骰子の眼

cinema

2018-10-26 09:14


LGBTはセックスじゃなく、ライフ(生きざま)です

GOLD FINGER小川チガさん×アップリンク浅井隆が語る「ピンクからレインボーへ」
LGBTはセックスじゃなく、ライフ(生きざま)です
GOLD FINGERプロデューサーの小川チガさんとアップリンク代表の浅井隆

2018年12月14日、吉祥寺パルコの地下2階にオープンする映画館「アップリンク吉祥寺」。いち早くその会員になり、映画館作りの過程をともに楽しみ応援して下さる方を募集するクラウドファンディングを10月31日まで実施している。

このクラウドファンディングを応援するイベントの第二弾が、9月24日の第一弾に続き、10月21日にアップリンク渋谷で開催された。

当日は、映画『キャロル』(第68回カンヌ国際映画祭クィア・パルム受賞作)の上映前に、GOLD FINGERプロデューサーの小川チガさんと、アップリンク代表兼webDICE編集長の浅井隆が登壇し、トークイベントを行なった。GOLD FINGERは、チガさんが1991年にスタートさせた日本初にして最大の女性限定クラブイベントで、新宿2丁目で同名のバーも経営している。

チガさんが90年代にアップリンクの事務所内に出店していたゲイカルチャーショップ“PINK POP SHOP”や、かつてアップリンクが発行していた雑誌『骰子』(ダイス)などの話から、当時から現在に至るまでのLGBTカルチャーの変遷、そしてアップリンク吉祥寺についてのトークが繰り広げられた。以下にトークの一部を紹介する。


フラットにゲイカルチャーを掲載した『骰子』が心地よかった

チガ:今年で活動28年目。

浅井:すごいよね! 僕たちが最初に会ったのは、いつ頃だっけ? アップリンクが目黒から(渋谷区)神南のファイヤー通りに移ったころだよね。

チガ:私は『骰子』(アップリンクが1993~2000年に発行していた隔月のカルチャー雑誌)で浅井さんのことを知ったんです。1991年から出演者もお客さんも女の子だけのイベントを赤坂DEEPなどで始めたんですけど、当時クイアものを紹介するメディアなんて日本にありませんでした。『骰子』は、あえてクイアカルチャーを謳っているわけじゃなかったけど、あたりまえにゲイ・レズビアン情報が載っている、そのフラットなかんじがすごくいいなと思ったんだよね。

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雑誌『骰子』について語るチガさん

浅井:それでアップリンクの事務所内に“PINK POP SHOP”をオープンした。

チガ:お世話になりました(笑)。

浅井:配給会社だったから事務所は土日は休みだった。それで、土日限定のポップアップショップをチガちゃんに始めてもらったんです。

チガ:そうそう、ドアをシルバーに塗らせてもらって、ゲイ関連のおもしろいグッズの展示や販売をしてました。これすごいでしょ! なんと、世界の巨匠、ピエール&ジルにFAXで直談判して、お店のイラストを描いてもらったの。

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ピエール&ジルからのFAXと直筆イラスト

浅井:そして、これはチガちゃんの会社“FREE P”の紹介と「スポンサー求む」のFAX。

チガ:Pからはじまる言葉はおもしろいのが多くて、「パワー」「ピープル」「ポジティブ」、それから「プッシー」みたいなエッチな言葉もたくさん。LGBTを象徴する「ピンク・トライアングル」は、ナチスの時代に迫害されたゲイピープルが装着を義務づけられていた三角形の識別胸章です。悲しい過去をポジティブで象徴的な意味に使うようになって、「レインボー」が使われるようになるまでは、この「ピンク・トライアングル」がとてもよく使われてましたね。

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“FREE P”の紹介と「スポンサー求む」のFAXを見ながら

浅井:何のスポンサーを募集してたの?

