骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2018-10-26 23:00


「100%全編モニター」だけで展開する新しい映画言語によるサスペンス・スリラー『search/サーチ』

27歳のインド系アニーシュ・チャガンティ監督、主役は韓国系ジョン・チョー
「100%全編モニター」だけで展開する新しい映画言語によるサスペンス・スリラー『search/サーチ』
映画『search/サーチ』

娘が消えた、手がかりは彼女のパソコンの中。パスワードを再設定し捜査を始める父親。父親の知らなかった彼女のネット上の繋がりが次々と明らかになりそうだが、全てのピースは見つからず、行方不明のまま。 全く新しい映画体験というコピーには嘘偽りない『search/サーチ』が10月26日(金)より公開。webDICEではアニーシュ・チャガンティ監督のインタビューを掲載する。

宣伝文句が「100%すべてPC画面」というので、正直、映画を観る前は、アイデアは面白いが、多分狭いPC画面で展開する映画では、期待を裏切られるだろうと高を括っていた。ところが、オープニングからぐいぐいスクリーンに引き込まれ、次の展開にドキドキする自分がいた。チャガンティ監督、Good Job! 面白い。でも、宣伝コピーは間違ってるじゃん。映画は全編PC画面ではなく、監視カメラ、テレビ映像、スマホの映像も。宣伝を正確にするなら「100%モニター」で映画は構成されている。

映画館のフラットなスクリーンに、フラットなモニターが映され、それを巧みなカメラワークというか、モニター画面の分割やワイプなどの手法を屈指して語っていく。それは「スクリーンライフ」と呼ぶ映画製作者ティムール・ベクマンベトフが提唱する新しい映画言語だという。これは、スマホ、パソコンを日常に使用している人にはわかるが、新聞しか読まず、パソコンも使用しない人にはわからないだろう言語だ。テキストを削除しようか戸惑うカーソルの動きでその人物の感情を、顔のアップを見せずにモニターのカーソルのクローズアップで表現する。

毎日仕事でiMacに向き合い、iPhone、iPad、Macbookを自分のいる場所によって使いわける自分のような観客には、「スクリーンライフ」という映画言語を使用した本作は大成功と言えるだろう。フラットな画面だけでのナラティブな展開に感情を動かされた。それはまさに自分の日常体験で刷り込まれている感覚と繋がっている。

全編モニターだけの映像で展開する、エモーショナルなサスペンス・スリラー。毎日2時間はスマホ、PCと向きあっている人は絶対はまります。

(文:浅井隆)

観客が共感し、感情移入できるキャラクター造形

──『search/サーチ』の製作のはじまりは、この作品の脚本・製作のセヴ・オハニアンと南カリフォルニア大学の映画制作のクラスで出会ったのがきっかけだそうですね。当時あなたが全編グーグル・グラスで撮影した短編映画『Seeds』を制作しました。

そう、それがきっかけで、大学を卒業した後、グーグルに招かれて働くようになった。

映画『search/サーチ』
映画『search/サーチ』アニーシュ・チャガンティ監督

──本作のアイデアは当初、短編フィルム用だったため、映画製作会社からの依頼で、長編にすることをためらったと伺いました。

ショート・コンテンツ用のアイデアを長編映画の脚本にした場合、有機的にふくらませるかわりに、アイデアを引き伸ばして薄めてしまうんじゃないかと感じていたんだ。

──決断できた理由は何でしょうか?

ある晩僕と脚本・製作のセヴ・オハニアンは、偶然同じタイミングでメッセージを送り合ったんだ。「オープニングシーンを思いついたぞ」ってね。それで電話をかけて話をしたら、お互いに説明したアイデアが、まったく同じものだったんだ。それが結局、映画の冒頭シーンになったよ。『カールじいさんの空飛ぶ家』のオープニングシーンを思い出させるようなシーンだ。その方法に“スクリーン・ライフ”を使うことで、観客が共感し、感情移入できるキャラクターを最初の5分間に作ることができるんじゃないかと思ったんだ。誰もがコミュニケーションの道具として使っているものだから、親しみを感じてくれるといいなと思うと同時に、映画としては型破りな方法であることを忘れてもらえたらいいなとも思ったんだ。

※スクリーンライフ 映画製作者ティムール・ベクマンベトフが提唱する新しい映画言語。カーソルがどう動くか、何を選択するか、キーボードをどう叩くか、といったブラウザ上で起こっていることを見るだけで、使用者の千変万化する相手の意思や心配事など、感情が極めて視覚的な形で露わになる。
映画『search/サーチ』
映画『search/サーチ』

思わず引き込まれてしまうエモーショナルな映画

──『search/サーチ』は、現代技術やデジタル技術によるストーリーテリングを再考した作品ですが、予測不能の展開や観客を引きこむ感情を伴った魅惑的でドラマチックなミステリーによって支えられていますね?

自分たちが観たいと思う映画を作ろうと思ったんだ。僕らが一番好きなのは、サスペンスや陰謀の要素がたっぷりあって、思わず引き込まれてしまうエモーショナルな映画なんだ。だからこの物語も、観客が謎の中に入り込んでしまって、物語がどのように語られているかを忘れそうになるようなものにしたいって、最初から考えていたんだ。

映画『search/サーチ』
映画『search/サーチ』

行方不明者もののサスペンス映画を何十本と見て、何が効果的で何が効果的でないか、また、情報を隠してさりげなく観客をミスリードするために、監督らがどのような戦略とったのかを研究した。この『search/サーチ』のストーリーラインを見れば、ミステリーやサスペンス映画の伝統的な要素がふんだんに使われているのがわかるよ。僕らの目標は、自分たちが気に入ったそうした要素を、“スクリーン・ライフ”というコンセプトに合わせることだったんだ。

映画『search/サーチ』
映画『search/サーチ』撮影風景

──監督のiphoneをAカメとして使ったと書かれていましたが、それは全編だったのでしょうか。それとも一部のシーンですか?一部であればシーンを教えてください。

20%ぐらいiphoneを使って撮影した。フェイスタイム、PC、ラップトップはGoProで撮影している。マーゴがユーキャストを使っているシーンやデイビッドが外に出たシーンなどがiphoneだ。

(オフィシャル・インタビューより)



アニーシュ・チャガンティ(Aneesh Chaganty) プロフィール

現在27歳のインド系アメリカ人。南カリフォルニア大学で映画製作を学ぶ。23歳の時、Google Glassだけで撮影した2分半の短編映画"Seeds"が、YouTubeで24時間の間に100万回以上再生されネットでセンセーションを巻き起こした。この成功で、NYのグーグル・クリエイティブ・ラボに招かれ2年間グーグルのCM制作などに携わる。本作『search/サーチ』が劇場用映画デビューとなる。




映画『search/サーチ』

映画『search/サーチ』
10月26日(金)全国ロードショー

監督:アニーシュ・チャガンティ
製作:ティムール・ベクマンベトフ
出演:ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ジョセフ・リー、ミシェル・ラー
脚本:アニーシュ・チャガンティ&&セブ・オハニアン
原題:Searching
2018年/アメリカ

公式サイト


▼映画映画『search/サーチ』予告編

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search/サーチ


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