしてしまう様な、心が軽やかになるラブコメだ!
(文:植田綾子)
ヴィクター・レヴィン監督インタビュー:
「キアヌとウィノナの化学反応がこの映画に欠かせなかった」
──なぜこの作品でリゾート婚(Destination Wedding)をテーマにしたのですか?
2015年の夏にリゾート婚に参加したが、あまりにいいことづくめでありがた迷惑でした。 押しつけに感じる。結婚式も1回なら楽しい。2回目もまあまあ楽しい。でもリゾート婚から始まる結婚式は、もうすでに休暇でもなんでもない。それがこの映画の発送の源でした。
映画『おとなの恋は、まわり道』ヴィクター・レヴィン監督
──主人公のフランクとリンジーの人間性について、どのように描こうとしましたか?
フランクとリンジーは基本的に善人だけれど、深い傷を負っている。それが2人を興味深い人間にしています。自分の弱さをさらけ出すなら、自分を閉じてしまう方が楽だと思う人もいる。そんなふうに感じる人にとって、弱さを責められることは受け入れがたい恐怖なのです。 この2人もそうです。2人とも過去に傷を負い、そのせいで人生を完全に楽しむことができない。
映画『おとなの恋は、まわり道』
──キアヌ演じるフランクのキャラクターについて説明をお願いします。
彼は親との関係が良くなくて、いまだにそれを乗り越えることができない。フランクにとって愛情は骨を折るだけ無駄で、自分がかかわりたいことではないのです。
──キアヌと仕事をしてみて、いかがでしたか?
キアヌはセリフに書かれたどの言葉も大切にし、いろいろな思いや時間や努力に基づいて選択します。そしてどう演じたいか決めたら、彼はそこに100パーセント全力投球するのです。
──ウィノナ・ライダーについては?
ウィノナは最初から本作の題材が自分にぴったりだとわかっていました。彼女のようには誰も演じられない。自然なウィノナらしさは誰にも真似できません。キャラクターのことを本能で理解している。だから、簡単に自分を解放して自然に振舞うことができるのです。
映画『おとなの恋は、まわり道』
──撮影現場ではキアヌとウィノナはどのような雰囲気でしたか?
キアヌとウィノナ、そして2人の化学反応はこの映画全体に欠かせないものでしたが、2人は最高でした。2人とも愉快な人たちだし、私は彼らに自由に演じて欲しかった。セリフにしても少し変えるなら、元の言葉に固執する気はありません。時折、まったく予想していなかった素晴らしい瞬間を得ることもあります。ベテランの二人にはよくわかっているのです。化学反応を起こしてくれと頼むことはできません。それはそこにあるべきもので、監督の仕事はそれを最大限に活用することなのです。2人の友情は大きな財産でした。
映画『おとなの恋は、まわり道』
結婚式はフランクとリンジーの周りで進むけれど、2人はその中に入らず、ある程度の距離を保ちながらすべてを経験していく。映画全体がそういうふうに進みます。セリフのある他の役を削ったことで演出のプロセスがシンプルになり、何十人もの俳優や多くの振り付けが必要なパーティーシーンを撮影する必要がなくなりました。リアルに聞こえ、面白いのに何か意味がある、よく考えられたセリフは好きです。強烈な俳優二人にショットを設定することで、演技に集中できる。ウィノナとキアヌ、そして2人がこの題材をどう扱うのか、それが鍵になるのです。
映画『おとなの恋は、まわり道』
──2014年の『5時から7時の恋人カンケイ』(日本ではソフトリリースのみ)以来、久しぶりの長編映画作品ですが、完成させてみていかがですか?
長いキャリアをTVの脚本家やプロデューサーとして過ごしましたが、長編映画の世界に戻れるチャンスを楽しみました。映画の観客は、家を離れ、ベビーシッターを雇い、車を走らせ、携帯電話を切って、1時間半、その作品だけに集中する。特にコメディはそうです。映画館に足を運ぶ人が多ければ多いほど、そのコメディが成功するチャンスが増えるのです。
映画『おとなの恋は、まわり道』
──この映画でどのような反響を期待しますか?
私は、観客に問いかける映画、議論を巻き起こすような映画を作りたい。この映画では、「過去に受けた傷がどれだけ深かろうと、先に進み続けるのか?それとも諦めるだけなのか?」ということです。この映画を見終わってから、観客にそういうことを考えてもらいたいと思いました。
人生や恋愛でつらい時を過ごしている人は大勢いるでしょう。私は引っ込むよりも表に出てよりよい結果を望むほうがいいと信じています。私はウィノナのキャラクターの味方です。彼女は見事に演じてくれました。でもほかの人たちの考え方も理解できます。観客には、この映画を活用してそういうことについて考えてほしいと思っています。
(オフィシャル・インタビューより)
ヴィクター・レヴィン(Victor Levin) プロフィール
1961年、アメリカ、ニューヨーク州生まれ。ヘレン・ハント主演のTVシリーズ「あなたにムチュー」(95~99)、「MAD MEN マッドメン」(12)の製作などで、エミー賞に4度ノミネートされる。脚本家としても活躍し、『アイドルとデートする方法』(04・未)、『いとしい人』(07)、『猟奇的な彼女 in NY』(08・未)などを手掛ける。2014年には、自身のオリジナル脚本を映画化した『5時から7時の恋人カンケイ』(未)で長編映画監督デビューを飾る。新作は脚本と製作を担当するTVシリーズ「Beecham House」(19)など。
映画『おとなの恋は、まわり道』
12月7日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか 全国ロードショー
監督・脚本:ヴィクター・レヴィン
出演:ウィノナ・ライダー、キアヌ・リーブス
アメリカ/87分/英語/カラー/スコープ/Destination Wedding/R-15
配給:ショウゲート
日本語字幕:稲田嵯裕里