チガ:募集っていうよりは、宣言みたいなもので。インターネットなんかなかった時代に、今でいうベンチャー的なもの、こんなに新しくて面白い活動があることを多くの人に知ってほしかったし、理解してもらいたかったんですよね。自分のために書いたんだと思う。

浅井:たしかにチガちゃんって昔から「活動家」とか「表現者」というのではなくて、ベンチャーじゃないけど、現実の世界とちゃんとつながっていく、地に足のついた人だよね。

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「FREE P」の活動紹介と、当時扱っていたアメリカの雑誌『OUT』の要約版付きの定期購読申込用紙

来年は“ストーンウォールの反乱”から50年

チガ:これは、1994年に開催された日本初のレズビアン&ゲイパレードのチラシ。漫画家の桜沢エリカさんのイラストね。

浅井:第一回なんだ。「ストレート社会の中で異端視されている同性愛者や、様々なセクシャリティの人たちの存在」って、LGBTって言葉がまだない時代だね。あとエイズ問題の頃だ。

チガ:そうなの。LGBTって言葉はすごく便利。「レズビアン」「ゲイ」っていうとすぐセクシャリティの話になってしまって、話がかみ合わないことが多かったけど、LGBTはセックスじゃなくてライフ、生きざま。人権なのよね。

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第一回東京レズビアン&ゲイパレードのチラシ

浅井:今、どういうふうに一番変わったと思う?

チガ:いやー、まだまだ歴史が浅いよね。今年、ニューヨークのパレード行ってきたんです。今や世界各地に広がったレズビアン&ゲイパレードの発端は、(マンハッタンのグリニッジヴィレッジにある)ゲイバー“ストーンウォール・イン”で三日三晩続いた暴動で火がついた抗議行動なんだけど、来年は50周年なんです。それで日本チームでフロントを出そうっていう話があって、視察目的だったの。今でもバーは営業していて、観光名所みたいになっているんですけど、素晴らしかった!

浅井:新宿二丁目も変わった? 今では路面店でGOLD FINGERを営業されているけど。

チガ:私が二丁目に初めて行ったのは40年くらい前。ほんとに真っ暗で、隠れて行くところだから1階にはお店がなくて、ジトッとして怖かった。それが今ではお客さんで溢れてる。

浅井:インバウンドのお客さんも多いんでしょ。

チガ:そう。すごく嬉しいのは、外国からハネムーンとかね。「いつか来たかった」って、スーツケース持ったままお店に直行してくれたりするんですよ

12月14日にオープンするアップリンク吉祥寺には“レインボー”という名前のシアターも

浅井:ここに模型があるんだけど、アップリンク吉祥寺には5スクリーンできる予定で、その中にちょうどシートが7列のシアターがあるので、1列ごとに色を変えて7色にして「レインボー」という名前をつけました。

チガ:そこは基本的にLGBT系の作品をやるの?

浅井:LGBTの映画があればここで上映したいなと思うし、チガちゃんプロデュースで特別上映とか。

チガ:やります、やります! 私ね、映画ものすごい好き。ほんの2時間くらいで別世界に連れて行ってくれるじゃない。今思っているのは、観終わって余韻に浸りたいんだけど、何かうまい浸り方がないかなぁって。感じたことをシェアできるような場があったらいいなぁって思うんですよ。

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アップリンク吉祥寺の模型

浅井:スタンディングでよかったら、ロビーに15mくらいの赤いカウンターを作るから、そこでワインやビール飲んで余韻に浸れるよ。受付にはミラーボールも付けるんだ。

チガ:ミラーボールは暗くないとだめだからね!

浅井:あっ、そうか、暗くしないとだめだよね。そこは忘れてた……時間によっては暗くします!

チガ:あと回らなきゃだめよ。ミラーボールなんだから。暗い中で回らないと!

浅井:回します!DJも呼んでロビーでパーティーとか。映画館なんだけど、映画だけでなくいろんなカルチャーをミックスできる場を提供したいんだよね。


【PLAN GO】新しく作る映画館『アップリンク吉祥寺』を応援する
http://plango.uplink.co.jp/project/s/project_id/74

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コメント(1)


  • kien   2018-10-26 09:39

    40年前の二丁目の店が真っ黒というところが気になります〜笑笑
    「LGBT」はセックスじゃなくて、ライフ、生き様」というところにすごく共感できました。自分の生き様を一瞬感じ取ってみました。
    本当は、LGBTの方も、LGBTじゃない方もみんな違う個性を持ち、それぞれの生き様があるはずですが、みんなひとりの人間として尊重してほしい願望が強いですね。
    人を尊重するのも、自尊の一つです。